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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 A41B |
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管理番号 | 1175739 |
審判番号 | 無効2005-80101 |
総通号数 | 101 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2008-05-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-03-31 |
確定日 | 2008-03-13 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2511428号「使捨ておむつ」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成18年 1月18日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成18年(行ケ)第10090号平成18年6月29日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2511428号の請求項1、2、5に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)本件登録第2511428号実用新案は、平成2年7月11日に出願され、平成8年7月9日に設定登録がなされたものである。 (2)これに対して、平成17年3月31日に大王製紙株式会社より、請求項1,2,6及び請求項9に係る考案についての実用新案登録に対して無効審判の請求がなされ、平成17年6月21日に答弁書及び訂正請求書が提出され、平成17年8月16日に弁ぱく書が提出され、平成17年10月24日に請求人及び被請求人より、それぞれ口頭審理陳述要領書及び口頭陳述要領書(第2回)が提出され、同日に口頭審理が行われ、その後、請求人、被請求人より上申書が提出され、平成18年1月18日に訂正を認め、その請求項1,2,6及び請求項9に係る考案についての実用新案登録を無効とするとの審決がなされた。 (3)本件の被請求人は、これを不服として知的財産高等裁判所に同審決の取消を求める訴(平成18年(行ケ)第10090号)を提起した後、本件実用新案登録について訂正審判(訂正2006-39087号)を請求をしたところ、平成18年6月29日に同審決を取り消す旨の決定がなされたので、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同条第2項の規定によって読み替えられる実用新案法(以下、「旧実用新案法」という。)第40条の3第2項に規定する訂正請求のための期間を指定する通知がなされ、旧実用新案法第40条の3第5項の規定により、上記訂正審判の請求書に添付された明細書(以下「援用明細書」という)を援用する訂正請求なされたものとみなされ、これに対して、請求人より、平成18年9月11日に弁駁書(第2回)が提出され、被請求人より、平成18年10月23日に上記訂正請求とみなされた訂正請求書を補正する手続補正書が提出され、請求人より平成18年10月27日及び成18年11月8日に上申書が提出され、被請求人より平成18年11月17日に上申書が提出されている。 2.訂正の請求について 被請求人が平成18年10月24日に提出した手続補正書による補正は、上記援用された訂正請求書の訂正事項○5(訂正審判請求書の記載は、○の内に5である。)に係る「・・・請求項1、2および3・・」を「・・・請求項1、2または3・・」と補正し、同訂正事項に関する他の記載を同様に補正するものである。 同訂正事項に係る訂正審判請求書の各記載を見ると、「5.請求の趣旨」には、「実用新案登録第2511428号の明細書を本件審判請求書に添付した明細書のとおりに訂正することを認める、との審決を求める。」と記載され、援用明細書には、「請求項5・・請求項1、2および3記載の使捨ておむつ。」と記載され、この「請求項1、2・・3記載の使捨ておむつ。」に対応する各記載は、同審判請求書においては、すべて、「請求項1、2および3記載の使捨ておむつ。」と記載されている。 しかしながら、「6.請求の理由」の「(3)訂正事項」には、同訂正事項を「実用新案登録請求の範囲の請求項4?7及び請求項10を削除し、請求項8、9を繰り上げて請求項4、5と訂正する。」とし、「(4)請求の原因」では、「実用新案登録請求の範囲の請求項4?7及び請求項10を削除する訂正は、・・ また、これらの請求項の削除に伴って請求項8、9を繰り上げて請求項4及び請求項5とする訂正は、・・」と記載している。 そして、「6.請求の理由」に、その請求の意思が表示されるとおり、実用新案登録請求の範囲の請求項4?7及び請求項10は削除されており、請求項8は、繰り上げられて請求項4となっている。この範囲においては、請求された訂正は、「(3)訂正事項」および「(4)請求の原因」に記載されるとおりの訂正が請求されているものであり、しかも、援用明細書の請求項5の記載は、「および」との記載を除いては、「(3)訂正事項」および「(4)請求の原因」に記載されるとおりの請求項の削除に対応させて請求項の項番を繰り上げる以上の訂正ではない。 さらに、これら訂正審判請求書の各記載は、「または」を「および」と訂正を請求する意志は何等示していない。 してみれば、訂正審判請求書の全記載からみて、請求項5に係る「・・請求項1、2および3記載の使捨ておむつ。」との記載は、「・・請求項1、2または3記載の使捨ておむつ。」の明らかな誤記である。 