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審決分類 審判 全部無効   G01M
管理番号 1116227
審判番号 無効2004-80038  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2005-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-04-30 
確定日 2005-03-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2524748号実用新案「シャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボット」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2524748号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯

本件実用新案登録第2524748号の請求項1に係る考案は、平成3年10月23日に出願され、平成8年11月7日に実用新案の設定登録がなされたところ、平成16年5月6日に本件実用新案登録に対する本件無効審判が請求されたので、審判請求書副本を送達したところ、同年7月30日付けで答弁書が提出されるとともに訂正請求がなされた。その後、平成16年9月28日付けで本件実用新案登録に係る無効理由を通知したところ、同年10月29日付けで意見書が提出された。

2.訂正の適否

(1)訂正の内容
上記平成16年7月30日付けの訂正請求は、次の事項を内容とする訂正を求めるものである。

<訂正事項a>
実用新案登録請求の範囲における請求項1の「自動車運転用ロボットにおいて、前記ハンドの」とある記載を、「自動車運転用ロボットにおいて、前記ハンドが筒体で構成され、シフトレバーのノブを側周囲に隙間を有して挿入させ得るものであり、前記ハンドの」とする訂正(下線部は訂正個所。以下同様)。

<訂正事項b>
実用新案登録請求の範囲における請求項1の「シフトレバー操作方向における下端部に、」とある記載を、「シフトレバー操作方向における側周壁下端部に、」とする訂正。

<訂正事項c>
明細書の段落【0011】の「自動車運転用ロボットにおいて、前記ハンドの」とある記載を、「自動車運転用ロボットにおいて、前記ハンドが筒体で構成され、シフトレバーのノブを側周囲に隙間を有して挿入させ得るものであり、前記ハンドの」とする訂正。

<訂正事項d>
明細書の段落【0011】の「シフトレバー操作方向における下端部に、」とある記載を、「シフトレバー操作方向における側周壁下端部に、」とする訂正。

(2)訂正の目的の適否、新規事項追加の有無及び実用新案登録請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否

訂正事項aは、「ハンド」の形状を限定するとともに、シフトレバーとの寸法関係を明確にするものであり、訂正事項bは、凹部を形成するための「下端部」の位置を特定するものであるから、いずれも実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、
訂正事項c及び訂正事項dは、それぞれ、上記訂正事項a及び訂正事項bの訂正に整合させるべく対応する考案の詳細な説明の訂正を行うものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

そして、これらの訂正は、本件実用新案登録時の明細書段落【0019】並びに図5及び図6に記載から自明な事項を内容とするものであるから、いずれも願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、訂正前の請求項1に記載された事項により特定される考案の目的の範囲内で行うものであるから、上記訂正は、実用新案登録請求の範囲を実質上拡張するものでも変更するものでもない。

(3)むすび
したがって、平成16年7月30日付けの訂正請求における訂正は、平成15年法律47号附則12条により改正された、平成5年法律26号(以下「平成5年改正法」という。)附則4条1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同法附則4条2項において「表」で読み替えて得られる、同法による改正前の実用新案法(以下「旧実用新案法」という。)40条の2第1項ただし書並びに同条第5項において準用する第39条3項及び4項の各規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.無効理由の有無

(1)本件考案
本件実用新案登録の請求項1に係る考案(以下「本件考案」という。)は、上記訂正請求書により訂正された訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】自動車のシフトレバーを操作するアクチュエータが設けられて、このアクチュエータにシフトレバーの上端部が挿入されるハンドが設けられた自動車運転用ロボットにおいて、前記ハンドが筒体で構成され、シフトレバーのノブを側周囲に隙間を有して挿入させ得るものであり、前記ハンドのシフトレバー操作方向における側周壁下端部に、シフトレバーの周面部またはそのノブの周面部が入る凹部が形成されたことを特徴とするシャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボット。」

