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審決分類 審判    A47G
管理番号 1032471
審判番号 無効2000-40002  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-01-05 
確定日 2001-01-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第3053468号実用新案「移動式装飾フレーム」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3053468号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
(1)本件登録第3053468号実用新案の請求項1に係る考案乃至請求項4に係る考案は、平成10年4月23日に出願され、平成10年8月12日にその考案について実用新案登録の設定登録がされたものである。
(2)これに対し、平成12年1月5日に請求人トラストン株式会社より本件の請求項1に係る考案の実用新案登録について無効審判の請求がなされた。
2.本件の請求項1に係る考案
本件の請求項1に係る考案は、願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「キャスターを転動自在に設けた台座と、該台座上に垂直方向に形設したフレーム本体と、該フレーム本体の構成部材に付設されたカーテン取付部からなることを特徴とする移動式装飾フレーム。」
3.請求人トライストン株式会社は、本件の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件の請求項1に係る考案は、甲第1号証乃至甲第10号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、その実用新案登録は無効とされるべきである旨主張し、証拠方法として下記の甲第1号証乃至甲第10号証を提出している。
甲第1号証:実公昭52-56187号公報
甲第2号証:実願昭50ー126109号(実開昭52‐40829号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭50ー126110号(実開昭52‐40830号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願昭51ー55933号(実開昭52‐147556号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実公昭36一30049号公報
甲第6号証:実公昭40‐31341号公報
甲第7号証:実願昭46ー98622号(実開昭48‐53427号)のマイクロフィルム
甲第8号証:実願昭47ー82051号(実開昭49‐40070号)のマイクロフィルム
甲第9号証:実願昭50ー129235号(実開昭52‐42729号)のマイクロフィルム
甲第10号証:「1997 オリバー総合カタログVOL.21」(株式会社オリバー発行,「18業務用備品」)
なお、請求人が平成12年8月25日付けで提出した弁駁書(その3)における主張は、新たな証拠甲第11号証乃至甲第14号証に基づくものであり、請求の理由を変更するものであるから、この弁駁書(その3)における主張は、実用新案法第38条第2項の規定により採用できない。
4.被請求人の主張
一方、被請求人は、
(1)本件の請求項1に係る考案の装飾フレームは、全く新規なものであり、甲各号証に記載された衝立またはスクリーン分野における考案とは、基本的に異なるものである、
(2)本件の請求項1に係る考案の装飾フレームにおけるカーテン取付部は、本件明細書の記載からみて、カーテン取付部は、カーテンのとりはずし及び着用が容易にできるものであって、甲第5号証乃至甲第7号証のカーテン取付部は、本件の請求項1に係る考案のカーテン取付部に該当しない、
(3)本件の請求項1に係る考案は、「装飾フレーム」であって、甲第1号証に記載されたものは装飾フレームといえても、他の甲号証に記載されたフレームはいずれも装飾フレームといえない、
として、本件の請求項1に係る考案は、上記甲各号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることができない旨主張している。
5.甲号証に記載の事項
請求人の提出した本件の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証、甲第9号証、甲第10号証及び甲第1号証には、それぞれ、次の事項が記載されている
(1)甲第7号証
