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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B29C
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効としない B29C
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 無効としない B29C
審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない B29C
管理番号 1079803
審判番号 無効2001-35093  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-03-05 
確定日 2003-06-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第2594537号実用新案「樹脂成形体」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯及び本件考案
本件実用新案登録第2594537号は、平成3年8月26日の出願に係り、平成11年2月26日に設定登録されたものであり、その後実用新案登録異議の申立てがなされ、平成12年4月20日に「登録第2594537号の請求項1、2に係る実用新案登録を維持する。」との実用新案登録異議の決定がなされ、その後、平成13年3月5日に日本ウエーブロック株式会社により本件無効審判請求がなされ、平成14年1月16日に口頭審理(場所:特許庁審判廷)が実施され、同日書面審理への移行が宣言され、更に、平成15年4月17日に口頭審理及び証拠調べ(場所:特許庁審判廷)が実施され、同日審理の終結が宣言されたものである。
請求項1及び2に係る考案(以下、「本件考案1」及び「本件考案2」という。)は、実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】復元性のある丸線の外周面にポリエステル系融着性ワニスを塗布焼付して融着層を形成し、その外周上に樹脂を所定の形状に押出すると共に、押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させてなることを特徴とする樹脂成形体。
【請求項2】復元性のある丸線の外周面に融着性ワニスを塗布焼付して融着層を有する融着丸線とし、前記融着丸線を押出ラインに供給して前記融着丸線の外周上に樹脂を所定の形状に押出すると共に、押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させてなることを特徴とする樹脂成形体。」

2.請求人の主張及び提出した証拠方法
2-1.請求人の主張
請求人 日本ウエーブロック株式会社(以下、「請求人」という。)は、「第2594537号実用新案登録はこれを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、下記甲第1?8及び16、資料1?4、並びに、参考資料1及び2を提出して、本件考案1及び2に係る実用新案登録は以下(1)?(3)の理由により、実用新案法第37条第1項第2号又は同条同項第4号の規定によって無効とされるべきであると主張している。(当審註:請求人は審判請求書中で、「本件考案1及び2に係る実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号の規定に違反する。」すると述べているが、無効とすべき理由に、本件出願が実用新案法第5条第4項、第5項第2号及び第6項に規定された要件を満たしていないこと(理由(1))を挙げているところからみて、実質的に「本件考案1及び2に係る実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第4号の規定に違反する。」ことも主張しているものと解される。)
(1)本件実用新案登録明細書には、実用新案登録請求の範囲に実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことのできない事項が記載されていないか、或いは考案の詳細な説明に当業者が容易に実施できる程度に考案の目的、構成及び効果が記載されていないから、本件考案1及び2に係る実用新案登録は、実用新案法第5条第4項、第5項第2号及び第6項に規定された要件を満たしていない実用新案登録出願に対してされたものである。
(2)本件考案1及び2は、甲第1?5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案1及び2に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)本件考案2は、1991年6月にモデルチェンジされたトヨタ自動車株式会社の「スプリンター」のバックウィンドモールとして本件出願前に製造・販売されたものであり、本件出願前に公然実施された考案であるから、本件考案2に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第1項第2号の規定に違反してされたものである。

2-2.証拠方法及び記載事項
甲第1号証:実願昭51-126213号(実開昭53-44808号)のマイクロフィルム
(ア)「合成樹脂を押出成形して作られるモールデイング材本体1が、その押出成形時に一体的に押出されて内包されている屈曲可能な金属線2と、該モールデイング材の全長にわたって一体的に結合されている自動車用合成樹脂製モールデイング材」(実用新案登録請求の範囲第1項)
(イ)「本考案のモールデイングは、合成樹脂材を押出成形するに当り屈曲可能な金属線を芯材として内包させた形に押出成形し、該金属線と金属樹脂製モールデイング材本体とを一体的に結合させることにより、該金属線の無収縮性によって合成樹脂材の経年収縮を抑止させたことを特徴とする。」(明細書第2頁第14?19行)
(ウ)「第1図のモールデイング材本体1内には1本の合成樹脂用接着材の塗被加工を施した金属線2aが芯材として埋込まれている。21は、該金属線に予め施された上記の塗被加工層である。」(明細書第3頁第6?9行)
(エ)「本考案で用いる芯材用の金属線は、容易に屈曲させ得る比較的軟質の金属線である限りその材質は自由であるが、合成樹脂材との結合を良好にするため、予め所要の予備加工を施して用いるのがよい。」(明細書第3頁第17行?第4頁第1行)
(オ)「第3図は、各種異なる予備加工を施した金属線を例示しており、(a)は第1図のモールデイング材に内包させた金属線2aを示し、合成樹脂用接着剤の塗被加工層21を有する。」(明細書第4頁第2?5行)
(カ)「上記金属線2(・・・)は、下記のようにしてモールデイング材に内包させる。合成樹脂製モールデイング材を押出成形する押出しダイ(図示せず)は、押出し口と反対側に金属線導入口を有し、導入される金属線2を、合成樹脂材と共に押出し口から押出して、所定断面形内に金属線2を内包する合成樹脂製モールデイング材1として押出成形する。」(明細書第5頁第3?11行)
(キ)「このように押出成形されたモールデイング材において、第1図製品のように金属線に接着剤が塗被加工されている場合は、モールデイング材本体と金属線とが接着剤を介して一体的に結合される。」(明細書第5頁第12?15行)
(ク)昭和52年2月2日付け手続補正書(方式)における第3図(a)には、表面層21を有する断面円形の線材2aが図示されており、また、第1図には、当該線材が長手方向に埋設された物品が図示されている。

