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審決分類 審判 全部申し立て   G11B
審判 全部申し立て   G11B
管理番号 1004094
異議申立番号 異議1997-73754  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-08-05 
確定日 1999-09-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2524915号「ディスクカートリッジのスライダー」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2524915号の実用新案登録を維持する。
理由 (1)手続きの経緯
実用新案登録第2524915号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、平成2年4月17日に出願され、平成8年11月7日にその考案についての設定登録がなされたところ、異議申立人松本信雄、田村典子より異議の申し立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年3月4日に訂正請求がなされたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア.訂正内容
実用新案登録権者が求めている訂正の内容は、以下の通りである。
a.実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る記載を減縮を目的として「ディスク状記録媒体が収納されるケースのヘッド挿入穴を開閉するためのシャッタに取り付けられ、前記ケースと摺接する合成樹脂製のスライダーであって、このスライダーはシャッタに固着されたシャッタ支持部とこの支持部から伸設された伸設部とを有し、この伸設部先端の前記ケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成し、この係合突起部と前記伸設部先端との間に前記スライダーを押圧してシャッタを解放位置に保持する開閉ピンが当接する腕部を一体形成したことを特徴とするディスクカートリッジのスライダー。」と訂正する点。
訂正事項b.
明瞭でない記載の釈明を目的として、実用新案登録明細書の第4頁第11行?第5頁第3行の「このような問題を・・・ことを特徴とする。」を次のように訂正する。
「このような問題を解決するために、本考案にあっては、ディスク状記録媒体が収納されるケースのヘッド挿入穴を開閉するためのシャッタに取り付けられ、前記ケースと摺接する合成樹脂製のスライダーであって、このスライダーはシャッタに固着されたシャッタ支持部とこの支持部から伸設された伸設部とを有し、この伸設部先端の前記ケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成し、この係合突起部と前記伸設部先端との間に前記スライダーを押圧してシャッタを解放位置に保持する開閉ピンが当接する腕部を一体形成したことを特徴とする。」
訂正事項c.
明瞭でない記載の釈明を目的として、実用新案登録明細書の第14頁第14行?第15頁第1行の「また、係合突起・・・とすることができる。」を次のように訂正する。
「そして、伸設部先端のケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成したことにより、ケースのガイド部に形成された逃げ凹み内への開閉ピンの挿入が邪魔されることがない。」
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
▲1▼上記訂正事項aについては、実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された「係合突起部」をより下位概念である「該伸設部先端より前方に突出した係合突起部」と限定しようとするものである。
この訂正は、実用新案登録明細書第10頁第17行目?第11頁第7行目(実用新案登録公報第5欄第33?42行目)「第5図および第9図に示すように伸設部22の左端側の第1係合部26はケース1にスライダー12の摺接方向に沿ってそれぞれ形成された係合突起部28a,28b(案内係合部)に係合されてスライダー12の摺動方向に案内するとともに、このケース1から容易に外れるのを防止している。そして、シャッタ5が完全に開いたときには、係合突起部26の上面は前記ガイド部Gに形成された逃げ凹み9の底面とほぼ面一か少し低くなっており、開閉ピンPの逃げ凹み9内への挿入を邪魔しないようになっている。」及び第3図、第4図、第5図、第10図に記載されていたものに基づいている。
