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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない H01C
管理番号 1041548
審判番号 審判1996-8662  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1996-05-28 
確定日 1997-04-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2018214号実用新案「固定抵抗器」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 [1]手続の経緯
本件登録第2018214号実用新案(以下、本件登録実用新案という)は、昭和58年4月15日に出願した実願昭58-56863号の一部を平成2年1月19日に新たな実用新案登録出願としたものであって、出願公告(実公平5-32961号公報参照)後の平成6年5月24日に設定の登録が行われたものである。そして平成8年5月28日付けで本件実用新案に対して本件無効審判が請求され、それに対して平成8年9月30日付けで被請求人により審判事件答弁書及び訂正請求書が提出され、その後の平成9年1月20日付けで請求人より審判弁駁書が提出されたものである。
[2]請求人の主張
これに対して請求人は、甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、本件登録実用新案は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることが出来たものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることが出来ないものであり、その登録は同法第37条第1項第1号の規定により無効とすべきものであると主張している。
[3]被請求人の主張
一方被請求人は、請求人の主張に対して、請求人が提示した甲第1号証ないし甲第4号証に記載された考案は、本件登録実用新案の特徴とする新規な技術思想を何等開示ないし示唆するものではないから、請求人の主張は誤りであると主張している。
[4]証拠
(1)、そして、請求人の提出した本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(米国特許第4207552号明細書、1980、6、10)には、「従来型の筒状の金属端子コネクター17は、端子ピン12と絶縁電線19の露出端18にクリンプされ、後者は、電源に接続される。コネクターは、その後Fig2の点線20で示す範囲でクリンプされる。コネクター17は、クリンプ操作後、端子ピンと接続電線の一端を電弧溶接することが望ましいことが判明しているが、これは常に必要と言うことではない。(公報第1欄下から2行目?同第2欄第12行目)」と記載され、
(2)、同甲第2号証(実願昭47-28501号(実開昭48-105038号)のマイクロフィルム)は、「固定抵抗器」に関し、「本考案は一端に両リード線を通す溝又は穴を設けた部分と、凹部を持つ磁器筐体に、抵抗体素子の両端に嵌合されたリード端子の一方のリード線をコの字状に折り曲げて凹部に収容するので一方向に2本のリード線を取り出す他は全部磁器筐体内に納まる。収容後凹部間隙には耐熱性充填材を注入して成形されるので機械的、電気的に安定した一方向リード型固定抵抗器である。(公報第1頁第19行目?同第2頁第7行目)」と記載され、
(3)、同甲第3号証(実願昭49-155861号(実開昭51-78935号)のマイクロフィルム)は、「筒形ヒューズ」の考案に関し、筒形端子2につき「1はガラス製の筒形例えば円筒状の保護管、2、2は筒形端子で、この筒形端子2、2は径大部3、3及びこれに連接する径小部4、4を一体に形成して成り、外周を電気的絶縁物5、5で被覆している。そして、前記筒形端子2、2は、その径大部3、3を前記保護管1の両端部外周に夫夫嵌合して接着等により固着している。6は可溶体としてのヒューズ線で、これは両端部を前記筒形端子2、2の径小部4、4の基端部側における開口部分に半田付けにより夫々固着し、以って両筒形端子2、 2に電気的に接続している。7、7は前記筒形端子2、2に夫々接続されるリード線である。・・・まずリード線7、7の一端部の被覆を剥離して心線7a,7aを露出させ、各リード線7、7の一端部を各筒形端子2、2の径小部4、4内に夫々挿入し、然る後、圧着具(図示せず)にて各筒形端子2、2の径小部4、4をかしめ、以て各リード線7、7を各径小部4、4従って筒形端子2、2に電気的且つ機械的(抜脱不能)に接続するものである。(公報第3頁第8行目?同第4頁第10行目)」と記載され、
