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審決分類 審判 全部申し立て   F15B
管理番号 1036090
異議申立番号 異議1999-72070  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-27 
確定日 2000-12-13 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2586276号「スライドアクチュエータ」の請求項1ないし14に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2586276号の請求項1ないし14に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続きの経緯
本件実用新案登録第2586276号の考案は、平成4年12月24日(国内優先権主張 平成3年12月26日,平成4年4月3日)に出願され、平成10年9月25日に設定登録され、その後、実用新案登録異議申立人株式会社コガネイ、シーケーディ株式会社より、それぞれ実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月2日に意見書が提出されたものである。
2.本件考案
本件請求項1?14に係る考案は、実用新案登録請求の範囲の請求項1?14に記載された次の事項によって特定されるとおりのものである。
【請求項1】
流体圧によりシリンダボデイ内部のピストンを変位させるシリンダにおいて、前記ピストンに一体的に係合し、一端部が前記シリンダボデイから突出するピストンロッドと、前記シリンダボデイにスライド自在に構成されるとともに、前記ピストンロッドの一端部と係合するスライドテーブルと、前記シリンダボデイとスライドテーブルとの間に設けられた案内機構と、を備え,固定用部材を挿通して固定するための孔部を前記シリンダボデイの略中央部に画成し、一方、前記固定用部材が貫通する孔部を前記スライドテーブルの略中央部に画成し、前記スライドテーブルがシリンダボデイ上の所定位置にあるとき、前記固定用孔部に対して前記貫通用孔部の軸線を一致させて固定用部材によりシリンダボデイを他の部材に固定することを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のスライドアクチュエータにおいて、前記案内機構は、シリンダボデイに固着された案内レールを有し、前記案内レールには、固定用孔部と貫通用孔部の軸線が一致したときに固定用部材が挿通される孔部が画成されることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2記載のスライドアクチュエータにおいて、前記スライドテーブルは、変位方向と略直交する方向に屈曲するエンドプレートを有し、前記エンドプレートには、スライドテーブルが一方の変位終端位置に到達したときに案内レールの一端部が臨入するための孔部が画成されることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載スライドアクチュエータにおいて、前記シリンダボデイにはシリング室が少なくとも二つ平行に画成されており、前記二つのシリング室にそれぞれピストンが摺動自在に配設され、前記それぞれのピストンに係合するピストンロッドは前記二つのシリング室から二本平行に延在して前記スライドテーブルに連結され、前記案内機構は前記二本の平行なピストンロッドの略中央部位に設けられることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4記載のスライドアクチュエータにおいて、前記案内機構は前記シリンダボデイ上に設けられ、前記二本の平行なピストンロッドの略中央部に設けられる案内レールと、前記スライドテーブルの一面に設けられ所定間隔離間した二本のガイド部材と前記案内レールの両側面と前記二本のガイド部材の一側面との間に介装されるベアリング部材と、からなることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項6】
請求項5記載のスライドアクチュエータにおいて、前記案内レールのそれぞれの一側面にはV溝が形成され、前記ガイド部材の一側面に前記案内レールの一側面のV溝に対応する形状のV溝が形成され、前記案内レールのV溝とガイド部材のV溝との間で円柱形状の複数のベアリング部材を転動自在に保持することを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項7】
請求項6記載のスライドアクチュエータにおいて、
