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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16H
管理番号 1032479
審判番号 審判1999-3246  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-25 
確定日 2001-01-24 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 68110号「カムフォロア」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 4月28日出願公開、実開平 6- 32809]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯
本願は、平成4年9月30日の出願であって、平成11年1月26日(発送日)に拒絶査定がなされ、平成11年2月25日に審判請求がなされ、その後平成12年8月1日(発送日)に当審において拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成12年9月29日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.本願考案
本願の請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、平成12年9月29日付け手続補正書により補正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
【請求項1】スタッドに設けた軸受面のまわりに、転動体を介在して外輪を回転自在に嵌め、上記スタッドのヘッド部と該スタッドに嵌めた側板とにより、上記外輪を軸方向に規制すると共に、転動体の抜け止めを図ってなるカムフォロアにおいて、上記転動体のまわりの空所、上記の外輪と側板で囲まれた隙間および上記の外輪とスタッドのヘッド部で囲まれた隙間に、超高分子量ポリオレフィンと潤滑グリースおよび固体ワックスの混合物からなる固形潤滑組成物を充填したことを特徴とするカムフォロア。

3.引用文献記載の考案
これに対して、平成12年7月17日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1である、実願昭63-90151号(実開平2-12556号)のマイクロフィルムには、カムフォロアに関する考案が記載されていて、その明細書及び図面の記載からみて、次のような事項が記載されている。
(1)第1図の記載から、「スタッドのまわりに、転動体を介して外輪を回転自在に設け、スタッドのヘッド部とスタッドに嵌めた側板とによって外輪を軸方向に規制したカムフォロア」が看取できる。これについては、請求人は、平成12年9月29日付けの意見書(第2頁第2?7行)において同様の主張を行っている。
(2)「側板4はスタッド2、に圧入されており、スタッドと側板は一体である。」(第4頁第8?9行)と記載されている。
これらの記載事項からみて、引用文献1には、次のような考案(以下、「引用考案1」という。)が記載されていると認められる。
「スタッド(スタッドに設けた軸受面)のまわりに、転動体を介して(介在して)外輪(外輪)を回転自在に設け(嵌め)、(上記)スタッド(スタッド)のヘッド部と(該)スタッドに嵌めた側板とによって(より、)(上記)外輪を軸方向に規制し(すると共に、転動体の抜け止めを図ってなる)たカムフォロア(において、上記転動体のまわりの空所、上記の外輪と側板で囲まれた隙間および上記の外輪とスタッドのヘッド部で囲まれた隙間に、超高分子量ポリオレフィンと潤滑グリースおよび固体ワックスの混合物からなる固形潤滑組成物を充填したことを特徴とするカムフォロア。)」
同じく拒絶の理由に引用された引用文献2である、特公昭63-23239号公報には、軸受用潤滑組成物に関する考案が記載されていて、その明細書及び図面の記載からみて、次のような事項が記載されている。
(3)「本発明は、・・・超高分子量ポリエチレン・・・と潤滑グリースとの混合物を使用した転がり軸受用潤滑組成物に関するものである。」(第1頁第2欄第10?15行)
(4)「一般に・・・半固体状の・・・グリース潤滑では、・・・必ずシール板等の密封装置で密封しておく必要があった。・・・軸受内のグリースが遠心力で飛散し、短期間に焼き付き取り換えを余儀なくされていた。・・・
本発明は、上記従来の問題点に鑑み・・・保持力が強くて対象軸受の自己潤滑性を長期にわたって保証しうる軸受用潤滑組成物を提供せんとするものである。」(第1頁第2欄第16行?第2頁第3欄第33行)
(5)「また、潤滑組成物から油がにじみ出るのを出来る丈遅く少なくするために、常温で固形の潤滑剤即ちワックス、及びそれらと潤滑油の常温で固形の配合物・・・を含ませると目的を達しうる。この固形のワックス及び配合物の含量が多い程、離油率も抑制出来、油がにじみ出るのがにぶくなる。」(第2頁第4欄第39行?第3頁第5欄第1行)
(6)「第1図は、本発明に係る潤滑組成物を適用した転がり軸受の構造例を示す図面である。図面において、1は外輪、2は内輪、3はボール、4は潤滑組成物である。」(第3頁第5欄第4?7行)
これらの記載事項からみて、引用文献2には、次のような技術思想が記載されていると認められる。
「密封装置で密封しておく必要がなく」、「保持力が強くて対象軸受の自己潤滑性を長期にわたって保証しうる軸受用潤滑組成物」として、「超高分子量ポリエチレンと潤滑グリースとの混合物を使用した転がり軸受用潤滑組成物」が適していて、「潤滑組成物から油がにじみ出るのを出来る丈遅く少なくするために、常温で固形の潤滑剤即ちワックス、及びそれらと潤滑油の常温で固形の配合物を含ませること」がよい。

