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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F15B |
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管理番号 | 1036053 |
審判番号 | 不服2000-7105 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-05-11 |
確定日 | 2001-04-23 |
事件の表示 | 平成 4年実用新案登録願第 67607号「リリーフセット圧可変式パイロット回路」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 4月 8日出願公開、実開平 6- 25601]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願考案の要旨 本願は、平成4年9月2日の出願であって、その請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、平成10年8月26日付け、及び平成12年5月11日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 【請求項1】 エンジンで駆動される主ポンプ(2)の吐出油をアクチュエータ(3)へ供給する主回路(1)に設けた主コントロールバルブ(4)を、主コントロールバルブ(4)とエンジンで駆動されるパイロットポンプ(7)との間に設けられるパイロットバルブ(6)であり、操作室に設けたマニュアル操作式の操作レバー(10)によって操作されるパイロットバルブ(6)であり、かつ操作レバー(10)の操作量に応じた大きさのパイロット圧を出力するパイロットバルブ(6)からのパイロット圧によって切換制御するパイロット回路(5)において、 パイロットバルブ(6)に入力するパイロットポンプ(7)の吐出圧の最大値を決めるリリーフ弁(8)のセット圧を自在時に、かつ自在値に変更設定するマニュアル操作式の圧力設定器(9)を前記操作室に有することを特徴とするリリーフセット圧可変式パイロット回路。 2.引用例 これに対し、原査定における拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-304203号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。 a.「本発明は、油圧ショベル等の油圧機械に備えられ、パイロットポンプから吐出される圧油の圧力に応じて方向制御弁の駆動を制御する油圧駆動装置に関する。」(第1頁右下欄第2?5行) b.「エンジン1と、このエンジン1によって駆動する…主油圧ポンプ2及びパイロットポンプ3と、…バケットシリンダ11等のアクチュエータと、旋回用方向制御弁12、…バケット用方向制御弁17を含む方向制御弁ブロック18と、パイロットポンプ3から吐出される圧油の圧力を変換して方向制御弁12?17の駆動部に供給する圧力発生器19,20等を備えている。4’はパイロット回路の最高圧の設定値を変更することができる可変パイロットリリーフ弁である。そして、この実施例にあってはエンジン1の目標回転数を指示する燃料レバー22と…可変パイロットリリーフ弁4’のばね圧設定手段とをケーブル等により接続し、燃料レバー22の動きに応じて可変リリーフ弁4’の設定値を変更するようになっている。…例えば圧力発生器19の操作レバーを操作すると、パイロットポンプ3の圧油が圧力発生器19を介して旋回用方向制御弁12の駆動部に供給されてこの方向制御弁12が切換えられ、主油圧ポンプ2から吐出される圧油が旋回用方向制御弁12を介して旋回モータ6に供給され、この旋回モータ6が駆動する。」(第3頁右上欄第6行?左下欄第18行) c.「これらの圧力発生器は、例えば第5図の圧力発生器19で示すように油圧式パイロット弁によって構成されている。」(第2頁左上欄第13?15行)。 これらの記載事項及び図面の記載からみて、引用例1には、次の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されているものと認められる。 【引用考案】 エンジン1で駆動される主油圧ポンプ2の吐出油をアクチュエータへ供給する油路に設けた方向制御弁を、方向制御弁とエンジン1で駆動されるパイロットポンプ3との間に設けられる油圧式パイロット弁で構成される圧力発生器であり、操作レバーによって操作される圧力発生器であり、かつ操作レバーの操作によりパイロットポンプからの圧油を所定圧力に変換する圧力発生器からのパイロット圧によって切換制御するパイロット回路において、 圧力発生器に供給するパイロットポンプ3の圧油の最高圧を決める可変パイロットリリーフ弁4’の設定値を変更設定する燃料レバー22を有する油圧駆動装置。 3.対比 本願考案と引用考案とを比較すると、引用考案の「エンジン1」は、本願考案の「エンジン」に、以下同様に、「主油圧ポンプ2」は「主ポンプ(2)」に、「アクチュエータ」は「アクチュエータ(3)」に、「油路」は「主回路(1)」に、「方向制御弁」は「主コントロールバルブ(4)」に、「パイロットポンプ3」は「パイロットポンプ(7)」に、「油圧式パイロット弁で構成される圧力発生器」は「パイロットバルブ(6)」に、「操作レバーの操作によりパイロットポンプからの圧油を所定圧力に変換する圧力発生器からのパイロット圧によって切換制御するパイロット回路」は「操作レバー(10)の操作量に応じた大きさのパイロット圧を出力するパイロットバルブ(6)からのパイロット圧によって切換制御するパイロット回路(5)」に、「供給」は「入力」に、「圧油の最高圧」は「吐出圧の最大値」に、「可変パイロットリリーフ弁4’」は「リリーフ弁(8)」に、「設定値」は「セット圧」に、「油圧駆動装置」は「リリーフセット圧可変式パイロット回路」に、それぞれ相当するものと認められる。 したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりと認められる。 <一致点> エンジンで駆動される主ポンプの吐出油をアクチュエータへ供給する主回路に設けた主コントロールバルブを、主コントロールバルブとエンジンで駆動されるパイロットポンプとの間に設けられるパイロットバルブであり、操作レバーによって操作されるパイロットバルブであり、かつ操作レバーの操作量に応じた大きさのパイロット圧を出力するパイロットバルブからのパイロット圧によって切換制御するパイロット回路において、 パイロットバルブに入力するパイロットポンプの吐出圧の最大値を決めるリリーフ弁のセット圧を変更設定する手段を有するリリーフセット圧可変式パイロット回路。 <相違点イ> 操作レバー及びリリーフ弁のセット圧を変更する手段が、本願考案では、「操作室」に設けられている「マニュアル操作式」のものであるのに対し、引用考案では、油圧機械に設けられているものの、それが操作室に設けられたマニュアル操作式のものか否か不明な点。 <相違点ロ> 圧力設定器により設定されるリリーフ弁のセット圧が、本願考案では、「自在時に、かつ自在値に変更設定」されるものであるのに対し、引用考案では、燃料レバーの操作に応じて変更設定されるものである点。 4.当審の判断 そこで、上記相違点イ及びロについて検討する。 ・相違点イについて 建設機械等の油圧機械において、各種アクチュエータ操作用及びエンジンコントロール用のレバー類又はスイッチ類を操作室に配置することはごく普通に行われていることである。また、それらのレバー類又はスイッチ類をオペレーターがマニュアル操作することも同様である。 そして、引用考案における燃料レバー及び圧力発生器の操作レバーは、引用例1の明細書及び図面の記載に照らしてみれば、人為的に操作されるものと解すことができ、また、当該各レバーを操作室外に配置しなければならないような特段の事情も見出せない。 してみると、上記相違点イに係る本願考案の構成は、引用考案の実施に際し、当業者が適宜なし得た設計事項というべきである。 ・相違点ロについて 本願考案における「自在時に、かつ自在値に変更設定」の技術的意味は、オペレーターが必要なときに、必要な値に設定を変更することと解される。 そして、引用考案におけるリリーフ弁のセット圧を変更設定する燃料レバーは、前示のとおり人為的に操作されるものと解されること、及び燃料レバーの操作に応じてセット圧を必要な値に変更することができるものであることより、リリーフ弁のセット圧の変更設定の限度において、リリーフ弁のセット圧を自在時に、かつ自在値に変更設定できるものと解することができるから、結局、上記相違点ロは格別のものではない。 また、上記相違点に係る本願考案の構成に基づく作用効果も、引用考案から予測可能な範囲内のものと認められる。 したがって、本願考案は、引用考案から、当業者がきわめて容易になし得たものと認められる。 なお、審判請求人は、請求書において「本件考案によれば、オペレータが圧力設定器(9)を操作するだけで、エンジン回転数を変更することなく、言い換えれば、エンジン回転数に係わりなく、リリーフ弁(8)のセット圧を自在時に、かつ自在値に変更設定できる。」と述べている。すなわち、本願考案における圧力設定器は、エンジンの回転数を変更する手段(引用考案では燃料レバー)と関連がない独立した手段であると述べているようである。 しかしながら、本願考案の圧力設定器が、他の操作レバー又はスイッチ類の操作との関連を完全に排除したものとして構成されているとは、請求項1の記載から直ちに認めることはできないから、上記主張は失当であり採用することはできない。 また、仮に本願考案の圧力設定器が請求人主張のようなものだとしても、建設機械の油圧回路の設定圧を変更するための手段をエンジンの回転数を変更する手段等の他の手段と関連させず独立した手段として構成することは周知(例えば、実願昭62-188463号(実開平1-92501号)のマイクロフィルム参照)であり、さらに、引用考案において、エンジンの回転数と関連させずにリリーフ弁の圧力設定をしようとすれば、燃料レバーとリリーフ弁との接続関係を切り離し、独立の設定器を備えるように構成するばよいことは、当業者であればたやすく理解できるものと認められるから、何れにしても本願考案は、引用考案及び周知技術から、当業者がきわめて容易になし得たものというべきである。 5.むすび したがって、本願考案は、引用考案若しくは引用考案及び周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-02-20 |
結審通知日 | 2001-02-26 |
審決日 | 2001-03-09 |
出願番号 | 実願平4-67607 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
Z
(F15B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長屋 陽二郎、北村 英隆 |
特許庁審判長 |
舟木 進 |
特許庁審判官 |
和田 雄二 秋月 均 |
考案の名称 | リリーフセット圧可変式パイロット回路 |