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審決分類 審判 全部申し立て   B63B
管理番号 1004022
異議申立番号 異議1999-71025  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-19 
確定日 1999-08-30 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2581184号「ダブルハルタンカーのアクセストランク」の請求項1ないし7に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2581184号の請求項1ないし7に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件登録第2581184号実用新案(請求項の数7)は、平成4年8月27日に出願され、平成10年7月3日に設定登録がなされ、その後、日本鋼管株式会社より全請求項について登録異議の申立がされた。
2.登録異議申立についての判断
(1)本件請求項1ないし7に係る考案
本件請求項1ないし7に係る考案は、それぞれ、登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 ダブルハルタンカーにおいて、
その荷物油タンクの下側の二重底内バラストタンクへ出入りする為に、二重底内バラストタンクに連通し且つ二重底上面から上甲板まで延びるアクセストランクを設け、
前記アクセストランクを、船体中心線の近傍位置において荷物油タンクを仕切る横隔壁の前側近傍位置と後側近傍位置との少なくとも1つに、横隔壁に沿って二重底上面から上甲板まで鉛直方向に延びるように配設するとともに、前記アクセストランクの後端壁又は前端壁をこのアクセストランクに臨む横隔壁部分で構成し、
前記アクセストランクを、船体中心線の左右両側の二重底内バラストタンクに共通に連通するように、船体中心線の左右両側に延ばした構造に構成し、
前記アクセストランク内に、少なくとも、昇降用の梯子を配設したことを特徴とするダブルハルタンカーのアクセストランク。
【請求項2】タブルハルタンカーにおいて、
その荷物油タンクの下側の二重底内パラストタンクへ出入りする為に、二重底内バラストタンクに連通し且つ二重底上面から上甲板まで延びるアクセストランクを設け、
前記アクセストランクを、船体中心線の近傍位置において荷物油タンクを仕切る横隔壁の前側近傍位置と後側近傍位置との少なくとも1つに、横隔壁に沿って二重底上面から上甲板まで鉛直方向に延びるように配設するとともに、このアクセストランクの左右何れかの側壁が船体中心上に位置するように船体中心線の片側に配設し、
前記アクセストランクの後端壁又は前端壁を、このアクセストランクに臨む横隔壁部分で構成し、
前記アクセストランクに対して、平面視において船体中心線を挟んで位置し、二重底上面から所定高さ延び且つアクセストランクが連通する二重底内バラストタンクと反対舷側の二重底内バラストタンクに連通する補助アクセストランクを設け、
前記アクセストランクと補助アクセストランクとを連通させ、
前記アクセストランク内に、少なくとも、昇降用の梯子を配設したことを特徴とするダブルハルタンカーのアクセストランク。
【請求項3】 ダブルハルタンカーにおいて、
その荷物油タンクの下側の二重底内バラストタンクへ出入りする為に、二重底内バラストタンクに連通し且つ二重底上面から上甲板まで延びるアクセストタンクを設け、
前記アクセストランクを、船体中心線の近傍位置において荷物油タンクを仕切る横隔壁の前側近傍位置と後側近傍位置との少なくとも1つに、横隔壁に沿って二重底上面から上甲板まで鉛直方向に延びるように配設するとともに、このアクセストランクの左右何れかの側壁が船体中心上に位置するように船体中心線の片側に配設するとともに、前記アクセストランクの後端壁又は前端壁をこのアクセストランクに臨む横隔壁部分で構成し、
前記アクセストランクに対して、平面視において船体横隔壁を挟んで位置し、二重底上面から所定高さ延び且つ前記アクセストランクが連通する二重底内バラストタンクと前後反対側の二重底内バラストタンクに連通する補助アクセストタンクを設け、
前記アクセストランクと補助アクセストランク間を仕切る横隔壁に水蜜マンホールを設け、
