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審決分類 |
審判 B62K |
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管理番号 | 1162257 |
審判番号 | 無効2004-40007 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-12-15 |
確定日 | 2007-06-29 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3071713号「二輪車の取り外し可能ハンドル」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成17年11月21日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10856号平成18年10月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第3071713号の請求項に係る考案1、2についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件実用新案登録第3071713号の請求項1、2に係る考案についての出願は、平成12年3月14日の出願であって、同年6月28日にその実用新案権の設定登録がなされた。 請求人は、平成16年12月15日に本件実用新案登録を無効とすることについて審判を請求し、平成17年11月21日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされた。 この審決に対する訴えが請求人よりなされ、知的財産高等裁判所において平成17年(行ケ)第10856号審決取消請求事件として審理され、平成18年10月24日に上記審決を取り消す旨の判決の言い渡しがあり、当該判決は確定した。 2.本件考案 本件実用新案登録の請求項1、2に係る考案(以下、それぞれ、「本件考案1」、「本件考案2」といい、これらをまとめて「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであって、これを請求人の主張に従って分説すると以下の構成からなるものである。 「【請求項1】 A.自転車またはハンドル付スケートボードの取り外し式ハンドル部分である、ハンドル支え棒及びハンドルを係合するT字型連接管から構成される二輪車の取り外し可能ハンドルにおいて、 B.縦管には、横管まで延びた導入溝が形成され、 C.上記ハンドル支え棒上段の導入溝に対応する突起部を有し、 D.位置調節が可能な快速取り外し装置が設けられ、 E.上記二輪車の取り外し可能ハンドルに嵌合されている定位体は、弾性ロープによって連接された左右ハンドルを横管内部の接合孔から外した後、ハンドルの接合管を係止するための、左右に夫々半円弧形のハンドルホルダーを有することを特徴とする F.二輪車の取り外し可能ハンドル。 【請求項2】 G.前記二輪車の取り外し可能ハンドルは、前記定位体前端に鈎部が設けられていることを特徴とする請求項1記載二輪車の取り外し可能ハンドル。」 3.請求人の主張の概要 請求人は、「実用新案登録第3071713号の登録は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、」との審決を求め、その理由として、下記の甲第1?17号証(ただし、当審において、表記の一部を修文。)を提出し、以下の旨主張する。 <無効理由> (1)本件考案1について 本件考案1の構成要件のうち、A、B、C、D、F及びEの要件の一部を具備した甲第3号証等に記載の商品「JDRAZOR(ジェイディ社製品番号:MS-130)」(以下、この商品を「引用考案1」という)が本件考案出願前に公知になっており、本件考案1のEの「ハンドルの接合管を係止するための、左右に夫々半円弧形のハンドルホルダーを有する」という点も甲第14号証に記載の「折畳式ハンドル」に関する事項(以下、「引用考案2」という)によって本件考案出願前に公知になっていた。したがって、本件考案1は、引用考案1及び2に基づいて当業者であればきわめて容易に想到できる。(審判請求書第2頁理由の要点参照) (2)本件考案2について 本件考案2は、本件考案1に周知・慣用技術を付加しただけであって、本件考案1と同様に進歩性がない。