(4)、同甲第4号証(実願昭49-78511号(実開昭51-7621号)のマイクロフィルム)は、「リング型複合抵抗器」の考案に関し、「第1図に示すごとく垂直リード線(3)、水平リード線(2)および金属キャップ(1)よりなるリード線部材(4)を多数用意すると共に各部材(4)の水平リード線(2)の金属キャップ(1)を互いに対向せしめて一直線上に配置し、さらに上記各キャップ(1)間に抵
抗器(5)をその両端を圧入することで配設し、これにより直線的複合抵抗器を形成する。上記のように形成された複合抵抗器をモータにコイル個数に合わせて、例えば本実施例では3個の抵抗器(5)を連続させて、第2図に示すごとく水平リード線(2)を切断する。そしてこの切断させた複合抵抗器を輪型治具(図示せず)に巻きつけてリング型に形成すると共に、両端に位置する水平リード線(2)の両端部(a)(b)をスポット溶接により接続する。(公報第3頁第17行目?同第4頁第10行目)」と記載されている。
[5]訂正事項
本件訂正の内容は、特許法の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有し、同条第2項の規定によって読み替える旧実用新案法(以下、旧実用新案法という)第40条第2項第3号の規定による明りょうでない記載の釈明を目的として、(1)実用新案登録請求の範囲の「抵抗接続部および電線接続部を背中合せに有する金属キャップにより抵抗素子と芯線を露呈させた被覆電線とを接合して抵抗器本体を構成し、その抵抗器本体を開口部を有する矩形のセラミックケースに挿入するとともに、前記開口部を絶縁材料で封止し、前記セラミックケースより被覆電線部のみを外部に引出して抵抗器ユニットとし、かつ多数個の抵抗器ユニットをその抵抗器ユニットに内蔵される金属キャップを用いて被覆電線により連続的に結線した固定抵抗器。」の記載事項を、「抵抗接続部および電線接続部を背中合せに有する金属キャップにより抵抗素子と芯線を露呈させた被覆電線とを接合して抵抗器本体を構成し、その抵抗器本体を開口部を有する矩形のセラミックケースに挿入するとともに、前記開口部を絶縁材料で封止し、前記セラミックケースより被覆電線部のみを外部に引出して抵抗器ユニットとし、かつ多数個の抵抗器ユニットをその抵抗器ユニットに内蔵される金属キャップを用いて被覆電線により直列に結線した固定抵抗器。」に訂正すると共に、(2)実用新案登録請求の範囲の訂正に合わせて、考案の詳細な説明の項の「連続的」を「直列」に訂正するものである。
[6]訂正事項の検討
本件登録実用新案の要旨を確定するため、本件訂正が旧実用新案法第40条第2項ただし書きに規定する範囲内においてなされ、同項第3号に掲げる事項を目的とし、同条第5項において準用する旧実用新案法第39条第2項の規定に適合するか否かについて検討すると、
(1)、旧実用新案法第40条第2項の適否の検討
願書に添付された明細書に記載される「連続的」なる月語は、「リング状」及び「直列」等のいろいろな形状のものを包含する用語であり、必ずしも明りょうな用語ではなく、願書に添付された明細書及び図面を参照すると、第6図には、抵抗器ユニット16を直列に配設したものが図示されていることをふまえると、抵抗器ユニット16を「直列」に配置することは、願書に添付された明細書及び図面に記載した事項の範囲内であり、且つその訂正は、抵抗器ユニットの配置を明確にするものであるため、明りょうでない記載の釈明に該当するものである。
(2)、旧実用新案法第39条第2項の適否の検討
「直列」なる用語は、「連続的」なる用語に比べ広い概念を意味するものではなく、寧ろ狭い概念を意味する用語であり、また抵抗器ユニット16を「直列」に配置することは、願書に添付された明細書及び図面に記載された事項であり、且つ「連続的」を「直列」に訂正することにより、実質的に実用新案登録請求の範囲が変更されたとする解釈も出来ず、結局のところ前記訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって訂正請求は、所定の要件を充足するため当該請求を認める。
[7]本件考案の要旨