(2)刊行物
上記平成16年9月28日付け無効理由通知で引用した特開平3-146841号公報(以下「刊行物1」という。)には、「シャシダイナモ上の自動車運転用ロボット」に関し、次の事項が図面とともに記載されている。

(記載事項a)
「37は前記アーム36の先端に固着された保持体(第9図参照)で、これはシフトレバー・・・の先端部を挿入し保持することが可能に、断面逆凹形状に形成されている。38は保持体37の頂壁外面に基部が軸着された検出片で、その先端が保持体37に形成された孔39から保持体37内に挿入されている。40は検出片38の上側に配置された近接スイッチで、これが検出片38の揺動でON、OFFされる。
すなわち、保持体37内にシフトレバーの先端が所定長さ挿入されていると、シフトレバーの先端が検出片38を押し上げるから、近接スイッチ40が例えばONになって、前記シフトレバーの挿入状態を検出する。そして、シフトレバーを移動させるなどして、それが保持体37から所定以上に抜ける状態になると、シフトレバーが検出片38から分離するから、同時に検出片38が移動し近接スイッチ40から分離して、近接スイッチ40がOFFになって、シフトレバーが所定以上抜けたことを検出する。したがって、シフトレバー用のアクチュエータ35がアーム36を下降させて、保持体37からシフトレバーが抜け出ることを防止する。」(4頁左下欄11行?同頁右下欄12行)

(記載事項b)
「そして、シフトレバー用アクチュエータ35のアーム36を移動させて、その保持体37でシフトレバー・・・の先端部を保持させて、シフトレバー36の移動方向やその範囲などの、シフトレバーの操作に必要なデータをアクチュエータ35の制御装置・・・に入力する。」(5頁右下欄12?17行)

(記載事項c)
「・・・自動車の種類その他が変わるなどして、各ペダルの位置や間隔が異なっても、その各ペダルに各アクチュエータを簡単に対応させることができ、ほぼ任意の自動車の運転に使用することができる。」(8頁左上欄14?18行)

(3)対比・判断
本件考案と刊行物1に記載の考案とを対比すると、刊行物1に記載の考案の「保持体37」は、断面逆凹形状に形成された「筒体」であり、シフトレバーのノブの先端部を挿入した状態で移動可能に保持するという機能からみても、また、その外径が保持体の内径よりも小さい「シフトレバーのノブ」との関係では「シフトレバーのノブを側周囲に隙間を有して挿入させ得るもの」というほかないから、本件考案の「ハンド」に相当する。

そうすると、両者は、

〔一致点〕
「自動車のシフトレバーを操作するアクチュエータが設けられて、このアクチュエータにシフトレバーの上端部が挿入されるハンドが設けられた自動車運転用ロボットにおいて、前記ハンドが筒体で構成され、シフトレバーのノブを側周囲に隙間を有して挿入させ得るものであることを特徴とするシャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボット」

である点で一致し、次の点で相違する。

〔相違点〕
「ハンドのシフトレバー操作方向における側周壁下端部」に、本件考案では「シフトレバーの周面部またはそのノブの周面部が入る凹部が形成され」ているのに対し、刊行物1に記載の考案では、そのような凹部は形成されていない点。