(審判請求書第2頁理由の要点参照) 以上の次第であるから、本件考案は、本件実用新案登録に係る出願時において、いわゆる当業者であれば、すでに公知になっていた考案からきわめて容易に想到することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 記 甲第1号証:登録実用新案公報第3071713号(本件考案の登録公報) 甲第2号証:実用新案登録第3071713号の登録原簿(本件考案の登録原簿)の写し 甲第3号証:ジェイディジャパン株式会社のホームページ(http://www.razor.co.jp)中、一部のページをダウンロードした書面 【1】(なお、原文では丸数字が用いられているところを置き換えた。以下同様)ホームページの表紙(2枚) 【2】商品「JDRAZOR」(ジェイディ社製品番号:MS-130)の紹介ページ 【3】「Copy商品にご注意ください」のページ 【4】「JD JAPANのお知らせ」のページ 【5】ジェイディコンポーネンツ社のホームページの表紙 甲第4号証:引用考案1の取扱説明書の写し 甲第5号証:引用考案1が包装されていた箱の写真(3枚) 甲第6号証:「図解 機械用語辞典 工業教育研究会編 日刊工業新聞社昭和40年4月10日第3版発行」の表紙、248ページ、裏表紙の写し 甲第7号証:中華人民共和国深▲しん▼商品検査局が発行した輸出許可証の写し 甲第8号証:香港の運送業者PROSMART INTERNATIONAL LIMITEDが株式会社ジョイナスに対して発行したインボイスの写し 甲第9号証の1:1999年12月26日付けでジェイディ社の販売部門が自社の商品を卸している各顧客・取引先等に対し送付したFAXの写し 甲第9号証の2:1999年12月26日付けでジェイディ社の販売部門が自社の商品を卸している各顧客・取引先等に対し送付したFAXの訳文 甲第10号証:各Olympic販売店から株式会社ジョイナスに対して発行された仕入伝票の写し(12枚) 甲第11号証:株式会社ジョイナスから各Olympic販売店に向けて発行された納品書の写し(12枚) 甲第12号証:株式会社ジョイナスが株式会社Olympicのちらしを貼付したスクラップブックの該当部分の写し 甲第13号証:株式会社Olympicスポーツレジャー部DOスポーツ担当副部長●●●●宛の証明願 甲第14号証の1:台湾公告第224658号公報 甲第14号証の2:台湾公告第224658号公報の訳文 甲第15号証:2000年2月1日に発行された雑誌「TOKYO1週間」の表紙、第17ページ、裏表紙の写し 甲第16号証:2000年1月1日に発行された雑誌「MEN'S NON-NO」の表紙、第113ページ、裏表紙の写し 甲第17号証:株式会社Olympicスポーツレジャー部DOスポーツ担当副部長●●●●宛の証明願 4.被請求人の主張の概要 これに対して、被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、」との審決を求め、その理由として、次の旨主張する。 (1)甲第7号証?甲第13号証によっては、甲第3号証に記載された商品と同じものが、本件考案に係る実用新案登録出願前に公然知られた状態になっていたことは、まったく証されていない。(平成17年3月15日付け答弁書第5頁第24?26行参照) (2)たとえ甲第3号証の記載と甲第14号証の記載とを組み合わせたとしても、それによっては本件考案は示唆されるものではない。(平成17年3月15日付け答弁書第6頁第25?27行参照) 5.甲第3、14号証の記載内容 上記の引用考案1、2に関しての証拠として提出された甲第3、14号証には、それぞれ以下のような記載がある。なお、ここでは、訳文に関しては、請求人が添付したものを援用する。 (1)甲第3号証について 商品「JDRAZOR」の紹介ページにおいて、商品「JDRAZOR」(Model No:MS-130)の左右のハンドルが折りたたみ可能である点及び「Razor」は「JDRAZOR」に名称変更した点が記載されている。 「Copy商品にご注意ください」のページにおいて、「コピー商品の例-1」という写真があり、ハンドルバーエンド部(ヘッドチューブへ挿入部分)においてひも状の部材が露出している点が描写されている。 (2)甲第14号証には、 「1.それぞれに枢支された2つのロッド体からなるハンドルと、 上部に受け溝及び上部押圧板が設けられたハンドルホルダーと、 を含み、 前記受け溝の両端には、それぞれに可動ピンが設けられ、これらの可動ピンがそれぞれ前記ハンドルの2つのロッド体の適切な部位を貫通することによって、このハンドルを回動可能に受け溝に枢支し、 前記上部押圧板が接合素子により受け溝の後側に枢支され、且つこの上部押圧板の前端に締付素子が設けられ、上部押圧板が前記受け溝に覆うときに、締付けることが可能にし、 この上部押圧板が受け溝に覆う時にできた収納空間および受け溝を締付けるときの緊迫力により、ハンドルを展開するときにその状態を安定に維持できることを特徴とする折畳式ハンドル。 2.