前記複数のベアリング部材のそれぞれは、互いに隣接するベアリング部材間でその軸線を90°ずつ偏位させて前記案内レールのV溝とガイド部材のV溝の間に配設されることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のスライドアクチュエータにおいて、前記ガイド部材の端部に前記ベアリング部材の脱落を阻止するためのストッパ部材を設けることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか1項に記載のスライドアクチュエータにおいて、前記スライドテーブルは断面逆凹字状に形成され、該凹字状の内部空間に前記二本のガイド部材が所定間隔離間して配置され、前記二本のガイド部材の間に前記案内レールが進退自在であることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のスライドアクチュエータにおいて、前記シリンダボデイの一側面に前記ピストンの変位ストロークを規制するための少なくとも1つのストッパ部材を設けることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のスライドアクチュエータにおいて、前記シリンダボデイの一側面にストッパ部材に当接してピストンの変位ストロークを調整するための少なくとも1つのアジャスタボルトを設けることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のスライドアクチュエータにおいて、前記シリンダボデイの軸線方向に沿った長さと前記スライドテーブルの軸線方向に沿った長さとが略同一に形成されることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のスライドアクチュエータにおいて、前記シリンダボデイの一側面にピストンの変位ストロークを調整するためのアジャスタボルトが螺入される少なくとも1つのアジャスタブロックを設けることを特徴とするスライドアクチュエータ。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のスライドアクチュエータにおいて、スライドテーブルには、ワーク取付用孔部および位置決め用孔部が形成されることを特徴とするスライドアクチュエータ。
国内優先権主張について>
上記請求項1?14に係る考案は、平成4年12月24日に出願された国内優先権の主張を伴う実用新案登録出願(以下、「本件出願」という。)に係る考案であって、その全請求項に係る考案は、請求項1に係る考案の主要部である「固定用部材を挿通して固定するための孔部をシリンダボディの略中央部に画成し、一方、前記固定用部材が貫通する孔部をスライドテーブルの略中央部に画成し、前記スライドテーブルがシリンダボディ上の所定位置にあるとき、前記固定用孔部に対して前記貫通用孔部の軸線を一致させて固定用部材によりシリンダボディを他の部材に固定すること」との構成を包含するものであるところ、前記主要部の構成は、当該国内優先権主張の基礎とされた実願平3-107509号(優先日平成3年12月26日)及び実願平4-20194号(優先日平成4年4月3日)(以下、「先の出願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載されておらず、本件出願の願書に最初に添付された明細書又は図面において、初めて開示されたものであるから、本件請求項1?14に係る考案の上記主要部について、国内優先権の主張を認めることはできず、よって、実用新案法第3条等の登録要件に係る規定の適用に当たっては、本件出願の出願日である平成4年12月24日に出願がされたものとみなす。
なお、実用新案登録権者は意見書において、先の出願の願書に最初に添付された図面の第6及び7図を示し、「シリンダボディ12における3つの孔はそれらの配置位置から、当業者であれば当該シリンダボディ12を他の部材に取り付けるための取り付け孔であることが直感的且つ容易に認識できる。…スライドテーブル14の長手方向に沿った中央部にシリンダボディ12の3つの孔と対応させて3つの孔が設けられている。これらの3つの孔がシリンダボディの3つの孔に対応することは明らかである。…スライドテーブル14の中央部に設けられた3つの孔のそれぞれの直径は、シリンダボディ12に設けられた3つの孔のそれぞれの直径よりも大きく描出されている。このことから、スライドテーブル14に設けた3つの孔は、シリンダボディ12を固定するための固定部材を挿通させる孔であることが、当業者であれば容易に認識可能である。」と主張している。
しかしながら、上記第6図からは、スライドテーブルの中央部に3つの円が描画されていること、及び、第7図からは、シリンダボディの中央部にハッチングの施されていない3つの円が描画されていることが看取できるのみであって、これらの円が、シリンダボディを他の部材に固定するためのねじ等の固定用部材が挿通乃至貫通する孔を意味するものとは認められないから、上記主張は採用できない。