上記〔相違点〕について検討する。
ところで、シャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボットにおいては、当該ロボット一台でより多くの車種に対応できることが望ましいことはコストの面からみても明らかであり(刊行物1の上記記載事項cを参照)、その際、車種が異なればシフトレバーの形状や大きさ、操作時におけるシフトレバーの移動範囲も異なり得るから(刊行物1の上記記載事項bを参照)、当該ロボットにおけるハンドの形状、大きさと性能試験を行おうとする車種におけるシフトレバーの形状、大きさ、移動範囲との関係如何によっては、当該ハンドのシフトレバー操作方向における側周壁下端部とシフトレバーやノブの周面部とが当接してしまいシフトレバーの移動に支障が生じるという問題に直面するであろうことは自明である[例えば、実願昭62-25636号(実開昭63-135142号)のマイクロフィルム〔無効審判請求人が提出した甲第5号証〕の第5図を参照]。そうすると、保持部材(ハンド)に対する可動部材(シフトレバー)の傾斜角度が大きくなったときにも可動部材の周面部と保持部材の縁部とが接触しないよう予め保持体の縁部に凹部を形成しておくことが機械技術の分野における周知慣用技術[例えば、米国特許第2,177,662号〔同甲第1号証〕の第23図、特開昭58-613号公報〔同甲第8号証〕の第7?10図、米国特許第2,444,666号〔同甲第9号証〕の第1,2図を参照]として知られているから、これに照らして、刊行物1に記載の考案におけるハンドの側周壁下端部に、シフトレバーやノブの周面部が入り得る凹部を形成することは、当該ハンドの形状、大きさと当該ロボットで性能試験を行おうとする全車種のシフトレバーの形状、大きさ、移動範囲との関係如何等を考慮して、当業者がきわめて容易に想到し得ることである。

なお、被請求人は、上記意見書において、「ハンドを筒体で構成するという前提で考えれば、ハンド内のノブの位置を特定できない、前後左右にシフトレバーを傾動させなければならない、種々のシフトレバーに対応しなければならない等の理由から、ハンドの端部に凹部を設けるという発想では、ハンドにおけるシフトレバー又はそのノブとの干渉領域を大きく見積もらなければならず、その干渉領域に対応した凹部を形成するとなると、シフトレバーが振動等で不測の動きをして引っかかったり、シフトレバーがハンドから抜け出る可能性が生じ得るといった不具合がすぐに考えられるため、そのような発想をそもそもしない」という旨主張しているが、実用新案登録請求の範囲の記載に基づく主張ではないし、刊行物1に記載された考案においても、ハンド内のノブ位置が特定でき、前後左右にシフトレバーを傾動させる必要がなく、種々の形状、大きさのシフトレバーに対応させる予定がない等の場合には「ハンドの端部に凹部を設ける」という発想を採用することに阻害要因はないということになるから、被請求人の上記主張を採用することはできない。

また、被請求人は、「自動車運転用ロボットのシフトレバーのノブとハンドとの接続部分に干渉防止の凹部を設けることは周知慣用ではない」という旨も主張しているが、先の無効理由通知では、自動車運転用ロボットのシフトレバーのノブとハンドとの接続部分自体に干渉防止の凹部を設けることが周知慣用であるとしておらず、被請求人の主張は失当である(無効理由通知では「機械の技術分野における周知慣用技術」としている。)。

