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審決分類 |
審判 全部申し立て B32B |
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管理番号 | 1048666 |
異議申立番号 | 異議2000-70404 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-01-31 |
確定日 | 2001-11-28 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第2598117号「消防用耐熱布」の請求項1、2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについてされた平成12年11月 2日付け実用新案登録取消決定に対し、東京高等裁判所において実用新案登録取消決定取消の判決(平成13年(行ケ)第11号)があったので、さらに審理の上、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2598117号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.本件考案 本件登録第2598117号実用新案は、平成5年12月22日に実用新案登録出願され、平成11年5月28日にその実用新案権の設定登録がなされたものであって、その請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、訂正審判2001-39034号審決により訂正認容が確定した実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「基布1の表面側に、ゴム層2、裏面側の難燃材入り接着層6、表,裏両 面にアルミニウム金属蒸着のポリエステルフィルム3、表面側の難燃材入り 接着層8、および四フッ化エチレンコポリマーフィルム7を順次一体に積層 して接着させると共に、上記二つの難燃材入り接着層6,8は、いずれもエチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末10を5?20重量%混入したことを特徴とする消防用耐熱布。」 なお、上記下線付与部分は、上記訂正審判により認容された訂正箇所を示す。 2.申立ての理由の概要 これに対し、実用新案登録異議申立人・石井 睦子(以下、「申立人」という。)は、甲第1号証(実公昭62-34765号公報)、甲第2号証(実開平2-217238号公報)、甲第3号証(特開昭52-34068号公報)及び甲第4号証(日本化学会編「化学便覧 応用化学編 II 材料編」丸善株式会社(平成3年7月10日第4刷発行)、1163頁左欄5?24行、同頁右欄「表15.89」)(以下、甲第m号証を「甲m」、該甲号証記載の考案を「甲m考案」という。)を提出し、 本件考案は、甲1?4考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである、 と主張する。 3.申立人の主張の適否の判断 3の1.甲各号証の記載内容 a.甲1 ア.「基層にゴム層を設け、該ゴム層にアルミ蒸着膜を被着したポリエステルフィルムから成る金属反射膜を接着し、この上面に四フッ化エチレンコポリマーフィルムを一体に接着せしめて成る消防用耐熱布。」(実用新案登録請求の範囲)、 イ.「上記ゴム層5とポリエステルフィルム4はアクリル樹脂系の接着剤6を用いて一体に接着する。」(2頁4欄17?18行)、 ウ.「7は上記フィルム4の表面に重ねられた保護層であり、……四フッ化エチレンポリマーフィルムである、該フィルム7は離型性に優れているがアクリル樹脂系の接着剤を用いることで良好な接着効果が得られた。」(2頁4欄19?24行)、 エ.上記考案に係る耐熱布の構造を示す断面図に相当する第3図(3頁中段)。 b.甲2 オ.「熱安定性繊維を主体とするニードルパンチングされた不織布層からなる第1層(1)と、水蒸気を透過する多数の微細孔を有する不透過性フィルムで形成された第2層(2)と、これら第1層と第2層とを接合固定するために両層の間に設置された、不燃性を有する不連続な接着剤層(3)で構成された複合布帛。」(特許請求の範囲の請求項1)、 カ.「外面を形成する外側布帛アセンブリと内面を形成するライニングとで構成された防護衣服であって、これらの……アセンブリ(4)とライニング(5)との間にはインサートが緩く挿入され、該インサートは、熱安定性繊維を主体とするニードルパンチングされた不織布層からなる第1層(1)と、水蒸気を透過する多数の微細孔を有する不透過性フィルムで形成された第2層(2)と、これら第1層と第2層とを接合固定するために両層の間に設置された、不燃性を有する不連続な接着剤層(3)で構成され、前記第1層は前記ライニング側に設置されていることを特徴とする防護衣服。」(同請求項7)、 キ.「接合はポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンタイプの熱可塑性ポリマーから成る複数のスポットによって与えられるとよい。ポリマーとして、2成分ポリウレタン、エチレンアクリル酸コポリマ……を用いることができる。」(4頁左下欄13行?右下欄5行)、 ク.「用いられる熱接着性ポリマーがそれ自体不燃性であると好ましい。塩素化したアンチモントリオキサイドが不燃性をポリマーに与える。」(4頁右下欄6?8行)、 ケ.「24時間放置後に複合布帛は消防士用の衣服としての完全な防護を提供するのに必要な性質を有する。」(5頁左上欄10?12行)、 コ.前記オの複合布帛の断面図に相当する第1図(7頁左下欄)及び前記カの防護衣服の断面図に相当する第2図(8頁左上欄)。 c.甲3 サ.「(a)補強用編織材層、 (b)該補強用編織材層の少なくとも一つの表面に結合した発泡させた物質のシート、 (c)該シートの露出表面に配置された難燃剤を含有する接着剤層:この接着剤層は (i)接着剤中に臭素化芳香族化合物と三酸化アンチモンとを含有し、上記シートの露出表面に浸透している第一番目の接着剤層、及び (ii)接着剤中に水酸化アルミニウムを含有し、第一番目の接着剤層をおおう第二番目の接着剤層からなる、 (d)少なくとも一つの該第二番目の接着剤層に結合したフロック繊維層、 からなる難燃性薄層状物質。」(特許請求の範囲第1項)、 シ.「より一層厳格な基準はいわゆる「垂直試験」……である。