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審決分類 |
審判 全部申し立て G01S |
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管理番号 | 1004032 |
異議申立番号 | 異議1997-72811 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-06-10 |
確定日 | 1999-05-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2520410号「測距装置」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2520410号の実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件実用新案登録第2520410号の考案についての出願は、平成2年9月3日こ出願され、平成8年9月13日にその考案について実用新案の設定登録がされ、その後、森本 聡より実用新案登録異議の申立てがされ、平成9年8月21日付けで取消理由通知がされ、その指定期間内である平成9年11月4日に訂正請求がされ、平成9年11月13日と平成10年11月6日付けで訂正拒絶理由通知がされた。 2.訂正の適否 (1)訂正明細書の請求項1に係る考案 訂正明細書の請求項1に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されている次の事項により特定されるとおりのもの(以下、訂正考案という。)である。 『レーザ信号発生回路を駆動する駆動回路により前記レーザ信号発生回路を駆動してレーザ信号を送信させ、該レーザ信号がターゲットに反射して受信回路に受信されるまでの時間により該ターゲット迄の距離を測定するに際し、該レーザ送信直後の所定時間内に発生するノイズをカットする為のしきい値を変化させるしきい値信を発生させるSTC回路(センシティビティータイムコントロール回路)を用いた測距装置に於いて、 前記レーザ信号発生回路を駆動させる電圧信号を生成する駆動回路を更に駆動させるトリガー回路を設け、該トリガー回路の出力を前記STC回路に入力した事を特徴とする測距装置。』(なお訂正明細書の請求項1中、前記STGとあるのは、前記STCの誤記と認めた。) (2)引用刊行物記載の考案 訂正考案に対し、当審が平成10年11月6日付け訂正拒絶理由通知において引用した特開昭59-142488号公報(以下刊行物1という。)には、「例えば霧の中を走行する場合には、第2図に示す如く、先行車から反射してくる反射パルス光Lrsを受光する以前に、霧粒子で散乱された反射パルス光Lrfが受光される。・・・霧の反射パルス光Lrfは至近距離から反射してくるため、その強度は強い・・・この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、上記のように霧や降雪等の中でも、目標物体までの距離の検出が正確に行なえる光レーダ装置を提供することにある。」(刊行物1第2頁右上2?左下2行)、「パルス状光信号を送光するとともに、対象物体による反射光信号を受光し、送受光信号の関係に基づいて対象物体までの距離を検出する光レーダ装置において;前記反射光信号の受信感度を、前記光信号の送光時に所定レベルの低感度とし、以降経時的に増大させる感度可変手段を設けたことを特徴とする光レーダ装置」(特許請求の範囲)と記載されている。 また、「第3図は、本発明に係る光レーダ装置の一実施例を示す図である。同図に示す光レーダ装置は、・・・制御回路Fと送光器Gと受光器Hとから構成されている。上記送光器Gは、制御回路Fから周期Tpの送信トリガ信号Stが供給されるのに応答して、レーザダイオード12からパルス光Ltを発射するものであり、円筒状の筐体の中に、パルス駆動回路11,レーザダイオード12等が収容されている・・・上記パルス駆動回路11は第4図に示すような構成となっている。そして、上記制御回路Fから出力される送信トリガ信号Stが・・・上記パルス駆動回路11へ入力されると、このパルス駆動回路11内のトランジスタQ1が上記送信トリガ信号Stによってトリガされてオンとなり、これに伴って、このトランジスタQ1のコレクタに接続されているコンデンサC1に蓄積されていた高電圧Va(・・)の電荷が、上記トランジスタQ1のエミッタ・アース間に挿入されているレーザダイオード12に供給される。