甲第7号証には、衝立に関し、図面とともに、「支脚(2)を有する支枠(1)の上下に摺動部材を(3)(3)(4)(4)を対設し、これら摺動部材(3)(3)(4)(4)に上方又は下方に開口した支持部(5)又は(6)を突設し、これら支持部(5)又は(6)によりカーテン(8)を添設した支持ロッド(7)(7)を支持させるようにした衝立。」(実用新案登録請求の範囲)であること、「両側に支持脚(2)を形成した支枠(1)の両側部上下に摺動短管(3)(4)を設け、これら摺動短管(3)の側方には夫々半円状乃至U字状の支持部(5)(6)をその開口部が上方又は下方に向くように突設して成るものであり、これらの支持部(5)(5)及び(6)(6)に夫々支持ロッド(7)(7)を支持させ、これら支持ロッド(7)(7)間にカーテン(8)を張設するようにしたものであり、図面において(9)はカーテン(8)の上下に形成した袋状部であつて、この袋状部(9)に支持ロッド(7)が挿入して取付けられることにより前記したようなカーテンの張設を得しめるように成つている。」(第2頁13?第3頁5行)こと、「前記したような本考案によるときはカーテン(8)が適宜に取外し得るものであり、・・・カーテン(8)を取外すには上方又は下方の摺動短管(3)又は(4)の少なくとも何れか一方を下方又は上方に摺動させることにより各支持ロッド(7)(7)が取外し得る関係となり、斯うして支持ロッド(7)(7)を取外してからカーテン(8)を容易に抜き取り洗濯し或いは四季の変化に応じた変換をなすことができる」(第3頁6?19行)ことが記載されている。
また、甲第7号証の第1図及び第2図からみて、支枠1は支脚2に対して垂直方向に形設されていることが窺える。
(2)甲第9号証
甲第9号証には、衝立に関し、図面とともに、「次に図面に従って本考案の実施例を説明すると、1は金属製パイプを用いて∩状に形成したパイプ枠であって、その両端部2、2下端にはキャスター付き支脚3を付設すると共に、該両端部2、2の上部及び下部には夫々両側に亘り、角筒にしてその長手方向に摺動溝4を設けたレール5、5’を前記摺動溝4が対向する様にして装着した。」(第2頁1?7行)こと、「10は合成樹脂製又は金属製の薄板により前記両レール5、5’間に亘る長さに形成したテープ状のスラットであって、上端には透孔11を穿設して前記ランナー6の吊掛部8に装着し」(第2頁11?15行)たことが記載されている。
また、甲第9号証の第1図乃至第3図からみて、パイプ枠1はキャスタ付き支脚3に対して垂直方向に形設されていることが窺える。
(3)甲第10号証
甲第10号証の「18業務用備品」には、その中段左に、「移動・収納に便利な折りたたみ式キャスター付」と記載され、丸数字4、丸数字5、丸数字6の付された衝立状の写真が掲載され、その下段右に、「丸数字4SC-28・S」、「丸数字5SC-28・M」、「丸数字6SC-28・L」並びに「主材:パイプ・クロムメッキ、アセーテト布、アルミダイキャスト脚丸数字4丸数字5丸数字6キャスター付」と記載されている。
また、甲第10号証において、丸数字4、丸数字5、丸数字6の付された衝立状の写真からみて、パイプは、パイプ枠を形成し、そのパイプ枠は、アルミダイキャスト脚に対して垂直方向に形設されていることが窺える。
(4)甲第1号証
甲第1号証には、「本考案は和風の外観を備えた折畳式衝立に関する。」(第1頁1欄31?32行)、「図において1は本考案になる折畳式衝立全体を示し、4つの折畳片2からなる。折畳片2は縦枠3,3と、上下枠4,5とからなる。縦枠3の下端にはスチールボール6を有するキャスターが取付けられている。これら縦枠3,3と、上下枠4,5は木材より形成してもよいし、あるいは合成樹脂、アルミ合金などにより成形してもよい。」(第1頁1欄35?同頁2欄5行)こと、「このように構成された縦枠11の一面には障子紙或いは不織布14が貼りつけられている。」(第1頁2欄14?15行)ことが記載されている。
6.対比
甲第7号証には、上記5.(1)で指摘した事項からみて、「支脚2と、支脚2上に垂直方向に形設した支枠1と、支枠(1)に設けた摺動短管(3)(4)の支持部(5)(5)及び(6)(6)に支持され、かつカーテンを張設する支持ロッド(7)(7)からなるフレーム」に相当する考案が記載されている。
そこで、本件の請求項1に係る考案と上記甲第7号証に記載された考案を対比すると、甲第7号証に記載された考案の「支脚(2)」、「支枠(1)」は、それぞれ、本件の請求項1に係る考案の「台座」、「フレーム本体」に相当し、また、甲第7号証に記載された「カーテン(8)を張設した支持ロッド(7)(7)」は、支枠(1)に設けた摺動短管(3)(4)の支持部(5)(5)及び(6)(6)に支持されるものであるから、本件の請求項1に係る考案のように「フレーム本体の構成部材に付設されたカーテン取付部」ということができ、さらに、甲第7号証に記載された考案の「支脚(2)」、「支枠(1)」及び「支持ロッド(7)(7)」は、フレームを構成しているといえるから、両者は、「台座と、台座上に垂直方向に形設したフレーム本体と、フレーム本体の構成部材に付設されたカーテン取付部からなるフレーム」の点で一致し、次の点で相違する。