この試験において、1片の編織物を垂直に保持し、その下端にガスの炎を3秒間当てる。編織物は(1)編織物の5資料が7インチ……以上燃えないか又は10秒間以上燃えない;(2)いずれの資料も10インチ以上燃えない;(3)処理された編織物が50回の洗濯後又はもはや使用されなくなった時上記の要求に適合するならば難燃性であると考えられる。」(2頁左上欄14行?右上欄4行)、 ス.「この薄層状物質は毛布及び子供用寝間着などとして使用され、しかも上記の「垂直試験」の要求に適合するものである。」(2頁左下欄7?10行)、 セ.上記第2(二)番目の接着剤の具体的組成として、TR-984(アクリル酸ラテックスエマルジョン:Rohm & Haas社)70?75(全体を100重量部とした場合の数値)に対し、水酸化アルミニウム6?10が添加されること(5頁頁左下欄5行?同右下欄9行)。 d.甲4 ソ.難燃剤の説明として、「プラスチック材料は燃えやすいものが多いが、安全性の面からとくに建築、電気、自動車、鉄道車両などに関しては、厳しく難燃性……が規制されている。これらの性能を付与するための添加剤が難燃剤……である。……難燃化には……難燃剤の添加などの方法があるが、ここでは難燃剤として添加されるものを挙げる。ハロゲン系難燃剤は、三酸化アンチモンと併用すると相乗効果がみられるため、多くのプラスチックに用いられている。……また、無機系難燃剤は有機系に比べて……多用されている。」(1163頁左欄6?24行)、 タ.「無機物」からなる「代表的難燃剤」としては、三酸化アンチモンや水酸化アルミニウムが挙げられること(1163頁「表15.89」)。 3の2.対比・判断 本件考案(前者)と甲1考案(後者)とを対比すると、後者についての前記ア?エから総合して、 両者は、 「基布1の表面側に、ゴム層2、裏面側の接着層6、表,裏両面にアルミニウム金属蒸着のポリエステルフィルム3、表面側の接着層8、および四フッ化エチレンコポリマーフィルム7を順次一体に積層して接着させた消防用耐熱布。」 に係る点で一致し、 前者では、上記二つの接着層6,8として、エチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末10を5?20重量%混入したものを使用する(以下、前者の該必須の構成を「特定接着剤要件」という。)一方、後者では、アクリル樹脂系接着剤が使用されているのみ(前記イ?ウ参照)である、 点で相違する。 以下、上記相違点について検討する。 前記のとおり、甲1には、接着剤として任意のものが使用できる旨の記載はなく、逆に、後者(=甲1考案)では、ゴム層2とポリエステルフィルム3上のアルミニウム金属蒸着層との間(以下、「R/Al」と略記する。)、及び、同金属蒸着層と四フッ化エチレンコポリマーフィルム7との間(以下、「Al/4F」と略記する。)の2箇所の接着のいずれにもアクリル樹脂系の接着剤が使用され、特に、該Al/4Fの接着には、被着体の一方を占める四フッ化エチレンコポリマーフィルム7の離型性の関係で、アクリル樹脂系の接着剤を用いると良好に接着できるということが開示されているだけにすぎない(前記ウ参照)。 一方、例えばゴム・プラスチック用、金属用、木材(=木工)用等、被着体の材質に応じて異なった接着剤が市場に流通している実情からも、一般に接着剤の選択に際しては被着体との適合性が重要であることは、当業界の技術常識と解される。 そうすると、前者(=本件考案)の進歩性の有無は、後者(=甲1考案)のアクリル樹脂系接着剤を、「エチレン酢酸ビニル共重合体系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末10を5?20重量%混入」してなる、前記特定の接着剤で置換することが甲2?4考案から当業者にきわめて容易に想到できるか否か、に帰着する。 そうした観点で甲2?4考案をみると、まず、甲2考案の「複合布帛」(前記オ参照)は、「消防士用の衣服」(前記ケ参照)、すなわち、「消防用耐熱布」に係る点で後者(=甲1考案)と軌を一にするものの、後者とは被着体の点でも使用する接着剤用樹脂の点でも全く相違する(前記オ、キ参照)から、甲2考案は、何ら前記「特定接着剤要件」を教示するものとはいえない。 その事情は、難燃剤含有接着剤中での水酸化アルミニウムの含有量を開示する(前記セ参照)ものの、同じく被着体及び全体的な接着剤組成の点で後者(=甲1考案)とは相違する甲3考案(前記サ、セ参照)についても同様である。 したがって、たとえ甲4により、接着剤を不燃化するための無機系添加型難燃材として、三酸化アンチモン(ハロゲンと併用)と水酸化アルミニウムとが並列的に知られており(前記ソ?タ参照)、該教示に従い、甲2考案の「アンチモントリオキサイド」(=三酸化アンチモン)(前記ク参照)を水酸化アルミニウムに置換したとしても、前記被着体並びに接着剤樹脂の相違の点で、なお、前者の前記特定接着剤要件を導き出すことはできない。 以上のとおりであるから、結局、甲1?4考案によっては当業者といえども前者の必須の構成である、前記「特定接着剤要件」を導き出すことはできない。 一方、前者は、該必須の構成を具備することにより、特許明細書段落【0017】?【0018】記載の顕著な効果を奏するものと認められる。 そうすると、前者、すなわち、本件請求項1に係る考案は、甲1?4考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできない。 4.むすび したがって、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に請求項1に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-11-06 |
出願番号 | 実願平5-68545 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
Y
(B32B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鴨野 研一 |
特許庁審判長 |
小林 正巳 |
特許庁審判官 |
石井 淑久 石井 克彦 |
登録日 | 1999-05-28 |
登録番号 | 実用新案登録第2598117号(U2598117) |
権利者 |
東洋メタライジング株式会社 東京都中央区日本橋本石町3丁目3番16号 小林防火服株式会社 東京都渋谷区恵比寿南1丁目2番9号 |
考案の名称 | 消防用耐熱布 |
代理人 | 門間 正一 |
代理人 | 門間 正一 |