前記アクセストランク内に、少なくとも、昇降用の梯子を配設したことを特徴とするダブルハルタンカーのアクセストランク。
【請求項4】 タブルハルタンカーにおいて、
その荷物油タンクの下側の二重底内バラストタンクへ出入りする為に、左右両舷の二重底内バラストタンクに夫々連通し且つ二重底上面から上甲板まで延びる左右1対のアクセストランクを設け、
前記左右1対のアクセストランクを、船体中心線の近傍位置において荷物油タンクを仕切る横隔壁の前側近傍位置と後側近傍位置との少なくとも1つに、横隔壁に沿って二重底上面から上甲板まで鉛直方向に延びるように配設し、
前記左右1対のアクセストランクを、船体中心線上に位置する仕切り壁で仕切られた一体構造に構成するとともに、左右1対のアクセストランクの後端壁又は前端壁をこのアクセストランクに臨む横隔壁部分で構成し、
前記仕切り壁の下端近傍部位に連通穴を形成し、
前記左右1対のアクセストランク内に、夫々、少なくとも、昇降用の梯子を配設したことを特徴とするダブルハルタンカーのアクセストランク。
【請求項5】 ダブルハルタンカーにおいて、
その荷物油タンクの下側の二重底内バラストタンクへ出入りする為に、左右両舷の二重底内バラストタンクに夫々連通し且つ二重底上面から上甲板まで延びる左右1対のアクセストランクを設け、
前記左右1対のアクセストランクを、船体中心線の近傍位置において荷物油タンクを仕切る横隔壁の前側近傍位置と後側近傍位置との少なくとも1つに、横隔壁に沿って二重底上面から上甲板まで鉛直方向に延びるように配設し、
前記左右1対のアクセストランクを、船体中心線上に位置する仕切り壁で仕切られた一体構造に構成するとともに、左右1対のアクセストランクの後端壁又は前端壁をこのアクセストランクに臨む横隔壁部分で構成し、
前記アクセストランクに対して、平面視において船体横隔壁を挟んで位置し、二重底上面から所定高さ延び且つアクセストランクが連通する二重底内バラストタンクと前後反対側の二重底内バラストタンクに連通する補助アクセストランクを設け、
前記アクセストランクと補助アクセストランク間を仕切る横隔壁部分に水蜜マンホールを設け、
前記左右1対のアクセストランク内に、夫々、少なくとも、昇降用の梯子を配設したことを特徴とするダブルハルタンカーのアクセストランク。
【請求項6】 ダブルハルタンカーにおいて、
その荷物油タンクの下側の二重底内バラストタンクへ出入りする為に、左右両舷の二重底内バラストタンクに夫々連通し且つ二重底上面から上甲板まで延びる左右1対のアクセストランクを設け、
前記左右1対のアクセストランクを荷物油タンクの縦隔壁の近傍位置において荷物油タンクを仕切る横隔壁の前側近傍位置と後側近傍位置との少なくとも1つに、横隔壁に沿って二重底上面から上甲板まで鉛直方向に延びるように配設し、
前記左右1対のアクセストランクの後端壁又は前端壁を、このアクセストランクに臨む横隔壁部分で構成し、
前記アクセストランクに対して、平面視において船体横隔壁を挟んで位置し、二重底上面から所定高さ延び且つ前記アクセストランクが連通する二重底内バラストタンクと前後反対側の二重底内バラストタンクに連通ずる補助アクセストランクを設け、
前記アクセストランクと補助アクセストランクの間を仕切る横隔壁に水蜜マンホールを設け、
前記左右1対のアクセストランク内に、夫々、昇降用の梯子を配設したことを特徴とするダブルハルハンカーのアクセストランク。
【請求項7】 前記左右1対のアクセストランクの左右何れかの側壁をこのアクセストランクに臨む縦隔壁部分で構成したことを特徴とする請求項6に記載のダブルハルタンカーのアクセストランク。」
(2)登録異議申立の理由の概要
登録異議申立の理由の概要は、次のとおりである。
登録異議申立人は、証拠として甲第1号証(特開昭62-91394号公報)、甲第2号証(特開平3-153488号公報)、甲第3号証(実願平2-84341号(実開平4-41490号)のマイクロフィルム)、甲第4号証(実願平3-69580号(実開平5-20994号)のCD-ROM)、甲第5号証(池田勝著、「船体各部名称図(改訂版)」、海文堂出版株式会社、昭和50年2月4日、p. 5及びp.60)を提出し、本件請求項1及び4に係る考案は、甲第1ないし3号証に記載された事項に基づいて、当業者がきわめて容易になし得たものであり、また本件請求項2、3、及び5ないし7に係る考案は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証または甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者がきわめて容易になし得たものであり、いずれの請求項に係る考案も実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、実用新案登録を取り消すべきものである。