このとき、レーザダイオード12には・・パルス電流が流れて、・・パルスレーザ光(パルス光Lt)が発射される。・・・上記制御回路Fは、第5図に示す如く、クロック回路20と、時間可変減衰回路21と、広帯域増幅器22および信号処理回路23から構成されている。上記クロック回路20は、前記送光器Gへ供給する送信トリガ信号Stと、この送信トリガ信号Stに同期してパルス幅約2μsのトリガパルスSdを出力するもので、トリガパルスSdは上記時間可変減衰回路21と信号処理回路23へ供給されている。・・・上記傾斜信号発生回路26は、第7図に示す如く、上記クロック回路20からトリガパルスSdが到来する直前tlまでは上記FETQ2がピンチオフ状態となる負電圧ーVpボルトであって」(刊行物1第2頁左下9?第3頁右上17行)、「上記の如く構成された光レーダ装置において、霧のため、第8図(b)に示すように、目標物体からの反射光信号Lrsの前に、霧で散乱された反射光信号Lrfが受光されたとする。この霧の反射光信号Lrfは、遠方から反射してくる光信号程光強度が弱くなるため、同図に示すように次第に振幅が減少する波形となる。このとき、上記受光器Hからは、同図(c)に示すような受光信号Srが出力され、この受光信号Srは、上記時間可変減衰回路21において、同図(d)に示す伝達率特性によって圧縮される。・・・上記霧の反射光受光信号Srfの成分は消滅し、目標物体からの反射光受光信号Srsの成分のみが得られる。これによって、信号処理回路23では上記目標物体からの反射光受光信号Srsによる受光パルス信号Sesに基づいて距離データDRが形成されることとなり・・・正確に目標物体までの距離を検出することができる。」(刊行物1第3頁右下17?第4頁左上19行)と記載されている。 また、同じく特開平1-197684号公報(以下刊行物2という。)には、レーザ送信直後の所定時間内に発生するノイズをカットする為のしきい値を変化させるしきい値信号を発生させるSTC回路に相当する回路が示されている。(刊行物2第2頁左下14?右下19行、第1図、第6図、第7図)。 (3)対比・判断 訂正考案と刊行物1記載の考案とを対比する。 まず、訂正考案の『レーザ信号発生回路』と刊行物1の第3図、第4図に示された、パルス駆動回路11の出力端(トランジスタQ1のエミッタに接続された出力端)に一端が接続され、他端がアースに接続されたレーザダイオード12を含む回路(以下、レーザダイオード12を含む回路という。)とを対比する。訂正考案のレーザ信号発生回路は、図面にその回路が示されておらず、明細書中にも図面のどの部分であるとの明確な記載がないが、「係る従来の測距装置は、レーザ信号を発生させるレーザダイオード2を駆動するレーザダイオード駆動回路1を駆動させてレーザ信号を該レーザダイオード2から発射させ」(訂正明細書第2頁3?5行、出願当初明細書第3頁1?4行)、「該レーザ信号発生回路の駆動回路を駆動させるトリガー回路を設け」(出願当初明細書の請求の範囲及び[課題を解決するための手段]の項)との記載及び第1、2図に照らしてみれば、訂正考案の『レーザ信号発生回路』の接続位置や機能は、刊行物1の、パルス駆動回路11の出力端とアースの間に接続され、パルス駆動回路11の出力により駆動されてパルス光を発射するところの上記レーザダイオード12を含む回路、と対応している。そして、刊行物1のクロック回路20から出力される送信トリガ信号Stがパルス駆動回路11(駆動回路に相当)へ入力されると、このパルス駆動回路11内のトランジスタQ1がオンとなり上記トランジスタQ1エミッタ出力端とアースとの間に挿入されているレーザダイオード12からパルス光Lt(レーザ信号に相当)が発射されので、刊行物1は、訂正考案の『レーザ信号発生回路を駆動する駆動回路により前記レーザ信号発生回路を駆動してレーザ信号を送信させ』に相当する構成を備えている。 また、刊行物1の、対象物体(ターゲットに相当)による反射光信号を受光し、送受光信号の関係に基づいて対象物体までの距離を検出する点、及び、光レーダ装置は、訂正考案の『該レーザ信号がターゲットに反射して受信回路に受信されるまでの時間により該ターゲット迄の距離を測定する』及び『測距装置』に対応する。 