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審決分類 審判 全部申し立て   F16K
審判 全部申し立て   F16K
管理番号 1020884
異議申立番号 異議1998-72187  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-24 
確定日 2000-07-13 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2551946号「ダブルパイロット形切換弁」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2551946号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2551946号(実用新案登録出願日:平成5年5月12日、登録日:平成9年7月4日)は、その後、請求項1及び2について登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年9月29日に訂正請求がなされ、これに対してなされた訂正拒絶理由通知の指定期間内である平成11年3月30日に意見書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1).平成10年9月29日付けで提出された訂正請求書に添付した訂正明細書の請求項1に係る考案(以下「訂正請求項に係る考案」という。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】圧力流体の供給ポート、2個の出力ポート及び排出ポート、これらの出力ポートを供給ポートと排出ポートとに切換えて連通させる弁体、並びに該弁体の軸方向両側に第1、第2のパイロット室を有する主弁と、第1、第2のパイロット室にパイロット流体を給排する第1、第2のパイロット電磁弁とを備え、第1、第2のパイロット電磁弁から第1、第2のパイロット室に給排されるパイロット流体によって上記弁体を駆動するダブルパイロット形切換弁において、
上記主弁の軸方向両側に、押圧によって上記供給ポートの流体を第1、第2のパイロット室に直接供給するための第1、第2の手動操作釦を有する第1、第2の手動操作部を設けるとともに、上記第1の手動操作部側に第1のパイロット弁への通電を表示する第1のランプを、第2の手動操作部側に第2のパイロット弁への通電を表示する第2のランプを、それぞれ設け、
上記手動操作部のいずれか一方の軸方向一側に、第1、第2のパイロット弁を並設した、
ことを特徴とするダブルパイロット形切換弁。」
(2).引用刊行物記載の考案
訂正請求項に係る考案に対して、当審で通知した訂正拒絶理由で、下記刊行物1及び2(登録異議申立の理由に引用された甲第1号証及び甲第3号証)を引用した。
刊行物1:実願平2-122339号(実開平4-78377号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
刊行物2:実願昭60-21434号(実開昭61-139372号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
(a)刊行物1には、以下の事項が記載されている。
第6頁第11?18行中に「詳しくは、前記主弁1は、主弁本体4の中心に軸孔5を有し、この軸孔5に連通する入力ポートP、第1および第2の出力ポートA,B、第1および第2の排出ポートRa,Rbが形成されている。軸孔5にスプール状の主軸9が摺動自在に設けられ、この主軸9には小径部9aと大径部9bとが交互に形成され,この大径部9bにシール10が嵌着されている。」と記載され、
第8頁第19行?第9頁第7行中に「第1および第2のピストン側流体室18a,18b内のパイロット圧により摺動する第1および第2のピストン21a,21bで主軸9を駆動できるようになっている。
前記第1および第2の手動操作装置2a,2bは手動によりパイロットエアの流動方向を切換えるもので、パイロット弁本体11およびエンドカバー7内に配置され、ともに上向きに指向している。」と記載され、
