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審決分類 |
審判 一部無効 1項3号刊行物記載 無効とする。(申立て全部成立) E04G |
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管理番号 | 1016767 |
審判番号 | 審判1998-35673 |
総通号数 | 12 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-12-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-12-25 |
確定日 | 2000-04-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2500348号実用新案「作業用プラットホ?ム」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2500348号実用新案の明細書の請求項1及び2に記載された考案についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
〔1〕本件登録実用新案 本件実用新案登録第2500348号の請求項1及び2に係る考案(平成5年4月21日出願、平成8年3月28日設定登録、以下、「本件第1考案」及び「本件第2考案」という。)は、明細書と図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】略垂直に拡がる作業区域に沿って架設され、人の通路となる作業用プラットホームにおいて、前記プラットホームには、複数の蓋を前記作業区域に沿って、かつ該作業区域に近接させて並設し、これらの蓋を上側かつ該作業区域側に開くように枢支した作業用プラットホーム。 【請求項2】各蓋を相互に隣接させて並設した請求項1に記載の作業用プラットホーム。」 〔2〕当事者の主張 1.請求人の主張 請求人は、甲第1号証?甲第3号証を提出して、本件第1考案及び第2考案は、甲第1号証?甲第3号証に記載された考案であり、又はこれら甲各号証に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条1項又は2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、それらの実用新案登録は実用新案法37条1項1号の規定により無効とすべきである旨主張している。 また、請求人は、弁駁書において、ネット状のものが、足場乃至「人の通路となる部分」の構成材として作業用プラットホームに用いられていることは周知であると主張して甲第4号証を提出し、さらに、甲第5号証を提出して、甲第1号証と同様に人の通路となる作業用プラットホームである足場用プレート3に複数のハッチ10(蓋)を、本件考案と同一の配置関係で設けた構造の張り出し足場が記載されている、と主張している。 甲第1号証:実願昭63-107025号(実 開平2-85745号)のマイクロフィルム 甲第2号証:実願昭62-137606号(実 開平64-43141号)のマイクロフィル ム 甲第3号証:実公平2-13639号公報 甲第4号証:実開昭62-187142号公報 甲第5号証:実公昭57-60587号公報 2.被請求人の主張 被請求人は、「本件第1考案と本件第2考案は、人の通路となる部分に、蓋を設けるという点に特徴がある。ところが、甲第1号証及の補助足場aと甲第2号証の落下防護ネット4はいずれも人の通路となる部分の外側に設けられている。即ち、甲第1号証では、人の通路となる部分は足場形成用パイプ14の内側部分であり、補助足場aはあくまで補助にすぎない。また、甲第2号証の落下防護ネット4は防護ネットであって人の通路となる部分ではない。このように、甲第1号証と甲第2号証には、人の通路となる部分に、蓋を設けるという思想は開示されてない。甲第3号証にも、人の通路となる部分に、蓋を設けるという思想の開示はない。・・・したがって、本件第1考案と本件第2考案を、甲第1号証?甲第3号証に記載の考案に基いて、きわめて容易に考案することはできないので、同法第37条によってその登録を無効とすることはできない。」(答弁書3頁末行?4頁14行)と主張している。 〔3〕当審の判断 1.甲第1号証の記載事項 本件第1考案及び第2考案の出願前に国内において頒布された刊行物である甲第1号証には、 「(1)産業上の利用分野 本考案は、新、増、改築中等の建造物の前面に組み付けられた足場形成用パイプに着脱可能に固定される補助足場支持装置に関する。 (2)従来の技術 ・・・建築現場においては、建造物と足場形成用パイプとの間隙における上部からの飛来落下物による災害、作業員の墜落、転落事故防止のために、これらの間隙方向に足場形成用パイプにブラケット状に突設固定した補助足場が設けられることが義務づけられている。 (3)考案が解決しようとする問題点 しかしながら、従来の補助足場によれば、足場形成用パイプに支持枠を支持具で固定していたので、左官、タイル、塗装工事等の建築仕上作業時には、この補助足場が作業の妨げとなり、円滑、かつ能率的な仕上作業を行うことが困難であった。 ・・・・本考案は、かかる上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、・・・常時は補助足場支持状態に保持するとともに、建築仕上げ作業時には足場受杆を起立させて、高所作業の作業を高能率かつ安定的に遂行することのできる補助足場支持装置を提供することにある。」 (明細書2頁10行?4頁1行)、 「本考案は、建造物12の前面に縦横に組み付けられた足場形成用パイプ14に取り付けられた補助足場支持装置であって、任意の足場形成用パイプ14に着脱部材により着脱可能に取り付けられ、一端に突出部16を備えた支持枠18と、この支持枠18の基端部に一端を枢着され、前記支持枠18の上面であって突出部16方向にセクタ状回動可能な複数の足場受杆20と、この足場受杆20に、前後に進退摺動可能に設けられた進退アーム22と、を備え、前記足場受杆20を支持枠18上に倒伏載着させて進退アーム22を伸長させてなることを特徴とする補助足場支持装置10から構成される。」