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審決分類 |
審判 全部申し立て F04C 審判 全部申し立て F04C |
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管理番号 | 1039500 |
異議申立番号 | 異議2000-72854 |
総通号数 | 19 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-07-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-07-20 |
確定日 | 2001-01-29 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2602653号「気体圧縮機」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2602653号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 実用新案登録第2602653号の請求項1に係る考案についての出願は、平成5年7月23日に実用新案登録出願され、平成11年11月19日にその考案についての実用新案登録の設定登録がなされ、その後、その実用新案登録について、実用新案登録異議申立人株式会社デンソーより実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年12月18日に訂正請求がされるとともに意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 ア.訂正事項a 実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載について、 「一端開口型のケーシングと、このケーシングの開口端に装着されたフロントヘッドと、上記ケーシング内に配設された圧縮機本体と、上記フロントヘッドの内側に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、上記ケーシングに、吸入室に連通する予備吸入室、この予備吸入室に一端を開口した吸入ポート、上記吐出室に連通する予備吐出室、及びこの予備吐出室に一端を開口した吐出ポートを設けたことを特徴とする気体圧縮機。」とあるのを、 「一端開口型のケーシングと、このケーシングの開口端に装着されたフロントヘッドと、上記ケーシング内に配設された圧縮機本体と、上記フロントヘッドの内部に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、上記ケーシングに、ケーシングの壁内を貫通する低圧ガス連絡路と、この低圧ガス連絡路を介して吸入室に連通する予備吸入室と、上記吐出室に連通する予備吐出室とを設け、上記予備吸入室を密閉するフタ板に、予備吸入室に一端を開口した吸入ポートを、上記予備吐出室を密閉するフタ板に、予備吐出室に一端を開口した吐出ポートをそれぞれ設けたことを特徴とする気体圧縮機。」と訂正する。 イ.訂正事項b 明細書の段落【0012】の記載において、 「・・・上記フロントヘッドの内側に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、上記ケーシングに、吸入室に連通する予備吸入室、この予備吸入室に一端を開口した吸入ポート、上記吐出室に連通する予備吐出室、及びこの予備吐出室に一端を開口した吐出ポートを設けたことを特徴とする。」とあるのを、 「・・・上記フロントヘッドの内部に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、上記ケーシングに、ケーシングの壁内を貫通する低圧ガス連絡路と、この低圧ガス連絡路を介して吸入室に連通する予備吸入室と、上記吐出室に連通する予備吐出室とを設け、上記予備吸入室を密閉するフタ板に、予備吸入室に一端を開口した吸入ポートを、上記予備吐出室を密閉するフタ板に、予備吐出室に一端を開口した吐出ポートをそれぞれ設けたことを特徴とする。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aのうち、吸入室を「フロントヘッドの内部に形成」することは、願書に添付された図面の【図1】に記載され、しかも、訂正前の「フロントヘッドの内側に形成」することの下位概念に該当するものであり、また、「上記ケーシングに、ケーシングの壁内を貫通する低圧ガス連絡路と、この低圧ガス連絡路を介して吸入室に連通する予備吸入室と、上記吐出室に連通する予備吐出室とを設け、上記予備吸入室を密閉するフタ板に、予備吸入室に一端を開口した吸入ポートを、上記予備吐出室を密閉するフタ板に、予備吐出室に一端を開口した吐出ポートをそれぞれ設けたこと」は、願書に添付された明細書の段落【0016】?