第10頁第18行?第12頁第8行中に「第1のパイロット弁3aをOFFにし、かつ第2のパイロット弁3bをONにすると、第1図に示すように、第1のパイロット弁3aでは、第1のプランジャ15aがプランジャばね24の付勢力により固定コア14から離間する。このため第1のポペット19aが第1のポペット側弁座12aに押付けられるので、第1のポペット側弁座12aは閉じ、第1のフラッパ20がフラッパばね29の付勢力に抗して第1のフラッパ側弁座13aから離間し、第1のフラッパ側弁座13aが開く。
第2のパイロット弁3bでは、第2のプランジャ15bがプランジャばね24の付勢力に抗して固定コア14に磁気的に吸引される。このため第2のポペット19bが第2のポペット側弁座12bから離間するので、第2のポペット側弁座12bは開き、第2のフラッパ20bがフラッパばね29の付勢力により第2のフラッパ側弁座13bに押付けられ、第2のフラッパ側弁座13bが閉じる。
その結果、第1のピストン側流体室18a内のパイロットエアはパイロット通路6a、第1のフラッパ側弁座13a、パイロット通路6cを経てパイロット排出ポート28から排出可能な状態となる。
入力ポートPからの圧縮エアは、軸孔5,パイロット通路6を経て第2のポペット側流体室17bにのみ流入し、さらにパイロット通路6b、第2の手動操作装置2bの軸孔5bを経てポート40から第2のピストン側流体室18bに供給される。」と記載され、
第12頁第19行?第14頁第8行中に「次いで、第2のパイロット弁3bをOFFにし、かつ第1のパイロット弁3aをONにすると、前記の場合と逆のプロセスにより、主軸9は左方向に移動し、ストローク左端の位置で停止する。
このように、主軸9がストローク左端の位置にあるときは、入力ポートPからの圧縮エアは軸孔5を経て第1の出力ポートAからアクチュエータに供給される。また、アクチュエータからの圧縮エアは第2の出力ポートB、軸孔5を経て第2の排出ポートRbから排出される。
ここで、第1のパイロット弁3aの使用不能により第1の手動操作装置2aを使って手動で第1のパイロット弁3aを開弁させる場合、第1の手動操作装置2aにおいて、操作部32を手動により押下げると、操作軸30が下向きに移動し、これに伴い、テーパ部31も下向きに移動し、第1のプランジャ15aに当たり、その後は、テーパ作用により、第1のプランジャ15aは固定コア14側へ移動し、これにより第1のパイロット弁3aは開弁状態となる。
また、第2のパイロット弁3bの使用不能により第1の手動操作装置2aを使って手動で第2のパイロット弁3bに代えて、第2のピストン側流体室18bにパイロットエアを供給する場合、第2の手動操作装置2bにおいて、操作部32を手動により押下げると、操作軸30が下向きに移動し、これに伴い、弁体39が下向きに移動し、ポート40を越え、パイロット通路6内のパイロットエアは軸孔5bを経てポート40から第2のピストン側流体室18bに供給される。」と記載され、
したがって、上記の各記載及び第1図等の記載からみて、刊行物1には以下の考案が記載されている。
圧縮エアの入力ポートP、2個の出力ポートA、B及び排出ポーRa、Rbこれらの出力ポートA、Bを入力ポートPと排出ポートRa、Rbとに切換えて連通させる主軸9、並びに該主軸9の軸方向両側に第1、第2のピストン側流体室18a、18bを有する主弁本体4と、第1、第2のピストン側流体室18a、18bにパイロットエアを給排する第1、第2のパイロット弁3a、3bとを備え、第1、第2のパイロット弁3a、3bから第1、第2のピストン側流体室18a、18bに給排されるパイロットエアによって上記主軸9を駆動する電磁弁において、
上記主弁本体4の軸方向両側に、押圧によって上記入力ポートPの圧縮エアを第1、第2のピストン側流体室18a、18bに直接供給するための第1、第2の操作軸30を有する第1、第2の手動操作装置2a、2bを設けるとともに、
上記手動操作装置2a、2bのいずれか一方の軸方向一側に、第1、第2のパイロット弁3a、3bを並設した電磁弁。
(b)刊行物2には、以下の事項が記載されている。
第1頁第5?13行中に「1.パイロット弁の操作力によって主弁の流路を切換えるパイロット形電磁弁において、上記主弁に、パイロット弁への給電端子、電源接続用のプラグ並びにこれらを電気的に接続する印刷配線した回路を設けた印刷配線板を取付け、上記パイロット弁の受電端子を、該パイロット弁の主弁に対する取付けに伴って上記給電端子と電気的に接続されるように圧挿入可能にしたことを特徴とする印刷配線板付パイロット形電磁弁。」と記載され、
第4頁第9行?第6頁第4行中に「第1図において、ベース1には、入力ポート2,第1及び第2出力ポート3a、3b及び第1及び第2排出ポート4a、4bがそれぞれ穿設されている。