甲第2号証:永井 進 監修「実用プラスチック用語辞典 第三版」,1989.9.10,(株)プラスチック・エージ,表紙、p351「接着」の項、奥付
(ケ)「接着 adhesion,glueing:接着剤を媒介とし、化学的もしくは物理的な力、又はその両者によって2個の被着体を結合(接合)させること。通常、接着剤を溶液又は溶液状態にするか、モノマーやオリゴマーのような流動体として被着体に塗布し、次いで溶剤の揮散、反応、冷却などにより接着剤を固化させることにより接着が行われる。接着力は接着剤と被着体の間に働く結合力と接着剤自身の凝集力によって支配される。前者の結合力の内容は、化学結合、水素結合、ファンデルワールス力などや投錨効果などによる機械的な力が主なものであり、被着体表面上における接着剤のぬれが重要な因子となる。一方、接着剤自身の凝集力はポリマー分子間力に依存し、ポリマーの種類によって決まる。接着剤には天然高分子から合成高分子まで数多く使用されているが、現在では後者がほとんどを占めている。接着剤を大きく分類すると、1)蒸着型(ゴム系、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニルなどの溶液又はエマルション)、2)反応型(熱硬化性樹脂、シアノアクリレート系、複合系など)、3)感圧型(粘着テープなど)、ホットメルト型(エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミドなど)がある。」

甲第3号証:永井 進 監修「実用プラスチック用語辞典 第三版」,1989.9.10,(株)プラスチック・エージ,表紙、p351「接着剤」の項、奥付
(コ)「接着剤 adhesive:被着体の二つの面の間に介在して結合(接合)するのに用いる接着性物質。・・・また、流動状態の接着剤が固化する過程の面から分類すると、次のようになる。
1)蒸発型:デキストリン、ゴムなどのように、接着後に水又は溶剤が合わせ目の端から揮散するか、被着体に移行吸収されて被着体を結合するもの。
2)感圧型:粘着テープ用接着剤のように、押えつけると粘性流動して被着体を結合するもの。
3)感温型:エチレン-酢酸ビニル共重合体のように、加熱すると軟化又は溶融し被着体同志を結合するもの。」

甲第4号証:深井 寛 著「新高分子文庫 16 ホットメルト接着の実際」,1979.5.20,(株)高分子刊行会,表紙、p10?11、64?65、奥付
(サ)「一般の接着剤は溶剤の揮散や化学反応などにより硬化して接着するのに対し、ホットメルト接着剤は加熱溶融し冷却によって硬化し接着力を発揮するので、硬化機構の特異さから接着のセットタイムも数秒ですみ、硬化の最も早い工業的接着剤であることが最大の特徴である。」(第10頁第2?5行)
(シ)「ホットメルト用ベースポリマーとして用いる熱可塑性ポリエステルは、ポリエステルフィルム、金属、プラスチックなど広範囲な被着体に対し接着性がすぐれている。」
(第64頁第5?6行)

甲第5号証:特開平3-34832号公報
(ス)「第11図は従来のモールディングの製造方法を示す系統図である。従来のモールディング1の製造方法は、まずアンコイラ11から金属ストリップ材12を送り出し、ロールコータ13で接着剤を塗布し、高周波加熱器14で加熱して接着剤を焼付ける。水槽15で冷却後、ロール成形機16で折曲成形して異形材4を形成し、高周波加熱器17において加熱して接着剤を活性化し、押出成形型18に供給する。」(第2頁左上欄第11?18行)

甲第6号証:「スプリンターバックウィンドモール生産の件」と題する 河野 通俊(昭栄合成株式会社)の証明書,2001.1.5
(セ)「日本ウエーブロック株式会社殿
スプリンターバックウィンドモール生産の件
(1).弊社は、1991年6月にモデルチェンジされたトヨタ自動車株式会社の「スプリンター」の部品であるバックウィンドモールの押出し生産を行っていました。
(2).この時生産していた「スプリンター」のバックウィンドモールは、1999年8月9日、トヨタ自動車株式会社発行『車検・外装パーツカタログ《’91.6-》トヨタスプリンター』(資料1)の第247頁・第251頁に記載された「品番 75571-12600」で示されているものであります。
(3).この「品番 75571-12600」で示されるバックウィンドモールは、パーツメーカーであるニフコ株式会社より提示された1991年3月28日、杉田により設計された図面:「DFT No.Y21196-01」(資料2)に基づき、弊社が生産したものであります。又、この図面は、押出成型品の断面図であり、樹脂の中に芯材として「金属ワイヤー」の挿入が記載されています。
(4).この「金属ワイヤー」は、パーツメーカーであるニフコ株式会社より提示された1989年7月26日、杉田により設計された図面:「DFT No.N11497-01」(資料3)によるものであります。又、この図面は、「仕様については、昭和電線電纜株式会社製ボンド黄銅線(アドコート)仕様書による」との記載があります。
(5).この「アドコートの仕様書」は、1993年2月19日、昭和電線電纜株式会社発行、『アドコート R-s仕様書「仕様書番号 S-411430A号(当審註:「411430」は「1411430」の誤記と認められる。)」(資料4)であります。この仕様書の日付は、1993年2月19日となっていますが、1991年6月の「スプリンター」のバックウィンドモールに使用した「アドコート」は、この仕様書に同じものであります。又、この仕様書には、「被膜は、融着塗料を素線表面に塗布焼付けたもので---」との記載がありますように、この「アドコートは、金属丸線に融着塗料が塗布焼付けされているもの」であります。
(6).弊社は、この「アドコート」を押出しラインに供給し、押出し時の熱により「アドコート」の融着層を溶融し、押出し樹脂と金属丸線を接着させた樹脂成型体である「スプリンター」のバックウィンドモールの生産を行っていたものであります。
以上、証明致します。
2001年1月5日
埼玉県川口市青木4-3-30
昭栄合成株式会社
川口工場 工場長 河野 通俊 (当審註:()付き数字は、原文では丸囲み数字)」

