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審決分類 審判    A47G
管理番号 1162260
審判番号 無効2007-400001  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-01-30 
確定日 2007-07-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第3102112号実用新案「物品吊持具」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件登録第3102112号実用新案の請求項1ないし3に係る考案についての出願は、平成15年12月8日に出願され、平成16年3月17日に実用新案権の設定登録がされたものである。
これに対し、平成19年1月30日(受付日)に請求人有限会社オクト産業より請求項1に係る考案の登録を無効とすることを求める無効審判の請求がなされ、平成19年2月28日付けで被請求人スルガ株式会社より答弁書が提出されたものである。

2.本件考案
本件登録第3102112号実用新案の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「本体と、本体の他側部に設けて物品に係止させてこの物品を吊持させるフック体と、前記本体の一側部において第一取付孔と第二取付孔へそれぞれ設けて、杆体等の吊持部材に係合する着脱部材とを有する物品吊持具にあって、
前記着脱部材は、前記吊持部材の外周に巻き付いて包持し得る帯状に形成されていて、
該着脱部材は、前記本体の第一取付孔へ挿着されてその外端部を開放させた第一帯体と、前記本体の第二取付孔へ挿着されてその外端部を開放させた第二帯体と、これら第一帯体と第二帯体との内端部における当接部に設けて前記第一取付孔および第二取付孔を通過しない止体と、前記第一帯体の外側面に設けた面状ファスナーにおける一側噛合体と、前記第二帯体の内側面に設けた面状ファスナーにおける他側噛合体とを備えさせたことを特徴とする物品吊持具。」

3.当事者の主張
(1)請求人の主張の概要
請求人は、本件考案の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件考案は、実用新案法第3条第2項に適合せず、実用新案法第37条の規定により無効となるべきである旨主張し、証拠方法として次の甲第1号証を提出している。

甲第1号証:再公表特許WO2002/040763号

(2)被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、a)請求人は「穴に長尺部材を通す場合に、該長尺部材が穴を通り抜けないようにする手段として、穴より大きい係止部材を該長尺部材に設けることは周知である」と主張するが、何を根拠に周知であるか裏付ける資料を何ら示しておらず、周知とはいえないから本件考案の進歩性を否定する論理付けができない。b)百歩譲歩して、仮に「穴に長尺部材を通す場合に、該長尺部材が穴を通り抜けないようにする手段として、穴より大きい係止部材を該長尺部材に設けることは周知である」としても、本件考案は、単に「穴に長尺部材を通す場合に、該長尺部材が穴を通り抜けないようにする手段として、穴より大きい係止部材を該長尺部材に設けた」ものではなく、甲第1号証には、本件考案のような「第一帯体と第二帯体との内端部における当接部に設けて第一取付孔および第二取付孔を通過しない止体」が記載されておらず、示唆されてもいないから、本件考案は、当業者と言えども、甲第1号証の記載から、きわめて容易に考案をすることができない旨主張している。

4.当審の判断
請求人は、請求の理由において、本件考案は、本願の出願前公知の国際公開第2002/40763号公報[甲第1号証]から当業者がきわめて容易に考案できるものである旨主張しているが、審判請求書に添付された甲第1号証は、国際公開第2002/40763号ではなく、再公表特許WO2002/040763号であり、その発行日は本願の出願後の平成16年3月25日であるから、本件考案がこのような証拠に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたとすることはできない。

なお、請求人は、請求の理由において、本件考案は、国際公開第2002/40763号から当業者がきわめて容易に考案することができたものである旨主張しているので、国際公開第2002/40763号について一応検討しておく。