そのため、本件登録実用新案の考案(以下、本件考案という)の要旨は、訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「抵抗接続部および電線接続部を背中合せに有する金属キャップにより抵抗素子と芯線を露呈させた被覆電線とを接合して抵抗器本体を構成し、その抵抗器本体を開口部を有する矩形のセラミックケースに挿入するとともに、前記開口部を絶縁材料で封止し、前記セラミックケースより被覆電線部のみを外部に引出して抵抗器ユニットとし、かつ多数個の抵抗器ユニットをその抵抗器ユニットに内蔵される金属キャップを用いて被覆電線により直列に結線した固定抵抗器。」
[8]本件考案と甲第2号証のものとの対比
(1)、本件考案の明細書には、目的に関し、「従来、固定抵抗器に被覆電線を接続して使用する場合、第1図のように一般の固定抵抗器1より外部に出ている端子2に、被覆電線3を結線した端子2に適合挿入できる接続金具4を介して、接続している。ところが、この接続部分の絶縁性や耐湿性を確保するため、第2図のように接続部分に絶縁チューブ5を被せ、さらにその上に耐湿性保護材料6を塗布しており、この接続作業に多大な費用を要している。
本考案は、前記従来の欠点を除去するものであり、抵抗素子は従来の技術が使用でき、しかも簡単な構成で抵抗素子と被覆電線を接続することができ、さらに抵抗素子と被覆電線の接続部がセラミックケースの中に絶縁保護されているので、外部で接続作業をする不便を改善するとともに、機器等に同時に複数の抵抗器ユニットを簡単で安価に取り付けられるようにすることを目的としている。(訂正明細書第1頁第17?第28行目)」と記載され、その効果につき、「本考案の固定抵抗器によれば、機器等に多数個同時に使用される際に、単独品を機器に取付けていた場合のように抵抗器の外部に出ている被覆電線で個々につなぐ必要がなく、多大で困難な結線作業および接続部の絶縁処理が省けると共に接続部の絶縁性能の劣化に対する不安も消える。しかも、必要に合わせて被覆電線の長さを自由に設定することができ、給湯器等の凍結防止用として用いる際、任意の位置に組付けが可能となり、使い勝手が極めて良好な固定抵抗器を作れる。(訂正明細書第3頁第3?第9行目)」と記載されている。
(2)、これら記載に基づけば、本件考案は、抵抗素子と被覆電線の接続時の技術的問題を解決するという課題のもと、実用新案登録請求の範囲記載の構成を採用し、前記の抵抗器ユニット取付時特有の効果を奏するものであり、本件考案と比較するための近接技術としては、抵抗体1とリード線3とを接続する端子2を有し、磁器筐体5内に充填剤によって封止される技術を開示する甲第2号証記載のものが他のものに比べ適正であるため、本件考案と甲第2号証記載のものとを比較する。
(3)、甲第2号証記載の端子2については、「抵抗体1の両端に嵌合される」としか記載されていないが、図面の形状及び端子としての機能を併せみれば、該端子2は、具体的形状は異なるも本件考案の「金属キャップ」に相当し、また磁器筐体5は、特に第1図(A)及び(B)、さらには第2図(B)によれば、本件考案の「開口部を有する矩形のセラミックケース」に相当するため、両者は、「抵抗接続部および電線接続部を有する金属キャップを備えた抵抗器本体からなり、その抵抗器本体を、開口部を有する矩形のセラミックケースに挿入するとともに、前記開口部を絶縁材料で封止し、前記セラミックケースより電線部のみを外部に引出して抵抗器ユニットとした固定抵抗器。」の点で一致し、次の3点で相違する。
▲1▼本件考案は、抵抗器本体を、「抵抗接続部および電線接続部を背中合せに有する金属キャップにより抵抗素子と芯線を露呈させた被覆電線とを接合して構成し」ているのに対し、甲第2号証記載のものは、「抵抗接続部および電線接続部を有する金属キャップにより、金属キャップと抵抗素子を嵌合し、金属キャップとリード線とを接続して構成し」ている点。
▲2▼抵抗器ユニットにつき、本件考案は、「セラミックケースより被覆電線部のみを外部に引出している」のに対し、 甲第2号証記載のものは、そのような構成を有しない点。
▲3▼本件考案は、「多数個の抵抗器ユニットをその抵抗器ユニットに内蔵される金属キャップを用いて被覆電線により直列に結線した」ものであるのに対し、甲第2号証記載のものは、そのような構成を有しない点。
[9]本件考案と甲各号証との検討
(1)、一般に、ある発明の進歩性を、ある引用例に記載されたものに他の引用例に記載される技術を適用することによって判断する場合には、それぞれの引用例に記載される技術の関連性等、動機づけの有無が重要な要素となることは、広く知られた事項である(特許庁発行「特許・実用新案 審査基準」、第II部特許要件、第2章新規性進歩性、2、5進歩性の判断の手法、第12?13頁参照)。