4.むすび

以上のとおりであるから、本件考案は、刊行物1に記載された考案及び周知慣用技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により、実用新案登録を受けることができないものであるから、本件実用新案登録は、平成15年法律47号附則12条により改正された、平成5年改正法附則4条1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同法附則4条2項において「表」で読み替えて得られる、旧実用新案法37条1項1号の規定に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、同様に読み替えて得られる、旧実用新案法41条の規定で準用する特許法169条2項の規定で更に準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
シャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボット
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 自動車のシフトレバーを操作するアクチュエータが設けられて、このアクチュエータにシフトレバーの上端部が挿入されるハンドが設けられた自動車運転用ロボットにおいて、前記ハンドが筒体で構成され、シフトレバーのノブを側周囲に隙間を有して挿入させ得るものであり、前記ハンドのシフトレバー操作方向における側周壁下端部に、シフトレバーの周面部またはそのノブの周面部が入る凹部が形成されたことを特徴とするシャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボット。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、シャシダイナモメータを用いて自動車の性能試験その他を行う場合に、その自動車を運転するロボットに関する。
【0002】
【従来の技術】
完成自動車などの各種モード運転によるエミッションや燃費試験その他の目的のために、その自動車をシャシダイナモメータ上で、あらかじめ定めた走行パターンで走行させることが行われている。そして、この自動車走行が、省力化及び運転の再現性向上などのためにロボットで行われている。この自動車運転用ロボットとして、例えば、図13?15に示したものがある。
【0003】
図13?15において、61はロボット、62はロボット61を構成する本体で、その上面両端に固着されて本体62の前方に突出した一対の取付バー63の先端に、架設状に支持ロッド64が取付けられて、これに断面凸状の支持溝(図示省略)が設けられている。65は支持溝に取付けられた複数の取付部材で、これらに自動車の各ペダルを操作すアクチュエータ66が装着されている。67は本体62に設けられたシフトレバー用のアクチュエータで、その先端部にシフトレバーの上端部が挿入される円筒状のハンド68が取付けられている。69はハンド68内の上面に突設されたシフトレバー検出センサ(図14A参照)で、これでハンド68に対するシフトレバーの挿入状態を検出して、ハンド68を介してアクチュエータ67でシフトレバーを移動操作する。70は前記本体62が載置された運転者用シートで、これはスライドレール71に装着されている。
【0004】
前記ロボット61は、その本体62を自動車の運転者用シート70に載置して、ベルト(図示省略)その他で運転者用シート70などに固定する。そして、各取付部材65を支持溝に沿って移動させて、各アクチュエータ66のそれぞれをペダルと対向させ、かつ各アクチュエータ66の先端で各ペダルの操作を可能にするとともに、図15に実線で示したように、アクチュエータ67のハンド68にシフトレバー72のノブ73を挿入する。そして、ハンド68内に設けたシフトレバー検出センサ69で前記ノブ73を検出して、アクチュエータ67でハンド68を介してシフトレバー72を移動操作し、かつアクチュエータ66で各ペダルを操作してあらかじめ定めた走行パターンで走行させるものである。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
前記従来のロボット61におけるアクチュエータ67のハンド68は筒体であり、これにシフトレバー72のノブ73を挿入する。そして、アクチュエータ67でハンド68を介してシフトレバー72の移動操作を行うが、例えば、1速時のシフトレバー72の傾斜角度は、図15に実線で示したように比較的小さい、換言すれば、シフトレバー72とハンド68の各軸線の交差角度が比較的小さくて、ハンド68にノブ73を充分に挿入することが可能である。このため、ノブ73がシフトレバー検出センサ69に接触し、かつハンド68がノブ73を確実に保持するから、アクチュエータ67によるシフトレバー72の移動操作が可能である。
