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審決分類 |
審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない B43K 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない B43K 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B43K |
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管理番号 | 1069050 |
審判番号 | 無効2001-35473 |
総通号数 | 37 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2003-01-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-10-25 |
確定日 | 2002-11-20 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2607458号実用新案「筆記具における軸筒」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)本件実用新案登録第2607458号の請求項1乃至2に係る考案についての出願は、平成5年7月15日に出願され、平成13年6月15日にその考案について実用新案登録の設定がなされたものである。 (2)これに対して、請求人は、平成13年10月25日付け審判請求書において、本件請求項1乃至2に係る考案は、実用新案法第3条第1項第2号又は第3号、あるいは同条第2項の規定に基づき、実用新案登録を受けることができないものであるから、その実用新案登録は無効にされるべき旨主張し、証拠方法として甲第1号証の1,2及び甲第2号証の1,2を提出している。 (3)一方、被請求人は、平成13年12月28日付け答弁書において、無効理由を否定すると共に、証拠が信憑性に欠ける旨主張している。 (4)その後、当審は、証拠の信憑性等を確認すべく、請求人に対して審尋を行い、期間を指定して回答を求めたが、指定した期間を過ぎても、さらには、請求人が平成14年5月15日付けで提出した上申書により認めた2ヶ月の延長期間を過ぎても、請求人からは何らの応答もないものである。 2.本件請求項1乃至2に係る考案 本件請求項1乃至2に係る考案は本件明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】把持部となる、軸筒に形成した段部と軸筒に連接した先部材間に、外面が円形で、且つ、外面処理の同じ滑り止め性を有する複数個の環体を着脱自在に配置すると共に、その環体の前面と後面を平面にした筆記具における軸筒。 【請求項2】把持部となる、軸筒に形成した段部と軸筒に連接した先部材間に、外面が非円形で、且つ、外面処理の同じ滑り止め性を有する複数個の環体を、隣接する環体を同じ向きに着脱自在に配置した筆記具における軸筒。」 3.証拠方法 請求人は、証拠方法として、次の証拠を提出している。 甲第1号証の1:「APICA CATALOG VOL.10」アピカ株式会社(請求人は、1981年8月に印刷されたものであるとしている。) 甲第1号証の2:「APICA CATALOG VOL.6」アピカ株式会社(請求人は、1982年1月に印刷されたものであるとしている。) 甲第2号証の1:請求人が写した写真(請求人は、甲第1号証の1,2のカタログに掲載された品番「シプ352」のシャープペン又はカラーグリップ・シャープの写真であるとしている。) 甲第2号証の2:請求人が作成した図面(請求人は、甲第2号証の1の写真のものを図面に書き直したものであるとしている。) 4.当審の判断 当審が請求人に対して行った前示審尋は次のとおりである。 『設問1.甲第1号証の1及び2の印刷日について 請求人は、甲第1号証の1(APICA CATALOG VOL.10)の印刷日を1981年8月とし、甲第1号証の2(APICA CATALOG VOL.6)の印刷日を1982年1月としているが、これらの印刷日を認めるに足る証拠がない。 また、VOL.No.の連続性からみて、VOL.10のものが先に印刷され、VOL.6のものが後から印刷されたものとするのは不自然であり、甲第1号証の1及び2の各末尾の「Printed in Japan」に続いて記載された「8108」や「8201」も如何なる意味のものか不明である。 設問2.甲第1号証の1及び2の頒布等について 請求人は、印刷日をもって甲第1号証の1及び2が本件出願前に頒布されたもの或いはそれらに掲載されたものが本件出願前に販売されたものとしているようであるが、印刷日だけをもってこのようなことはいえない。 他に、甲第1号証の1及び2が本件出願前に頒布されたもの或いはそれらに掲載されたものが本件出願前に販売されたものと認めるに足る証拠もない。 設問3.