2.引用刊行物記載の考案
当審が通知した取消理由に引用された刊行物1(「エアスライドテーブル,MXS Series φ6,φ8,φ12,φ16のカタログ」、SMC株式会社、平成4年4月30日初版)はSMC株式会社のエアスライドテーブルのカタログであり、その発行時期については、平成4年4月30日初版と記載されていること、さらに、同様に引用された刊行物2(「パワーデザインVol.30,No.6」、株式会社日刊工業新聞社、平成4年6月1日発行)の表紙及び表紙裏面)には、当該SMC株式会社のエアスライドテーブルのカタログの内容を抜粋したものが掲載されていて、且つ、これについて資料請求できる旨記載されていることより、刊行物1のカタログの発行時期は、少なくとも逐次刊行物である刊行物2の発行日である平成4年6月1日前と推定することができるから、刊行物1は、本件実用新案登録出願の出願日前に頒布された刊行物と認めることができる。
なお、上記刊行物1、2は、異議申立人シーケーディ株式会社が提出した甲第5及び1号証並びに株式会社コガネイが提出した甲第4号証の2及び1にそれぞれ対応する。
そして、刊行物1の説明文及び図表の記載から以下の事項を看取することができる。
エアスライドテーブルに関し、
▲1▼流体圧により、ボディ1内部のピストンAss’y7を変位させるシリンダにおいて、前記ピストンAss’y7に一体的に係合し、一端部が前記ボデイ1から突出するロッド6と、前記ボデイ1にスライド自在に構成されるとともに、前記ロッド6の一端部と係合するテーブル2と、前記ボデイ1とテーブル2との間に設けられたクロスローラガイドと、を備え,ボルトを挿通して取付するための下穴を前記ボデイ1の略中央部に画成し、一方、前記ボルトが貫通する通し穴を前記テーブル2の略中央部に画成し、前記テーブル2がボデイ1上の所定位置にあるとき、前記下孔に対して前記通し穴の軸線を一致させてボルトによりボデイ2を他部材に取付けること。
▲2▼ボディ1にレール4が固着され、レール4には下穴と通し穴の軸線が一致したときにボルトが挿通される穴が形成されていること。
▲3▼テーブル2は、変位方向と略直交する方向に屈曲するエンドプレート3を有し、エンドプレート3には、テーブル2が一方の変位終端位置に到達したときにレール4の一端部が進入するための穴が形成されていること。
▲4▼ボディ1には、シリンダ室が二つ平行に形成されており、二つのシリンダ室にそれぞれピストンAss’y7が摺動自在に配設され、ピストンAss’y7に係合するロッド6は二つのシリンダ室から二本平行に延在してテーブル2のエンドプレート3に連結され、クロスローラガイドは二本の平行なロッド6の略中央部に設けられていること。
▲5▼クロスローラガイドはボデイ2上に設けられ、二本の平行なロッド6の略中央部に設けられるレール4と、テーブル2の一面に設けられ所定間隔離間した二本のガイド5とレール4の両側面と前記二本のガイド5の一側面との間に介装される円筒コロ13と、からなること。
▲6▼レール4のそれぞれの一側面にはV溝が形成され、ガイド5の一側面にレール4の一側面のV溝に対応する形状のV溝が形成され、レール4のV溝とガイド5のV溝との間で円柱形状の複数の円筒コロ13を転動自在に保持すること。
▲7▼複数の円筒コロ13のそれぞれは、互いに隣接する円筒コロ13間でその軸線をクロスさせてレール4のV溝とガイド5のV溝の間に配設されること。
▲8▼ガイド5の端部にローラストッパ12を設けること。
▲9▼テーブル2は断面逆凹字状に形成され、該凹字状の内部空間に二本のガイド5が所定間隔離間して配置され、二本のガイド5の間にレール4が進退自在であること。
▲10▼ボデイ1の一側面にストロークアジャスタを付加できること。
▲11▼ボデイ1の一側面にストッパ部材に当接して、ストロークのアジャストのための少なくとも1つのボルトを設けること。
▲12▼ボデイ1の軸線方向に沿った長さとテーブル2の軸線方向に沿った長さとが略同一に形成されること。
▲13▼ボデイ1の一側面にストロークのアジャストのためのボルトが螺入される少なくとも1つのブロックを設けること。
▲14▼テーブル2には、ワーク取付用孔部および位置決め用ピン穴が形成されること。
3.対比・判断