従ってこの訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当し、かつ実質的に請求項1の記載を変更・拡張するものでもなく、さらに、新規事項の追加にも該当しない。
▲2▼上記訂正事項bについては、訂正事項aに伴う考案の詳細な説明の欄の記載を明瞭にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当するものであり、かつ、上記訂正事項bは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、かつ、新規事項の追加にも該当しない。
▲3▼上記訂正事項cについては、訂正事項aで実用新案登録請求の範囲の構成要件を限定したことに伴う考案の効果を明瞭にしたものである。
すなわち、考案の新規性を明確にする上で不十分な記載を正し、考案の新規性をより明確にするものであるから、この訂正は明瞭でない記載の釈明に該当するものであり、また、上記訂正事項cは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、かつ、新規事項の追加にも該当しない。
ウ.独立登録要件の検討
実用新案法第3条の2違反について
(先願明細書)
当審で通知した取消理由に記載の特願平2-175272号(特開平3-224167号、平成3年10月3日出願公開)の願書に最初に添付した明細書または図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の発明が記載されている。
ディスクカートリッジ6は、主としてプラスチック製のカートリッジケース21とこのケースの前縁部9に摺動可能に取付けられたスライダ22と、このスライダに固着され、閉鎖位置より一方向に摺動してカートリッジケースに開設された窓孔10を開閉するシャッタ11を備え、前記カートリッジケース21は、上ハーフ8aと下ハーフ8bからなっており、これらの前縁部9には、接合用の壁23,24よりも低い案内レール25が一直線状に形成されている点(第22,23図に関する記載)。
スライダ22は、少なくともその端部において、その断面形状が幅広の前面部31と幅狭の後面部32とこれらをつなぐ連結部33とから構成されており、これら各部によって形成される凹溝34a,34b内に前記案内レール25を内装できるようになっている点(第29?31図に関する記載)。
なお、上記記載に関し、上記先願明細書の特許法第42条の2第3項に規定の優先権主張の基礎とされた出願は特願平1-171818号(平成1年7月5日出願)と認められる。
(対比・判断)
前記先願明細書に記載の発明の「連結部」は、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の「腕部」に相当するので、本件訂正明細書の請求項1に係る考案と先願明細書に記載の発明を対比すると、本件訂正明細書の請求項1に係る考案が「伸設部先端より前方に突出した係合突起部」備えているのに対し、先願明細書に記載の発明はこのような構成を備えていない点で相違する。そして、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、該構成により「伸設部先端のケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成したことにより、ケースのガイド部に形成された逃げ凹み内への開閉ピンの挿入が邪魔されることがない。」との先願明細書の発明では得られれない効果が生じるものと認められる。
よって、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、先願明細書に記載の発明と同一ではないから、実用新案法第3条の2第1項の規定に違反して登録されたものとすることはできない。
エ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項第2号及び同法第3項で準用する同法126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(3)異議申立てについて
ア.異議申し立ての概要
a.異議申立人松本信雄は、甲第1?3号証を提示して、本件登録実用新案は、甲第1,2号証の記載内容に基づいて、その考案の属する技術分野における通常の知識を有するものがきわて容易に考案をすることが出来たもので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を取り消すべきであり、また、甲第3号証記載の考案と実質的に同一であるから、実用新案法第3条の2の規定に該当し、取り消すべきである旨主張している。