甲第7号証:「安全装備強化の新型カローラ」との見出しの記事,日本経済新聞 第14版 第10面,1991.6.13
(ソ)「安全装備強化の新型カローラ」と題する記事中に、「トヨタ自動車は十二日、小型乗用車「カローラ」=写真はセダンSE-L、「スプリンター」を全面改良して発売した。・・・」と記載されている。

甲第8号証:「New Sprinter 誕生」との広告,日本経済新聞 第14版 第4面,1991.6.15
(タ)乗用車の写真とともに「New Sprinter誕生」との記載が認められる。

甲第16号証:「岩波 理化学辞典 第4版」,岩波書店,1991.1.10,表紙、p693 「接着剤」の項、奥付
(チ)「接着剤:同種または異種の物体をはりあわせるために使用される物質。・・・ホットメルト接着剤(エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステルなど主剤とする接着剤.加熱溶融により接着するもので、製本、製缶、製靴、木工用)、マイクロカプセル接着剤などのような特殊な用い方をするものもある。・・・」

なお、甲第1?8号証は、平成13年3月5日付け審判請求書に、甲第16号証は平成15年3月26日付け回答書に添付されたものである。

資料1:「TOYOTA 車検・外装 パーツカタログ《’91.6-》トヨタスプリンター」,トヨタ自動車株式会社,1999.8.9,表紙、p247、251
(ツ)表紙には「TOYOTA 車検・外装パーツカタログ《’91.6-》トヨタスプリンター セダン バン ワゴン・・・1999.8」と記載され、それに続く頁に「このパーツカタログは、総入替え版として発行してありますので、前回のNo.52148-98は廃棄してください。」との記載があり、第247頁には略図の自動車のバックウィンドモールに「75571」との付番が認められ、第251頁には「75571 バックウインドウ アウトサイド モールデイング UPR・・・、始期-終期:9106-9505、適用型式:AE10#,CE100,104,EE101..GT,LX,SEG,SEL,XE、品番(備考):75571-12600-」との記載が認められる。

資料2:「DFT No.Y 21196-01の件」と題する 水澤 明(株式会社 ニフコ)の証明書,2000.12.12、及び「DFT No.Y 21196-01」図面,設計 杉田
(テ)「日本ウェーブロック株式会社殿
「DFT No.Y 21196-01の件」
別紙添付図面「DFT No.Y 21196-01」(1991年3月28日付け DESN 杉田)は、「PART No.7551(当審註:「7551」は「75571」の誤記と認められる。)-12600」の弊社の図面であることを証明します。
2000年12月12日
愛知県豊田市神池町2-1236
株式会社ニフコ 名古屋事業所
技術部長 水澤 明 」
(ト)添付図面の右下欄には、
「(3)×3、93.11.23、材料変更(アルクリン国産材へ)、高橋(和)、-01
(2)×2、93.4.6、図面移管(名より)LHペイントマーク廃止、高橋(和)、-00
(1)×5、91.4.25、マーキング色変更 842D書換え、杉田、01
()× 、91.3.28、量産移管、杉田
MARK、DATE、REVISION RECORD、REVR、CHG NO、USR NO
DFT、DESN:杉田、CHEK:丸岡、APPR:・・・、PART NO:840D,75571-12600(841D)
MATERIAL:PVC,TPVC 図中指示、COLOR:黒色、TRI.:・・・、
SCALE:10/1、CLASS:、
NAME:MLDG BACK、
DFT NO:Y21196-01,N30F3
NIfCO Inc.、DATE:91.3.28、CADO2」と記載され、同欄の上部には、「変更 5.11.23 旧図と交換」と表示された丸引の陰影が認められ、その横に「差替」と記載されている。(当審註:()付き数字は、原文では三角囲み数字、()は原文では三角)
(ナ)添付図面には、中央に間隔を隔てて「金属ワイヤ(φ0.25)日本プライ製(X-803)」と表示された2個の小円を含む縦長の胴部と、胴部の頂部に設けられた「Crテープ(FMM1125)日本ウェーブロック製」と表示された表層部と、胴部の上部の左右及び下部の右に設けられた「軟質(Hs70°)J2070BK(アルクリン) 三井・デュポンポリケミカル」と表示された張出部と、胴部の下部の左に設けられた「半硬質(Hs85°)F-668」と表示された張出部とからなる部材が示されている。

資料3:「DFT No.N 11497-01の件」と題する 水澤 明(株式会社 ニフコ)の証明書,2000.12.12、及び「DFT No.N 11497-01」図面,設計 杉田
(ニ)「日本ウェーブロック株式会社殿
「DFT No.N 11497-01の件」
別紙添付図面「DFT No.N 11497-01」(1989年7月26日付け DESN 杉田)は、購入品の弊社No.「FX0803-00」の図面であることを証明いたします。
尚、図面No.Y 21196-01に記載されている「X-803」は、弊社の都合により「FX0803-00」に変更したものであります。
2000年12月12日
愛知県豊田市神池町2-1236
株式会社ニフコ 名古屋事業所
技術部長 水澤 明 」
(ヌ)添付図面の上部には、
「THIS DOCUMENT IS CONFIDENTIAL AND OUR PROPERTY.IT MUST NOT BE COPIED OR SHOWN TO OTHERS WITHOUT OUR WRITTEN CONSENT. 」と記載され、その下の欄には、
「導体径 mm:0.25^(±0.01)皮膜厚さ 最大 mm:0.004
最小 mm:0.017
最大仕上外径 mm:0.275」と記載されている。
また、同欄の横には、
「参考図 ’99.5.13 株式会社 ニフコ」と表示された丸引の陰影が認められる。
(ネ)添付図面の下欄には、
「()(当審註:()は原文では三角)×、97.06.17、誤記訂正(手書きからCADへ書き換え)、杉田、-01
記号(MARK)、日付(DATE)、変更事項(REVISION RECORD)、変更者(REVR)、変更番号(CHG NO)、整番コード変更
製図(DFT):鈴木、設計(DESN):杉田、検図(CHEK):高橋茂、責任者(RESP):福原、得意先番号(PART NO):-
FX0803-00
整番コード(PART.NO.)
材料(MATERIAL):黄銅(BS SBW-P)、色調(COLOR):黄銅色、三角法:・・・
尺度(SCALE):Free、分類(CLASS):BHXX900、・・・
図面名称(NAME):WIRE
図面番号(DFT NO):N 11497-01,N FX0803-00
株式会社 ニフコ NIfCO Inc.、日付(DATE):89.07.26) 」
(ノ)添付図面には、径が「φ0.25」と示されたワイヤが図示されており、同図の下には、
「注記 1.購入先:日本プライ株式会社
2.仕様については、昭和電線電纜株式会社製ボンド黄銅線(アドコート)仕様書による。
3.本品は、押し出し品の熱収縮防止の為に使用するものである。」と記載されている。