上記ベース1上にシール部材を介して取付けられた主弁5の弁本体6は、その長手方向に弁孔7及びパイロット孔8が貫通されており、該弁孔7は、その拡径部に穿設された開口によって上記入力ポート2,第1及び第2出力ポート3a、3b並びに第1及び第2排出ポート4a、4bに連通すると共に、入力ポート2に連通する拡径部に設けられた連通孔8aによって、上記パイロット孔8にも連通している。
上記弁本体6の上部においては、周辺の突出部9,9間に収容室10が形成されている。また、上記弁本体6の両端面は、上記弁孔7に連通する連通孔11及びパイロット孔8に連通するパイロット連通孔12が穿設されたエンドプレート13,13によって閉鎖されており、上記弁孔7内に挿入されたスプール14によって、周知の5ポート弁が形成されている。また、上記エンドプレート13,13上には、周知のパイロット弁17,17が、その電磁部18を上記収容室10上に突出させて取り付けられている。
上記突出部9,9上に係合させた印刷配線板20は、その両端にパイロット弁17,17に対する給電端子21,21が、また上記収容室10と反対側の上面の中央に電源接続用のプラグ22が、その両側にパイロット弁17,17の作動の表示灯23,23が設けられており、さらに収容室10側の面には、電磁弁の作動等に必要な抵抗、集積回路等からなる電気、電子部品24,・・が取付けられている。」と記載され、
したがって、上記の各記載及び第1図等の記載からみて、刊行物2には以下の考案が記載されている。
圧力流体の入力ポート2、2個の出力ポート3a、3b及び排出ポート4a、4b、これらの出力ポート3a、3bを入力ポート2と排出ポート4a、4bとに切換えて連通させるスプール14、並びに該スプール14の軸方向両側に第1、第2のパイロット室を有する主弁5と、第1、第2のパイロット室にパイロット流体を給排する第1、第2のパイロット弁17,17とを備え、第1、第2のパイロット弁17,17から第1、第2のパイロット室に給排されるパイロット流体によって上記スプール14を駆動するパイロット形電磁弁において、
上記主弁5の軸方向一側に、第1のパイロット弁17、第1の表示灯23を、主弁5の軸方向他側に、第2のパイロット弁17、第2の表示灯23を設け、前記2つの表示灯23,23は前記2つのパイロット弁17,17の作動を表示するようにしたパイロット形電磁弁。
(3).対比・判断
(a)そこで、訂正請求項に係る考案と上記刊行物1に記載された考案とを対比すると、刊行物1に記載された考案の「圧縮エア」、「入力ポート」、「主軸」、「主弁本体」、「ピストン側流体室」、「パイロットエア」、「パイロット弁」、「電磁弁」、「操作軸」、「手動操作装置」は、それぞれ訂正請求項に係る考案の「圧力流体」、「供給ポート」、「弁体」、「主弁」、「パイロット室」、「パイロット流体」、「パイロット電磁弁」、「ダブルパイロット形切換弁」、「手動操作釦」、「手動操作部」に対応している。
したがって、両者は、
「圧力流体の供給ポート、2個の出力ポート及び排出ポート、これらの出力ポートを供給ポートと排出ポートとに切換えて連通させる弁体、並びに該弁体の軸方向両側に第1、第2のパイロット室を有する主弁と、第1、第2のパイロット室にパイロット流体を給排する第1、第2のパイロット電磁弁とを備え、第1、第2のパイロット電磁弁から第1、第2のパイロット室に給排されるパイロット流体によって上記弁体を駆動するダブルパイロット形切換弁において、上記主弁の軸方向両側に、押圧によって上記供給ポートの流体を第1、第2のパイロット室に直接供給するための第1、第2の手動操作釦を有する第1、第2の手動操作部を設けるとともに、上記手動操作部のいずれか一方の軸方向一側に、第1、第2のパイロット弁を併設した、ダブルパイロット形切換弁。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点:
訂正請求項に係る考案では、「第1の手動操作部側に第1のパイロット弁への通電を表示する第1のランプを、第2の手動操作部側に第2のパイロット弁への通電を表示する第2のランプを、それぞれ設けた」構成を有しているのに対して、刊行物1に記載された考案では、ランプを有していない点。
(b)そこで、上記刊行物2(甲第3号証)に記載された考案を検討すると、