b.異議申立人田村典子は、甲第1,2号証を提示して、本件登録実用新案は、甲第1,2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、旧実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものであるから、本件登録実用新案に係る実用新案登録は、平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。
イ.本件考案
本件の登録明細書の実用新案登録請求の範囲請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、上記訂正された登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記(2)ア.aに記載のとおりのものである。
ウ.各甲号証に記載の考案または発明
a.異議申立人松本信雄の提示した証拠
甲第1号証:実願昭63-56767号(実開平1-162170号)のマイクロフィルム
記録媒体であるディスクを収納するプラスチック製のカートリッジ筐体と、このカートリッジ筐体に形成されたヘッド挿入穴を開閉するためにカートリッジ筐体に摺動自在に取付けられた金属製のシャッタとを有するディスクカートリッジにおいて、前記カートリッジ筐体の記録再生装置への挿入方向前端にガイド部を設け、このガイド部にプラスチック製のスライドを摺動自在に係合せしめ、このスライドに前記シャッタを固着せしめたディスクカートリッジ(請求の範囲)。
シャッタ6は2枚の相対向した垂直板11とこの垂直板の頭部に形成された頭板13とを有し、該頭板は細長いスライド14全体を覆うように固着されている点(第2図に関する記載)。
甲第2号証:実願昭62-163057号(実開平1-71367号)のマイクロフィルム
スライダ4_(3)のシャッタ上下板4_(1),4_(2)が取付けられたシャッタ固着部から伸設した部分に、シャッタを開いた状態で記録再生装置のピックアップが側方からピックアップ挿入孔3に接近しても前記伸設部に接触しないように切り欠き部18_(2),18_(2)を形成した点(第3,4図に関する記載)。
スライダ全長にわたって、ケース内方にリブ状のガイド片18_(1)を設け、該リブ片は前記伸設した部分の下方では壁厚Sを有し、シャッタ固着部ではこれよりも狭くされ、それぞれの部分にケース2に設けたガイド溝17に係合する係合突部18,10を設ける点、前記係合突起18は伸設部先端よりも後退した位置までしか設けられていない点(第4?6、9図に関する記載)。
スライダの壁厚Sを有する前記伸設した部分の先端で、シャッタ開閉ピン24を操作する点(第1,2、7図に関する記載)。
甲第3号証:特願平2-175272号(特開平3-224167号公報:前記独立登録要件の検討に記載の先願明細書参照のこと)
b.異議申立人田村典子の提示した証拠
甲第1号証:実願昭63-8850号(実開平1-113885号)のマイクロフィルム
光ディスク1を回転可能に収納し、記録再生用のピックアップ挿入口3を備えたケース2、前記ピックアップ挿入口3を開閉するためのシャッタ4に取付られたポリアセタール樹脂などの滑走良好な材質のスライダ4_(3)、該スライダ4_(3)はシャッタ4が取付けられる部分と取付けられない部分(伸設部に相当)とからなり、該スライダの全長にわたって内側面の中央にスライダ移動方向に沿った仕切り壁14が形成され、仕切り壁14のケース内方に突出した部分(辺)には、該突出した辺に沿って溝を設けて、ケース側壁に設けたガイド長溝に係合する係合部が形成されている点(第3?5図に関する記載)。
甲第2号証:実願昭63-26492号(実開平1-133367号)のマイクロフィルム
シャッタ3は所定の樹脂材料を持って形成されており、カートリッジケースの厚さと略等しい幅Wを有する前辺51と、該前辺51に続く最細部51aと、前辺51及び51aの内面に突設された補強リブ52と、この補強リブ52の先端部に形成された係止体53と、ヘッド挿入孔16を開閉可能な幅及び長さを有する第1のシャッタ面部54と、前記ヘッド挿入孔16及びスピンドル孔14をともに閉塞可能な幅と長さとを有する第2のシャッタ面部55と、前辺51の両端部に突出形成された曲折部56,57を一体に設け、前記係止体53は、前記補強リブ52の露出した部分(最細部)に形成されると共にカートリッジケース内面に設けられたシャッタ案内レール31,46に係合され、又、前記最細部51aの端部に隣接して形成された曲折部56,57の先端側をシャッタ開閉アーム61の当接部とした点(第7?9,13図に関する記載)。
エ.対比・判断
a.異議申立人松本信夫の提示した証拠について
(実用新案法第3条第2項違反について)
本件考案と甲第1,2号証に記載の考案を対比すると、甲第1,2号証に記載の考案には、本件考案を特定するための事項である「伸設部先端の前記ケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成し、この係合突起部と前記伸設部先端との間に前記スライダーを押圧してシャッタを解放位置に保持する開閉ピンが当接する腕部を一体形成した」点を備えておらず、かつ、甲第1,2号証の記載からみて自明のものとも認められない。