【0018】に記載され、しかも、ケーシングと予備吸入室及び吸入室との関係、並びに、予備吸入室及び予備吐出室と吸入ポート及び吐出ポートとの関係を、訂正前よりそれぞれ、低圧ガス連絡路、並びに、予備吸入室及び予備吐出室を密閉するフタ板により、更に限定するものである。したがって、上記訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。 また、上記訂正事項bは、訂正事項aに伴う請求項1の記載と考案の詳細な説明の記載との不整合を解消するためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。 そして、上記訂正事項a、bは、いずれも、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.実用新案登録異議の申立てについての判断 (1)申立ての理由の概要 申立人株式会社デンソーは、甲第1号証(特開平4-76284号公報)を提出し、請求項1に係る考案は、上記甲第1号証に記載された考案、もしくは、甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第1項第3号もしくは同法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができないものであるから、請求項1に係る考案についての実用新案登録を取り消すべき旨主張している。 (2)本件考案 本件実用新案登録第2602653号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(上記、2.(1)「訂正の内容」ア.「訂正事項a」参照) (3)刊行物記載の考案 当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物1(甲第1号証)の、 (イ)「本発明は圧縮機、特に自動車用エンジンに取り付けられるカークーラー用圧縮機に関する。」(第1頁左下欄第14行?第15行)、 (ロ)「ハウジング1の内部には固定スクロール18、旋回スクロール19等からなるスクロール圧縮機構Cが内臓され、旋回スクロール19を回転軸2を介して駆動することによって冷媒ガスが圧縮される。このハウジング1の外周には吸入キャビティ3及び吐出キャビティ4が仕切壁12を隔てて互いに隣接させて一体に形成されている。吸入キャビティ3は連通孔5を介して吸入室6に連通し、吐出キャビティ4は連通孔7を介して吐出チャンバ8と連通している。これら吸入キャビティ3及び吐出キャビティ4を囲むようにフランジ壁9が立設され、このフランジ壁9に蓋部材10を複数(図には6個)のボルト11によって締結することによって吸入キャビティ3及び吐出キャビティ4が密閉されるようになっている。蓋部材10には吸入配管が接続される吸入フィッティング13及び吐出配管が接続される吐出フィッティング14が形成されている。」(第2頁左上欄第13行?同頁右上欄第10行)、 (ハ)「圧縮機は、ハウジング1の開口端側にフロントヘッドを有し、吸入室6は、フロントヘッドの内側に形成されている。」(第1図参照。) の記載及び第1?6図の記載からみて、刊行物1には、 「一端開口型のハウジング1と、このハウジング1の開口端側に装着されたフロントヘッドと、上記ハウジング1内に配設された圧縮機構Cと、上記フロントヘッドの内側に形成された吸入室6と、上記ハウジング1の側端内面に設けられた吐出チャンバ8とを具備し、上記圧縮機構Cは吸入室6内の冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出チャンバ8内に吐出する圧縮機において、上記ハウジング1に、ハウジング1の壁内を貫通する連通孔5を設け、この連通孔5を介して吸入室6に連通する吸入キャビティ3と、上記吐出チャンバ8に連通する吐出キャビティ4とを、上記ハウジング1と蓋部材10とに跨って設け、上記吸入キャビティ3及び吐出キャビティ4を密閉する蓋部材10に、上記吸入キャビティ3に一端を開口した吸入フィッティング13、及び、上記吐出キャビティ4に一端を開口した吐出フィッティング14を設けた圧縮機。」(以下、「刊行物1記載の考案」という。)が記載されているものと認められる。 (4)対比 本件考案と刊行物1に記載された考案を対比すると、後者の「ハウジング1」、「圧縮機構C」、「吸入室6」、「吐出チャンバ8」、「吸入キャビティ3」、「吐出キャビティ4」、「吸入フィッティング13」、「吐出フィッティング14」、「冷媒ガス」及び「ハウジング1の壁内を貫通する連通孔5」はそれぞれ、前者の「ケーシング」、「圧縮機本体」、「吸入室」、「吐出室」、「予備吸入室」、「予備吐出室」、「吸入ポート」、「吐出ポート」、「低圧冷媒ガス」及び「ケーシングの壁内を貫通する低圧ガス連絡路」に相当する。また、後者の「圧縮機」は、カークーラー用のものであるから、前者の「気体圧縮機」に相当する。