(2)、そこで相違点について検討すると、甲第1号証記載のものは、前記[4](1)記載のとおりであるところ、コネクター17は、2つの部材を背中合せに有する金属キャップに相当するが、2つの部材は、一方は芯線を露呈させた被覆電線ではあるが、他方は抵抗素子とは異なる端子ピン12であり、例え2つの部材を接合によって接続するものであったとしても、本件考案が抵抗素子と芯線を露呈させた被覆電線との接続に関するものであり、本件考案と比べ技術分野を異にするものであると共に、両者間に動機づけとなる技術的関連性を認めることはできない。即ち甲第1号証記載のものは、前記相違点1のごく一部の構成を有するものにすぎず、該甲第1号証記載のコネクター17に関する技術を甲第2号証記載の端子2に転用することが当業者にとってきわめて容易であると言うことは出来ない。
甲第3号証記載のものを検討すると、甲第3号証記載のものは、前記[4](3)記載のとおりであるところ、甲第2号証記載のものを抵抗素子と電線との接続具としてとらえ、甲第3号証記載の筒形端子2の技術的関連性をみた場合、ヒューズ線6が抵抗素子であり、且つその明細書に記載される「6は可溶体としてのヒューズ線で、これは両端部を前記筒形端子2、2の径小部4、4の基端部側における開口部分に半田付けにより夫々固着し、以って両筒形端子2、2に電気的に接続している。(公報第3頁第14?18行目)」の事項に基づけば、筒形端子2を抵抗素子と電線との接続具とみなし得るため、甲第2号証記載の端子2との置換可能性について考えてみると、筒形端子2は、本件考案の「金属キャップを抵抗接続部および電線接続部を背中合せにする」という構成は有しているが、抵抗素子とキャップとの接続手段で相違している。この相違は、甲第2号証記載のものが嵌合によって接続される抵抗素子を対象にしているのに対し、甲第3号証記載のものは半田付けによって接続されヒューズ線を対象にすることに起因するものであり本質的な相違である。即ち、特に甲第3号証記載のものは、ヒューズに関するものであり、その抵抗素子は細線から形成され、そのために半田付けという接続手段を採用しているのである。言ってみれば、甲第3号証記載の筒形端子2は、ヒューズ特有のキャップであり、該キャップを抵抗素子との接続手段が異なる他の抵抗素子のキャップとして使用することは、他の証拠、例えばヒューズ線をキャップに接合によって接続する手段が周知技術であるというような証拠が存しない以上、当業者にとって容易想到であるということが出来ない。
即ち甲第3号証記載のものは、前記相違点1のごく一部の構成を有するものにすぎない。
又、甲第1号証記載のものの一部と甲第3号証記載のものの一部とを甲第2号証記載のものに転用することにより相違点1を構成できるかについては、それぞれの技術の一体性及び動機づけの不存在等に基づけば、その余地はないものである。
(3)、甲第4号証記載のものを検討すると、甲第4号証記載のものは、前記[4](4)記載のとおりであるところ、確かにその記載中「水平リード線(2)および金属キャップ(1)よりなるリード線部材(4)を多数用意すると共に各部材(4)の水平リード線(2)の金属キャップ(1)を互いに対向せしめて一直線上に配置し、さらに上記各キャップ(1)間に抵抗器(5)をその両端を圧入することで配設し、これにより直線的複合抵抗器を形成する。」旨の記載が認められ、且つ一般に複数の抵抗器を用途に応じ直列に結線して用いることは自明の事項にすぎないことを勘案すれば、一部電線の種類が相違するも、該甲第4号証記載のもの等に基づけば、相違点3は、当業者にとって一応格別なもではないとすることは出来る。しかしながら、甲第4号証記載のものは、抵抗器を直列に結線することを開示するのみであり、相違点2からなる抵抗ユニットを被覆電線により直列に結線するものでもない。
即ち、本件考案は、被覆電線を特に採用することにより、相違点1からなる抵抗器本体を構成するとともに、相違点2からなる抵抗器ユニットを形成し、更にこの抵抗器ユニットを被覆電線により直列に結線することにより固定抵抗器を成している、別言すれば、相違点1ないし3からなる事項を有機的に結合することにより固定抵抗器を構成するものであり、これら事項についてはいずれの証拠にも開示又は示唆されていない。
そのため、更に相違点3を検討するまでもない。
なお、請求人は、実用新案請求の範囲に記載される事項をA、B、Cに3分節し、各事項につき論じているが、その内容は、例えばAの一部の事項は、甲第1号証に記載されており、Aの他の事項は、甲第2号証に記載されており、それらの技術を寄せ集めれば、前記Aの事項は構成でき、Bについては、甲第2号証のものと主要部は実質的に同一であり、僅かに相違するリード線と絶縁電線との相違は、甲第1号証又は甲第3号証に記載されている等の主張に終始しており、各証拠に記載される技術を寄せ集めることができるとする動機づけについては明確な理由を述べているとは思えず、ましてや本件考案の固定抵抗器は、前述したように各事項を有機的に結合してなるものであり、細かい事項が各証拠に開示されるとしても即それらの技術を寄せ集めれば本件考案が構成できるとすることは出来ないことは前述したとおりである。