(3)甲各号証の記載事項の概要
甲第1号証は、船のバラスト注排液装置に関するものであり、同号証には次のような記載が認められる。
「第1図乃至第3図に示す船(20)は、船(20)の底部に沿って設けられたエンジン室の中に横ダクト(22)からトランク(50)まで延びる中央ダクト(21)を備えている。中央ダクト(21)は、略矩形の断面を有し、略垂直な側壁によって第3図に示す如き二重底のバラストタンク(24)に繋がる垂直な壁部材を構成する。二重底のバラストタンク(24)と中央ダクト(21)は船(20)の二重底(25)の中に配備される。深水バラストタンク(26)は所定の間隔を存して二重底(25)の上方に形成し、船の側部から側部に跨り乾玄甲板(freeboad deck) (27)まで延長している」(第6頁左上欄第10?20行)
「第3図に示す如く、二重底のバラストタンク(24)には垂直な壁部材(31)を設け、該壁材によってバラストタンク(24)と中央ダクト(21)とを分離している。各々の垂直な壁部材(31)の基部には滑り弁(slide valve)(32)を配備し・・・バラストタンク(24)内の略全ての液体を抜き出して中央ダクト(21)の中へ送ることができる」(第6頁左下欄第2?11行)
「第4図に示す如く、通気トランク(50)が中央ダクト(21)の船首側端部に形成される。トランク(50)は中央ダクト(21)から乾玄甲板(27)上方にて高さが調節された空気ベントまで延びている。・・・中央ダクト(21)の船尾側端部には横ダクト(22)を配備している。該ダクト(22)は第8図に示す如く、第1の吸込口(65)をバルブ操作装置に繋いでおり・・・このバルブ操作装置によって、横ダクト(22)内部の水或いは液体を吸い上げて第1の吸込口(65)から第1の船外排出部(71)へ送ることができるし、或いは又、海水吸込み用の主ライン(72)から海水を取り入れて・・・ 横ダクト(22)を満たすことができる」(第7頁左上欄第4行?右上欄第2行)
「通気トランク(50)は、第9図に示す如く乾玄甲板から上方に突出している。・・・この通気トランク(50)によって、バラスト装置全体の通気を行い・・・バラスト注水時にタンクに残存するエヤーポケットの通気を行い、或いは又バラスト排水時に空気をタンクに入れることができる」(第7頁右下欄第20行?第8頁左上欄第12行)
「垂直なはしご(90)が通気トランク(50)の片側を下向きに延びて中央ダクト(21)への通路に供される」(第8頁左上欄第14及び15行)
また、第1ないし4、及び9図には、船の貨物般の下側に中央ダクト(21)及びバラストタンク(24)が設けられ、通気トランク(50)を、船体中心線の近傍位置において貨物般を仕切る横隔壁の前側近傍位置に配設し、前記通気トランク(50)の後端壁をこの通気トランク(50)に臨む横隔壁部分で構成し、また前記通気トランク(50)を、船体中央線の左右両側に延ばした構造に構成した二重底の船(20)が明示されている。
甲第2号証には、冷凍貨物船において、その貨物般の下側のバラスト用2重底トタンクの空気抜管及び測深管の導設並びに貨物艘内へアクセスする為に、2重底上面から上甲板まで延びる左右一対のトランクを設け、前記左右1対のトランクを、船体中心線上に位置する仕切り壁で仕切られた一体構造に構成するとともに、トランクの後端壁又は前端壁をこのトランクに臨む横隔壁部分で構成したものが開示されている。(第1頁左下欄第5?13行、第2頁右上欄第11?18行、第1?3図参照)
甲第3号証には、油槽船のアクセストランクに関して、喫水線より下方であって、水平油密隔壁にて仕切られた上部荷物油槽と下部荷物油槽とをけ、その下部荷物油槽へアクセスする為に、水平油密隔壁の上面から上甲板まで延びるアクセストランクを設け、前記アクセストランクを、船体中心線の近傍位置において荷物油槽を仕切る横置隔壁の前側近傍位置と後側近傍位置との少なくとも1つに、横置隔壁に沿って水平油密隔壁の上面から上甲板まで鉛直方向に延びるように配設するとともに、前記アクセストランクの後端壁又は前端壁をこのアクセストランクに臨む横置隔壁部分で構成し、前記アクセストランク内に、少なくとも、昇降用の梯子を配設したものが開示されている。(第1頁第5?13行、第4頁第4?17行、第1、2図参照)