本件考案1?14と上記刊行物1記載の考案を対比すると、刊行物1に記載の考案における「エアスライドテーブル」は本件考案1?14における「スライドアクチュエータ」に、以下同様に「ボディ2」は「シリンダボディ」に、「ピストンAss’y7」は「ピストン」に、「ロッド6」は「ピストンロッド」に、「テーブル2」は「スライドテーブル」に、「クロスローラガイド」は「案内機構」に、「ボルト」は「固定用部材」に、「取付」は「固定」に、「下穴」は「固定用孔部」に、「通し穴」は「貫通用孔部」に、「レール4」は「案内レール」に、「ガイド5」は「ガイド部材」に、「円筒コロ13」は「ベアリング部材」に、「位置決め用ピン穴」は「位置決め用孔部」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1記載の「ローラストッパ」は、「円筒コロ13の脱落を阻止」する機能を有することはその配置から明らかであるから、本件考案1?14における「ベアリング部材の脱落を阻止するためのストッパ部材」に相当し、「ストロークアジャスタ」は、ストロークエンドでの位置決めが必要な場合に使用されるものであることから、「ピストンの変位ストロークを規制又は調整するため」のものであると認められる。
そうすると、請求項1?6,8,9,11?14に係る考案は刊行物1記載の考案と同一であり、請求項7及び10に係る考案は、刊行物1記載の考案と以下の点で一応相違するが、その余の点で一致するものと認めることができる。
[相違点1]
請求項7に係る考案では、「複数のベアリング部材のそれぞれは、互いに隣接するベアリング部材間でその軸線を90°ずつ偏位させて前記案内レールのV溝とガイド部材のV溝の間に配設される」のに対して、刊行物1記載の考案では、ベアリング部材が相互にクロス(交差)させて配置されているものの、具体的な角度については文言上の記載がない点。
[相違点2]
シリンダボデイの一側面に、請求項10に係る考案では、「ストッパ部材」が設けられているのに対し、刊行物1記載の考案では、アジャストのためのボルトが配置されている点。
そこで、上記相違点1及び2について検討する。[相違点1について]
クロスローラベアリングとして円柱形状のローラを交互に直交に配置すること、すなわち、その軸線を90°ずつ偏位させて一対のV溝軌道面間に配設することは技術常識(一例として、実開平1-98918号公報参照)である。そして、刊行物1記載のクロスローラガイドは、特に第2頁の「構造図/パーツリスト・パッキンリスト」を参照すると、レール4、ガイド5に形成されたV溝の2つの軌道面が略直角に交わっていること、及び、ベアリング部材に相当する円筒コロ13の端面が各軌道面に交互に接するように配置されていることが看て取れ、これらの事項から、上記技術常識を参酌することによって、ベアリング部材の軸線を90°ずつ偏位させて配設することは導き出せるものであるから、刊行物1には上記相違点1における請求項7に係る考案の構成が記載されているものということができる。
[相違点2について]
刊行物1記載のボディに設けられたアジャストのためのボルトは、テーブルに設けられたブロックに当接し、ピストンの変位を規制するものに他ならず、請求項10に係る考案におけるピストンの変位ストロークを規制するストッパ部材と何ら相違するものではないことより、刊行物1には上記相違点2における請求項10に係る考案の構成が記載されているものということができる。
したがって、相違点1及び2は表現上又は形式上の相違点にすぎないから、請求項7及び10に係る考案も刊行物1記載の考案と同一である。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1?14に係る考案は刊行物1記載の考案と同一であり、実用新案法第3条第1項第3号に規定する考案に該当するので、本件請求項1?14に係る実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものである。
したがって、本件請求項1?14に係る実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-12-10 
出願番号 実願平4-88434 
審決分類 U 1 651・ 113- Z (F15B)
最終処分 取消    
前審関与審査官 佐藤 健人田々井 正吾  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 和田 雄二
西村 敏彦
登録日 1998-09-25 
登録番号 実用登録第2586267号(U2586267) 
権利者 エスエムシー株式会社
東京都港区新橋1丁目16番4号
考案の名称 スライドアクチュエータ  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 筒井 大和  
代理人 恩田 博宣  
代理人 鷹野 寧  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 小塚 善高  

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