【0006】
しかし、シフトレバー72を、例えば前記1速から鎖線で示した2速に移動操作すると、2速の場合はシフトレバー72の傾斜角度が比較的大きく、シフトレバー72とハンド68の各軸線の交差角度が大きくなって、ハンド68の下端縁がシフトレバー72の周面に載る状態で接触するようになる。したがって、シフトレバー72の傾斜角度が大きくなるに従って、それがハンド68を持上げる状態になって、図15に鎖線で示したように、シフトレバー検出センサ69からノブ73が分離して、ノブ73の検出が不能になるとともに、シフトレバー72が完全に入っていない状態になって変速ができなくなる。また、この状態のままで、シフトレバー検出センサ69を用いないで変速を行おうとすると、変速時にハンド68がノブ73に接触してハンド68が破損するおそれがある。
【0007】
なお、図15はシフトレバー72の周面にハンド68の下端縁が接触しているが、ノブ73の長さなどによっては、その周面にハンド68の下端縁が載る状態で接触する場合も生じるが、この場合も前記と同様にシフトレバー72の移動操作が不能になる。そして、前記ハンド68は、そのシフトレバー検出センサ69でシフトレバー72を検出して、その移動操作をするものを示した。しかし、前記シフトレバー検出センサ69を設けることなく、シフトレバーを移動操作するハンドも使用されている。この場合は、前記シフトレバー検出センサ69からシフトレバーが分離して、ハンド68の移動が不能になることは生じないが、ノブの形状やシフトレバーの傾斜角度などによって、ハンドによる前記ノブの保持が不十分な状態になって、ハンドによるシフトレバーの移動操作が困難になる場合が生じる課題がある。また、変速時のシフトレバーの移動量が大きい場合には、シフトレバーがハンドに当たってシフトレバーが完全に入りきらず、変速できなくなる場合がある。このような状態で、さらにシフトレバーを入れようとすると、シフトレバーの上にハンドがのり上げる状態になり、ハンド自体を破損するおそれがある。
【0008】
そして、自動変速車のシフトレバーに多い、ノブが水平方向に長い棒状に形成されているときは、前記筒体からなるハンド68は使用不能であるから、図14Bに示したように、逆凹形状のハンド68aがアクチュエータ67に取付けられるが、このハンド68aも前記と同様な課題が生じる。
【0009】
また、シフトレバーは、図16に示したように、傾斜面に沿って上下方向に移動操作させるものもある。この場合は、シフトレバー72を下方に移動させると、鎖線で示したように水平に近い状態になるから、ハンド68によるノブ73の上端の保持が不能な状態になる。したがって、シフトレバー検出センサ69によるシフトレバー72の検出が不能になるとともに、前記シフトレバー検出センサ69を設けていないハンドにおいても、それからシフトレバーが抜け出た状態になるから、ハンドによるシフトレバーの移動操作が不能になる課題がある。
【0010】
本考案は上記のような課題を解決するものであって、自動車のシフトレバーの上端部の保持を常に確実に行うことを可能にして、シフトレバーの移動操作をスムーズに行うことが可能なシフトレバー用のハンドを備えたシャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボットをうることを自的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本考案のシャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボットは、自動車のシフトレバーを操作するアクチュエータが設けられて、このアクチュエータにシフトレバーの上端部が挿入されるハンドが設けられた自動車運転用ロボットにおいて、前記ハンドが筒体で構成され、シフトレバーのノブを側周囲に隙間を有して挿入させ得るものであり、前記ハンドのシフトレバー操作方向における側周壁下端部に、シフトレバーの周面部またはそのノブの周面部が入る凹部が形成されたことを特徴とする。
【0012】
前記ハンドの凹部は、シフトレバーを自動車の前後方向に移動させる場合は、ハンドの前記前後方向における一方または両方に形成し、シフトレバーを自動車の幅方向に移動させる場合は、ハンドの前記幅方向における一方または両方に形成するものである。
【0013】
【作用】