したがって、本件考案は甲第1,2号証に記載の考案からきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。
なお、異議申立人は、甲第1号証の第2図において、受孔19の側壁Eは伸設部Bの先端部と係合突起部Dの間を一体に連結するとともに開閉ピンP1の先端部が当接するのであるから本件考案の「腕部」に相当すると主張するが、該部分が伸設部の先端でないことは明らかであり、その主張は採用できない。
(実用新案法第3条の2違反について)
甲第3号証は前記独立登録要件の判断で示した先願明細書と同じであるので、本件考案と甲第3号証に記載の発明との対比・判断は、(2)ウ.の独立登録要件の検討に記載のとおりである。
なお、先願明細書における第45、47,48図に関する記載は、国内優先権の基礎となる各願書に最初に添付された明細書又は図面に記載されておらず、その主張は採用できない。
b.異議申立人田村典子の提示した証拠について
(実用新案法第3条第2項違反について)
本件考案と、上記異議申立人の提示した甲第1,2号証に記載の考案を対比すると、甲第1,2号証に記載の考案は、本件考案を特定する事項である「伸設部先端の前記ケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成し、この係合突起部と前記伸設部先端との間に前記スライダーを押圧してシャッタを解放位置に保持する開閉ピンが当接する腕部を一体形成した」点を備えておらず、かつ、両号証の記載からみて自明のこととも認められない。
したがって、本件考案は、甲第1,2号証に記載された考案からきわめて容易に考案することができたものとすることができない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、前記各異議申立人が申し立てた異議の理由及び証拠によっては、本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ディスクカートリッジのスライダー
(57)【実用新案登録請求の範囲】
ディスク状記録媒体が収納されるケースのヘッド挿入穴を開閉するためのシャッタに取り付けられ、前記ケースと摺接する合成樹脂製のスライダーであって、このスライダーはシャッタに固着されたシャッタ支持部とこの支持部から伸設された伸設部とを有し、この伸設部先端の前記ケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成し、この係合突起部と前記伸設部先端との間に前記スライダーを押圧してシャッタを開放位置に保持する開閉ピンが当接する腕部を一体形成したことを特徴とするディスクカートリッジのスライダー。
【考案の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本考案はディスク状記録媒体を収納したディスクカートリッジ、特に3.5インチ用のディスクカートリッジのシャッタをガイドするスライダーに関する。
〔従来の技術〕
記録再生装置に使用されるディスク状記録媒体は、不使用時に破損したり、塵埃が付着したりするのを防止するために、ディスクカートリッジ内にこのディスク状記録媒体を収納することによって保護している。このようなディスクカートリッジとして、例えば第12図に示すようなものがある。第12図において、符号101は上半片101aおよび下半片101bからなるケースであり、このケース101にはディスク状記録媒体102が収納されている。ケース101にはこのディスクカートリッジが記録再生装置に装着されたときに、ディスク状記録媒体を回転させるための回転穴103や、情報の読み書きを行うためにヘッドが接近可能なヘッド挿入穴104が形成されている。
ここで、前記回転穴103やヘッド挿入穴104からケース101内部に塵埃が侵入するのを防止するために、このケース101にはシャッタ106が取り付けられている。また、シャッタ106はケースは101内に収装されたねじりコイルばね107によって常時付勢されて、前記回転穴103やヘッド挿入穴104を閉止している。
シャッタ106の第12図中左側に突出した部分106aに開閉ピンPを当接し、ねじりコイルばね107の付勢力に抗してヘッド挿入穴104等を開口している。
〔考案が解決しようとする課題〕
しかしながら、このような従来のディスクカートリッジにあっては、金属製のシャッタ106がケース101と直に摺接しているので、このシャッタ106をケース101に対してスムーズに摺動させにくく、またシャッタ106とケース101とにこのシャッタ106を摺動方向に案内する案内部が設けられていないために、シャッタ106を摺動方向へ向けて確実に案内させることができないという問題があった。そこで、ケース101に対して滑接するスライダーを取付けることが考えられるが、シャッタ106には開閉ピンPが当接する突出した部分106aを設けねばならないために、スライダーを取付けたシャッタ106部分が複雑化して、このディスクカートリッジが大型化してしまう虞が生じる。