さらに、本件考案の明細書の段落【0020】には、上記刊行物1記載の考案の蓋部材10のように、「予備吸入室30のフタ板36と予備吐出室31のフタ板37とは一体であっても・・・よい。」と記載されているから、後者の「蓋部材10」は、前者の「フタ板」に相当する。 したがって、本件考案と刊行物1に記載された考案とは、 「一端開口型のケーシングと、このケーシングの開口端側に装着されたフロントヘッドと、上記ケーシング内に配設された圧縮機本体と、上記フロントヘッドの内側に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、上記ケーシングに、ケーシングの壁内を貫通する低圧ガス連絡路を設け、この低圧ガス連絡路を介して吸入室に連通する予備吸入室と、上記吐出室に連通する予備吐出室とを設け、上記予備吸入室及び予備吐出室を密閉するフタ板に、予備吸入室に一端を開口した吸入ポート、及び、予備吐出室に一端を開口した吐出ポートを設けた、気体圧縮機。」で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点1〉フロントヘッドの装着位置が、前者では、ケーシングの開口端であるのに対して、後者では、ケーシングの開口端であるのか否かが不明である点。 〈相違点2〉吸入室の形成位置が、前者では、フロントヘッドの内部であるのに対して、後者では、フロントヘッドの内側ではあるが、内部かどうか明らかではない点。 〈相違点3〉予備吸入室及び予備吐出室が、前者では、フタ板によって密閉されるケーシングに設けられているのに対して、後者では、ケーシングだけではなく、ケーシング及びフタ板に跨って設けられている点。 なお、実用新案登録権者は、「吸入室と予備吸入室とを連通させるケーシング壁内の低圧ガス連絡路(32)は、・・・予備吸入室のマフラー作用を強めて」いるのに対して、刊行物1記載の考案における「連通孔(5)は、吸入室(6)のすぐ外周にある吸入キャビティ(3)とを最短距離でつないでおり、吸入キャビティ(3)のマフラー作用を強める作用はありません。」と意見書中で主張している。しかしながら、刊行物1記載の「連通孔5」は、上述のように、ハウジング1の壁内を貫通し、吸入キャビティ3を吸入室に連通させるものであるから、本件考案の「低圧ガス連絡路」に相当するものであり、また、「マフラー作用を強める作用」に関する実用新案登録権者の主張は、請求項1の記載に基づかないものである。したがって、「低圧ガス連絡路」の点で、本件考案と刊行物1記載の考案との間に相違があるとは認められない。 (5)当審の判断 上記相違点3につき検討するに、本件考案では、予備吸入室及び予備吐出室を、いずれもケーシングだけに形成することによって、「フタ板には、吸入ポート、吐出ポートの単純な形状の穴のみが設けられますから、フタ板の形状が単純で、その製造が容易」であるという、意見書記載の優れた作用効果を奏しているものと認められる。 したがって、残余の相違点1、2について検討するまでもなく、本件考案は、刊行物1に記載された考案である、とすることができないばかりでなく、刊行物1記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである、とすることもできない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 気体圧縮機 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 一端開口型のケーシングと、このケーシングの開口端に装着されたフロントヘッドと、上記ケーシング内に配設された圧縮機本体と、上記フロントヘッドの内部に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、 上記ケーシングに、ケーシングの壁内を貫通する低圧ガス連絡路と、この低圧ガス連絡路を介して吸入室に連通する予備吸入室と、上記吐出室に連通する予備吐出室とを設け、 上記予備吸入室を密閉するフタ板に、予備吸入室に一端を開口した吸入ポートを、上記予備吐出室を密閉するフタ板に、予備吐出室に一端を開口した吐出ポートをそれぞれ設けた ことを特徴とする気体圧縮機。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この考案は車載のエアコンシステム等に適用される気体圧縮機に関し、特にエバポレータから低圧冷媒ガスを回収するための低圧ガスホースや、コンデンサに高圧冷媒ガスを供給するための高圧ガスホースでの圧力損失による冷房性能の著しい低下を防止でき、並びに冷媒ガスの圧力脈動を減少させることができるようにしたものである。 【0002】 【従来の技術】 従来より、この種の気体圧縮機は図3に示すような一端開口型のケーシング1を有し、ケーシング1の開口端にはフロントヘッド2が装着されており、ケーシング1内には圧縮機本体3が配設され、フロントヘッド2の内側には吸入室4が形成され、ケーシング1の側端内面には油貯留室と兼用の吐出室5が設けられている。 