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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない G01R
審判 全部無効 1項1号公知 無効としない G01R
審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない G01R
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない G01R
管理番号 1025034
審判番号 審判1999-35763  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-21 
確定日 2000-09-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第2535841号実用新案「検電器」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯・本件考案
実用新案登録第2535841号(昭和63年3月9日出願、平成9年2月21日設定登録。)に係る考案はその実用新案登録明細書及び図面の記載からみて実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、本件考案という。)

【請求項1】被検知電路と電気的に結合される検知先端部を有し、この検知先端部からの入力電圧に基づいて被検知電路が充電されているか否か、及び、低圧又は高圧のいずれで充電されているかを低圧及び高圧検出回路により検出し、上記検知先端部を、抵抗値が数十KΩ?1MΩを有し、被検知電路の短絡を防止する抵抗体物質で構成したことを特徴とする検電器。

2.請求人の主張
(1)請求人は、本件考案は本件出願前に頒布された甲第2号証に記載された考案と同一または甲第2号証に記載された考案に基づききわめて容易に考案することができたものであるから、本件考案は実用新案法第3条第1項第3号または同条第2項に該当し、同法第37条第1項の規定により無効にすべきものである、と主張している。
(2)請求人は、甲第4号証に記載されたように、甲第2号証に「被検体接触端子1の材質としては、導電性ゴムが好ましく、又他に導電プラスチック、導電塗料、金属製着膜等も挙げられる。」と記載されていることを根拠として、本件考案はその出願前公知公用であるから、実用新案法第3条第1項第1号、第2号に該当し、同法第37条第1項の規定により無効にすべきものである、と主張している。
そして、以下の証拠方法を提出している。
甲第1号証:実用新案登録第2535841号公報
甲第2号証:実願昭58-98686号(実開昭60-7076号)のマイクロフィルム
甲第3号証の1乃至3:被請求人より請求人に送達された書留内容証明郵便
甲第4号証:請求人より被請求人に送達された書留内容証明郵便による回答書

3.甲第2号証の記載事項
甲第2号証(実願昭58-98686号(実開昭60-7076号)のマイクロフィルム)には図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)
「被検体接触端子と高インピーダンス素子と電界効果型液晶から成る液晶表示部とアース電極から成ることを特徴とする検電器」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)
「第1図は本考案一実施例の回路を示すもので、被検体接触端子1に高インピーダンス素子2を介して液晶表示部3を接続し、さらにアース電極4を接続したものである。ここで高インピーダンス素子2として抵抗値の大きい高抵抗5使用し、又液晶表示部3は電界効果液晶6を導電性電極7、7'の間にはさんだ構成となっている。
高抵抗5の抵抗値としては数百KΩ?数十MΩ、好ましくは1?10MΩである。」(第2頁第2行?11行)
(ウ)
「次に本考案の作用を説明すると、被検体接触端子1を被検体に接触して、該端子1に電圧を印加されると極微少な電流が高抵抗5、液晶表示部3、アース電極4を介して人体に流れる。この際液晶表示部3に絵柄、マーク、数字、文字等の任意の表示がなされて高電位であることを確認出来る。
本実施例において、液晶表示部3に電界効果型液晶6を使用しているが、電界効果型液晶6は2?3Vの電圧があれば作動する為電流は極僅かしか必要としないうえに、電界効果型液晶6は電荷を蓄積する作用があるので、該液晶6の電極7、7'間にチャージされた電荷によって電気-光学的効果がある程度持続する為、静電気の検出も可能であるという利点がある。」(第2頁第12行?第3頁第6行)
(エ)
「第5図は本考案検電器の第1図の回路を用いた実際の一実施例を示すもので、1は被検体接触端子、3は液晶表示部、4はアース電極である。被検体接触端子1の材質としては、導電性ゴムが好ましく、又他に導電プラスチック、導電塗料、金属装着膜等も挙げられる。」(第5頁第10?13行)
なお、甲第3,4号証は、本件実用新案登録の新規性進歩性に関する無効理由とは関係のない証拠であるから、その記載事項については検討しない。