甲第4号証は、実用新案登録に係る出願後の平成5年3月19日に頒布された刊行物であって、当該刊行物には、上部及び下部カーゴタンクを設けたタンカーにおいて、その下部カーゴタンクへ出入りする為に、底板上面から上甲板まで延びるトランクを設け、前記トランクに対して、平面視において船体横隔壁を挟んで位置し、底板上面から所定高さ延び且つ前記トランクが連通するカーゴタンクと前後反対側のカーゴタンクに連通する補助トランクを設け、前記トランク内に、少なくとも、昇降用の梯子を配設したものが開示されている。(段落【0007】?段落【0009】、第1?4図参照)
甲第5号証の第28図には、貨物船の逃出しトランクにおいて、当該逃出しトランクは垂直部分の通路とこれに連通する水平部分の通路とから構成され、垂直部分の通路には梯子が設けられ、水平部分の通路には下部室に通じるハッチが設けられているものが開示されている。(第60頁参照)
(4)当審の判断
甲第4号証は、本件請求項1ないし7に係る考案の出願後に頒布された刊行物であり、甲第4号証の上記技術事項が公然知られ得る状態または公然実施し得る状態にあったこと、及びそれらの状態となった日時は立証されておらず、また他に立証するものもないので、以下の各請求項に係る考案の容易性を検討するための対象からは除外する。
▲1▼本件請求項1に係る考案について
甲第1号証に記載の「貨物般」及び「通気トランク」は、それぞれ本件請求項1に係る考案の「荷物油トランク」「アクセストランク」に相当し、また甲第1号証の「二重底の船」は、本件請求項1に係る考案の「バブルハルタンカー」と軌を一にするから、甲第1号証には、「タブルハルタンカーにおいて、その荷物油タンクの下側に二重底内バラストタンクを設け、二重底上面から上甲板まで延びるアクセストランクを設け、前記アクセストランクを、船体中心線の近傍位置において荷物油タンクを仕切る横隔壁の前側近傍位置に横隔壁に沿って二重底上面から上甲板まで鉛直方向に延びるように配設するとともに、前記アクセストランクの後端壁をこのアクセストランクに臨む横隔壁部分で構成し、船体中心線上に前記アクセストランクに連通された中央ダクトを設け、中央ダクトの左右両側に設けられた二重底内のバラストタンクが各バラストタンクに設けられた滑り弁を介して中央ダクトと連通され、また前記アクセストランクを、船体中心線の左右両側に延ばした構造に構成し、前記アクセストランク内に、少なくとも、昇降用の梯子を配設したダブルハルタンカーのアクセストタンク」が開示されている。
そこで、本件請求項1に係る考案と甲第1号証に記載の考案とを対比すると、本件請求項1に係る考案が、「前記アクセストランクを、船体中心線の左右両側の二重底内バラストタンクに共通に連通するように、船体中心線の左右両側に延ばした構造に構成」しているのに対し、甲第1号証にはこの点について何ら記載がなく、またこれを示唆する記載もない。
また、上記構成は、甲第2号証、甲第3号証、及び甲第5号証のいずれにも記載がなく、またこれを示唆する記載もない。したがって、甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証に記載された考案を組み合わせることによって本件請求項1に係る考案が導き出せたものとすることはできない。
しかも、本件請求項1に係る考案は、上記構成を備えることにより、明細書に記載されているように「荷物油積載航行時において片舷側のバラストタンクの船底の損傷により海水が流入した際に、左右両舷のパラストタンクに海水を流入させて船体が傾くのを防止できるし、また、アクセストランクの部材数を節減できるため構造的に有利となる」(段落【0014】)という独自の効果を生ずるものである。
なお、登録異議申立人は、甲第1号証では、アクセストランクを中央ダクト及び滑り弁を介して間接的にバラストタンクに連通させる構成であるのに対し、本件請求項1に係る考案では直接的に連通させているだけの相違であって、このような相違点はアクセストランクの設置位置を考慮するならば、当業者においてきわめて容易に想到し得るものである旨主張している。
しかしながら、中央ダクト及び滑り弁を介在させて連通させるのと直接連通させるのとでは、片舷側のバラストタンクの船底の損傷により海水が流入した際の船体の左右の安定性を図ることに関して技術的意義が全く異なり、本件請求項1に係る考案の上記構成は、甲第1号証の記載から当業者においてきわめて容易に想到し得るものではない。