【0003】 フロントヘッド2には吸入路6が形成されており、吸入路6の一端は吸入口6aとして設けられ、かつエアコンシステムのエバポレータ(図示省略)から低圧冷媒ガスを回収するための低圧ガスホース7が接続されている一方、吸入路6の他端6bは吸入室4に開口されている。 【0004】 ケーシング1には吐出路8が形成されており、吐出路8の一端8aは吐出口として設けられ、かつ同システムのコンデンサ(図示省略)に高圧冷媒ガスを供給するための高圧ガスホース9が接続されている一方、吐出路8の他端8bは吐出室5に開口されている。 【0005】 なお、上記圧縮機本体3にはフロントサイドブロック10、シリンダ11及びリアサイドブロック12により図4に示すような断面楕円状のシリンダ室13が形成され、このシリンダ室13には断面円形状のロータ14が回転可能に配設されており、ロータ14の軸心(ロー夕軸)15はフロントサイドブロック10及びリアサイドブロック12の軸受部16,17により支持されている。 【0006】 ロータ14には放射状にベーン溝18が形成され、このベーン溝18内にはベーン19が摺動自在に配設されており、ベーン19はロータ14の回転による遠心力とベーン溝18内に供給される潤滑油の背圧によりシリンダ11の内周面に向かって付勢されるように設けられている。 【0007】 このような圧縮機本体3は、ロータ14が回転すると、実線矢印で示すように吸入室4内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮し高圧冷媒ガスとして破線矢印で示すように吐出室5内に吐出する。 【0008】 この際、吸入室5内の低圧冷媒ガスはエバポレータ(図示省略)から低圧ガスホース7及び吸入路6を介して導入され、また高圧冷媒ガスが圧縮機本体3から吐出室5内に吐出する際は油分離器20において高圧冷媒ガスから潤滑油が分離され、さらに潤滑油が分離された高圧冷媒ガスは吐出路8から高圧ガスホース9を経てコンデンサ(図示省略)に供給される一方、分離した潤滑油は吐出室5に貯留されると共に高圧冷媒ガスの圧力(吐出圧)により油供給路21を介し軸受部16,17や、軸受部16,17からベーン溝18内に圧送される。 【0009】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、このような従来の気体圧縮機にあっては、上記の如く吸入路6はコンプレッサ本体の前部に位置するフロントヘッド2に、吐出路8はケーシング1の後部に形成し、また吸入路6の一端は吸入口6aとし、吐出路8の一端は吐出口8aとして設けたため、吸入口6aの位置はフロントヘッド2に、吐出口8aの位置はケーシング1の後部に限定されるので、エアコンシステムの種類によってはエバポレータと吸入ポート6aまたはコンデンサと吐出ポート8aを接続するには長くかつ曲げの多い低圧ガスホース7または高圧ガスホース9が必要となり、このため低圧ガスホース7や高圧ガスホース9での圧力損失が増大し、冷房性能が著しく低下する。 【0010】 しかも、吸入室4と吐出室5は低圧冷媒ガスや高圧冷媒ガスの圧力脈動を抑制するのが役割の一つであるが、従来の吸入室4や吐出室5だけでは脈動を十分に抑制することができないという不具合もある。 【0011】 この考案は上述の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、低圧ガスホースや高圧ガスホースでの圧力損失による冷房性能の著しい低下を防止でき、しかも冷媒ガスの圧力脈動を減少させるのに好適な気体圧縮機を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、この発明は、一端開口型のケーシングと、このケーシングの開口端に装着されたフロントヘッドと、上記ケーシング内に配設された圧縮機本体と、上記フロントヘッドの内部に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、上記ケーシングに、ケーシングの壁内を貫通する低圧ガス連絡路と、この低圧ガス連絡路を介して吸入室に連通する予備吸入室と、上記吐出室に連通する予備吐出室とを設け、上記予備吸入室を密閉するフタ板に、予備吸入室に一端を開口した吸入ポートを、上記予備吐出室を密閉するフタ板に、予備吐出室に一端を開口した吐出ポートをそれぞれ設けたことを特徴とする。 【0013】 【作用】 この考案によれば、吸入ポートと吐出ポートの両者はエアコンシステムのエバポレータまたはコンデンサまでの長さやルートを自由に選択できる広いケーシング上に配置され、また、予備吸入室及び予備吐出室はともにマフラーとしての役割を果たし、予備吸入室は吸入室の前段で低圧冷媒ガスの圧力脈動を抑制し、予備吐出室は吐出室の後段で高圧冷媒ガスの圧力脈動を抑制する。 【0014】 【実施例】 以下、この考案に係る気体圧縮機の一実施例について図1及び図2を基に詳細に説明する。 