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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B65D |
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管理番号 | 1067651 |
審判番号 | 無効2001-35308 |
総通号数 | 36 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2002-12-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-07-11 |
確定日 | 2002-10-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2054523号「樹脂製収納箱の移動車取付構造」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成13年12月10日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成13年(行ケ)第578号平成14年 4月 8日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯の概要 本件実用新案登録第2054523号は、平成2年8月20日に実用新案登録出願され、平成6年6月29日に出願公告がなされ、平成7年3月6日に実用新案登録の設定登録がなされたところ、平成13年7月11日付けで請求人天馬株式会社より無効審判の請求がなされ、平成13年12月10日付けで「実用新案登録第2054523号の請求項1,2に係る考案についての実用新案登録を無効とする。」旨の審決がなされたところ、この審決を不服として被請求人を原告として東京高等裁判所に出訴(平成13年(行ケ)第578号)がなされ、別途、被請求人より訂正審判(訂正2001-39231号)の請求がなされ、平成14年2月19日付けで「実用新案登録第2054523号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」旨の審決(確定登録;平成14年3月26日)がなされたことによって、平成14年4月8日に東京高等裁判所において、概略「訂正審決により本件明細書の実用新案登録請求の範囲が訂正されたことは当事者間に争いがなく、本件訂正によって、本件明細書の実用新案登録請求の範囲は減縮されたことが明らかである。そうすると、本件審決が本件考案の要旨を訂正前の本件明細書の実用新案登録請求の範囲記載のとおりと認定したことは、結果的に本件考案の要旨の認定を誤ったこととなり、この誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件審決は取消しを免れない。」との理由で、審決取消の判決がなされ、審理をやり直すように当審に差し戻されたものである。 よって、当審において審理をやり直し、平成14年8月30日の口頭審理において、上記訂正審判により訂正された本件実用新案登録第2054523号について請求人の無効理由の主張を確認(請求人は不出頭、平成14年7月19日付け口頭審理陳述要領書を陳述)するとともに、被請求人の主張も確認して、審理を終結したものである。 2.本件考案1,2 上記した訂正審判(訂正2001-39231号)により、訂正が確定したので、本件実用新案登録第2054523号の請求項1,2に係る考案(以下、各々「本件考案1」、「本件考案2」という。)は、訂正した実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。 「【請求項1】上面開口状の容器体と前記上面を覆う蓋体とからなる樹脂製収納箱の前記容器体下部に、収納箱を移動させるための移動車が設けられた構造において、前記移動車は、一体成形された複数の車輪と該複数の車輪を連結する車軸とからなり、前記容器体下部には切り欠きを有する凸部が突設され、前記切り欠きは、前記車軸より大径状の円形部と、一対の相対向する膨出部の間に形成され、前記円形部を部分的に前記凸部の周縁に開放する間隙部とを有し、前記円形部には前記車軸が回転自在に嵌合されているとともに、前記車軸は最も内側の車輪の内側面より突出する突出部を有し、該突出部は容器体下部に形成された軸受部に受容されていることを特徴とする樹脂製収納箱の移動車取付構造。 【請求項2】前記双方の膨出部の間隙部と前記凸部の周縁との間に切り欠き溝が形成され、前記円形部が前記間隙部と前記切り欠き溝とを介して前記凸部の周縁に開放されたことを特徴とする請求項1記載の樹脂製収納箱の移動車取付構造。」 3.請求人及び被請求人の主張の概要 請求人の主張は、概略、以下のとおりである。 「本件実用新案登録の請求項1及び請求項2に係る考案は、甲第1号証?甲第4号証、甲第6号証?