▲2▼本件請求項2に係る考案について
上記と同様に本件請求項2以下に係る考案と甲各号証に記載のものとを対比すると、甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証のいずれにも、本件請求項2に係る考案の「前記アクセストランクに対して、平面視において船体中心線を挟んで位置し、二重底上面から所定高さ延び且つアクセストランクが連通する二重底内バラストタンクと反対舷側の二重底内バラストタンクに連通する補助アクセストランクを設け、前記アクセストランクと補助アクセストランクとを連通させ」るとの構成に関する記載がなく、またこれを示唆する記載もされておらず、甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証に記載された考案を組み合わせることによって本件請求項2に係る考案が導き出せたものではない。
そして、本件請求項2に係る考案は、上記構成を備えることにより、明細書に記載されているように「アクセストランクの左右何れかの側壁部分を中心線桁材部分で構成できるために、部品数を節減できるため構造的に有利となる」及び「荷物油積載航行時において片舷側のバラストタンクの船底の損傷により海水が流入した際に、左右両舷のバラストタンクに海水を流入させて船体が傾くのを防止できる」(段落【0015】)という独自の効果を生ずるものである。
▲3▼本件請求項3に係る考案について
甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証のいずれにも、本件請求項3に係る考案の「前記アクセストランクに対して、平面視において船体横隔壁を挟んで位置し、二重底上面から所定高さ延び且つ前記アクセストランクが連通する二重底内バラストタンクと前後反対側の二重底内バラストタンクに連通する補助アクセストランクを設け、前記アクセストランクと補助アクセストランク間を仕切る横隔壁に水蜜マンホールを設け」るとの構成に関する記載がなく、またこれを示唆する記載もされておらず、甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証に記載された考案を組み合わせることによって本件請求項3に係る考案が導き出せたものではない。
そして、本件請求項3に係る考案は、上記構成を備えることにより、上記▲2▼において述べたと同様の効果を生ずると共に、他にも明細書に記載されているように「1つのアクセストランクから、前後のバラストタンクへアクセスできるため、アクセストランクの構造部材を節減できるため構造的に有利である」(段落【0016】)という独自の効果を生ずるものである。
▲4▼本件請求項4に係る考案について
甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証のいずれにも、本件請求項4に係る考案の「前記左右1対のアクセストランクを、船体中心線上に位置する仕切り壁で仕切られた一体構造に構成するとともに、左右1対のアクセストランクの後端壁又は前端壁をこのアクセストランクに臨む横隔壁部分で構成し、前記仕切り壁の下端近傍部位に連通穴を形成し」との構成に関する記載がなく、またこれを示唆する記載もされておらず、甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証に記載された考案を組み合わせることによって本件請求項4に係る考案が導き出せたものではない。
そして、本件請求項4に係る考案は、上記構成を備えることにより、上記▲2▼において述べたと同様の効果(段落【0017】参照)を生ずるものである。
なお、登録異議申立人は、甲第2号証には、仕切り壁の下端近傍部位に連通穴を形成されていないが、アクセストランクの使用目的を鑑みれば、人の出入り口となる連通穴を2つの空間に仕切られた仕切壁の下端近傍位置に設けるようなことは甲第2号証からきわめて容易に思いつく程度のものである旨主張している。
しかしながら、甲第2号証には、「トランクの直下は床板一枚で加熱油またはバラスト水(海水)に接しており」 (第2頁右上欄第2及び3行)と記載されており、すなわち甲第2号証のアクセストランクはバラストトランクと連通していないから、船底の損傷により流入した海水を他のバラストタンクに送るための連通穴を形成することは、甲第2号証の記載からきわめて容易に思いつく程度のものとはいえない。