資料4:「「アドコートRs25.仕様書」の件」と題する 河野 通俊(昭栄合成株式会社)の証明書,2001.1.5、及び「アドコートRs25.仕様書」,仕様書番号 S-1411430A号,1993.7.5,昭和電線電纜株式会社,表紙、p1/6?6/6
(ハ)「日本ウェーブロック株式会社殿
「アドコートRs25.仕様書」の件
別紙添付の1993年2月19日付け昭和電線電纜株式会社発行の「アドコートR-s仕様書」(仕様書番号S-1411430A号)につきましては、その販売代理店である日本プライ株式会社より入手したものであります。
又、1991年(平成3年)6月にモデルチェンジしたトヨタ自動車株式会社のスプリンターのバックウインドモールの部品(部品番号75571-12600)につきましては、ニフコ株式会社より提示されたの(当審註:「されたの」は「された」の誤記と認められる。)図面(図面番号「No Y21196-01」)により、弊社が生産したものでありま(当審註:「ありま」は「あります」の誤記と認められる。)が、この部品の芯材としての金属線は、外周面に接着剤層のある上記の「アドコート」を使用し、押出時の熱により樹脂と貼合せ一体化させた押出成形品であります。この時の「アドコート」は、上記の仕様書に同じものであります。
以上、証明致します。
2001年1月5日
埼玉県川口市青木4-3-30
昭栄合成株式会社
川口工場 工場長 河野 通俊」(ヒ)「アドコートRs25.仕様書」には、以下の記載が認められる。
「 1993年(平成5年)7月5日
仕様書番号 S-1411430A号
日本プライ株式会社 御中
アドコート R-s仕様書
A 1993.7.5接着性規格値アップ
試験温度変更
改定 年月日 改訂内容
日本電線電纜株式会社
電力事業部 線材巻線部 ・・・
発行年月日 1993年2月19日」(表紙)
「 アドコート R-s仕様書
1.適用範囲
この仕様書は、塩化ビニル系樹脂の収縮防止に使用するアドコートR-s(以下、線という)について規定する。
2.種類及び記号
線の種類と記号は、表1のとおりとする。
表1 種類:アドコート 25R-s、記号:AD 25R-s、素線径 0.25mm ・・・
3.特性
特性は、6.により試験を行ったとき表2のとおりとする。
表2 ・・・
種類:アドコート 25R-s
外観:(1)傷がないこと。
(2)常温で粘着しないこと。
(3)つめ先でこすっても容易に皮膜が剥れないこと。
(4)線に曲りやネジレがないこと。
・・・
接着性:0.265N(27gf)以上
非粘着性;線が粘着しないこと。
4.寸法
線の素線径、許容差、皮膜厚さ、最大仕上外径は付表のとおりとする。
5.素線、皮膜及び外観
5.1 素線
素線は、銅合金線とする。
5.2 皮膜
皮膜は、融着塗料を素線表面に塗布焼付けたもので、素線に対して有害な作用を及ぼさず、十分な耐久性を有するものとする。なお、皮膜の色は赤とする。 ・・・
6.試験方法
・・・
6.4 接着性試験
・・・下記直径の表面平滑なマンドレルに0.784N(80gf)の張力を加えながら約100回/minの回転数で線と線が接触するように約50回巻き付ける。次に試験片をマンドレルに巻き付けたまま図1に示すジグに垂直に立て、下記おもりを載せ、各ターンが整列して密着していることを確認した後、160±5℃の恒温槽中で5分間加熱する。これを恒温槽から取り出し、試験片の温度が常温に戻った後マンドレルから外し、図2に示すように試験コイルの一端を固定し他の一端に規定のおもりをつるし、試験コイルの線間がはがれないかを調べる。・・・
素線径:0.25mm、マンドレル径:3.0mm、おもり:35g
・・・
付表 (mm) 種類:アドコート 25R-s、素線径:0.25、・・・最小皮膜厚さ:0.004・・・
解説
本仕様書は、弊社提出仕様書S-1411374A号「アドコート R」の仕様書に基づいて作成致しました。・・・ 」

参考資料1:「ボンド黄銅線(アドコート)仕様書(Bs SBW-P)」,仕様書番号 S-1411227A号,S63.6.20,昭和電線電纜株式会社,表紙、p1/5?5/5
(フ)「ボンド黄銅線(アドコート)仕様書(Bs SBW-P)」には、以下の記載が認められる。
「 昭和63年6月20日
仕様書番号 S-1411227A号
御中
ボンド黄銅線(アドコート)仕様書
(Bs SBW-P)
1 63.6.20(1)特性表に外観及び非粘着性を追加。
(2)試験方法に外観試験及び非粘着性を追加。
(3)寸法表に皮膜厚さの最大を追加。
改定 年月日 改訂内容
日本電線電纜株式会社
巻線部 技術課 」(表紙)
「 ボンド黄銅線(アドコート)仕様書
1.適用範囲
この仕様書は、ボンド黄銅線{名称:アドコート}(以下線という)について規定する。
2.種類及び記号
線の種類と記号は、表1のとおりとする。
表1 種類:ボンド黄銅線、名称:アドコート、記号:Bs SBW-P
・・・
3.特性
特性は、6.により試験を行ったとき表2のとおりとする。
表2 ・・・
外観:(1)傷がないこと。
(2)常温で粘着しないこと。
(3)つめ先でこすっても容易に皮膜が剥れないこと。
(4)線に曲りやネジレがないこと。
・・・
接着性:25g以上
非粘着性;線が粘着しないこと。
4.寸法
線の導体径、許容差、ボンド皮膜厚さ、最大仕上外径は付表のとおりとする。
5.導体、絶縁皮膜及び外観
5.1 導体
導体は、JIS H 3260(黄銅線)に規定する黄銅線C2700とする。
5.2 絶縁皮膜
絶縁皮膜は、ポリエステル系自己融着塗料を導体表面に塗布焼付けたもので、導体に対して有害な作用を及ぼさず、十分な耐久性を有するものとする。 ・・・
6.試験方法
・・・
6.6 接着性試験
・・・直径3.0mmの表面平滑なマンドレルに80gの張力を加えながら約100回/minの回転数で線と線が接触するように約50回巻き付ける。次に試験片をマンドレルに巻き付けたまま図1に示すジグに垂直に立て、35gのおもりを載せ、各ターンが整列して密着していることを確認した後、120±5℃の恒温槽中で5分間加熱する。これを恒温槽から取り出し、試験片の温度が常温に戻った後マンドレルから外し、図2に示すように試験コイルの一端を固定し他の一端に規定のおもりをつるし、試験コイルの線間がはがれないかを調べる。・・・
付表 導体径 mm:0.25±0.01
皮膜厚さ 最小 mm:0.004
最大 mm:0.017・・・ 」

参考資料2:「ボンド黄銅線(アドコート)仕様書」と題する書類,p1-5
(ヘ)各頁の上部欄外に「90年4月26日午後2時22分;トキワケミカル工業(株) FAX 0474・・・」、下部に「昭和電線電纜株式会社」との記載が認められる。

なお、平成15年4月17日の口頭審理における請求人の陳述に基づいて、請求人が提出した甲第10号証(平成14年2月13日提出)及び甲第17号証(平成15年3月26日提出)をそれぞれ「参考資料1」及び「参考資料2」とした。

2-3.甲第9号証についての判断
請求人が平成14年2月13日付け上申書に添付して提出した甲第9号証(「「PART No.75571-12600」生産の件」と題する 佐藤 裕治(株式会社 ニフコ)の証明書,2002.2.8)には、「別紙添付図面「DFT No.Y 21196-01」(1991年3月28日付け DESN 杉田)に記載された「PART No.75571-12600」は、弊社がその生産を昭栄合成株式会社へ1991年6月以降委託したパーツであることを証明いたします。」と記載されている。
しかしながら、審判請求書に添付された甲第6号証には、1991年6月に「スプリンター」がモデルチェンジされたこと、及びニフコ株式会社より提示された1991年3月28日、杉田設計の図面に基づいて昭栄合成株式会社が「品番75571-12600」の部品を生産したことは記載されているものの、1991年6月以降生産委託されたことについては記載されておらず、この部品に関して同号証が引用する水澤 明(株式会社 ニフコ)による証明書(資料2)と比較しても、証明しようとする内容も証明者も異なるので、甲第9号証は、甲第6号証を補完するものといえないばかりか、新たな事項を証明しようとするものであって、請求書の要旨を変更するものであるから、甲第9号証は証拠として採用しない。

2-4.無効理由通知に示した証拠
平成14年7月23日付け無効理由通知書には、次の2つの証拠が示されている。
甲第14号証:特開昭48-58380号公報
甲第15号証:特開昭48-58381号公報
甲第14、15号証には、導体上に塗料(ワニス)を塗布焼付けしてなる自己融着性電線について、これをコイル巻した後、加熱することにより自己融着硬化しコイル成形体が得られること(甲第14号証の第3頁右上欄第4?6行、甲第15号証の第3頁右上欄第4?7行)が記載されており、特に甲第15号証には、このような融着性塗料としてポリエステル系の塗料を用いること(特許請求の範囲)も記載されている。

3.被請求人の主張及び提出した証拠方法
3-1.被請求人の主張
被請求人 日本プライ株式会社(以下、「被請求人」という。)は、乙第1?3号証及び参考資料1、2を提出して、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人が主張する上記(1)?(3)の点に対して、(1)本件実用新案登録明細書の記載には、請求人が主張するような不備はない、(2)本件考案1及び2は、甲第1?5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない、そして、(3)本件考案2は、請求人が主張するような本件の出願前に公然実施された考案ではない、旨主張している。

3-2.証拠方法及び記載事項
乙第1号証:「「アドコート」商品販売年表」と題する表,日本プライ株式会社 常務取締役 水野 晃,平成14年8月26日
(あ)「アドコート25R*」についてS63からH5まで、「アドコート25R-s**」についてH5からH14現在までの範囲が矢印で示されている。同様に、「アドコート40R」についてH2からH5まで、「アドコート40R-s**」についてH5からH14現在まで、更に、「アドコート25-O***」及び「アドコート40-O***」についてH12からH14現在までの範囲が矢印で示されている。そして、以下の註記がなされている。
「 *「R」は赤色を意味し「PVC」用である。
**「s」は従来タイプと区別するための「スペシャル」を意味する。<本件考案対応品>
***「O」は「オレフィン」用を表す。」

乙第2号証:「岩波 理化学辞典 第5版」,岩波書店,2001.8.20,表紙、p741 「接着剤」の項、p1520 「ワニス」の項、奥付
(い)「接着剤:同種または異種の物体をはりあわせるために使用される物質。・・・ホットメルト接着剤(エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステルなど主剤とする接着剤.加熱溶融により接着するもので、製本、製缶、製靴、木工用)、マイクロカプセル接着剤などのような特殊な用い方をするものもある。・・・」
(ろ)「ワニス:顔料を含まず、透明な塗膜を作る塗料。油ワニスと酒精ワニスとがある。油ワニスは樹脂(ロジンや油溶性フェノール樹脂など)と乾性油(あまに油、きり油など)を加熱溶解し、あるいはさらに加工して溶剤に溶解したものである。合成樹脂主体の油ワニスを樹脂ワニスともいう。酒精ワニスはセラックやロジンなどの天然樹脂を主にアルコールに溶解したものである。塗膜はペイントにくらべ耐油性、耐薬品性、耐候性において劣っているが、速乾性で優れた光沢を示し、かつ低価格である。」

乙第3号証:平成11年異議第73983号(本件実用新案登録に係る異議申立事件)の「異議の決定」の写し

参考資料1:中山信弘 編著「注解 第三版 特許法【上巻】第1条?第112条の3」,H12.8.25,(株)青林書院,表紙、p232-233、奥付

参考資料2:後藤憲秋、植村元雄 著「知的財産法概論」,(株)六法出版社,2000.6.30,表紙、p110-111、奥付

4.当審の判断
4-1.実用新案法第5条第4項、第5項第2号及び第6項違反の主張について
請求人は、本件実用新案登録明細書には、実用新案登録請求の範囲に実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことのできない事項が記載されていないか、或いは考案の詳細な説明に当業者が容易に実施できる程度に考案の目的、構成及び効果が記載されていないと主張し、その具体的理由として、以下の点を挙げている。
(i)実用新案登録請求の範囲の請求項2の記載のみでは「融着性ワニス」の構成成分が特定できず、考案の詳細な説明にも具体的成分を挙げて説明されていないから、請求項2に係る考案が他の考案を技術的範囲に含むか否かを判断できない。
(ii)本件明細書に従来技術として「アルミニウムからなるテープ状補強部材2の両面に接着材2aを介して、ポリ塩化ビニルからなる樹脂層3を設けてなる樹脂成形体1が知られている。」と記載された「接着材2a」における「接着材」がどのような構成成分からなるのか具体的に説明されていないので、その技術内容が不明瞭であり、請求項2に記載された「融着性ワニス」と「接着材2a」との構成成分の差異が不明確である。
(iii)一般的には、「ワニス」は塗料分野の樹脂組成物であり、「接着材」は接着材分野の樹脂組成物であるので、これらは互いに別概念のものと認識されるが、請求項2の記載からみると、本件考案の「融着性ワニス」は融着層を溶融して丸線と樹脂を接着させる樹脂組成物であり実質的に「接着材」といえるものである。本件実用新案登録明細書には「融着性ワニス」と「接着材2a」とが、表現上、別概念のものとして本件実用新案登録明細書に記載されており、同明細書にはこれらの差異がその構成成分、機能等によって明確に説明されていないので、本件考案の「融着性ワニス」が従来の「接着材2a」を含む概念のものか否かの判断ができない。
(iV)本件実用新案登録明細書には、請求項2に記載された融着層を溶融して丸線と樹脂を接着させる「融着性ワニス」と、加熱すると軟化又は溶融して被着体同士を結合する「ホットメルト型接着剤」又は「感温型接着剤」と呼ばれる周知のエチレン-酢酸ビニル共重合体等の「接着材」(甲第2?4号証を引用。)との実質的な差異が当業者が理解できる程度に十分に説明されていないので、請求項2に記載された「融着性ワニス」が前記周知の接着材を含む概念のものか否か判断できない。

そこでこれらの点について検討する。
上記(iii)において、請求人が自ら認めるように、「ワニス」とは一般に塗料分野の樹脂組成物を指す語であり、特に「顔料を含まず、透明な塗膜を作る塗料」(乙第2号証。摘示記載(ろ))を意味するものである。それゆえ、本件実用新案登録明細書(以下、「本件明細書」という。)の請求項2に記載された「融着性ワニス」も、このようなワニスの一種である以上、まず、被塗装面に特定の性状(耐油性、耐薬品性、耐候性、光沢等(摘示記載(ろ)の記載参照。)を付与するという塗料本来の機能を有するものであると解すべきであり、「融着性」とは、被塗装面に形成される塗料層が熱により溶融して接着性を帯びるという副次的な性質を意味するものと理解するのが相当である。
そして、この「溶融して接着性を帯びる」という点が、現象的に「ホットメルト型接着剤」と似ているとしても、本来、被着体の接着を目的としていない「融着性ワニス」と、逆に、被塗装面に塗料としての特定の性状を付与するという目的も機能も有していない「接着剤」とは、技術的に明確に区別し得るものというべきである。
このような観点から、請求人が主張する上記(i)?(iV)の点についてみると、
(i)の点については、「ワニス」の種類はその塗装目的により多岐にわたり、全てに対応するような成分の特定ができないという事情があり、また、融着性発現のためには、熱溶融性樹脂の配合等、ごく通常の技術手段の付加により可能であると解されるから、本件明細書中に「融着性ワニス」の具体的構成が記載されていないことをもって、請求項2に考案の構成に欠くことのできない事項が記載されていないとも、考案の詳細な説明には当業者が容易に考案を実施し得る程度に考案の目的、構成及び効果が記載されていないものともすることはできない。なお、「他の考案」を包含するか否かは、明細書の記載不備と関係がない。
(ii)の点については、従来技術において用いられているものが「接着材」とされている以上、それは当初から接着を目的としたものであり、接着材の中から、被着材であるアルミニウム及びポリ塩化ビニルとの接着性を勘案して適宜選択されたものというべきであって、その従来技術の接着剤について具体的組成の開示がなければ、本件考案が実施し得ないなどとすることはできない。
(iii)及び(iV)については上記のとおりであり、「融着性ワニス」と「ホットメルト型接着剤」とは本来使用目的が異なり、機能も相違する別の概念の材料であって、被着体同士の接着を目的(乙第2号証 摘示記載(い)参照。)としない「融着性ワニス」について、その副次的属性のみを強調して「実質的に接着剤といえる」などというのは、技術の本質を看過した皮相的解釈というべきである。また、「融着性ワニス」と「ホットメルト型接着剤」とは、被塗装面に対して特定の性質を付与する成分を含むか否かにより、構成成分によっても明瞭に区別し得るものと解される。
したがって、本件明細書の請求項2に考案の構成に欠くことのできない事項が記載されていないとも、本件明細書の考案の詳細な説明に当業者が容易に考案を実施し得る程度に考案の目的、構成及び効果が記載されていないものともすることはできない。

4-2.実用新案法第3条第2項違反の主張について
4-2-1.請求人の主張
請求人は、本件考案1及び2は甲第1?5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであると主張している。
4-2-2.本件考案1
本件考案1と甲第1号証に記載された考案とを以下に対比する。
甲第1号証には、「合成樹脂を押出成形して作られるモールデイング材本体1が、その押出成形時に一体的に押出されて内包されている屈曲可能な金属線2と、該モールデイング材の全長にわたって一体的に結合されている自動車用合成樹脂製モールデイング材。」(摘示記載(ア))が記載されており、この金属線2としては断面円形の線材2a(摘示記載(ク))が用いられ、また、該金属線には、合成樹脂用接着材の塗被加工が施され(摘示記載(ウ))、このようにした場合は、モールデイング材本体と金属線とが接着剤を介して一体的に結合される(摘示記載(キ))ことも記載されている。
同号証に記載された「自動車用合成樹脂製モールデイング材」は本件考案1における「樹脂成形体」にほかならず、「屈曲可能な金属線」は本件考案1における「復元性のある丸線」に相当するものであり、この丸線の外周上に樹脂を所定の形状に押出して丸線と樹脂とを接着させる点においても、本件考案1と同号証に記載された発明とは一致している。
しかしながら、本件考案1における以下の点を甲第1号証に記載された考案は備えていない点で、これらの考案には相違が認められる。
(1)「ポリエステル系融着性ワニスを塗布焼付して融着層を形成」する点、及び
(2)「押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させ」る点
これらの点について以下に検討する。
まず、甲第1号証に記載された金属線に塗被加工される合成樹脂用接着材についてみると、これは押出成形工程以前に金属線上に形成されており、押出装置において金属線と溶融樹脂とを接着させるものであるから、その接着性は押出装置における溶融樹脂の熱によって発現するものと解釈することができ、そのような接着剤としては、甲第2?4号証に記載されているような、加熱により溶融して被着体同士を接着するタイプの接着剤(いわゆる「ホットメルト型接着剤」)が適用可能であるといえる。
しかしながら、このように溶融して金属線と樹脂とを接着させる層、即ち融着層を、本件考案1の(1)のように「ポリエステル系融着性ワニスを塗布焼付して」形成する点については、請求人が提出した甲第1?5号証のいずれにも記載されていない。
この点について請求人は、本件考案1における「融着性ワニス」は、「融着層を形成し、・・・押出時の熱により融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させてなる」との本件明細書の記載からみて「ホットメルト型接着剤」といえるものであるとの前提に立ち、ポリエステル系のホットメルト型接着剤は甲第4号証(摘示記載(シ))に記載されており、また、ホットメルト型接着剤を線材上に焼き付けることは甲第5号証(摘示記載(ス))に記載されたところであるから、これらの公知技術を組み合わせて本件考案1のようにする点に困難性はない旨主張している。
しかし、すでに上記4-1.で述べたように、「融着性ワニス」と「ホットメルト型接着剤」とを単に特性の共通性のみから同一視することはできず、これを前提とした請求人のこの主張は採用し得ない。
そこで、次に、上記のようにホットメルト型接着剤が適用可能であると予測される甲第1号証に記載された考案において、このホットメルト型接着剤を融着性ワニスに置換することがきわめて容易になし得たか否かについて検討する。
当合議体が通知した無効理由において引用した甲第14、15号証には、導体上にポリエステル系等の塗料(ワニス)を塗布焼付けしてなる自己融着性電線について、これをコイル巻した後、加熱することにより自己融着硬化しコイル成形体が得られることが記載されており、このような塗料は「融着性ワニス」といい得るものである。しかしながら、この塗料による融着層は、コイル成形体を形成するための成形材料として用いられるのであって、コイルと他の被着材とを接着することは全く予定されていない。そうすると、このような自己融着性電線用の融着性ワニスが本件の出願前に周知であったといえたとしても、これを甲第1号証に記載された考案における接着剤として適用することを、当業者がきわめて容易に想到し得たものとすることはできない。
したがって、本件考案1は、甲第1?5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。