4.引用文献との対比、当審の判断
そこで本願考案と引用考案1を対比すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
スタッドのまわりに、転動体を介在して外輪を回転自在に設け、上記スタッドのヘッド部と該スタッドに嵌めた側板とにより、上記外輪を軸方向に規制したカムフォロア。
(相違点)
(1)本願考案では、スタッドに設けた軸受面のまわりに、転動体を介在して外輪を回転自在に嵌めているのに対し、引用考案1では、スタッドのまわりに、転動体を介在して外輪を回転自在に設けている点。
(2)本願考案では、スタッドのヘッド部と該スタッドに嵌めた側板とにより、外輪を軸方向に規制すると共に、転動体の抜け止めを図っているのに対し、引用考案1では、スタッドのヘッド部と該スタッドに嵌めた側板とにより、外輪を軸方向に規制している点。
(3)本願考案では、転動体のまわりの空所、外輪と側板で囲まれた隙間および外輪とスタッドのヘッド部で囲まれた隙間に、超高分子量ポリオレフィンと潤滑グリースおよび固体ワックスの混合物からなる固形潤滑組成物を充填しているのに対し、引用考案1では、潤滑態様が不明である点。
(相違点についての検討)
・相違点(1)について
軸自体に軸受面を設けることは、外輪と軸の間に間隙を十分設けることができない場合等の普通に採用されていることであって当業者が適宜採用できる単なる設計的事項にすぎなく、また、外輪を回転自在に嵌めることも、軸受の慣用手段であって当業者が適宜採用できる単なる設計的事項にすぎない。
してみると、この相違点(1)に係る本願考案の構成要件は、当業者にとって引用考案1に軸受における周知の技術的事項を適用することによりきわめて容易に想到できたものと認められる。
・相違点(2)について
軸受において、転動体の抜け止めを図ることは当然のことであるから、引用考案1においても転動体の抜け止めが何らかの手段でとられていることは明らかであって、外輪を軸方向に規制していると解されるスタッドのヘッド部と側板とにより、同方向の動きを規制することになる転動体の抜け止めの機能を持たせることに格別の困難性はない。
してみると、この相違点(2)に係る本願考案の構成要件は、当業者にとって引用考案1の実施に際し適宜採用できたものと認められる。
・相違点(3)について
引用考案1のカムフォロアにおいても、カムフォロアの通常の機能からみて、転動体のまわりの空所、外輪と側板で囲まれた隙間及び外輪とスタッドのヘッド部で囲まれた隙間が存在することが明らかであり、少なくとも転動体の周囲に潤滑剤が存在すれば焼き付き等の不都合が回避されることは、当業者にとってたやすく理解できることにすぎない。
また、転動体の周囲に潤滑剤が存在する時間を長くするには、その周囲にできるだけ多くの潤滑剤を保持しておけばよいことも通常の軸受において周知の技術的事項にすぎない。
そして、引用文献2には、上記3.で説示したように、『「密封装置で密封しておく必要がなく」、「保持力が強くて対象軸受の自己潤滑性を長期にわたって保証しうる軸受用潤滑組成物」として、「超高分子量ポリエチレンと潤滑グリースとの混合物を使用した転がり軸受用潤滑組成物」が適していて、「潤滑組成物から油がにじみ出るのを出来る丈遅く少なくするために、常温で固形の潤滑剤即ちワックス、及びそれらと潤滑油の常温で固形の配合物を含ませること」がよい』といった技術思想が記載されている。
してみると、この相違点(3)に係る本願考案の構成要件は、当業者にとって引用考案1の引用文献2に記載された考案に係る技術思想を適用することによりきわめて容易に想到できたものと認められる。
なお、請求人は、「ラビリンス(迷路)隙間」を積極的に密封する云々の主張をしているが、請求人の主張に係る隙間の態様は、実用新案登録請求の範囲において限定されているものではなく、できるだけ多くの潤滑剤を供給しようとする通常の発想と変わるところがなく、きわめて容易に想到できたものであることは先に説示したとおりであるから、この主張は採用できない。

5.むすび
したがって、本願考案は、引用文献1に記載された考案及び引用文献2に記載された考案に係る技術思想に基づいて当業者がきわめて容易に考案し得たものと認められるから実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
審理終結日 2000-11-08 
結審通知日 2000-11-21 
審決日 2000-12-04 
出願番号 実願平4-68110 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (F16H)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 柳 五三  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 常盤 務
池田 佳弘
考案の名称 カムフォロア  
代理人 鳥居 和久  
代理人 鎌田 文二  
代理人 東尾 正博  

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