▲5▼本件請求項5に係る考案について
甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証のいずれにも、本件請求項5に係る考案の「前記アクセストランクに対して、平面視において船体横隔壁を挟んで位置し、二重底上面から所定高さ延び且つアクセストランクが連通する二重底内バラストタンクと前後反対側の二重底内バラストタンクに連通する補助アクセストランクを設け、前記アクセストランクと補助アクセストランク間を仕切る横隔壁部分に水蜜マンホールを設け」るとの構成に関する記載がなく、またこれを示唆する記載もされておらず、甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証に記載された考案を組み合わせることによって本件請求項5に係る考案が導き出せたものではない。
そして、本件請求項5に係る考案は、上記構成を備えることにより、上記▲3▼において述べたと同様の効果(段落【0018】参照)を生ずるものである。
なお、登録異議申立人は、甲第5号証に第28図に示されている逃出しトランクの水平部分の通路を形成する空間部は補助アクセストランクとみなすことができる旨主張している。
しかしながら、甲第5号証の第28図には、垂直部分の通路とこれに連通する水平部分の通路からなる逃出しトランクが開示されているが、水平部分の通路を形成する空間部は、本件請求項2、3、及び5ないし7に係る考案の補助アクセストランクとは、その設置位置、構造、作用、及び効果等が異なるから、甲第5号証に図示されている当該空間部は、本件請求項2、3、及び5ないし7に係る考案の補助トランクとみなすことはできない。
▲6▼本件請求項に係る6考案について
甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証のいずれにも、本件請求項6に係る考案の「前記左右1対のアクセストランクを荷物油タンクの縦隔壁の近傍位置において」「配設し」との構成、及び上記▲3▼において述べた構成に関する記載がなく、またこれを示唆する記載もされておらず、甲第1号証ないし甲第3号証、及び甲第5号証に記載された考案を組み合わせることによって本件請求項6に係る考案が導き出せたものではない。
そして、本件請求項6に係る考案は、上記構成を備えることにより、上記▲3▼において述べたと同様の効果を生ずると共に、他にも明細書に記載されているように「二重底バラストタンクの換気および交通性や掃除には最も有利となる」 (段落【0019】)という独自の効果を生ずるものである。
▲7▼本件請求項7に係る考案について
また、本件請求項7に係る考案は、本件請求項6に係る考案の構成を全て備え、さらなる構成を付加されたものであるから、本件請求項6に係る考案について述べた理由と同じである。
したがって、本件請求項1ないし7に係る考案は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、登録異議申立の理由及び証拠によって、本件請求項1ないし7に係る考案の登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし7に係る考案の登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-08-02 
出願番号 実願平4-66340 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (B63B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 大島 祥吾  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 法明
黒瀬 雅一
登録日 1998-07-03 
登録番号 実用登録第2581184号(U2581184) 
権利者 川崎重工業株式会社
兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番1号
考案の名称 ダブルハルタンカーのアクセストランク  
代理人 大村 昇  
代理人 佐々木 宗治  
代理人 木村 三朗  
代理人 小林 久夫  

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