[10]分割出願の適否について
請求人は、轡判弁駁書において、
(イ)「単独品を機器に取付けていた場合のように抵抗器の外部に出ている被覆電線で個々につなぐ必要がなく、多大で困難な結線作業および接続部の絶縁処理が省けると共に接続部の絶縁性能の劣化に対する不安も消える。しかも、必要に合わせて被覆電線の長さを自由に設定することができ、給湯器等の凍結防止用として用いる際、任意の位置に組付けが可能となり、使い勝手が極めて良好な固定抵抗器を作れる。」という効果に関する事項は、元の出願の明細書に記載されておらず、分割の要件を満たしていない。
(ロ)原出願の実用新案請求の範囲において、「圧接により接合」と記載されていたが、分割出願においては単に「接合」と補正しており、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡大しており補正違反である。
との2点を主張しているので検討すると、
(イ)の点については、第6図には抵抗器ユニットを直列に接合する技術が図示されており、この技術に基づけば、前記指摘の作用効果を奏するであろうことは、当業者にとって充分推認し得るものであり、該事項が挿入されているとしても、その分割出願が原出願に記載された事項の範囲外の事項を含むものではなく、分割要件に違反するものでもない。
次に(ロ)の点については、確かに分割出願は、原出願のものに比べて実用新案登録請求の範囲を拡大したものとなってはいるが、接合手段として原出願に記載のない新たな手段をその明細書で特定しているわけではなく、その記載のみを以て即分割要件に違反するとすることは出来ない。
[11]むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件登録実用新案を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
固定抵抗器
(57)【実用新案登録請求の範囲】
抵抗接続部および電線接続部を背中合せに有する金属キャップにより抵抗素子と芯線を露呈させた被覆電線とを接合して抵抗器本体を構成し、
その抵抗器本体を開口部を有する矩形のセラミックケースに挿入するとともに、前記開口部を絶縁材料で封止し、前記セラミックケースより被覆電線部のみを外部に引出して抵抗器ユニットとし、
かつ多数個の抵抗器ユニットをその抵抗器ユニットに内蔵される金属キャップを用いて被覆電線により直列に結線した固定抵抗器。
【考案の詳細な説明】
産業上の利用分野
本考案は絶縁性や防湿性が強く要求される分野に使用される固定抵抗器に関し、特に凍結防止用としてパイプ等に取付けられる固定抵抗器に関するものである。
従来例の構成とその問題点
従来、固定抵抗器に被覆電線を接続して使用する場合、第1図のように一般の固定抵抗器1より外部に出ている端子2に被覆電線3を結線した端子2に適合挿入できる接続金具4を介して接続している。ところが、この接続部分の絶縁性や耐湿性を確保するため、第2図のように接続部分に絶縁チューブ5を被せ、さらにその上に耐湿性保護材料6を塗布しており、この接続作業に多大な費用を要している。
考案の目的
本考案は前記従来の欠点を除去するものであり、抵抗素子は従来の技術が使用でき、しかも簡単な構成で抵抗素子と被覆電線を接続することができ、さらに抵抗素子と被覆電線の接続部がセラミックケースの中に絶縁保護されているので、外部で接続作業をする不便を改善するとともに、機器等に同時に複数の抵抗器ユニットを簡単で安価に取付けられるようにすることを目的としている。
考案の構成
本考案の固定抵抗器は、抵抗接続部および電線接続部を背中合せに有する金属キャップにより抵抗素子と芯線を露呈させた被覆電線とを接合して抵抗器本体を構成し、その抵抗器本体を開口部を有する矩形のセラミックケースに挿入するとともに、前記開口部を絶縁材料で封止し、前記セラミックケースより被覆電線部のみを外部に引出して抵抗器ユニットとし、かつ多数個の抵抗器ユニットをその抵抗器ユニットに内蔵される金属キャップを用いて被覆電線により直列に結線したものである。
実施例の説明