甲第1号証の1及び2に掲載されたものの構造について 請求人は、甲第1号証の1掲載の写真番号8及び106,9及び105,10及び104のもの、及び甲第1号証の2掲載の写真番号2,3,4,5のものが、複数の環体を個別に着脱自在にし、各環体の前面と後面を平面に構成し、各環体の外面を処理の同じ滑り止め性を有するものにしてあるというが、そのような記載はなく、それらを認めるに足る証拠もない。 設問4.甲第1号証の1及び2と甲第2号証の1との関係について 請求人は、甲第2号証の1(写真)が甲第1号証の1及び2に掲載されたシプ352の写真であるとしているが、甲第2号証の1に写されているものが甲第1号証の1及び2に掲載されたシプ352と同一のものと認めるに足る証拠がない。 設問5.甲第2号証の1に写されているものの商品性について 請求人は、甲第2号証の1に写されているものが本件出願前に実際に販売された商品(シャープペンシル)であるとしているが、そもそも、シャープペンシルに必要な、芯を繰り出すためのチャック体やそのチャック体を開閉するチャックリングなどが写されていないものを実際に販売された商品と認めることはできない。 他に、甲第2号証の1に写されているものが本件出願前に実際に販売された商品であると認めるに足る証拠もない。 設問6.甲第2号証の1に写されているものの製造段階について 請求人は、甲第2号証の1に写されているものが完成品とそれを分解したものであるとしているが、シャープペンシルにおいては芯を繰り出す力が先部材に作用するため、完成品は先部材を軸筒に固定したものでなければならないところ、分解写真には螺合や凹凸嵌合やきつく嵌まるが簡単に外せるように加工された単なる嵌合などによる着脱自在な固定手段が写されておらず、また接着などにより固定すれば分解などできなくなるものであるから、甲第2号証の1に写されているものは完成品とする前段階のものと認められる。 他に、甲第2号証の1に写されているものが完成品とそれを分解したものであると認めるに足る証拠はない。 設問7.甲第2号証の1に写されているものの構造について 請求人は、甲第2号証の1に写されているものが、複数の環体を個別に着脱自在にし、各環体の前面と後面を平面に構成し、各環体の外面を処理の同じ滑り止め性を有するものにしてあるというが、上述したように完成品と認め難いのであり、完成品とするときに、環体を軸筒に回転しないように接着固定することなども考えられ、その写真からでは複数の環体を個別に着脱自在にしてあると断定することはできないものである。 また、その写真からでは、各環体の前面と後面を平面に構成し、各環体の外面を処理の同じ滑り止め性を有するものにしてあることも認めることができない。 他に、これらのことを認めるに足る証拠もない。 設問8.環体の外面を非円形とすることについて 請求人は、把持部を非円形とすることは公知であるとしているが、単に環体のない軸筒自体の把持箇所の外面が非円形ということであるのか、把持部となる環体単独では非円形ではないが嵌合している軸筒部分に倣って非円形になっているということであるのか、軸筒に嵌合した把持部となる環体自体の外面が単独でも非円形ということであるのかなど不明であり、それによっては、複数の環体を非円形とし、同じ向きとすることが格別のことではないとする論理が異なってくることから、証拠をもって明確にすべきである。 なお、回答は設問毎に行い、且つ反論は明確な根拠・証拠をもってなされたい。』 これに対して、請求人からは、前示のとおり何らの応答もなかったものである。 検討するに、請求人の提出した証拠について、特に、甲第1号証の1,2のカタログがいつ頒布されたものであるのか、これらのカタログに掲載された筆記具や甲第2号証の1,2に示された筆記具がいつ販売されたものであるのかなど不明であるため、これらのカタログを本件出願前に頒布された刊行物とすることはできず、これらの筆記具を本件出願前に公然知られたもの、あるいは公然実施されたものとすることもできない。 したがって、甲第1号証の1,2及び甲第2号証の1,2に基づく請求人の前示主張は理由がなく採用できない。 5.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項1乃至2に係る考案の実用新案登録を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、実用新案法第41条第1項で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-09-19 |
結審通知日 | 2002-09-25 |
審決日 | 2002-10-09 |
出願番号 | 実願平5-43691 |
審決分類 |
U
1
112・
112-
Y
(B43K)
U 1 112・ 113- Y (B43K) U 1 112・ 121- Y (B43K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 砂川 充 |
特許庁審判長 |
小沢 和英 |
特許庁審判官 |
白樫 泰子 藤井 靖子 |
登録日 | 2001-06-15 |
登録番号 | 実用新案登録第2607458号(U2607458) |
考案の名称 | 筆記具における軸筒 |
代理人 | 関根 光生 |