〔課題を解決するための手段〕
このような問題を解決するために、本考案にあっては、ディスク状記録媒体が収納されるケースのヘッド挿入穴を開閉するためのシャッタに取り付けられ、前記ケースと摺接する合成樹脂製のスライダーであって、このスライダーはシャツタに固着されたシャッタ支持部とこの支持部から伸設された伸設部とを有し、この伸設部先端の前記ケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成し、この係合突起部と前記伸設部先端との間に前記スライダーを押圧してシャッタを開放位置に保持する開閉ピンが当接する腕部を一体形成したことを特徴とする。
〔作用〕
スライダーにはシャッタが取り付けられている部分から伸設部が伸ばして形成されているので、この伸設部の突端に開閉ピンを当接させてスライダーを押せば、シャッタを開閉させることができる。したがって、シャッタに開閉ピンと当接する突出部分を形成する必要がない。
シャッタを開放するには、スライダーの伸設部の先端に開閉ピンを当接させ、この開閉ピンがケースの端縁上を摺動しながらスライダーを押しやる。シャッタの開放が終了すると、開閉ピンはこの開放位置でこのシャッタの開放状態を保持する。そこで、スライダーの腕部の幅は充分とってあるので、開閉ピンの位置が少々ずれていてもこの開閉ピンは腕部と当接して確実に係合する。
〔実施例〕
以下、本考案を図面に基づいて説明する。
第1図ないし第11図は本考案に係る3.5インチ用のディスクカートリッジのスライダーの一実施例を示す図である。
第1図および第2図において符号1はディスクカートリッジのケースであり、このケース1は合成樹脂製であって全体が矩形の平板状筐体の上半片1aと下半片1bとからなっている。ケース1内には光学的情報を記録した3.5インチの光ディスク2(ディスク状記録媒体)が収納されている。ケース1の下半片1bの中央には、光ディスク2が記録再生装置に装着されたときに、ケース1内の光ディスク2をスピンドルモータ(図示せず)によって回転させるための回転穴4が形成され、この回転穴4から光ディスク2の中心部に設けられたハブ部2aが露出している。またケース1の上・下半片1a,1bには光ディスク2に記録された情報を読み取るための光ヘッド(図示せず)が接近可能なようにヘッド挿入穴3が形成されでいる。
光ディスク2を使用しない場合には、前記回転穴4やヘッド挿入穴3から塵埃がケース1内に侵入するのを防止するために、このケース1にはシャッタ5が取付けられている。シャッタ5はステンレス鋼等の金属薄板を略中央から断面略コの字形に折り曲げて形成され、前記回転穴4及びヘッド挿入穴3を開閉するための開閉板部6と、この開閉板部6よりも折り曲げ長さが短い補助開閉板部7とを有している。
ケース1の記録再生装置挿入先端部分に形成されたガイド部Gは、第3図に示すように、図上左側に形成されケース1の上端面から落込んだ位置に水平方向に伸びるガイド表面8を有している。ガイド表面8の同図中右側には、シャッタ5を開閉するための開閉ピンPがガイド表面8に摺接しながらこのシャッタ5を開放したときに落込むための逃げ凹み9(シャッタ開放位置)が形成されている。前記開閉ピンPは第3図中シャッタ5を右側に移動せしめ、ヘッド挿入穴3を開放する。
断面略コの字形シャッタ5の折曲部分5aの内面側にはガイド部Gに摺接するポリアセタール等の合成樹脂製のスライダー12が取り付けられており、このスライダー12は第3図中略右半分が前記折曲部分5aの内面側にタッピングねじ等によって固着されている。
スライダー12は、第4図に示すように全体が細長い棒状となっており、断面略矩形であってシャッタ5の折曲部分5aの内側に位置し、このシャッタ5を支持するシャッタの支持部21と、この支持部21から第4図中左下方へ伸ばして形成された幅狭の伸設部22とを有し、この伸設部22の同図中上方から見た厚さt_(1)は、支持部21の同じ厚さt_(2)に比べ狭くなるように形成されている。支持部21の第4図中右方側には、第2係合突起部23が形成され、伸設部22の左方側にも上側に当接突起部25が形成され、当接突起部25から下方に腕部33を介して第1係合突起部26が形成されている。第3図に示すように開閉ピンPがスライダー12の当接突起部25に当接して、スライダー12を図中右方へ押すとシャッタ5はヘッド挿入穴3を開口し始め、この開口が終了すると、開閉ピンPは逃げ凹み9に落ち込み、スライダー12の腕部33と当接する。前記支持部21には、ねじ穴21a,21aが形成され、前記当接突起部25は伸設部分22の先端から左右に張り出している。