以下本考案の一実施例の固定抵抗器を図面を参照して説明する。第3図は本実施例における固定抵抗器を構成する抵抗器本体である。第3図において7は金属キャップで、大きい口径を有する抵抗接続部7aおよび小さい口径を有する電線接続部7bが背中合せに一体に成形されている。抵抗素子8の両端部には、金属キャップ7の抵抗接続7aが挿入され、圧接部7a’で圧接されて取付けられている。また、金属キャップ7の電線接続部7bには被覆電線9が挿入され、圧接部7b’で被覆電線9の露呈された芯線10が圧接されて取付けられている。
以上のように、金属キャップ7により抵抗素子8と被覆電線9とが接合されることによって抵抗器本体が構成されている。
次に、第4図に示すように、この抵抗器本体を開口部を有する矩形のセラミックケース11に挿入し、開口部を絶縁材料14で封止し、被覆電線15のみをセラミックケース11の外部に引出して抵抗器ユニット16としている。このように、セラミックケースで保護すれば絶縁や耐湿性確保のための様々な処置を一切省略できるので、作業性、コスト面で非常にメリットがある。
さらに、第6図に示すように、多数個の抵抗器ユニット16を被覆電線15を介して直列に結線することによって、本実施例の固定抵抗器が構成されている。
このようにすれば、筒状の金属キャップ7の抵抗接続部7aと電線接続部7bを介して抵抗素子8と被覆電線9が接続されるので、従来のように複雑な方法で接続する必要がなく大変便利である。また、第5図に示すように抵抗器ユニット16をパイプに取付けやすいようにセラミックケース11の底面にパイプ径に適合する円弧状の溝12を設けてもよい。さらに第4図では開口面には取付金具がずれないようにする凹状の切欠き部13を設けてある。
考案の効果
以上のように本考案の固定抵抗器によれば、機器等に多数個同時に使用される際に、単独品を機器に取付けていた場合のように抵抗器の外部に出ている被覆電線で個々につなぐ必要がなく、多大で困難な結線作業および接続部の絶縁処理が省けると共に接続部の絶縁性能の劣化に対する不安も消える。
しかも、必要に合せて被覆電線の長さを自由に設定することができ、給湯器等の凍結防止用として用いる際、任意の位置に組付けが可能となり、使い勝手が極めて良好な固定抵抗器を作れるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は従来の固定抵抗器と被覆電線の接続を示す斜視図、第2図は従来の固定抵抗器と被覆電線の接続後の絶縁および耐湿性の処置を示す一部切欠斜視図である。第3図は本考案の一実施例における抵抗器本体の正面図であり、第4図は同実施例における抵抗器ユニットの斜視図である。第5図は同実施例における抵抗器ユニットの斜視図、第6図は同実施例における固定抵抗器の斜視図である。
1…固定抵抗器、2…端子、3…被覆電線、4…接続金具、5…絶縁チューブ、6…耐湿性保護材料、7…金属キャップ、7a…抵抗接続部、7b…電線接続部、7a’…圧接部、7b’…圧接部、8…抵抗素子、9…被覆電線、10…芯線、11…セラミックケース、12…溝、13…切欠き部、14…絶縁材料、15…被覆電線、16…抵抗器ユニット
訂正の要旨 (1)実用新案登録請求の範囲にある「連続的」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「直列」と訂正する。
(2)平成5年3月1日付け手続補正書第3頁第11行目(公報第3欄第6行目)にある「連続的」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「直列」と訂正する。
(3)同書第4頁第18行目(公報第3欄第33行目)の「連続的」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「直列」と訂正する。
審理終結日 1997-02-19 
結審通知日 1997-02-28 
審決日 1995-03-12 
出願番号 実願平2-3967 
審決分類 U 1 112・ 121- YA (H01C)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 下野 和行小林 秀美  
特許庁審判長 玉城 信一
特許庁審判官 深井 弘光
早野 公恵
登録日 1994-05-24 
登録番号 実用登録第2018214号(U2018214) 
考案の名称 固定抵抗器  
代理人 役 昌明  
代理人 平野 雅典  
代理人 大橋 公治  
代理人 大橋 公治  
代理人 平野 雅典  
代理人 金平 隆  
代理人 役 昌明  

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