4.当審の判断
4-1.主張(1)について
(a)甲第2号証の「被検体」、「被検体接触端子」、「液晶表示部」はそれぞれ、本件考案の「被検知電路」、「検知先端部」、「検出回路」に相当することは明らかである。
(b)甲第2号証の記載事項(ウ)からは、液晶表示部において、被検体接触端子からの入力電圧に基づいて被検体が充電されているか否かを検出することは理解できるが、被検体の充電レベルが低圧又は高圧のいずれで充電されているかを検出することは記載も示唆もされておらず、甲第2号証に記載のものは「低圧及び高圧検出回路」に相当する構成を備えていない。
(c)甲第2号証の記載事項(エ)からは、被検体接触端子は導電性ゴム、導電性プラスチック等の抵抗体物質で構成することができることは理解できるものの、被検体接触端子を被検知電路の短絡を防止する抵抗体物質で構成することまで示唆するものではない。
(d)甲第2号証の記載事項(イ)からは、高抵抗は被検体接触端子と液晶表示部との間に接続され、液晶表示部の保護素子として機能することは理解できるものの、被検体接触端子を被検知電路の短絡を防止する抵抗体物質で構成することまで示唆するものではない。また、高抵抗は被検体接触端子とは別の構成であるから、被検体接触端子が数百KΩ?数十MΩの抵抗値を有する抵抗体であることを示すものでもない。
上記(a)?(d)の考察より、本件考案と甲第2号証記載のものは、「被検知電路と電気的に結合される検知先端部を有し、この検知先端部からの入力電圧に基づいて被検知電路が充電されているか否かを検出回路により検出し、上記検知先端部を抵抗体物質で構成したことを特徴とする検電器。」である点で一致し、以下の相違点1、2で相違する。
(相違点1)
本件考案は「検知先端部からの入力電圧に基づいて被検知電路が、低圧又は高圧のいずれで充電されているかを低圧及び高圧検出回路により検出」しているのに対し、甲第2号証記載のものは、このような構成を備えていない点
(相違点2)
本件考案は「上記検知先端部を、抵抗値が数十KΩ?1MΩを有し、被検知電路の短絡を防止する抵抗体物質で構成」しているのに対し、甲第2号証記載のものは、被検体接触端子によって被検知電路の短絡を防止することを意図したものではなく、また、その抵抗値がどの程度の範囲のものかも明らかでない点
そして、本件考案は上記相違点1、2の構成により、「本考案によれば、低圧検出回路及び高圧検出回路を有するので、被検知電路が低圧又は高圧のいずれであっても充電可能となり、低圧検電用又は高圧検電用として兼用できて汎用性が向上」する、「検知先端部を抵抗値が数十KΩ?1MΩの抵抗体物質で構成したから、検電時、被検知電路に接触する検知先端部で被検知電路を短絡させることが抑止できて停電事故の発生を未然に防止することが確実となって安全性が大幅に向上する。」という本件考案特有の作用効果を奏するものである。
したがって、本件考案は甲第2号証に記載された考案であるとすることも、甲第2号証に記載された考案に基づききわめて容易に考案をすることができたものとすることもできない。

4-2.主張(2)について
上記「4-1.主張(1)について」の判断で示したとおり、本件考案が甲第2号証に記載された考案であるとすることができない以上、本件考案は甲第2号証の記載を根拠として、その出願前に日本国内において公然知られた考案、あるいは公然実施をされた考案、であるとすることもできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件考案を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2000-07-06 
出願番号 実願昭63-31761 
審決分類 U 1 112・ 111- Y (G01R)
U 1 112・ 113- Y (G01R)
U 1 112・ 112- Y (G01R)
U 1 112・ 121- Y (G01R)
最終処分 不成立    
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 渡邊 聡
榮永 雅夫
登録日 1997-02-21 
登録番号 実用新案登録第2535841号(U2535841) 
考案の名称 検電器  
代理人 井上 重三  
代理人 江原 省吾  
代理人 城村 邦彦  
代理人 田中 秀佳  
代理人 白石 吉之  

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