前記本考案のシャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボットは、例えば、運転する自動車の運転者用シートに載置固定する。そして、シフトレバー用アクチュエータのハンドに、前記自動車のシフトレバー上端部を挿入保持させて、前記アクチュエータでハンドを介してシフトレバーを移動操作する。このシフトレバーの移動操作において、シフトレバーの傾斜角度が比較的小さいときは、その上端部がハンド内に充分に挿入されているから、そのシフトレバーの移動操作に対して支障は生じない。そして、シフトレバーの移動操作でその傾斜角度が比較的大きくなると、シフトレバーの周面部またはそのノブの周面部が、ハンドの下端部に設けられた凹部に入るから、シフトレバーがハンドを持上げ状になることがなく、シフトレバーの上端部はハンドに充分に挿入された状態を維持する。したがって、アクチュエータによるシフトレバーの移動操作が適確に進行する。
【0014】
【実施例】
本考案のシャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボットの第1実施例を図1?7について説明する。
【0015】
図1?7において、1はロボット、2はロボット1を構成する本体で、その上面両端部に固着されて本体2の前方に突出した取付バー3a,3bの端部に架設状に支持ロッド4が取付けられ、かつこの支持ロッド4の全長にわたって、支持溝5が形成されている。前記支持溝5は、図3に示したように断面凸形状にして、その底側よりも口部側の幅が狭く構成されている。
【0016】
6は保持部材で、これは図3に示したように、連結材7に固着した軸受パイプ8に、その周方向に長い長孔9を設け、かつ軸受パイプ8に支軸10を挿入する。また、軸受パイプ8の外周面に添わせた保持材11の端部に保持孔12を形成するとともに、この保持孔12の一側に、それに連通して切割スリット13を設けて、この切割スリット13を設けた保持材11の部分を貫通した締付けボルト14を、前記長孔9から支軸10のねじ孔15にねじ込んで、前記保持材11を軸受パイプ8の周面に取付ける。そして、前記連結材7を貫通した連結ボルト16の端部がナット17にねじ込まれている。14aは締付けボルト14のハンドル、16aは連結ボルト16のハンドルである。前記のように構成された保持部材6のそれぞれが、前記支持溝5の広幅部にナット17を挿入係止し、狭幅部に連結ボルト16を挿入して支持ロッド4に取付けられている。したがって、ハンドル16aで連結ボルト16を締付けると、保持部材6が支持ロッド4に固定され、連結ボルト16を弛めると、支持ロッド4に対して保持部材6がスライド可能になる。18は保持部材6の保持孔12に挿通した支承棒で、前記各締付けボルト14を締付けると切割スリット13によって、保持孔12が締付けられて支承棒18を固定するとともに、軸受パイプ8の外周面に保持材11が圧接固定される。また、各締付けボルト14を弛めると、支承棒18がスライド可能になるとともに、前記長孔9の範囲で保持材11がスイング可能になる。
【0017】
20は複数の支持部材で、これらは図4に示したように、互いに重ねた一対の挾持板21,21の端部を貫通した取付ボルト22の端部を締付ナット23にねじ込み、かつ挾持板21,21の他端部の相対した各面に円弧状の挾持溝24,24を設けて構成されている。そして、自動車の各ペダルを操作するアクチュエータ25の基端に設けた取付体26の側面に突設された支持軸27を、前記挾持板21,21の挾持溝24,24で挾持して、前記アクチュエータ25が支持部材20に取付けられている。22aは取付ボルト22のハンドル、28はアクチュエータ25を作動させるサーボモータである。前記のように構成した支持部材20の締付ナット23を前記支持溝5の広幅部に挿入係止し、狭幅部に取付ボルト22を挿入して、各支持部材20が支持溝5にスライド可能に取付けられている。したがって、前記ハンドル22aで取付ボルト22を締め付けると、支持ロッド4に支持部材20が固定されるとともに、挾持板21,21が支持軸27を挾圧しアクチュエータ25を固定する。取付ボルト22を弛めると、支持ロッド4に対して支持部材20がスライド可能になり、かつ支持軸27を介して各アクチュエータ25が上下方向にスイング可能になる。
【0018】
29はシフトレバー用のアクチュエータで、これは支持アーム30で本体2に取付けられ、かつ支持アーム30は自動車のハンドル仕様に対応して、ほぼ180度回転させて、アクチュエータ29をシフトレバー側に位置させることが可能に構成されている。31はアクチュエータ29の先端に設けられたハンド(図5参照)で、これにシフトレバー32のノブ33を挿入保持して移動させる。
【0019】