刊行物2に記載された考案の「入力ポート」、「スプール」、「弁本体」、「パイロット弁」、「パイロット形電磁弁」、「表示灯」は、それぞれ訂正請求項に係る考案の「供給ポート」、「弁体」、「主弁」、「パイロット電磁弁」、「ダブルパイロット形切換弁」、「ランプ」に相当する。
また、刊行物2には、前述のように「パイロット弁17,17の作動の表示灯23,23,が設けられており」と記載され、また、第1図において各表示灯23,23が遠くに離れた側のパイロット弁17,17の作動を表示すると解する理由はなく、隣接する側のパイロット弁の作動を表示するものと解するのが技術常識であるから、この刊行物2に記載された考案の主弁軸方向の両側に設けられた2つの表示ランプは、第1の表示ランプが、第1のパイロット電磁弁への通電を表示するとともに、第2の表示ランプが、第2のパイロット電磁弁への通電を表示するものと認められる。
これらのことから、刊行物2に記載された考案は、「圧力流体の供給ポート、2個の出力ポート及び排出ポート、これらの出力ポートを供給ポートと排出ポートとに切換えて連通させる弁体、並びに該弁体の軸方向両側に第1、第2のパイロット室を有する主弁と、第1、第2のパイロット室にパイロット流体を給排する第1、第2のパイロット電磁弁とを備え、第1、第2のパイロット電磁弁から第1、第2のパイロット室に給排されるパイロット流体によって上記弁体を駆動するダブルパイロット形切換弁」である点で、訂正請求項に係る考案及び刊行物1に記載された考案と共通する技術分野に属する考案であり、「主弁軸方向の両側に、2つの表示ランプを設け、第1の表示ランプは、第1のパイロット電磁弁の作動を表示し、第2の表示ランプは、第2のパイロット電磁弁の作動を表示する」構成を備えているものと認められる。
(c)したがって、上記刊行物1に記載された考案に、上記刊行物2に記載された第1,第2のパイロット電磁弁の作動を表示する第1,2のランプを設け、その配置を、第1の手動操作部側に第1のパイロット弁への通電を表示する第1のランプを、第2の手動操作部側に第2のパイロット弁への通電を表示する第2のランプを配置することは、当業者であればきわめて容易に推考しうるものである。
したがって、訂正請求項に係る考案は、刊行物1及び刊行物2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
(4).むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定によって準用される特許法第120条の4第3項の規定によりさらに準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
3.登録異議の申立についての判断
(1).本件請求項1,2に係る考案
本件請求項1及び請求項2に係る考案(以下、それぞれ「本件請求項1に係る考案」及び「本件請求項2に係る考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、それぞれ、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】圧力流体の供給ポート、2個の出力ポート及び排出ポート、これらの出力ポートを供給ポートと排出ポートとに切換えて連通させる弁体、並びに該弁体の軸方向両側に第1、第2のパイロット室を有する主弁と、第1、第2のパイロット室にパイロット流体を給排する第1、第2のパイロット電磁弁とを備え、第1、第2のパイロット電磁弁から第1、第2のパイロット室に給排されるパイロット流体によって上記弁体を駆動するダブルパイロット形切換弁において、
上記主弁の軸方向両側に、押圧によって上記供給ポートの流体を第1、第2のパイロット室に直接供給するための第1、第2の手動操作釦を有する第1、第2の手動操作部を設け、
上記手動操作部のいずれか一方の軸方向一側に、第1、第2のパイロット弁を並設した、
ことを特徴とするダブルパイロット形切換弁。
【請求項2】主弁第1の手動操作部側に、第1のパイロット弁への通電を表示する第1のランプを、第2の手動操作部側に、第2のパイロット弁への通電を表示する第2のランプをそれぞれ設けた、ことを特徴とする請求項1に記載したダブルパイロット形切換弁。」
(2).取消理由の概要