伸設部22の厚さt_(1)を小さくしているのは、第6図に示すようにシャッタ5を開いた状態で記録再生装置の一対のヘッドhが側方からヘッド挿入穴ロヘ接近してもそれに接触しないようにするためである。すなわち、カートリッジのガイド部Gに沿って凹ませて形成された凹み部31の厚さを越えないように、伸設部22の厚さt_(1)が定められる。
また、第7図および第8図に示すようにスライダー12の第2係合突起部23の両側には、一対の突起部分23a,23bが形成され、この一対の突起部分23a,23bは上・下半片1a,1bの内壁面にスライダー12の摺動方向に向けて形成された一対の案内溝27a,27b(案内係合部)に嵌入している。なお、一方の突起部分23aは長く、他方の突起部分23bは短く形成されている。
第2係合突起部23にはねじりコイルばね14の一端14aが係合される第1ばね受部15が形成され、この第1ばね受部15には引掛り部15aが形成されている。ケース1の第8図中右上方端部にはねじりコイルばね14の他端14bが係合される第2ばね受部16が形成され、ねじりコイルばね14の付勢力によってスライダー12を同図中左方へ付勢している。また、第2係合突起部23にはねじりコイルばね14が嵌入可能な割り溝23cが形成されている。そして、前記他方の突起部23bが短く形成されているのは、第8図に示すようにシャッタ5を完全に開いたときに、ねじりコイルばね14の腕14bが突起部23bに衝突するのを避けるためである。
第5図および第9図に示すように伸設部22の左端側の第1係合突起部26はケース1にスライダー12の摺動方向に沿ってそれぞれ形成された係合突起部28a,28b(案内係合部)に係合されて、スライダー12を摺動方向に案内するとともに、このケースlから容易に外れるのを防止している。そして、シャッタ5が完全に開いたときには、係合突起部26の上面は前記ガイド部Gに形成された逃げ凹み9の底面とほぼ面一か少し低くなっており、開閉ピンPの逃げ凹み9内への挿入を邪魔しないようになっている。
また、開閉ピンPがスライダー12の当接突起部25に当接して、ガイド表面8と摺接しながらスライダー12を第10図中左上方へ摺動させて、逃げ凹み9に落ち込むと、この開閉ピンPはスライダー12の腕部33と当接する。腕部33は逃げ凹み9に落ち込んだ開閉ピン9と当接して、ねじりコイルばね14の付勢力を受けるスライダー12が同図中右下方向摺動しようとするのを阻止している。そのために、腕部33の幅W_(1)はケースの厚さTの略1/3程に設定してあり、開閉ピンPが当接して係合するのには充分な幅である。
ところで、ヘッド挿入穴3を閉止しているシャッタ5を開放するには、第5図に示すようにスライダー12の当接突起部25の先端に開閉ピンPを当接させ、この開閉ピンPがガイド表面8上を摺動しながらスライダー12を右方へ押しやる。スライダー12はこの当接突起部25および第1係合突起部26がそれぞれガイド表面8および係合突起28a,28bに案内されながら右方へ摺動すると、支持部21に固着されたシャッタ5は右方へ移動されてヘッド挿入穴3を開放する。シャッタ5の開放が終了すると、開閉ピンPは逃げ凹み9に落ち込みこのシャッタ5の開放状態を保持する。
ここで、記録再生装置の開閉ピンPは、この装置に挿入されたディスクカートリッジのケース1に対して第11図中右側から左方に突出してくるのだが、この装置を製作する上で生じる誤差のために、製品によっては開閉ピンPの突出量が少いものがある。例えば、開閉ピンPの突出量が少く、P_(1)の位置にまでしか移動しなかったとする。このとき、仮に腕部33の幅W_(1)が前記した幅より小さく、幅W_(0)しかなかったとすると、開閉ピンPはこの腕部33と係合することができなくなる虞が生じる。そうすると、スライダー12はねじりコイルばね14の付勢力を受けているので初期位置へ戻され、シャッタ5は開放したいにもかかわず、閉止されてしまうことになる。
しかし、スライダー12の腕部33の幅W_(1)はケース1の厚さTの略1/3程もあるので、開閉ピンPがP_(1)の位置にあっても、この開閉ピンP_(1)は腕部33と確実に係合する。したがって、逃げ凹み9に落ち込んだ開閉ピンPが、前記製品による突出量が少くとも、腕部33と確実に係合し、シャッタ5の開放状態を保持することができる。
一方、スライダー12にはシャッタ5の折曲部分5aから伸設部22が伸ばして形成されているので、この伸設部22の突端に開閉ピンPを当接させてスライダー12を押せば、シャッタ5を開閉させることができる。したがって、シャッタ5に開閉ピンPと当接する突出部分を形成する必要がなく、スライダー12の伸設部22に前記突出部分の役目を持たせることで、スライダー12を取り付けたシャッタ5部分は単純化され、このディスクカートリッジを小形化することができる。