(同4頁4行?16行)、 「補助足場支持装置を形成するには、第3図に示すように足場受杆20を支持枠18上に倒伏載着させて進退アーム22を伸長させ、・・・支持枠18上に略水平状に保持された足場受杆20及び進退アーム22上に足場pを載着し、番線等で固定する。 常時は、このように補助足場を形成して建造物と足場形成用パイプとの間隙における上部からの飛来落下物による災害、作業員の墜落、転落事故等を防止するとともに、作業が進行して左官、タイル、塗装工事等の建築仕上作業時には、足場受杆20を起立回動してロック装置35により、略鉛直線状に保持して作業スペースを確保することにより、補助足場の要、不要により、簡単に同足場の形成、撤去作業を行なえることとなる。 そして、第1図に示すように、補助足場aの部分で建造物の仕上作業等が行われる場合には足場受杆20を起立させて作業を行う一方、他の足場形成用パイプと建造物との間隙部は足場受杆20を倒伏回動させて支持枠18上に載着状態に保持することになる。」(同8頁4行?9頁4行)の記載がある。 そして、第1図及び第3図には、足場形成用パイプ14に足場板が架設されている状態が記載されている。また、第1図には、補助足場aが上側で、建造物12側に開くように回動した状態が記載され、該補助足場aの両側に隣接して、補助足場が設けられている状態が記載されている。 以上の記載があることから、甲第1号証には、 「略垂直に拡がる建造物12に沿って架設される足場において、足場には、補助足場a及びその両側の補助足場を建造物12に沿って、かつ建造物12に近接させ、補助足場a及びその両側の補助足場を相互に隣接させて並設し、補助足場a及びその両側の補助足場を上側かつ建造物12側に開くように枢着した足場」 が記載されているものと認められる。 2.対比・判断 (1)本件第1考案について 本件第1考案と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、甲第1号証に記載された考案の「建造物12」は、本件第1考案の「作業区域」に相当する。 そして、甲第1号証に記載された考案の「足場」は、足場形成用パイプ14に架設された足場板と、補助足場a及び少なくとも補助足場aの両側の補助足場とにより構成されており、補助足場の部分も含めて、人の通路となるものと認められる。 そうすると、甲第1号証に記載された考案の「足場」、「補助足場a及びその両側の補助足場」、「枢着」は、本件第1考案の「作業用プラットホーム」、「複数の蓋」及び「枢支」に相当するから、本件第1考案と甲第1号証に記載された考案は、「略垂直に拡がる作業区域に沿って架設され、人の通路となる作業用プラットホームにおいて、前記プラットホームには、複数の蓋を前記作業区域に沿って、かつ該作業区域に近接させて並設し、これらの蓋を上側かつ該作業区域側に開くように枢支した作業用プラットホーム」である点で一致し、相違するところはない。 したがって、本件第1考案は、甲第1号証に記載された考案であるから、実用新案法3条1項3号の考案に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。 (2)本件第2考案について 本件第2考案と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、上記「(1)本件第1考案について」で述べたのと同様に、甲第1号証に記載された考案の「建造物12」、「足場」、「補助足場a及びその両側の補助足場」及び「枢着」は、本件第1考案の「作業区域」、「作業用プラットホーム」、「複数の蓋」及び「枢支」に相当するから、本件第1考案と甲第1号証に記載された考案とには、相違するところはない。 したがって、本件第2考案は、甲第1号証に記載された考案であるから、実用新案法3条1項3号の考案に該当し、実用新案登録を受けることができないものである。 〔4〕被請求人の主張に対して 被請求人は、「甲第1号証では、人の通路となる部分は足場形成用パイプ14の内側部分であり、補助足場aはあくまで補助にすぎない。」(答弁書4頁4?5行)と主張している。 しかしながら、足場形成用パイプ14を基準に、その内側が人の通路となる部分で、外側は人の通路とならない部分とする根拠はなく、また補助足場a及びその両側の補助足場が通路として用いることを妨げる構造を有しているものとは、甲第1号証の記載からは認められず、さらに足場形成用パイプ14の内側と外側には共に、足場板が同一高さに固定されており(第1図、第3図参照。)、人の通路として内側と外側を区別するような記載は、甲第1号証に特にみられないから、甲第1号証に記載された補助足場a及びその両側の補助足場は、人の通路となる部分を構成すると解するのが相当と認められる。 したがって、被請求人の主張は採用できない。 〔5〕むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する他の無効理由を検討するまでもなく、本件第1考案及び第2考案の実用新案登録は、実用新案法3条1項の規定に違反してなされたものであり、実用新案法37条1項1号に該当し、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-02-09 |
結審通知日 | 2000-02-22 |
審決日 | 2000-03-07 |
出願番号 | 実願平5-20687 |
審決分類 |
U
1
122・
113-
Z
(E04G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小山 清二 |
特許庁審判長 |
幸長 保次郎 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 鈴木 公子 |
登録日 | 1996-03-28 |
登録番号 | 実用新案登録第2500348号(U2500348) |
考案の名称 | 作業用プラットホ?ム |
代理人 | 鳥居 和久 |
代理人 | 土橋 秀夫 |
代理人 | 鎌田 文二 |
代理人 | 江藤 剛 |
代理人 | 東尾 正博 |