平成10年7月16日付けで通知した取消理由の概要は、▲1▼本件請求項1に係る考案は、本件実用新案登録出願前に頒布された下記刊行物1(登録異議申立の理由に引用された甲第1号証)に記載された考案と同一の考案であり、実用新案法第3条1項3号に該当し、また、▲2▼本件請求項2に係る考案は、本件実用新案登録出願前に頒布された下記刊行物1及び2(登録異議申立の理由に引用された甲第1号証、甲第2号証)に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるというものである。
刊行物1:実願平2-122339号(実開平4-78377号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下甲第1号証という。)
刊行物2:実願平3-1894号(実開平4-99486号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下甲第2号証という。)
(3).引用刊行物記載の考案
(a)上記甲第1号証には、上記「2.(2).(a)」に記載のとおりの考案が記載されている。
(b)甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
【実用新案登録請求の範囲】の欄に、「【請求項1】外側表面に表示部が設けられているとともに、作動状態の視認用の発光部が内設されている流体圧機器であって、前記表示部と前記発光部の透光部とが前記外表面側において互いに近接されて配置され、この近接された前記表示部と前記発光部の透光部とが互いに共通する透視可能な表示用カバーによって被覆されていることを特徴とする流体圧機器。」と記載され、
段落【0016】?【0018】に「図1に示すように、本実施例の流体圧機器1は、弁本体2とこの両側に結合されたパイロット弁3とを備えたパイロット式ダブルソレノイド形の電磁弁とされている。
前記弁本体2内には、パイロット弁3からの補助圧縮空気によって所定の流路を切り換える主軸(図示せず)が軸方向に沿って変位自在に収容されている。
一方、前記パイロット弁3には、ソレノイド部(図示せず)が形成され、このソレノイド部によりパイロット弁3のポペット(図示せず)の開閉作動がなされる構造とされている。」と記載され、
段落【0028】の第2行目以下に「また、第2嵌合用凹部10の底面における印刷ラベル12の両側近辺には、穿設孔からなる透光部13および掛止孔14が一対配置されている。」と記載され、
段落【0029】に「カバー4の下側の弁本体2には、透光部13に対応して発光ダイオードなどからなる発光部(図示せず)が一対内設され、この発光部の発光が透光部13を通じて外部に透光されるようになっている。」と記載され、
段落【0043】の第6行目以下にまた、前記発光部(図示せず)の透光部13が透視可能な表示用カバー15によって被覆されていることにより、その透光部13を任意の形状に変更することが可能とされ、この透光部13の任意の形状への変更により表示灯による作動状態の識別機能の明確化ないし拡大化を図ることができる。」と記載され、
したがって、上記の各記載及び図1乃至図10等の記載からみて、甲第2号証には以下の考案が記載されている。
所定の流路を切り換える主軸を有する弁本体と、第1、第2のパイロット弁からの補助圧縮空気によって上記主軸を軸方向に駆動するパイロット式ダブルソレノイド形の電磁弁において、
弁本体の一側に、第1のパイロット弁及び発光部を、弁本体の他側に、第2のパイロット弁及び発光部を設け、パイロット弁の作動を表示するようにしたパイロット式ダブルソレノイド形の電磁弁。
(4).本件請求項1に係る考案について
本件請求項1に係る考案と上記甲第1号証に記載された考案とを対比すると、
「圧力流体の供給ポート、2個の出力ポート及び排出ポート、これらの出力ポートを供給ポートと排出ポートとに切換えて連通させる弁体、並びに該弁体の軸方向両側に第1、第2のパイロット室を有する主弁と、第1、第2のパイロット室にパイロット流体を給排する第1、第2のパイロット電磁弁とを備え、第1、第2のパイロット電磁弁から第1、第2のパイロット室に給排されるパイロット流体によって上記弁体を駆動するダブルパイロット形切換弁において、
上記主弁の軸方向両側に、押圧によって上記供給ポートの流体を第1、第2のパイロット室に直接供給するための第1、第2の手動操作釦を有する第1、第2の手動操作部を設け、
上記手動操作部のいずれか一方の軸方向一側に、第1、第2のパイロット弁を並設したダブルパイロット形切換弁。」の点で一致し、甲第1号証に記載された考案は、本件請求項1に係る考案の構成をことごとく備えているので、本件請求項1に係る考案は、上記甲第1号証に記載された考案と同一の考案であり、実用新案法第3条1項3号に規定の考案に該当する。
