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審決分類 |
審判 F03B |
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管理番号 | 1028329 |
審判番号 | 審判1991-11879 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1991-06-11 |
確定日 | 1998-07-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1796367号実用新案「電気式水車自動給気装置」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1、本件登録第1796367号実用新案(以下「本件実用新案」という。)は、昭和58年11月21日に出願され、平成1年3月24日に出願公告(実公平1ー10447号)された後、平成1年11月13日に設定登録されたものであって、本件実用新案の要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載され次のとおりのものと認める。 「水車に供給される水量を制御するガイドベーンと、このガイドベーンの開度を検出し該検出結果に対応した電気的検出信号を出力するガイドベーン開度検出手段と、前記水車に供給された水を吸出す吸出し管と、この吸出し管内に空気を供給する給気管と、この給気管を介して前記吸出し管内に供給される空気量を制御する電動式の給気弁と、この給気弁の開度を検出し該検出結果に対応した電気的検出信号を出力する給気弁開度検出手段と、前記ガイドベーンの開度と該開度に対応する前記給気弁の開度とが予め設定された開度設定テーブルを有し、前記ガイドベーンの開度に対応する前記給気弁の開度を電気的な開度信号として取り出す給気弁開度設定手段と、この給気弁開度設定手段の開度設定テーブルに基づいて、前記ガイドベーン開度設定手段から出力される検出信号に対応した前記給気弁の開度信号を求め、該開度信号と前記給気弁開度検出信号から得られる検出信号とを比較して、該検出信号が前記開度信号に対応するように前記給気弁の開度を制御する比較制御手段とを具備してなることを特徴とする電気式水車自動給気装置。」 2、これに対し、請求人は、本件実用新案は、請求人山口照正により考案されたものであり、また請求人山口照正は実用新案登録を受ける権利を被請求人等に譲渡もしていない。したがって本件実用新案登録は、考案者でない者であってその考案について実用新案登録を受ける権利を承継しないものの実用新案登録出願に対してなされたものであり、実用新案法37条第1項第4項の規定により無効にされるされるべきものである旨主張する。 一方、被請求人は、本件実用新案は、願書に記載された本多征一ならびに芦野政五郎の両名が考案したもので、その考案について実用新案登録を受ける権利を承継した被請求人が実用新案登録出願をしたのであって、請求人の主張は全く根拠のないものである旨主張している。 3、そこで、請求人が本件実用新案を考案したものであるかどうかを検討する。 請求人は、前記主張事実を立証する為、請求人自身による陳述書(甲第1号証)を提出すると共に、証拠方法として、甲第2号証の1乃至4(回路設計図)、甲第3号証の1乃至25(納品書)、甲第4号証の1及び2(写真)、甲第5号証の1乃至5(回路設計原図)、甲第6号証(ブロック図)、甲第7号証(回答書)、甲第8号証(納品・見積り・入金一覧表)、甲第9号証の1乃至15(入金通帳)、甲第10号証の1及び2(手形)、甲第11号証の1及び2(見積書)、甲第12号証の1乃至24(領収書)、甲第13号証(部品表)、甲第14号証の1乃至9(パネル納品書)、甲第15号証の1乃至8(パネル着色納品書)、甲第16号証の1乃至17(B0X支柱納品書)、甲第17号証の1乃至22(文字彫刻納品書)、甲第18号証の1乃至4(自動給気弁納品書)、甲第19号証の1ないし13(デジタルメータ納品書)、甲第20号証の1乃至15(マトリックスボード,ダイオードプラグ納品書)、甲第21号証の1ないし8(基板納品書)、甲第22号証の1乃至15(回路部品納品書)、甲第23号証(被請求人関係者名刺)及び甲第24号証(陳述書)を提出している。 先ず、請求人が考案し、被請求人に納品したとする自動給気装置の制御部の回路設計図(甲第2号証の1?4)について検討すると、該回路設計図は、いずれも右下隅に自動給気弁と記載されているだけであり、誰が何時作成したものか全く特定することができない。請求人は、「設計者・設計時期については、請求人が証拠として提出する甲第5号証の1乃至5の回路設計原図で特定できる。」と主張しているが、該甲第5号証がどのような性格のものなのか不明であるとともに、該甲第5号証に示された回路設計図と前記甲第2号証に示された回路設計図との関係についても不明であり、該甲第5号証をもってしても、少なくとも甲第2号証回路設計図の設計時期については特定できたとは認められない。また、甲第2号証の1乃至4の回路設計図に示された自動給気弁と甲3号証に記載された自動給気(吸気)弁及び甲第4号証(写真)との関連が不明であり、更に、甲第8?12号証及び甲第14?21号証に示されたものをもってしても当該関連は依然として不明である。 次に、本件実用新案登録が、いわゆる冒認出願に対してなされたものであるとするのに前提となる本件実用新案と請求人が考案したとする甲第2号証、就中、甲第2号証の1(回路設計図)に記載された考案との同一性について検討する。 前記甲第2号証の1(回路設計図)を見ると、そこには、GVの2.5KΩポテンショメータ、MVの2.5KΩポテンショメータ、設定器、比較器及びMotor等からなる制御回路が示されている。しかしながら、該回路設計図には、右下隅に自動給気弁と記載されているだけであり、当該制御回路がどのような動作・機能を行なうものなのか不明というべきである。 一方、本件実用新案は、その明細書によれば、従来の機械式水車自動給気弁における課題(図面中第1図にAで示す制御特性と一致させることが困難であるため、最適な給気弁の開閉調整を行うことが不可能であった)を、本件実用新案の要旨で示される電気的給気弁制御手段を採用することにより解決した、電気式水車自動給気装置であることが認められる。すなわち、電気的制御とするために給気弁を電動式の弁とし、この給気弁の開度を前記第1図Aに対応する開度設定テーブルを有する給気弁開度設定手段と比較制御手段によって自動調整することを特徴とするものである。 ところで、平成5年12月14日に行なった口頭審理における請求人の発言からすると、請求人は、水車における最適な給気量を表した前記第1図について説明することができない等、請求人に前記機械式自動給気弁での課題について認識があったとはいい難い。 してみると、前記甲第2号証の1(回路設計図)が、請求人により作成されたものであるとしても、請求人に前記機械式自動給気弁での課題についての認識がない以上、該回路設計図を請求人が独自で電気式水車自動給気弁の制御回路設計図として作成したものとは解されず、また、該回路設計図において、各部品が水車とどのように関連しているのか定かでない。 このように、甲第2号証の1(回路設計図)に記載された制御回路がどのような動作・機能を行なうものなのか依然として不明である以上、本件実用新案と甲第2号証の1に記載された考案とは同一の考案とは認めることができない。 以上のとおりであるから、請求人が本件実用新案を考案したとすることはできない。 4、したがって、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件実用新案を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1994-10-31 |
審決日 | 1994-11-21 |
出願番号 | 実願昭58-179635 |
審決分類 |
U
1
11・
152-
Y
(F03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鍛治沢 実 |
特許庁審判長 |
横田 和男 |
特許庁審判官 |
清水 富夫 西村 敏彦 |
登録日 | 1989-11-13 |
登録番号 | 実用登録第1796367号(U1796367) |
考案の名称 | 電気式水車自動吸気装置 |
代理人 | 柿▲崎▼ 喜世樹 |
代理人 | 鈴江 武彦 |