(1)国際公開第2002/40763号の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である、国際公開第2002/40763号(以下、「引用刊行物」という。)には、請求人が指摘する甲第1号証の記載に対応する記載として、次の事項が記載されている。
ア.「雄及び雌の面ファスナーを備えたバンドを取付環に固着し、前記取付環の中仕切板に係止具を取り付けたことを特徴とする吊下支持具。」(【請求項1】)
イ.「前記バンドの、被取付部との接触面に、摩擦係数の高い材質から成る滑り止めを貼着したことを特徴とする請求項1?5いずれか1項記載の吊下支持具。」(【請求項6】)
ウ.「取付環20を被取付部5の外形形状にあわせて例えば湾曲形成しても良い。」(第8頁第20?21行)
エ.「図6(A)に示すように2本のバンドのそれぞれ一端を取付環20に連結し、両バンドの他端にて被取付部5を抱持するよう取り付けるものであっても良く、また、図6(B)に示すように一のバンド10を取付環20に形成された開口22a,22bの双方に挿入し、その両端で被取付部5を抱持するよう取り付けるものであっても良く、さらに、図6(C)に示すように一端に折り返し環50の取り付けられたバンド10を取付環20の開孔22a,22bの双方に挿入して取り付けるよう構成したものであっても良い。」(第12頁第6?14行)

また、請求人が指摘する甲第1号証の図6(A)に対応する引用刊行物の図6(A)には、「雄面ファスナーを備えるバンドと雌面ファスナーを備えるバンドを別体として、雄面ファスナーと雌面ファスナーの長さが変わらない」点が、甲第1号証の図6(B)に対応する引用刊行物の図6(B)には、「雄面ファスナーを備えるバンドと雌面ファスナーを備えるバンドを一体にする」点がそれぞれ図示されているといえる。

(2)対比・判断
本件考案と上記引用刊行物の記載事項ないし図示事項とを対比すると、引用刊行物には少なくとも本件考案の「第一帯体と第二帯体との内端部における当接部に設けて前記第一取付孔および第二取付孔を通過しない止体」に相当する構成が記載ないし図示されていない。
さらに、引用刊行物の残余の記載ないし図示された事項をみても、「第一帯体と第二帯体との内端部における当接部に設けて前記第一取付孔および第二取付孔を通過しない止体」に相当する構成は記載ないし図示されておらず、示唆もされていない。
請求人は、請求の理由において「穴に長尺部材を通す場合に、該長尺部材が穴を通り抜けないようにする手段として、穴より大きい係止部材を該長尺部材に設けることは周知である。よって、甲第1号証の図6(B)に記載された一体のバンドを甲第1号証の図6(A)に記載された雄面ファスナーと雌面ファスナーの長さが変わらないバンドとするために、周知の長尺部材が穴を通り抜けないための手段を採用することは当業者にとってきわめて容易に相当し得たもの」である旨主張しているが、「穴に長尺部材を通す場合に、該長尺部材が穴を通り抜けないようにする手段として、穴より大きい係止部材を該長尺部材に設けることは周知である」ことが周知であることを裏付ける証拠は何ら提出されておらず、証拠もなく請求人の主張する点が周知であるとすることはできない。しかも、本件考案は、単に穴に長尺部材を通す場合に、該長尺部材が穴を通り抜けないようにする手段として、穴より大きい係止部材を該長尺部材に設けただけでなく、第一帯体と第二帯体との内端部における当接部に第一取付孔および第二取付孔を通過しない止体を設けているのであり、この止体を設けることにより、着脱部材が第一取付孔や第二取付孔から抜け出て、本体と分離してしまう不都合を解消し、更には、第一帯体と第二帯体とが常に同じ長さの張り出し量に保持されるという明細書記載の効果(本件の明細書の段落【0016】参照)を奏するのであるから、請求人の主張する理由では、本件考案を当業者が容易に考案することができたとすることはできない。
したがって、仮に請求人が証拠方法として国際公開第2002/40763号を提出していたとしても本件考案を無効とすることはできない。

5.むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件考案の実用新案登録を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定により準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-05-22 
結審通知日 2007-05-29 
審決日 2007-06-11 
出願番号 実願2003-272953(U2003-272953) 
審決分類 U 1 124・ 121- Y (A47G)
最終処分 不成立    
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 一色 貞好
仲村 靖
登録日 2004-03-17 
登録番号 実用新案登録第3102112号(U3102112) 
考案の名称 物品吊持具  
代理人 野末 寿一  
代理人 加藤 静富  
代理人 入江 一郎  

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