甲第8号証に示す内容に基づいて、きわめて容易に考案し得たものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、旧実用新案法(昭和34年法)第37条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである。」 〈証拠方法〉 甲第1号証;KIKUYA CO.LTD.、平成2年7月発行、’90BEST SELLECTION FALL&WINTER vol.11、表紙、第21頁、裏表紙 甲第2号証;意匠登録第340290号公報 甲第3号証;意匠登録第788275号公報 甲第4号証の1?4;株式会社バンダイ発売のおもちゃ「ハイコミカルモデル、超時空要塞マクロス:スーパーバルキリー(商品名)」の写真及び遊び方の説明図表裏 甲第5号証;角川書店、昭和60年4月1日発行、Newtype(月刊ニュータイプ、創刊号)、表紙、目次、第135頁、裏表紙 甲第6号証;江崎グリコ株式会社の証明書 甲第7号証;実公昭63-27750号公報 甲第8号証;実公昭35-28014号公報 甲第9号証;実公昭51-29109号公報 資料;本件実用新案登録の公告公報 被請求人の主張は、概略、以下のとおりである。 「本件考案(訂正考案)は、甲第1号証?甲第9号証に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案法第3条第2項に該当するものではない。よって、本件審判の請求は成り立たないとの審決を求める。」 4.甲第1号証?甲第9号証の記載事項 甲第1号証(KIKUYA CO.LTD.、平成2年7月発行、’90BEST SELLECTION FALL&WINTER vol.11、表紙、第21頁、裏表紙)の第21頁の「平和製コロ」の写真(左下の2枚の写真)からは、本件考案1の用語に倣って表現すると、 「上面開口状の容器体と前記上面を覆う蓋体とからなる樹脂製収納箱の前記容器体下部に、収納箱を移動させるための移動車が設けられた構造の樹脂製収納箱の移動車取付構造。」が見てとれる。 甲第2号証(意匠登録第340290号公報)からは、上面開口状の容器体と前記上面を覆う蓋体とからなる整理箱(収納容器)の下部に移動車が設けられていることが見てとれる。 甲第3号証(意匠登録第788275号公報)からは、衣類整理箱(収納容器)の下部に複数の車輪と該複数の車輪を連結する車軸とからなる移動車が設けられていることが見てとれる。 甲第4号証(株式会社バンダイ発売のおもちゃ「ハイコミカルモデル、超時空要塞マクロス:スーパーバルキリー(商品名)」の写真及び遊び方の説明図表裏)からは、本件考案1の用語に倣って表現すると、スーパーバルキリー(商品名)に切り欠きを有する凸部を突設し、前記切り欠きは車軸より大径状の円形部と、一対の相対向する膨出部の間に形成され、前記円形部を部分的に前記凸部の周縁に開放する間隙部とを有し、複数の車輪と複数の車輪を連結する車軸とからなる移動車を前記切り欠きの前記円形部に移動車の車軸を回転自在となるように嵌合させていることが見てとれる。 甲第5号証(角川書店、昭和60年4月1日発行、Newtype(月刊ニュータイプ、創刊号)、表紙、目次、第135頁、裏表紙)からは、刊行物4の写真のスーパーバルキリー(商品名)が、本件実用新案登録の出願前に販売されていたものであることが認められる。 甲第6号証(江崎グリコ株式会社の証明書)からは、江崎グリコ株式会社の商品菓子「グリコ」に封入されたプラスチック製のおもちゃである「ミキサー車」、「乗物」が、それぞれ昭和61年、昭和58年に公知であり、これらのおもちゃは、合成樹脂製のおもちゃ本体の下部に切り欠きを有する凸部を形成し、前記切り欠きを有する凸部にそれぞれ形成した車軸より大径の円形部に合成樹脂製の複数の車輪を連結した車軸を回転自在に嵌合した構造を有するものであることが認められる。 甲第7号証(実公昭63-27750号公報)には、走行ブロック玩具に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 「さらに、第2b図に示す如く、動力装置20を内蔵したブロック本体10に、駆動部を有しない前輪33の取付け部16を設け、1つの走行ブロック体に前輪33と駆動車輪21をいっしょに取り付けられるようにすることもできる。」(第2頁4欄23行?27行) また、第2b図からは、前輪33の取付け部16は、車軸より大径状の円形部と、前記円形部を部分的に開放する間隙部とを有し、前輪33の車軸を前記円形部に回転自在となるように嵌合させていることが見てとれる。 甲第8号証(実公昭35-28014号公報)には、軟質合成樹脂製軸承に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 「1は台版、2は支持子で車軸孔3を透設し、通常此れから下を割切り、此の割切面に凹孔4及此れに嵌合する突部5をそれぞれ設ける。凹孔4は蟻溝とし、突部5は此れに適応したものとする。以上を以て本実用新案軸承とし、軟質合成樹脂製とする。