【0015】 なお、気体圧縮機の基本的な構成、例えば一端開口型のケーシング1を有し、ケーシング1の開口端にはフロントヘッド2が装着されており、ケーシング1内には圧縮機本体3が配設されていること、フロントヘッド2の内側には吸入室4が形成されており、ケーシング1の側端内面には吐出室5が設けられていること、並びに、圧縮機本体3は吸入室4内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室5内に吐出すること等は前記の従来の技術の気体圧縮機と同様であるので、図3に示す部材と同一部材には図3と同一符号を付し、詳細説明は省略する。 【0016】 図1に示す気体圧縮機は予備吸入室30、予備吐出室31、低圧ガス連絡路32並びに高圧ガス連絡路33を有し、予備吸入室30と予備吐出室31はともにケーシング1の外周面に広溝状凹部として形成されており(図2参照)、低圧ガス連絡路32の一端は予備吸入室30に、その他端は吸入路6に開口されている一方、高圧ガス連絡路33の一端は予備吐出室31に、その他端は吐出室5に俳口されている。 【0017】 即ち、予備吸入室30は低圧ガス連絡路32及び吸入路6を介し吸入室4に連通し、また予備吐出室31は高圧ガス連絡路33を介し吐出室5に連通するように設けられている。 【0018】 予備吸入室30はフタ板36により密閉され、また予備吐出室31もフタ板37により密閉されており、その予備吸入室30を密閉するためのフタ板36には吸入ポート34が一体に設けられ、また予備吐出室31を密閉するためのフタ板37には吐出ポート35が一体に設けられている。 【0019】 吸入ポート34の一端は予備吸入室30に開口され、その他端にはエアコンシステムのエバポレータ(図示省略)から低圧冷媒ガスを回収するための低圧ガスホース7が接続されている一方、吐出ポート35の一端は予備吐出室31に開口され、その他端には同システムのコンデンサ(図示省略)に高圧冷媒ガスを供給するための高圧ガスホース9が接続されている。 【0020】 なお、上記のような予備吸入室30のフタ板36と予備吐出室31のフタ板37とは一体であっても二体に分かれていてもよい。 【0021】 次に、上記の如く構成された気体圧縮機の動作について図1を基に説明する。 この気体圧縮機によれば、圧縮機本体3は、実線矢印で示すように吸入室4内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮し高圧冷媒ガスとして破線矢印で示すように吐出室5内に吐出する。 【0022】 この際、吸入室4内の低圧冷媒ガスはエバポレータ(図示省略)から低圧ガスホース7、吸入ポート34、予備吸入室30、低圧ガス連絡路32、吸入路6を経て導入され、また吐出室5内の高圧冷媒ガスは高圧ガス連絡路33、予備吐出室31、吐出ポート35、高圧ガスホース9を経てコンデンサ(図示省略)へ供給される。 【0023】 このようにエバポレータから吸入室4内に低圧冷媒ガスが導入され、また吐出室5内からコンデンサ側に高圧冷媒ガスが供給されるとき、予備吸入室30及び予備吐出室31はともにマフラーとしての役割を果たし、予備吸入室30は吸入室4の前段で低圧冷媒ガスの圧力脈動を抑制する一方、予備吐出室31は吐出室5の後段で高圧冷媒ガスの圧力脈動を抑制する。 【0024】 したがって、上記のような実施例の気体圧縮機によれば、ケーシングに予備吸入室、予備吐出室、吸入ポート及び吐出ポートを設け、予備吸入室は吸入室に、予備吐出室は吐出室に連通させ、吸入ポートの一端は予備吸入室に、吐出ポートの一端は予備吐出室に開口したため、吸入ポートと吐出ポートの両者はエアコンシステムのエバポレータまたはコンデンサまでの長さやルートを自由に選択できる広いケーシング上に配置されるので、短くかつ曲げの少ない低圧ガスホースまたは高圧ガスホースでエバポレータと吸入ポートまたはコンデンサと吐出ポートを接続することができ、これにより低圧ガスホースや高圧ガスホースでの圧力損失が減少し、冷房性能が向上すると共に、広溝状凹部(予備吸入室及び予備吐出室)の寸法範囲内で種々の位置の吸入ポート及び吐出ポートを付けたフタ板を用意するだけで、種々寸法のエアコンシステムに対応した気体圧縮機を制作することができる可能性もある。 【0025】 また、この気体圧縮機によると、予備吸入室及び予備吐出室はともにマフラーとしての役割を果たし、予備吸入室は吸入室の前段で低圧冷媒ガスの圧力脈動を抑制し、予備吐出室は吐出室の後段で高圧冷媒ガスの圧力脈動を抑制するので、冷媒ガスの圧力脈動が小さくなる。 【0026】 なお、実施例では予備吸入室及び予備吐出室をケーシング外周面に設けたが、ケーシング側端面側に設けてもよい。 【0027】 【考案の効果】 この考案に係る気体圧縮機にあっては、上記の如くケーシングに、吸入室に連通する予備吸入室、予備吸入室に一端を開口した吸入ポート、吐出室に連通する予備吐出室、及び予備吐出室に一端を開口した吐出ポートを設けたため、吸入ポートと吐出ポートの両者はエアコンシステムのエバポレー夕またはコンデンサまでの長さやルートを自由に選択できる広いケーシング上に配置されるので、短くかつ曲げの少ない低圧ガスホースまたは高圧ガスホースでエバポレータと吸入ポートまたはコンデンサと吐出ポートを接続することができ、これにより低圧ガスホースや高圧ガスホースでの圧力損失が減少し、冷房性能が向上する。 