(5).本件請求項2に係る考案について
(a)本件請求項2に係る考案と上記甲第1号証に記載された考案とを対比すると、
本件請求項2に係る考案は、前記訂正請求項に係る考案と実質的に同一の考案と認められ、したがって、両者の一致点及び相違点は、前記「2.(3).(a)」で検討したとおりのものと認める。
(b)そこで、上記甲第2号証に記載された考案を検討すると、
甲第2号証に記載された考案の「主軸」、「補助圧縮空気」、「弁本体」、「発光部」、「パイロット式ダブルソレノイド形の電磁弁」は、それぞれ本件請求項2に係る考案の「弁体」、「パイロット流体」、「主弁」、「ランプ」、「ダブルパイロット形切換弁」に相当する。
また、甲第2号証には、前述のように「流体用機器には作動状態の視認用の発光部が内設されている。」、「本実施例の流体圧機器1は、弁本体2とこの両側に結合されたパイロット弁3とを備えたパイロット式ダブルソレノイド形の電磁弁とされている。」、及び「カバー4の下側の弁本体2には、透光部13に対応して発光ダイオードなどからなる発光部が一対内設され、この発光部の発光が透光部13を通じて外部に透光されるようになっている。」との記載があり、これらの記載からみて、透光部13は、パイロット弁3,3の作動を表示しているものと認められる。
また、甲第2号証の第1図及び第2図において、各表示用透光部13が遠くに離れた側のパイロット弁3の作動を表示すると解する理由はなく、隣接する側のパイロット弁3の作動を表示するものと解するのが技術常識である。
これらのことから、甲第2号証に記載された考案は、「所定の流路を切り換える弁体を有する主弁と、第1、第2のパイロット電磁弁からのパイロット流体によって上記弁体を軸方向に駆動するダブルパイロット形切換弁において、」である点で、本件請求項2に係る考案及び甲第1号証に記載された考案と共通する技術分野に属する考案であり、「主弁軸方向の両側に、2つの表示ランプを設け、第1の表示ランプは、これに隣接する第1のパイロット電磁弁の作動を表示し、第2の表示ランプは、またこれに隣接する第2のパイロット電磁弁の作動を表示する」構成を備えているものと認められる。
(c)したがって、上記甲第1号証に記載された考案に、上記甲第2号証に記載された第1,第2のパイロット電磁弁の作動を表示する第1,2のランプを設け、その配置を、第1の手動操作部側に第1のパイロット弁への通電を表示する第1のランプを、第2の手動操作部側に第2のパイロット弁への通電を表示する第2のランプを配置することは、当業者であればきわめて容易に推考しうるものである。
したがって、本件請求項2に係る考案は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条2項に規定により実用新案登録を受けることができない。
(5).むすび
以上のとおり、本件請求項1及び請求項2に係る考案は、特許法等の一部を改正する法律(平成2年法律第30号)により改正された実用新案法第3条第1項第3号及び同法第3条第2項の規定によりそれぞれ実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件請求項1及び請求項2に係る考案についての実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年制令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、上記のとおり決定する。
異議決定日 1999-06-22 
出願番号 実願平5-29877 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (F16K)
U 1 651・ 113- ZB (F16K)
最終処分 取消    
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 清田 栄章
清水 信行
登録日 1997-07-04 
登録番号 実用登録第2551946号(U2551946) 
権利者 エスエムシー株式会社
東京都港区新橋1丁目16番4号
考案の名称 ダブルパイロット形切換弁  
代理人 林 宏  
代理人 内山 正雄  

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