・・・中略・・・ 本実用新案は主として玩具用走行車の車軸に使用するものであって、第4図図示の様に台版1を車台8に溶着し、車軸7,7aを車軸孔3に挿込めば、車軸7,7aを支持する。」(第1頁左欄7行?右欄2行) 甲第9号証(実公昭51-29109号公報)には、模型、玩具車輪の枢支構造に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 「この考案は車輪軸1の径よりも稍々狭い切欠2の上方に車輪軸1が自由にはまる広さの切欠3を形成した左右一対の可撓性プラスチック軸受片4,4’を玩具本体6に一体に吊設し、該軸受片4,4’の外側面には前記切欠3の外面の一部を塞ぐ突片5を隆起し、かつ前記玩具本体6には金型が入る孔7を派生した模型、玩具車輪の枢支構造である。」(第1頁1欄25行?2欄6行) 5.対比・判断 【本件考案1について】 甲第1号証からは、上記技術事項が見てとれるものであるから、本件考案1と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、両者は、「上面開口状の容器体と前記上面を覆う蓋体とからなる樹脂製収納箱の前記容器体下部に、収納箱を移動させるための移動車が設けられた構造の樹脂製収納箱の移動車取付構造。」で一致しており、下記の点で相違している。 相違点;本件考案1では、(A)移動車は、一体成形された複数の車輪と該複数の車輪を連結する車軸とからなり、容器体下部には切り欠きを有する凸部が突設され、前記切り欠きは、前記車軸より大径状の円形部と、一対の相対向する膨出部の間に形成され、前記円形部を部分的に前記凸部の周縁に開放する間隙部とを有し、前記円形部には前記車軸が回転自在に嵌合されているとともに、(B)前記車軸は最も内側の車輪の内側面より突出する突出部を有し、該突出部は容器体下部に形成された軸受部に受容されているものであるのに対して、甲第1号証に記載された考案では、移動車の具体的構成及び移動車の容器体下部への取付構造が不明である点。 上記相違点について検討するに、甲第2号証?甲第9号証からは、上記摘記したとおりの車輪及び車軸の取付構造が記載又は見てとれるものであるから、当業者であれば、甲第2号証?甲第9号証に記載された技術事項から、本件考案1の上記相違点に係る構成のうち(A)については、きわめて容易に想到することができるものと認められる。 しかしながら、本件考案1の上記相違点に係る構成のうち(B)については、甲第2号証?甲第9号証には記載されておらず、また、本件の出願前当業者において既に知られていた技術事項であるとも認めることはできない。 そうすると、甲第1号証に記載された考案に甲第2号証?甲第9号証に記載された技術事項を総合したとしても、本件考案1の上記相違点に係る構成のうち(B)については、当業者が考案をするための契機がないものであるから、当業者がきわめて容易に想到することができるものとは認めることができない。 したがって、本件考案1は、甲第1号証?甲第9号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認めることができない。 【本件考案2について】 本件考案2は、本件考案1の技術事項を引用するとともに、更に、「前記双方の膨出部の間隙部と前記凸部の周縁との間に切り欠き溝が形成され、前記円形部が前記間隙部と前記切り欠き溝とを介して前記凸部の周縁に開放されたこと」と構成を限定したものである。 そして、本件考案1が、甲第1号証?甲第9号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認めることができないことは、上記したとおりである。 したがって、本件考案2も、甲第1号証?甲第9号証に記載された考案に基づいて当業者が容易に考案をすることができたものとは認めることができない。 6.まとめ 以上のとおりであるから、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、本件考案1,2(本件の請求項1,2に係る考案)の実用新案登録を無効とすることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-11-21 |
結審通知日 | 2001-11-27 |
審決日 | 2001-12-10 |
出願番号 | 実願平2-86943 |
審決分類 |
U
1
112・
121-
Y
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新海 栄、粟津 憲一 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
山崎 豊 杉原 進 |
登録日 | 1995-03-06 |
登録番号 | 実用新案登録第2054523号(U2054523) |
考案の名称 | 樹脂製収納箱の移動車取付構造 |
代理人 | 畑中 芳実 |
代理人 | 福迫 眞一 |
代理人 | 日比谷 征彦 |