【0028】 しかも、この考案によれば、予備吸入室及び予備吐出室はともにマフラーとしての役割を果たし、予備吸入室は吸入室の前段で低圧冷媒ガスの圧力脈動を抑制し、予備吐出室は吐出室の後段で高圧冷媒ガスの圧力脈動を抑制するので、冷媒ガスの圧力脈動が小さくなるという効果も有する。 【図面の簡単な説明】 【図1】 この考案に係る気体圧縮機の断面図。 【図2】 図1に示すA-A矢視図。 【図3】 従来の気体圧縮機の断面図。 【図4】 図3に示すIV-IV線断面図。 【符号の説明】 1 ケーシング 2 フロントヘッド 3 圧縮機本体 4 吸入室 5 吐出室 30 予備吸入室 31 予備吐出室 34 吸入ポート 35 吐出ポート |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 実用新案登録第2602653号考案の明細書中、 1.実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載について、 「一端開口型のケーシングと、このケーシングの開口端に装着されたフロントヘッドと、上記ケーシング内に配設された圧縮機本体と、上記フロントヘッドの内側に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、上記ケーシングに、吸入室に連通する予備吸入室、この予備吸入室に一端を開口した吸入ポート、上記吐出室に連通する予備吐出室、及びこの予備吐出室に一端を開口した吐出ポートを設けたことを特徴とする気体圧縮機。」とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「一端開口型のケーシングと、このケーシングの開口端に装着されたフロントヘッドと、上記ケーシング内に配設された圧縮機本体と、上記フロントヘッドの内部に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、上記ケーシングに、ケーシングの壁内を貫通する低圧ガス連絡路と、この低圧ガス連絡路を介して吸入室に連通する予備吸入室と、上記吐出室に連通する予備吐出室とを設け、上記予備吸入室を密閉するフタ板に、予備吸入室に一端を開口した吸入ポートを、上記予備吐出室を密閉するフタ板に、予備吐出室に一端を開口した吐出ポートをそれぞれ設けたことを特徴とする気体圧縮機。」と訂正する。 2.明細書の段落【0012】の記載において、 「・・・上記フロントヘッドの内側に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、上記ケーシングに、吸入室に連通する予備吸入室、この予備吸入室に一端を開口した吸入ポート、上記吐出室に連通する予備吐出室、及びこの予備吐出室に一端を開口した吐出ポートを設けたことを特徴とする。」とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として、「・・・上記フロントヘッドの内部に形成された吸入室と、上記ケーシングの側端内面に設けられた吐出室とを具備し、上記圧縮機本体は吸入室内の低圧冷媒ガスを吸い込みかつ圧縮して吐出室内に吐出する気体圧縮機において、上記ケーシングに、ケーシングの壁内を貫通する低圧ガス連絡路と、この低圧ガス連絡路を介して吸入室に連通する予備吸入室と、上記吐出室に連通する予備吐出室とを設け、上記予備吸入室を密閉するフタ板に、予備吸入室に一端を開口した吸入ポートを、上記予備吐出室を密閉するフタ板に、予備吐出室に一端を開口した吐出ポートをそれぞれ設けたことを特徴とする。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-01-09 |
出願番号 | 実願平5-40432 |
審決分類 |
U
1
651・
113-
YA
(F04C)
U 1 651・ 121- YA (F04C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田良島 潔、藤井 眞吾 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
清水 信行 清田 栄章 |
登録日 | 1999-11-19 |
登録番号 | 実用新案登録第2602653号(U2602653) |
権利者 |
セイコー精機株式会社 千葉県習志野市屋敷4丁目3番1号 |
考案の名称 | 気体圧縮機 |
代理人 | 和田 成則 |
代理人 | 和田 成則 |
代理人 | 矢作 和行 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |