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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) F23G
管理番号 1088183
判定請求番号 判定2003-60005  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2004-01-30 
種別 判定 
判定請求日 2003-01-07 
確定日 2003-12-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第2110053号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 イ号図面及びその説明書に示す「ペツト類火葬車」は、登録第2110053号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由
第1 請求の趣旨

本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書及びイ号図面に示された「ペット類火葬車」(以下「イ号物件」という。)が、実用新案登録第2110053号の請求項1に係る考案(以下、「本件登録考案」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件登録考案

本件登録考案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載中の「主燃焼炉(B)」、「再燃バーナー(5)」は誤記であると認められるから、それぞれ「主燃焼炉(A)」、「主燃バーナー(5)」と訂正したとおりの次のものである。なお、下記(ア)ないし(オ)は、分説された構成要件を示すために便宜的に付与した記号であって、請求項の一部をなすものではないし、(ア)ないし(オ)の各符号が導く分説された構成要件を、以下、「構成要件ア」ないし「構成要件オ」という。

(ア)自動車の荷台(C)上に2段に設置した、ロストル(1)及び骨受兼用の蒸発皿(2)を有する主燃焼炉(A)及びこれに連通し且つ排気筒(3)を備えた再燃焼炉(B)をそれぞれセラミック(4)で構成せしめ、
(イ)荷台(C)上には発電機(D)及び送風ファン(7)を装着した送風筒(8)を取付け、
(ウ)主燃焼炉(A)には主燃バーナー(5)、再燃焼炉(B)には再燃バーナー(6)をそれぞれ取付け、
(エ)排気筒(3)には送風筒(8)の末端を排出方向に開口せしめた
(オ)ペット類火葬車。

第3 イ号物件

1 イ号説明書の記載

イ号図面(図1ないし7、写真1)を添付したイ号説明書(甲第2号証)には、下記の記載がある。
「(1)自動車1の荷台2上に、ペット用の火葬装置5が設置されている。当該火葬装置5は、下段の主燃焼炉3と、排気筒11を備えた上段の再燃焼炉4とにより構成されており、これら両燃焼炉3,4は、隔壁6に設けられた連通孔6’により内部にて連通している。
上記主燃焼炉3の後方側には開口部7が設けられ、該開口部7は炉開閉扉8にて開閉可能に構成されている。
上記主燃焼炉3及び再燃焼炉4は耐火セメントにより構成されており、該主燃焼炉3及び再燃焼炉4の内側壁面には石綿が張設されている。
上記主燃焼炉3の内部床面3’には、耐火セメント製の移動平板15が設置されている。当該移動平板15は、その下面側に前後方向に2個の車輪15aが左右に一対(全4個)設けられており、これら4個の車輪により前後方向に移動可能となっている。当該移動平板15上面には2本の支持杆16,16’が所定間隔を以って平行に載置され、さらに当該支持杆16,16’上に、遺骨拾い網17を載置することにより、ペット遺体載置部18が構成されている(図5参照)。又、図7に示すように、上記移動平板15上面における上記支持杆16,16’間に、油受け板20を載置する場合もある。
上記遺骨拾い網17は、極めて細かい網目の金網からなり(写真1参照)、その中央部のペット遺体載置部18には当該網17の上に、さらにもう1枚の遺骨拾い網17’を載置して2重構造とすることにより、遺骨が下方の移動平板15上面に落下しないように構成されている。尚、上記遺骨拾い網17と遺骨拾い網17’は、複数の結合金具17aにより結合されている。
図4及び図5中、19,19’はガイドレールであり、炉開閉扉8を開き、該ガイドレール19,19’を上記開口部7後方の所定位置に設置して、上記移動平板15を後方にスライドさせると、該移動平板15の車輪15aが当該レール19,19’に嵌合し、引き続いて上記移動平板15を後方にスライドさせることにより、上記ガイドレール19,19’に沿って上記移動平板15を、上記支持杵16,16’及び遺骨拾い網17、17’共々、上記開口部7から主燃焼炉3外部に搬出可能に構成されている。
ペット遺体の火葬時は、主燃焼炉3の遺骨拾い網17、17’上のペット遺体載置部18近傍にペット遺体を載置し、主燃焼バーナー9及び再燃焼バーナー10を作動させてペット遺体を火葬する。燃焼により生じる灰と油は、遺骨拾い網17、17’を介して下方の移動平板15上面に落下し、又は油受け板20を使用する場合は当該油受け板20上面に落下し、燃焼後において遺骨拾い網17、17’上に遺骨のみが残留する。尚、超小動物(ハムスター等)の火葬時は、図6に示すように上記遺骨拾い網17’上に、上記各網17、17’よりさらに網目の細かいもう一枚の遺骨拾い網17”を載置して、当該網17”上に超小動物を載置して火葬する。
(2)上記火葬装置5の上面5aには、送風ファン12が設けられ、当該送風ファン12の送風筒12aが上記排気筒11に連結されている。
上記送風ファン12の駆動源としての発電機13は、上記荷台2の下側の車体下面1’に設けられた一対の取り付けアングル14,14’によって、上記荷台2下側の車体下面1’に吊り下げ支持されている。
(3)上記主燃焼炉3の前部壁には主燃焼バーナー9が、上記再燃焼炉4の後部壁には再燃焼バーナー10が各々設けられている。
(4)上記送風筒12aはその開口部12a’を上記排気筒11の排出方向側に向けて設置されている。」

2 イ号物件

請求人が提出した判定請求書の「6 請求の理由」における「IV.イ号の説明」(同請求書第4頁12行?第5頁1行参照)、イ号説明書の上記記載及びイ号図面によれば、イ号物件は、次のとおりの構成を具備するものと認められる。なお、(a)ないし(e)は、便宜的に付与したものであり、(a)ないし(e)の各符号が導く分説された構成を、以下、「構成a」ないし「構成e」という。

(a)自動車1の荷台2上に、ペット用の火葬装置5が設置されている。火葬装置5は、下段の主燃焼炉3と、排気筒11を備えた上段の再燃焼炉4とにより構成され、これら両燃焼炉3,4は、隔壁6に設けられた連通孔6’により内部にて連通している。主燃焼炉3及び再燃焼炉4は耐火セメントにより構成されており、該主燃焼炉3及び再燃焼炉4の内側壁面には石綿が張設されている。主燃焼炉3の内部床面3’には、耐火セメント製の移動平板15が設置されている。当該移動平板15上面には2本の支持杆16,16’が所定間隔をもって平行に載置され、更に当該支持杆16,16’上に、遺骨拾い網17を載置することにより、ペット遺体載置部18が構成されている。上記支持杆16,16’間に、油受け板20を載置する場合もある。上記遺骨拾い網17は、極めて細かい網目の金網からなり、その中央部のペット遺体載置部18には当該網17の上に、更にもう1枚の遺骨拾い網17’を載置して二重構造とする。
(b)送風ファン12の駆動源としての発電機13は、荷台2の下側の車体下面1’に設けられ、火葬装置5の上面5aには、送風ファン12が設けられ、送風ファン12の送風筒12aが排気筒11に連結されている。
(c)主燃焼炉3には主燃焼バーナー9が、上記再燃焼炉4には再燃焼バーナー10が各々設けられている。
(d)送風筒12aの開口部12a’が排気筒11の排出方向側に向けて設置されている。
(e)ペット類火葬車。

第4 対比・判断

1 イ号物件の構成が本件登録考案の各構成要件を充足するか否かについての検討

(1) 構成要件アについて

イ号物件の構成aの「自動車1の荷台2」は、本件登録考案の構成要件アの「自動車の荷台」に相当し、イ号物件の構成aの「下段の主燃焼炉3と、排気筒11を備えた上段の再燃焼炉4とにより構成され、これら両燃焼炉3,4は、隔壁6に設けられた連通孔6’により内部にて連通している」構成は、本件登録考案の構成要件アの「2段に設置した、主燃焼炉及びこれに連通し且つ排気筒を備えた再燃焼炉」の構成に相当し、イ号物件の構成aの「耐火セメント」は、本件登録考案の構成要件アの「セラミック」に相当するので、両者は「自動車の荷台上に2段に設置した、主燃焼炉及びこれに連通し且つ排気筒を備えた再燃焼炉をそれぞれセラミックで構成せしめ」た点で一致すると認められるが、次の点で相違する。
構成要件アの主燃焼炉は、「ロストル及び骨受兼用の蒸発皿を有する」ものであるのに対し、構成aの主燃焼炉3は、「耐火セメント製の移動平板15及び遺骨拾い網17を有する」ものであり、移動平板と遺骨拾い網の間に油受け板20を載置する場合もあり、遺骨拾い網17は、極めて細かい網目の金網からなり、その中央部のペット遺体載置部18には当該網17の上に、更にもう1枚の遺骨拾い網17’を載置して二重構造とする場合もある点。
以下、相違点について検討する。

本件登録考案の作用として、本件登録考案の明細書には「(作用)主燃焼炉(A)の扉(10)を開き、遺体をロストル(1)上に積載し、扉(10)を閉ぢ、発電機(D)とオイルポンプ(E)を作動させた後、主燃バーナー(5)及び再燃バーナー(6)を作動させて、炎を吹き付けるものであるが、主燃焼炉(A)に於ける燃焼で生じた灰分と汁は下方の骨受兼用の蒸発皿(2)上に落下し、汁は更に続く燃焼により蒸発消滅し、皿(2)上には骨と灰分のみが残置するものであり、処理後遺骨のみが採集されるものである。」(実用新案公報3欄20?29行)と記載され、ロストルとは、広辞苑3版によれば、「火格子(ひごうし)」のことであるから、本件登録考案は、遺骨と遺灰がロストルの格子の間隙から落下して、骨受兼用の蒸発皿に残置するものと解される。
これに対し、イ号説明書には、「・・遺骨拾い網17は、極めて細かい網目の金網からなり(写真1参照)、その中央部のペット遺体載置部18には当該網17の上に、さらにもう1枚の遺骨拾い網17’を載置して2重構造とすることにより、遺骨が下方の移動平板15上面に落下しないように構成されている。」(1頁18?21行)、「ペット遺体の火葬時は、主燃焼炉3の遺骨拾い網17、17’上のペット遺体載置部18近傍にペット遺体を載置し、主燃焼バーナー9及び再燃焼バーナー10を作動させてペット遺体を火葬する。燃焼により生じる灰と油は、遺骨拾い網17、17’を介して下方の移動平板15上面に落下し、又は油受け板20を使用する場合は当該油受け板20上面に落下し、燃焼後において遺骨拾い網17、17’上に遺骨のみが残留する。」(1頁30?35行)と記載されているとおり、イ号物件は、極めて細かい網目の金網を用いて遺骨を該金網の上に残留するものである。
そうすると、イ号物件は、金網の上に遺骨のみをほぼ完全に残すことが可能であるのに対し、本件登録考案は、遺骨を遺灰と共に蒸発皿で受けることを予定しているものであるから、このような作用効果を奏するものではない。すなわち、本件登録考案の「ロストル及び骨受兼用の蒸発皿」と、イ号物件の「遺骨拾い網17、17’及び移動平板15(又は、油受け板20を使用する場合は該油受け板20)」とを対比すると、遺骨と遺灰の採集方法に関して、各構成要素の機能上の差異が認められる。
したがって、イ号物件の「遺骨拾い網17、17’及び移動平板15(又は、油受け板20)」は本件登録考案の「ロストル及び骨受兼用の蒸発皿」を充足するものではない。

以上のとおりであるから、イ号物件の構成aは、文言上、本件登録考案の構成要件アを充足するものではない。

(2) 構成要件イについて

イ号物件の構成bの「送風ファン12」、「発電機13」、「荷台2」、「送風筒12a」、「排気筒11」は、それぞれ本件登録考案の構成要件イの「送風ファン」、「発電機」、「荷台」、「送風筒」に相当する。また、イ号物件は、火葬装置5の上に送風ファン12と送風筒12aが設けられたものであるが、荷台上であることに変わりがないと認められる。
そうすると、本件登録考案とイ号物件は、「荷台に発電機を取付け、及び荷台上に送風ファンを装着した送風筒を取付け」た構成で一致するが、本件登録考案は、「荷台上に発電機を取付け」たものであるのに対し、イ号物件は、荷台下に発電機を取付けたものである点で相違する。
したがって、イ号物件の構成bは、文言上、本件登録考案の構成要件イを充足するものではない。

(3) まとめ

以上のとおり、イ号物件は、本件登録考案の構成要件を文言上充足するものではないといわざるをえない。

2 均等論の適用の可能性について

次に、最高裁平成10年2月24日判決(ボールスプライン軸受上告審)が、「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても、・・・右対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。」とするために挙げた5つの要件に従って、本件登録考案とイ号物品との文言上異なる部分について、以下、検討する。

(1)第1の要件:「右部分が特許発明の本質的部分でなく、」について

本件明細書には、考案の作用として、「主燃焼炉(A)の扉(10)を開き、遺体をロストル(1)上に積載し、扉(10)を閉ぢ、発電機(D)とオイルポンプ(E)を作動させた後、主燃バーナー(5)及び再燃バーナー(6)を作動させて、炎を吹き付けるものであるが、主燃焼炉(A)に於ける燃焼で生じた灰分と汁は下方の骨受兼用の蒸発皿(2)上に落下し、汁は更に続く燃焼により蒸発消滅し、皿(2)上には骨と灰分のみが残置するものであり、処理後遺骨のみが採集されるものである。」(実用新案公報3欄21?29行)と記載され、考案の効果として、「以上の如く本考案に係るペット類火葬車は、・・・・ものであるから、主燃焼炉(A)のロストル(1)上の遺体は遺骨だけを残して、汁も含めすべて完全に気化焼滅せしめるものであり、再燃焼炉(B)に於けるガスの完全燃焼により悪臭も完全に排除されるものであり、如何なる場所に於いても作業し得る便がある。このように本考案に係るペット類火葬車は、電話等で依頼があれば、指定された時間に依頼者宅に出頭し、愛犬、愛猫等の遺体を受領し、主燃焼(A)に遺体を安置して、その場で、又は場所を移動して火葬に付し、骨受兼用蒸発皿(2)に残った遺骨を取り上げて読経等供養を行い得るものであります。」(実用新案公報4欄28?31行)と記載されている。
これらの記載によれば、本件登録考案は、依頼により依頼者宅に出頭し、愛犬、愛猫等の遺体を受領し、その場で又は別の場所に移動して火葬し、発生したガスを完全燃焼して悪臭の発生を防止し、遺骨を取り上げて読供等の供養を行うことのできる移動可能なペット類火葬車に関するものであって、本件登録考案の構成要件ア中の「ロストル及び骨受兼用の蒸発皿」は、受領した遺体の載置、火葬及び火葬後の遺骨の取り上げに直接的に係る構成要素であり、燃焼の過程で遺体から発生した汁を受けて蒸発消滅させる骨受兼用の蒸発皿上に残った骨と灰分から、処理後に遺骨のみを取り上げて供養を行うという本件登録考案の作用・効果に不可欠の構成要素であると認められる。
そうすると、この「ロストル及び骨受兼用の蒸発皿」は、本件登録考案の技術的思想の中核をなす特徴部分に含まれるものであって、本件登録考案の本質的部分であるというべきである。

(2)第2の要件:「右部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏するものであって、」について

構成要件アについて前示したとおり、本件登録考案の「ロストル及び骨受兼用の蒸発皿」と、イ号物件の「遺骨拾い網17、17’及び移動平板15(又は、油受け板20を使用する場合は該油受け板20)」は、遺骨と遺灰の採集方法に関して、各構成要素の機能上の差異が認められるから、遺骨の採集についてみると、本件登録考案では主として蒸発皿の上の遺灰の中から遺骨を採集するのに対し、イ号物件では主として遺灰が落下した遺骨拾い網の上から遺骨を採集するものである。したがって、本件登録考案の「ロストル及び骨受兼用の蒸発皿」をイ号物件の「遺骨拾い網及び移動平板(又は、油受け板)」と置き換えても、同一の作用効果を奏するものではない。

(3)まとめ

本件登録考案の構成要件ア中の「ロストル及び骨受兼用の蒸発皿」についてみると、上記のとおり、最高裁平成10年2月24日判決が挙げる5つの要件中の第1及び第2の要件をいずれも満たさないものであるから、その余の要件について判断するまでもなく、ここに均等論を適用する余地はない。
構成要件アについて上記のとおり判断される以上、構成要件イについての判断は要されない。

第5 むすび

以上のとおり、イ号物件は、本件登録考案の構成要件アを充足するものでなく、本件登録考案の構成中のイ号物件と異なる部分に均等論を適用する余地がない以上、本件登録考案の技術的範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲


















判定日 2003-12-08 
出願番号 実願昭63-50621 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (F23G)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 佐野 遵
大元 修二
登録日 1996-03-22 
登録番号 実用新案登録第2110053号(U2110053) 
考案の名称 ペツト類火葬車  
代理人 藤井 重男  
代理人 生沼 寿彦  
代理人 荒川 雄二郎  
代理人 藤井 信孝  
代理人 藤井 信行  
代理人 横井 健至  

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