前記ハンドルホルダーの適宜な部位に収納用引掛リングを設けることによって、ハンドルを折り畳んだ後に移動しないように引掛けて固定できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の折畳式ハンドル。」(第1頁第1欄第1行?同第2欄第5行参照) と記載されており、第1、2、3図には、収納用引掛リングが、ハンドルを係止するために左右に夫々半円弧形の部分を持つ点及びこれら左右の半円弧形の部分の間に縦方向に延びるハンドルホルダーに嵌合する部分を持つ点が記載されている。 6.平成17年(行ケ)第10856号審決取消請求事件の判決の概要 上記判決において、知的財産高等裁判所は次のように判示している。 「1 引用考案1の認定の誤りについて (1) 本件審判段階で提出された甲3?17に原告が本件訴訟で新たに提出した証拠(検甲1,甲19?35,37,39?59)を加えれば,【1】引用考案1が本件出願前に公知となっていたこと,【2】引用考案1は,本件考案1の構成要件Eのうち「弾性ロープによって連接された左右ハンドル」との構成を備えており,「ハンドルホルダー」を除く本件考案1の構成要件をすべて備えるものであることが認められることは,被告も認めるところである。 そうすると,「引用考案1のハンドルが取り外し可能であるとしても,左右のハンドルが弾性ロープによって連接されているとまでは認められない」(審決書12頁22行?23行)とした本件審決の事実認定は誤りであり,したがって「『引用考案1は本件考案1の構成要件のうち,Eの要件についても『弾性ロープによって左右ハンドルが連接されている』という部分は充足している』という請求人の主張の前提自体が成立しない」(審決書12頁24行?26行)とした本件審決の判断も誤りであるといわざるを得ない。」 7.当審の判断 7-1.本件考案1について (1)引用考案1との対比 上記判示事項は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、本件無効審判事件において当審の審理を拘束する。 よって、上記判示事項によれば、引用考案1(甲第3号証等に記載の商品「JDRAZOR(ジェイディ社製品番号:MS-130)」)は、本件出願前に公知となっており、「ハンドルホルダー」を除く本件考案1の構成要件をすべて備えるものと認められるから、本件考案1と引用考案1との一致点及び相違点は、以下のとおりのものと認められる。 【一致点】 「A.自転車またはハンドル付スケートボードの取り外し式ハンドル部分である、ハンドル支え棒及びハンドルを係合するT字型連接管から構成される二輪車の取り外し可能ハンドルにおいて、 B.縦管には、横管まで延びた導入溝が形成され、 C.上記ハンドル支え棒上段の導入溝に対応する突起部を有し、 D.位置調節が可能な快速取り外し装置が設けられ、 E’.弾性ロープによって連接された左右ハンドルを横管内部の接合孔から外すことが可能な F.二輪車の取り外し可能ハンドル。」 に係る考案である点。 【相違点】 本件考案1では、ハンドルの接合管を係止するための、左右に夫々半円弧形のハンドルホルダーを有する定位体が、二輪車の取り外し可能ハンドルに嵌合されているのに対して、引用考案1では、このような定位体を備えていない点。 (2)相違点の検討 甲第14号証には、ハンドルホルダーに対して回動可能に設けられた左右のハンドルを折り畳んだ時に、その左右のハンドルを係止する部材としての収納用引掛リングが記載されており、この収納用引掛リングは、ハンドルの形状に対応させて、左右に夫々半円弧形の部分を有しており、これら左右の半円弧形の部分の間には、ハンドルホルダーに嵌合する部分を有している(前記5.(2)参照)。 甲第14号証の収納用引掛リングは、係止しようとする左右のハンドルが弾性ロープによって連接されていない点で本件考案1の定位体と相違するものの、折り畳んだ左右のハンドル、すなわち、ハンドル本来の機能を失った状態にある左右のハンドルを左右の半円弧形の部分(本件考案1の「ハンドルホルダー」に相当)で係止する部材である点においては、本件考案1の定位体と共通するものであり、さらに、本件考案1の定位体と同様に嵌合という手法により取り付けられるものである。 そして、引用考案1の二輪車の取り外し可能ハンドルにおいても、二輪車本体からハンドルを取り外した状態においては、弾性ロープによって連接されている左右のハンドルはハンドル本来の機能を失った状態にあるから、引用考案1の二輪車の取り外し可能ハンドルにおいて、甲第14号証に記載されたハンドル本来の機能を失った状態にある左右のハンドルを左右の半円弧形の部分で係止する収納用引掛リングを嵌合という手法により設ける技術(引用考案2)を適用することは、当業者であればきわめて容易になし得るものと認められる。 