前記ハンド31は、図5に示したように筒体で構成されて、その上端がアクチュエータ29に取付けられ、かつシフトレバー32を押す方向側の下端部にノブ33の周面部が挿入可能な凹部34が形成され、かつハンド31内の上面にシフトレバー検出センサ35が設けられている。前記凹部34の形状は、図6に示したように逆U字形状、図7に示したように逆V字状にするなど任意である。36は本体2の背部に設けられた背部支承体で、これは突出長さを調節可能に構成されて、その先端に背部支持体37が設けられている。38は自動車の運転者用シート、39は本体2を運転者用シート38に固定するベルトである。
【0020】
前記ロボット1は、図1?2に示したように、アクチュエータ25を前側にして本体2を運転者用シート38に載置する。そして、連結ボルト16の締付けで連結材7を支持ロッド4に固定し、かつ締付けボルト14を弛めて、保持材11を上下方向にスイングさせて支承棒18をほぼ垂直にするとともに、支承棒18の下端を自動車の床などに当接して、本体2の前側を持上げ状に支承する。この状態で各締付けボルト14を締付けて保持材11を軸受パイプ8に、保持材11に支承棒18をそれぞれ固定し、かつベルト39で本体2を運転者用シート38に固定する。ペダル用の各アクチュエータ25は、各ペダルの相対する位置に置き、かつペダルを操作することが可能な状態に調節して支持ロッド4に固定する。また、図5に実線で示したように、アクチュエータ29のハンド31にシフトレバー32のノブ33を挿入して、このノブ33をシフトレバー検出センサ35に接触させる。
【0021】
前記のようにロボット1を自動車にセットして、あらかじめ定められた走行パターンに基づいて自動車を運転するが、この自動車の運転においてアクチュエータ29でハンド31を介してシフトレバー32を、図5において実線から鎖線に移動操作すると、シフトレバー32の傾斜角度が大きくなり、そのノブ33の周面にハンド31の下端縁が接するようになるが、そのハンド31の部分に凹部34を設けている。したがって、シフトレバー32の傾斜に従って、鎖線で示したようにノブ33の周面部が前記凹部34に入るから、ノブ33がハンド31を持上げる状態になって、ノブ33がハンド31から抜け出ることはなく、ノブ33はシフトレバー検出センサ35に接触した状態を維持することが可能である。このため、シフトレバー検出センサ35で常にノブ33を検出して、シフトレバー32の移動操作をスムーズに行うことが可能である。
【0022】
なお、前記第1実施例は、そのハンド31の上部をアクチュエータ29に直接取付けているが、このハンド31の取付手段は任意にすることができるものである。
【0023】
図8は第2実施例を示すものであって、シフトレバー32を傾斜面に沿って上下方向に移動操作するものである。この実施例のシフトレバー32は、それを鎖線で示したように、下方に移動させた場合の傾斜角度が前記第1実施例に比して大きくなるが、筒体からなるハンド31に設けた凹部34にノブ33の周面部が入るから、ハンド31からノブ33が抜け出る状態になることはなく、シフトレバー検出センサ35にノブ33を常に接触させた状態で移動操作することが可能である。
【0024】
図9は第3実施例であって、筒体からなるハンド31の下端側の相対した位置に凹部34a,34bが設けられており、シフトレバー(図示省略)の傾斜状態、またはそのノブ(図示省略)の形状などによって、シフトレバーのいずれの移動方向においても、ハンド31から前記ノブが抜ける状態になることを防ぐものである。
【0025】
図10は第4実施例である。このハンド31は、自動変速車のシフトレバーに多いノブが水平方向に長い棒状に形成されているときに使用されるものであって、断面逆凹形に形成されて、その一方に凹部34が形成されている。
【0026】
図11?12は第5実施例を示すものである。このハンド31は半円筒状に形成された一対のハンド片41a,41bで構成されている。42はアクチュエータ29の先端に固着された支持材で、これに固着突設された支持パイプ43の先端に、その軸線方向の切割スリット44が相対して設けられている。45は円錐台形状の栓体で、その小径側が支持パイプ43に挿入可能で、大径側が支持パイプ43の内径よりも大きく形成されたものであって、この栓体45が小径側から支持パイプ43の先端に挿入されている。46は前記支持材42から支持パイプ43に挿通したねじ軸で、これが前記栓体45のねじ孔にねじ込まれている。また、前記ハンド41aの下端に凹部34が形成されるとともに、このハンド41aに設けた挿通孔47(図12参照)に、前記支持パイプ43がスライド可能に挿通され、かつ挿通孔47に連通してその一側に切割溝48が形成されて、切割溝48を貫通する固定ボルト49がハンド片41aに設けられている。したがって、固定ボルト49を締付けるとハンド片41aが支持パイプ43に固定され、固定ボルト49を弛めるとハンド片41aがスライド可能になる。
【0027】
