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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16J
管理番号 1058326
審判番号 審判1999-6362  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-04-15 
確定日 2002-04-17 
事件の表示 平成4年実用新案登録願第1346号「ロータリエンジン用シール装置」拒絶の査定に対する審判事件[平成5年8月3日出願公開、実開平5-59051号]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯
(1)本願は、平成4年1月17日の実用新案登録出願であって、平成11年3月8日に拒絶をすべき旨の査定がなされ、その査定の謄本の送達があった日(発送日:平成11年3月16日)から30日以内である平成11年4月15日に、その査定を不服として審判請求されたものである。
(2)そして、当審において、平成13年9月13日に審判請求人に対して、拒絶の理由を期間を指定して通知し、意見書を提出する機会を与えたが該期間内に何らの応答がなかった。

2.本願考案
本願の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という。)は、平成11年5月17日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「エンジンのケーシングを構成する筒状のロータハウジング(6)と該ロータハウジング(6)の開口部を閉塞するサイドハウジング(9)との間に配設され、端部が接合されて連続した環状をなす弾性部材(2)と、該弾性部材(2)の内周面および外周面に形成された耐熱層(3)とを備えるロータリエンジン用シール装置において、前記弾性部材(2)の両接合面は接着層(4)のみを介して接合されてなることを特徴とするロータリエンジン用シール装置。」

3.当審において通知した拒絶の理由
当審において通知した拒絶の理由の概要は、次のようなものである。
「本願考案は、本願の出願より前に頒布された刊行物である実願昭58-26926号(実開昭59-131901号)の願書に添付された明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶の査定をすべきものである。」

4.引用例に記載された考案
引用例には、その記載全体からみて、次のような考案(以下、「引用考案」という。)が記載されていると認めることができる。
「ロータリピストンエンジン(エンジン)のケーシングを構成する多円弧状の内面を有するローターハウジング4(筒状のロータハウジング(6))と該ローターハウジング4(ロータハウジング(6))の開口部を閉塞するサイドハウジング5(サイドハウジング(9))との間に配設され、端部が接合されて連続した環状をなすゴム製の帯状主体16(弾性部材(2))と、該帯状主体16(弾性部材(2))の作動室側の面(内周面)および冷却液通路側の面(外周面)に形成された耐熱層18,17(耐熱層(3))とを備えるロータリピストンエンジンのケーシングシール装置(ロータリエンジン用シール装置)において、前記帯状主体16(弾性部材(2))の両接合面は接着剤21(接着層(4))と一層の耐熱層17を介して接合されてなるロータリピストンエンジンのケーシングシール装置(ロータリエンジン用シール装置)。」

5.本願考案と引用考案の対比及び判断
本願考案と引用考案とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりと認めることができる。
<一致点>
エンジンのケーシングを構成する筒状のロータハウジングと該ロータハウジングの開口部を閉塞するサイドハウジングとの間に配設され、端部が接合されて連続した環状をなす弾性部材と、該弾性部材の内周面および外周面に形成された耐熱層とを備えるロータリエンジン用シール装置において、前記弾性部材の両接合面は接着層を介して接合されてなるロータリエンジン用シール装置。
<相違点>
弾性部材の端部の接合態様について、本願考案では、「弾性部材(2)の両接合面は接着層(4)のみを介して接合されてなる」としているのに対し、引用考案では、「帯状主体16(弾性部材(2))の両接合面は接着剤21(接着層(4))と一層の耐熱層17を介して接合されてなる」としている点。
次いで、この相違点について検討する。
<相違点の検討>
引用考案において、残された一層の耐熱層17の機能が明白であり(接合部の剛性の維持)、また、引用例の記載によると、耐熱層を除去すると、ゴム製の帯状主体16(弾性部材(2))の占める割合が大きく、接合部においても該主体の弾力が発揮され、長期間良好なシール効果を発揮することも窺知できる(第6頁第19行?第7頁第4行参照)。
また、ゴム製の弾性体の接着において、接着面に接着剤との親和性の悪い材料がある場合、それを取り除くことは、慣用されていることである。
さらに、引用例において、残された一層の耐熱層17を取り除くことも示唆されている。ただ、残された一層の耐熱層17を取り除くと、作業性の面で不利な点がある旨記載されている。
しかしながら、このような不利な点は、シール性を阻害するものでなく、むしろ、シール性を向上することが引用例に示唆されていることは、前示のとおりであるので、これをもって、この技術的事項を適用できない特段の事情があるとすることができない。
してみると、相違点に係る本願考案の構成要件は、引用考案の実施に際し、作業性の不利を享受しながら、接着性やシール性の向上を期待して当業者が適宜想到することができたものというべきである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願考案は、引用考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶の査定をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-01-11 
結審通知日 2002-01-25 
審決日 2002-02-27 
出願番号 実願平4-1346 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (F16J)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 柴沼 雅樹前田 幸雄  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 西川 恵雄
氏原 康宏
考案の名称 ロータリエンジン用シール装置  
代理人 高塚 一郎  

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