イ.本件の請求項1に係る考案は、台座に転動自在にキャスターを設けて、フレームを移動式としているのに対し、甲第7号証に記載された考案は、そのようになっていない点。
ロ.フレームが、本件の請求項1に係る考案では、移動式装飾フレームであるのに対し、甲第7号証に記載された考案は、その点が明らかでない点。
なお、被請求人は、甲第7号証に記載されたカーテン取付部は、本件の請求項1に係る考案のカーテン取付部に該当しない旨主張するが、本件の請求項1に係る考案の「カーテン取付部」は、フレーム本体の構成部材に付設されていればよく、本件明細書に記載された実施例に限定して解釈する根拠はないから、被請求人のこの主張は採用できない。
7.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点イについて
上記甲第9号証には、上記5.(2)で指摘したように、衝立に関し、「パイプ枠であって、その両端部2、2下端にはキャスター付き支脚3を付設する」と記載されており、甲第9号証に記載された「パイプ枠」、「支脚3」は、それぞれ、本件の請求項1に係る考案のように「フレーム本体」、「台座」ということができ、また、パイプ枠は支脚に対して垂直方向に形設されていることが窺えるから、甲第9号証には、フレーム本体が垂直方向に形設される衝立の台座にキャスターを転動自在に設けた点が記載されているといえる。
また、上記甲第10号証には、「移動・収納に便利な折りたたみ式キャスター付」と記載された衝立状の業務備品に関し、上記5.(3)で指摘した事項からみて、「パイプ枠」、「アルミダイキャスト脚」が、それぞれ、「フレーム本体」、「台座」を形成し、そして、パイプ枠はアルミダイキャスト脚に対して垂直方向に形設されていることが窺えるから、甲第10号証には、フレーム本体が垂直方向に形設される衝立の台座にキャスターを転動自在に設けた点が記載されているといえる。
そして、上記甲第7号証、甲第9号証及び甲第10号に記載されたものは、衝立の分野で共通の技術分野に属するから、甲第7号証に記載された台座に、甲第9号証あるいは甲第10号証に記載されたようにキャスターを転動自在に設けて上記相違点イであげた本件考案のようにすることは、当業者であればきわめて容易になし得ることである。
(2)相違点ロについて
上記甲第1号証には、「本考案は和風の外観を備えた折畳式衝立に関する。」(第1頁1欄31?32行)、「図において1は本考案になる折畳式衝立全体を示し、4つの折畳片2からなる。折畳片2は縦枠3,3と、上下枠4,5とからなる。縦枠3の下端にはスチールボール6を有するキャスターが取付けられている。」(第1頁1欄35?同頁2欄2行)、「このように構成された縦枠11の一面には障子紙或いは不織布14が貼りつけられている。」(第1頁2欄14?15行)と記載されている。ここで、甲第1号証に記載された「折畳片」は、キャスターを有するフレーム本体を構成しており、また、甲第1号証に記載された衝立は、和風の外観を備えたものであるから、甲第1号証に記載されたキャスタを有するフレームは、移動式装飾フレームということができる。
そして、甲第7号証及び甲第1号証に記載されたものは、衝立の点で共通の技術分野に属するから、甲第7号証に記載された考案に甲第1号証に記載された上記事項を採用して、甲第7号証に記載された考案のフレームを移動式装飾フレームの構成とすることは、当業者であればきわめて容易になし得ることである。
(3)なお、本件の請求項1に係る考案の効果は、甲第7号証、甲第9号証、甲第10号証及び甲第1号証に記載された事項から予測できる程度のものであって格別のものではない。
8.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1に係る考案は、上記甲第7号証、甲第9号証、甲第10号証及び甲第1号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件の請求項1に係る考案についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、同法37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-10-30 
結審通知日 2000-11-10 
審決日 2000-11-21 
出願番号 実願平10-2720 
審決分類 U 1 121・ 121- Z (A47G)
最終処分 成立    
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 滝本 静雄
岡田 和加子
登録日 1998-08-12 
登録番号 実用新案登録第3053468号(U3053468) 
考案の名称 移動式装飾フレーム  
代理人 元井 成幸  
代理人 高橋 隆二  
代理人 松浦 恵治  

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