そして、前記ハンド片41bを固着したスライドパイプ50に、前記支持パイプ43がスライド可能に挿入されている。51はねじ軸46の端部に取付けられたハンドルで、このハンドル51でねじ軸46を締付け方向に回転させると、前記栓体45が支持パイプ43に挿入されて、支持パイプ43をスライドパイプ50に圧接させるから、支持パイプ43に対してスライドパイプ50が固定される。逆に前記ねじ軸46をゆるめる方向に回転させると、栓体45が支持パイプ43から抜ける方向にスライドして支持パイプ43を解放するから、スライドパイプ50がハンド片41bと共にスライド可能になり、ハンド片41a,41bの間隔を調節することが可能になる。
【0028】
前記第5実施例のハンド31は、そのハンド片41a,41b間にシフトレバー(図示省略)を挿入保持し、かつこの保持したシフトレバーを検出することなくアクチュエータ29で移動操作するものである。そして、ハンド片41a,41bの間隔を、前記のようにハンド片41aとハンド片41bのいずれか一方のスライド、またはハンド片41a,41bの両方のスライドで任意に調節できるものであるから、シフトレバーのノブの形状、大きさに制約されることなく、任意のノブを保持することが可能である。そして、ハンド片41aに凹部34を設けているから、シフトレバーがハンド31から抜ける状態になることはなく、所要の方向に確実にシフトレバーを移動操作することができる。なお、ハンド片41a,41bの前記間隔調節手段は任意にすることが可能である。
【0029】
前記各実施例のハンドは、シフトレバーを自動車の前後方向に移動させるものについて説明したが、シフトレバーを自動車の幅方向に移動させるものに実施することも可能で、その場合は、自動車の幅方向でハンドに凹部を形成する。そして、ハンド内にシフトレバー検出センサを設けることについては任意にできるものである。
【0030】
【考案の効果】
本考案のシャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボットは、上記のように、シフトレバー用アクチュエータのハンド下端部にシフトレバーの周面部またはそのノブの周面部が入る凹部を形成している。したがって、前記ハンドを介してアクチュエータでシフトレバーを移動操作した場合に、シフトレバーの傾斜角度が大きくなって、その周面にハンドの下端縁が接する状態になったときには、シフトレバーまたはそのノブの周面部が前記凹部に入るから、ハンドからシフトレバーが抜ける状態になることはなく、ハンドに対するシフトレバー上端部の挿入は常に充分な状態になる。このため、ハンドを介してのアクチュエータによるシフトレバーの移動操作を常に適確に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の正面図である。
【図2】第1実施例の平面図である。
【図3】第1実施例の支承棒取付部の拡大断面図である。
【図4】第1実施例のアクチュエータ取付部の拡大断面図である。
【図5】第1実施例のハンドの拡大断面図である。
【図6】第1実施例のハンドの拡大側面図である。
【図7】第1実施例のハンドの拡大側面図である。
【図8】第2実施例の要部の断面図である。
【図9】第3実施例の要部の拡大正面図である。
【図10】第4実施例の要部の一部を断面した正面図である。
【図11】第5実施例の要部の一部を断面した正面図である。
【図12】第5実施例の断側面図である。
【図13】従来例の正面図である。
【図14】従来例のハンドの拡大正面図である。
【図15】従来例のハンドの移動説明図である。
【図16】他の従来例のハンドの移動説明図である。
【符号の説明】
1…ロボット、29…アクチュエータ、31…ハンド、34…凹部。
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-01-06 
結審通知日 2005-01-11 
審決日 2005-01-27 
出願番号 実願平3-95083 
審決分類 U 1 113・ 121- ZA (G01M)
最終処分 成立    
前審関与審査官 新井 重雄  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 水垣 親房
長井 真一
登録日 1996-11-07 
登録番号 実用新案登録第2524748号(U2524748) 
考案の名称 シャシダイナモメータ上の自動車運転用ロボット  
代理人 角田 敦志  
代理人 角田 敦志  
代理人 伊原 友己  
代理人 伊原 友己  
代理人 小野 亨  
代理人 西村 竜平  
代理人 國分 孝悦  
代理人 大須賀 晃  
代理人 西村 竜平  
代理人 南林 薫  

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