4-2-3.本件考案2
本件考案2は、素材の限定のない融着性ワニスを用いる点、及び融着丸線を「押出しラインに供給して」樹脂を所定の形状に押出す点を除いて本件考案1と軌を一にする考案であり、融着丸線を「押出しラインに供給して」樹脂を所定の形状に押出す点が甲第5号証に記載されているとしても、本件考案1と共通の(1)の点については、甲第1?5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易になし得たものとすることができない。
したがって、本件考案2も同様に、甲第1?5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。

4-3.実用新案法第3条第1項第2号違反の主張について
請求人は、本件考案2は、1991年6月にモデルチェンジされたトヨタ自動車株式会社の「スプリンター」のバックウィンドモールとして本件出願前に製造・販売されたものであり、本件出願前に公然実施された考案であると主張している。
甲第6号証によれば、このバックウィンドモールは、1999年8月9日、トヨタ自動車株式会社発行『車検・外装パーツカタログ《’91.6-》トヨタスプリンター』(資料1)の第247頁・第251頁に記載された「品番 75571-12600」で示されているものであり、ニフコ株式会社から昭栄合成株式会社に提示された1991年3月28日、杉田により設計された図面:「DFT No.Y21196-01」(資料2)に基づいて、昭栄合成株式会社が生産していたものとされている。そして、この図面に記載された成型品の断面図の樹脂中に芯材として挿入されている「金属ワイヤー」は、ニフコ株式会社より提示された1989年7月26日、杉田により設計された図面:「DFT No.N11497-01」(資料3)によるものとされ、この図面中の、「仕様については、昭和電線電纜株式会社製ボンド黄銅線(アドコート)仕様書による」との記載における「アドコートの仕様書」は、1993年2月19日、昭和電線電纜株式会社発行、『アドコート R-s仕様書「仕様書番号 S-411430A号」』(資料4)を指すものとされ、1991年6月の「スプリンター」のバックウィンドモールに使用した「アドコート」は、この仕様書と同じものであるとされている。また、この仕様書には、「被膜は、融着塗料を素線表面に塗布焼付けたもので・・・」との記載があり、昭栄合成株式会社は、この「アドコート」を押出しラインに供給し、押出し時の熱により「アドコート」の融着層を溶融し、押出し樹脂と金属丸線を接着させた樹脂成型体である「スプリンター」のバックウィンドモールの生産を行っていたとされている。
そこで、この請求人の主張について検討すると、甲第7号証の新聞記事及び甲第8号証の広告の記載からみて、1991年6月にトヨタ自動車株式会社が「スプリンター」を全面改良して発売した事実を認めることができ、また、資料1のパーツカタログの記載からみて、1991年6月当時のスプリンターのバックウィンドモールには、「品番 75571-12600」で示される部品が用いられていたものと認められる。
この「品番 75571-12600」のバックウィンドモールと、ニフコ株式会社から昭栄合成株式会社に提示された図面との関係について、平成15年4月17日の証人尋問において証人河野通俊は、資料2の図面「DFT No.Y21196-01」における「変更 5.11.23 旧図と交換」と表記された丸印について、「変更 5.11.23」とは、平成5年11月23日に材料を変更したことを意味し、「旧図と交換」とは、図面を差換えたことを意味するものであり、資料2は1991年当時ニフコ株式会社から提示された図面そのものではない旨証言している。
次に、資料2に記載された「金属ワイヤー」に係るものとされる図面:「DFT No.N11497-01」(資料3)と、該「金属ワイヤー」の仕様について、同証人は、資料3の図面における「参考図 ‘99.5.13 株式会社ニフコ」との丸印は、元の図面が紛失したために1999年に株式会社ニフコの技術部から直接交付されたものであることを意味し、同図下欄の「97.06.17 誤記訂正(手書きからCADへ書き換え)」という記載は、手書きされていた旧図をCADにより書き換えたことを意味するものであって、旧図においても「仕様については、昭和電線電纜株式会社製ボンド黄銅線(アドコート)仕様書による」との記載が存在したか否かは定かでない旨証言している。
更に、資料4の「アドコート R-s仕様書」(1993年7月5日付け)と、請求人提出の参考資料1の「ボンド黄銅線(アドコート)仕様書」(昭和63年6月20日付け)との関係について、同証人は、アドコートの仕様書が複数種類あることは知らなかったこと、参考資料1の仕様書は見たことがないこと、及び甲第6号証において「1991年6月の「スプリンター」のバックウィンドモールに使用した「アドコート」は、この仕様書(資料4)と同じものである」と記載したのは、「外観が同じだから同じとした」ものであることを証言した。
そうすると、資料3の図面に記載されている金属ワイヤーが昭和電線電纜株式会社製ボンド黄銅線(アドコート)仕様書によるものであるのか否かが不明確であり、アドコートシリーズの仕様書によるものとしてもどの時期に発行されたどの仕様書によるのか特定できず、更に、1991年当時、ニフコ株式会社から昭栄合成株式会社に提示されたとされる図面が1991年6月にモデルチェンジされた「スプリンター」の「品番 75571-12600」のバックウィンドモールに係るものであった事実も確認することはできないので、結局、公然実施に関する請求人の上記主張は認めることができない。

5.結 論
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件考案1及び2の実用新案登録を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定により準用する特許法第169条第2項の規定で更に準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2003-05-01 
出願番号 実願平3-67562 
審決分類 U 1 112・ 531- Y (B29C)
U 1 112・ 121- Y (B29C)
U 1 112・ 112- Y (B29C)
U 1 112・ 534- Y (B29C)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 加藤 友也  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 高梨 操
鈴木 由紀夫
登録日 1999-02-26 
登録番号 実用新案登録第2594537号(U2594537) 
考案の名称 樹脂成形体  
代理人 守谷 一雄  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 後藤 憲秋  
代理人 植村 元雄  
代理人 植村 元雄  
代理人 後藤 憲秋  
代理人 松村 貞男  
代理人 守谷 一雄  

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