〔考案の効果〕
以上説明したように、本考案によれば、スライダーをシャッタが取付けられている部分から前記開閉ピンが当接可能な伸設部を伸ばして形成したので、この伸設部に開閉ピンを当接させてシャッタを開閉させることができる。したがって、シャッタに開閉ピンと当接する突出部分を形成する必要がなく、スライダーを取り付けたシャッタ部分は単純化され、このディスクカートリッジを小形化することができる。
そして、伸設部先端のケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成したことにより、ケースのガイド部に形成された逃げ凹み内への開閉ピンの挿入が邪魔されることがない。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第11図は本考案に係る3.5インチ用のディスクカートリッジのスライダーの一実施例を示す図であり、第1図はこのスライダーが用いられたディスクカートリッジの表側の斜視図、第2図は同裏側の斜視図、第3図はディスクカートリッジの正面図、第4図はスライダーの斜視図、第5図はこのディスクカートリッジの部分断面図、第6図はシャッタを開いたときのガイド部の状態説明図、第7図は第3図におけるVII-VII線断面図、第8図は第7図におけるVIII-VIII線断面図、第9図は第5図におけるIX-IX線断面図、第10図は第5図におけるX矢視斜視図、第11図は第10図におけるXI-XI線断面図、第12図は従来のディスクカートリッジを示す斜視図である。
1…ケース、3…ヘッド挿入穴、5…シャッタ、9…逃げ凹み、12…スライダー、22…伸設部、26,23…第1、第2係合突起部、27a,27b…案内溝、28a,28b…係合突起部(案内係合部)、33…腕部、W_(1)…腕部の幅、P…開閉ピン。
訂正の要旨 訂正の要旨
▲1▼訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る記載を次のように訂正する。
「ディスク状記録媒体が収納されるケースのヘッド挿入穴を開閉するためのシャッタに取り付けられ、前記ケースと摺接する合成樹脂製のスライダーであって、このスライダーはシャッタに固着されたシャッタ支持部とこの支持部から伸設された伸設部とを有し、この伸設部先端の前記ケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成し、この係合突起部と前記伸設部先端との間に前記スライダーを押圧してシャッタを開放位置に保持する開閉ピンが当接する腕部を一体形成したことを特徴とするディスクカートリッジのスライダー。」
▲2▼訂正事項b
実用新案登録明細書(以下、行数は願書に最初に添付した明細書の記載に基づく)の第4頁第11行目?第5頁第3行目の「このような問題を……ことを特徴とする。」を次のように訂正する。
「このような問題を解決するために、本考案にあっては、ディスク状記録媒体が収納されるケースのヘッド挿入穴を開閉するためのシャッタに取り付けられ、前記ケースと摺接する合成樹脂製のスライダーであって、このスライダーはシャッタに固着されたシャッタ支持部とこの支持部から伸設された伸設部とを有し、この伸設部先端の前記ケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成し、この係合突起部と前記伸設部先端との間に前記スライダーを押圧してシャッタを開放位置に保持する開閉ピンが当接する腕部を一体形成したことを特徴とする。」
▲3▼訂正事項c
実用新案登録明細書の第14頁第14行目?第15頁第1行目の「また、係合突起部と……することができる。」を次のように訂正する。
「そして、伸設部先端のケース内方側にケースの案内係合部と係合する該伸設部先端より前方に突出した係合突起部を形成したことにより、ケースのガイド部に形成された逃げ凹み内への開閉ピンの挿入が邪魔されることがない。」
異議決定日 1999-08-19 
出願番号 実願平2-40859 
審決分類 U 1 651・ 161- YA (G11B)
U 1 651・ 121- YA (G11B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 片岡 栄一  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 村山 隆
矢崎 賀子
登録日 1996-11-07 
登録番号 実用登録第2524915号(U2524915) 
権利者 大日本印刷株式会社
東京都新宿区市谷加賀町1丁目1番1号
考案の名称 ディスクカートリッジのスライダー  
代理人 小西 淳美  
代理人 土井 育郎  
代理人 小西 淳美  
代理人 土井 育郎  

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