また、甲第14号証に記載の収納用引掛リング(定位体)は、ハンドルの接合管を係止するものであるとは認められないが、半円弧形の部分(ハンドルホルダー)でハンドルのどの部分を係止するかは、ハンドルの形状等に応じて当業者であれば適宜選択しうる設計事項であると認められるから、本件考案1のごとく定位体をハンドルの接合管を係止するものとすることに格別の技術的困難性は認められない。 したがって、引用考案1の二輪車の取り外し可能ハンドルにおいて、甲第14号証に記載された引用考案2を適用し、上記相違点に係る本件考案1の構成とすることは、当業者であればきわめて容易に想到し得たものと認められる。 また、上記相違点で指摘した構成を備える本件考案1の作用効果は、引用考案1、2の構成事項から、当業者であれば予測できる程度以上のものではない。 被請求人は、甲第14号証に関して、「つまり、甲第14号証の1のものは、ハンドル11、12は、上記のように上下に回動するという非常に制限された動きを行うのみで、しかも下向きに回動して折り畳んだときには、上部押圧板40によって回動が阻止されるため、本件考案のように左右のハンドルがロープにより繋がった連体式のハンドルである場合にロープにハンドルが連なって垂れた状態で置かれるために揺れて衝突して破損するおそれがあるというものとは、根本的な相違がある。」と主張する(平成17年3月15日付け答弁書第6頁「(4.4)その他の反論」参照)。しかしながら、甲第14号証に記載の収納用引掛リングは、上述のとおり、本件考案1の定位体と同じく、ハンドル本来の機能を失った状態にある左右のハンドルを左右の半円弧形の部分で係止する点で共通するものであるし、「ハンドルを・・・移動しないように・・・固定」するためのものである(甲第14号証の請求項2の記載を参照)から、上記被請求人の主張に根拠を見出すことはできない。 よって、本件考案1は、引用考案1及び引用考案2に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 7-2.本件考案2について 本件考案2は、本件考案1において、「前記二輪車の取り外し可能ハンドルは、前記定位体前端に鈎部が設けられている」ことを限定したものである。 本件考案2の鈎部は、実用新案登録明細書の記載によれば、物を引っかけるためのものと認められるが、このような物を引っかけるための鈎部を二輪車等のハンドル近傍に設けることは従来周知の技術であるから(例えば、特開平7-40873号公報、特開平11-196915号公報、実願平3-62895号(実開平5-13876号)のCD-ROM参照)、引用考案1の二輪車において、物を引っかけるための鈎部をハンドル近傍に設けることが、当業者にとって格別困難なことであるとは認められない。 さらに、本件考案2においては、鈎部を設ける場所を「定位体前端」と限定しているが、鈎部を設けるためのハンドル近傍の場所として、ハンドル近傍に設けられる定位体の前端を選択することは、当業者であれば適宜なし得る設計事項であるし、また、甲第14号証に記載の収納用引掛リング(定位体)は、ハンドルを係止するものである以上、ハンドル近傍に設けられるものであり、このハンドル近傍に設けられる収納用引掛リング(定位体)自体に鈎部を設けることを妨げる事由は見あたらない。そして、このように鈎部を設ける場所を「定位体前端」と限定することによる格別の効果は認められない。 よって、本件考案2は、引用考案1、2及び前記周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 8.むすび 以上のとおり、本件考案1、2は、引用考案1及び引用考案2に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案1、2についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 審判に関する費用については、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-01 |
結審通知日 | 2005-11-07 |
審決日 | 2005-11-21 |
出願番号 | 実願2000-1482(U2000-1482) |
審決分類 |
U
1
114・
121-
Z
(B62K)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
永安 真 ぬで島 慎二 |
登録日 | 2000-06-28 |
登録番号 | 実用新案登録第3071713号(U3071713) |
考案の名称 | 二輪車の取り外し可能ハンドル |
代理人 | 板垣 孝夫 |
代理人 | 原田 洋平 |
代理人 | 藤沢 正則 |
代理人 | 笹原 敏司 |
代理人 | 藤沢 則昭 |
代理人 | 森本 義弘 |
代理人 | 藤沢 昭太郎 |