また、刊行物1は、リガパルスSdが到来する直前tlまではピンチオフ状態であるFETQ2を備え、反射光信号の受信感度を、光信号の送光時に所定レベルの低感度とし、以降経時的に増大させる感度可変手段を用いており、この手段は送光直後の所定時間内のノイズをカットするための回路であると言えるから、刊行物1は訂正考案の『該レーザ送直後の所定時間内に発生するノイズをカットする為の回路を用いた』に相当する構成を備えている。 また、刊行物1の、パルス駆動回路11に送信トリガ信号Stを供給する制御回路Fのクロック回路20は、訂正考案の『トリガー回路』に相当し、該クロック回路20から出力される送信トリガ信号Stが、上記送光器Gに収容された、第3、4図に示されたパルス駆動回路11に入力されると、トランジスタQ1のベース入力端とアース間に接続された抵抗に電流が流れて該ベース入力端に電圧が生成され、該ベース入力端、トランジスタQ1のベース・エミッタ、パルス駆動回路11の出力端、レーザダイオード12の入力端とアースの間に所定の電圧が生成されて、トランジスタQ1レーザダイオード12がオンとなり、電荷が供給されてレーザダイオード12からパルス光Ltが発射されると解せられるが、換言すると、パルス駆動回路11の出力端から上記レーダイオード12を含む回路を駆動させる電圧信号が生成されていると言え、且つ、クロック回路20は該パルス駆動回路11を更に駆動させる関係にあるので、刊行物1は、訂正考案の『前記レーザ信号発生回路を駆動させる電圧信号を生成する駆動回路を更に駆動させるトリガー回路を設け』に相当する構成を備えている。 また、刊行物1の上記クロック回路20は、前記送光器Gへ供給する送信トリガ信号Stに同期してトリガパルスSdを時間可変減衰回路21と信号処理回路23へ出力するので、訂正考案の『該トリガー回路の出力を前記回路に入力した』に相当する構成を備えている。 したがって、訂正考案と刊行物1記載の考案とは、『レーザ信号発生回路を駆動する駆動回路により前記レーザ信号発生回路を駆動してレーザ信号を送信させ、該レーザ信号がターゲットに反射して受信回路に受信されるまでの時間により該ターゲット迄の距離を測定するに際し、該レーザ送信直後の所定時間内に発生するノイズカットする為の回路を用いた測距装置に於いて、 前記レーザ信号発生回路を駆動させる電圧信号を生成する駆動回路を更に駆動させるトリガー回路を設け、該トリガー回路の出力を前記回路に入力した測距装置』である点で一致し、 ▲1▼レーザ送信直後の所定時間内に発生するノイズをカットする為に、訂正考案が、しきい値を変化させるしきい値信号を発生させるSTC回路(センシティビティータイムコントロール回路)を用いているのに対し、刊行物1記載の考案は、時間可変減衰回路等を用いている点 で相違が認められる。 上記相違点について検討する。 ▲1▼刊行物2には、刊行物1と同じ技術分野に属する測距装置において、レーザ送信直後の所定時間内に発生するノイズをカットする為に、しきい値を変化させるしきい値信号を発生させるSTC回路を用いるものが示されており、当業者は当該分野の技術的手段を自在に採用し得るので、刊行物1の時間可変減衰回路によるものに換えて、刊行物2の測距装置のSTC回路を採用することは当業者がきわめて容易になし得ることである。 そして、前記のように、刊行物1の時間可変減衰回路によるものに換えて、刊行物2の測距装置のSTC回路を採用することにより得られる装置は、クロック回路20から、送信トリガ信号Stに同期してトリガパルスSdをSTC回路へ出力するので、これをうけてパルス駆動回路とSTC回路がはたらくが、レーザダイオード12を含む回路はパルス駆動回路11の出力を受けてパルス光が発射されるので、パルス光が発射される時点を基準にしてみれば、その基準の時点前にSTC回路がはたらくと言える。従って、訂正考案のレーザ信号が送信される前にSTC回路がはたらき、しきい値の発生時点を早めることができ、簡単な回路の設計変更によってノイズの発生を効果的に除去し、該ノイズによる誤動作、誤検出を防止することが可能となる、という効果も、当然予測できる範囲内のものにすぎない。 以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記刊行物1ないし2記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。 (4)むすび したがって、本件訂正請求は、附則(平成6年12月14日法律第116号)第9条第2項において、実用新案登録がされた場合に準用する、新々特許法第120条の4第3項で準用する同第126条第4項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。 3.実用新案登録異議の申立てについての判断 (1)請求項1に係る考案 請求項1に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されている次の事項により特定されるとおりのもの(以下、本件考案という。)である。 『レーザ信号発生回路を駆動する駆動回路により前記レーザ信号発生回路を駆動してレーザ信号を送信させ、該レーザ信号がターゲットに反射して受信回路に受信されるまでの時間により該ターゲット迄の距離を測定するに際し、該レーザ送信直後の所定時間内に発生するノイズをカットする為のしきい値を変化させるしきい値信号を発生させるSTC回路(センシティビティータイムコントロール回路)を用いた測距装置に於いて、 前記レーザ信号発生回路を駆動させる駆動回路を更に駆動させるトリガー回路を設け、該トリガー回路の出力を前記STC回路に入力した事を特徴とする測距装置。』 (2)実用新案法第3条2項違反について 当審が平成9年8月21日付けで通知した取消理由において引用した刊行物1(特開昭59-142488号公報)、刊行物2(特開平1-197684号公報)には、それぞれ上記2.(2)引用刊行物記載の考案の項に記載の考案が記載されている。 本件考案と刊行物1に記載された考案とを対比すると、上記2.(3)対比・判断の項で論じたように、両者の考案は 『レーザ信号発生回路を駆動する駆動回路により前記レーザ信号発生回路を駆動してレーザ信号を送信させ、該レーザ信号がターゲットに反射して受信回路に受信されるまでの時間により該ターゲット迄の距離を測定するに際し、該レーザ送信直後の所定時間内に発生するノイズをカットする為の回路を用いた測距装置に於いて、 前記レーザ信号発生回路を駆動させる駆動回路を更に駆動させるトリガー回路を設け、該トリガー回路の出力を前記回路に入力した測距装置』る点で一致し、 ▲1▼レーザ送信直後の所定時間内に発生するノイズをカットする為に、本件考案が、しきい値を変化させるしきい値信号を発生させるSTC回路(センシティビティータイムコントロール回路)を用いているのに対し、刊行物1記載の考案は、時間可変減衰回路等を用いている点で相違が認められる。 しかしながら、刊行物2には、刊行物1と同じ技術分野に属する測距装置において、レーザ送信直後の所定時間内に発生するノイズをカットする為に、しきい値を変化させるしきい値信号を発生させるSTC回路を用いるものが示されているから、刊行物1の時間可変減衰回路によるものに換えて、刊行物2の測距装置のSTC路を採用することは当業者がきわめて容易になし得ることである。 そして、前記のように、刊行物1の時間可変減衰回路によるものに換えて、刊行物2の測距装置のSTC回路を採用することにより得られる装置の奏する効果は、上記2.(3)で論じたように、当然予測できる範囲内のものにすぎない。 したがって、本件考案は、上記刊行物1ないし2に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法附則(平成6年12月14日法律第116号)第9条第2項により準用する特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-02-25 |
出願番号 | 実願平2-91541 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
ZB
(G01S)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 濱野 隆 |
特許庁審判長 |
木南 仁 |
特許庁審判官 |
清水 稔 吉見 信明 |
登録日 | 1996-09-13 |
登録番号 | 実用登録第2520410号(U2520410) |
権利者 |
富士通テン株式会社 兵庫県神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号 |
考案の名称 | 測距装置 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 土屋 繁 |
代理人 | 戸田 利雄 |