このように明確に表示された訂正の意思から明らかな誤記と認められる誤記を正す補正は、援用明細書の記載を変更するとしても、請求された訂正の要旨を変更するものとは認められないので、本件被請求人が請求した訂正は、平成18年10月23日付け手続補正書により補正された援用明細書のとおり訂正することを求めるものである。 なお、平成17年6月21日に請求された訂正請求は、旧実用新案法第40条の2第4項の規定により、取り下げられたものとなっている。 2-1 訂正事項 被請求人が請求する訂正事項は、以下のとおりのものである。 訂正事項a: 実用新案登録請求の範囲の請求項1の「この連結体を少なくともエンドフラップに接触して吸収体に固定し」を「この連結体を少なくともエンドフラップに接触して、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して、かつ弾性糸の一部が吸収層に重なるように、吸収体に固定し」と訂正するとともに、「この連結体を環状に連結した事を特徴とする」を「この連結体を環状に連結し、前記帯部材の外側縁が折返されている事を特徴とする」と訂正し、さらに、「使捨ておむつ」を「パンツ型使捨ておむつ」と訂正することにより、請求項1の記載を 「液透過性の表面層と液不透過性の防漏層との間に、表面層および防漏層よりも小面積の液吸収性の吸収層を介装することにより、外周にエンドフラップおよびサイドフラップを形成した吸収体と、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定した連結体とから成り、この連結体を少なくともエンドフラップに接触して、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して、かつ弾性糸の一部が吸収層に重なるように、吸収体に固定し、この連結体を環状に連結し、前記帯部材の外側縁を折返した事を特徴とするパンツ型使捨ておむつ。」 と訂正する。 訂正事項b 実用新案登録請求の範囲の請求項4?7及び請求項10を削除し、請求項8、9を繰り上げて「請求項4、5」と訂正するとともに、各請求項に記載の「使捨ておむつ」を「パンツ型使捨ておむつ」と訂正することにより、実用新案登録請求の範囲の請求項2?5の記載を 「【請求項2】連結体は、吸収体の防漏層に固定した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。 【請求項3】連結体は、吸収体の表面層に固定した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。 【請求項4】連結体の弾性糸の伸長率は、幅方向の中程を外側よりも小さく形成した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。 【請求項5】複数の弾性糸は、平行に設けた事を特徴とする請求項1、2または3記載のパンツ型便捨ておむつ。」 と訂正する。 訂正事項c 明細書の考案の詳細な説明の欄中に記載(第6頁第6行(実用新案登録第2511428号公報(以下、「本件登録公報」という。)第2頁第4欄第14行)、及び、同第15頁第14行(本件登録公報第4頁第7欄第32行))の「50mmの」を「50mm以上の」と訂正する。 3.訂正請求についての判断 3-1訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)訂正事項aについて、 登録時の実用新案登録の請求の範囲の請求項1に「連結体」が構成として記載されており、実用新案登録請求の範囲の請求項6に、「連結体は、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して吸収体に固定した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。」と記載され、さらに、考案の詳細な説明に、「また連結体は、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して吸収体に固定して良い。」(本件登録公報第2頁第3欄第46?47行)と「連結体」に係る技術的事項として、「外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して」吸収体に固定することが記載されている。また、考案の詳細な説明に、「また連結体を、・・・吸収体の防漏層または表面層に固定すれば、・・連結効果を高め、」(本件登録公報第2頁第4欄31?32行)と記載され、第4図には、腹側連結体(12)及び背側連結体(14)をそれらに固定された弾性糸の一部が吸収層(4)に重なるように吸収体(1)に固定する旨図示されており、「連結体」に係る技術的事項として、「弾性糸の一部が吸収層に重なるよう」に、吸収体に固定することも記載されている。 次に、「帯部材」は、考案の構成の一部として登録時の実用新案登録の請求の範囲の請求項1に記載されており、さらに、考案の詳細な説明に「またこの連結体(11)は、幅方向の外側縁(20)を折返す事なく平滑に形成し簡易な製造を可能にしても良いが、一対の帯部材(17)(17)の外側縁(20)(20)の両方を、第8図に示す如く一方側に折返して、外側を破損のない強固なものとする。またこの外側縁(20)は第9図に示す如く、一対の帯部材(17)の一方の外側縁(20)を、他方側の外側縁(20)側に折返して、連結体(11)の外側による、腹部への食い込みを防止しても良い。」(本件登録公報第3頁第5欄第49行?第6欄第7行)と記載されているので、「帯部材」に係る技術的事項として「外側縁を折返した」ことが記載されている。 さらに、登録時の実用新案登録の請求の範囲の請求項1に、「使捨ておむつ」も構成の一部として記載されており、さらに、考案の詳細な説明に、「本考案はパンツ型に形成した使捨ておむつに係るものであって、おむつの良好な装着を行おうとするものである。」(本件登録公報第2頁第3欄第7?9行)と記載されるとともに、「本考案は上述のごとき課題を解決しようとするものであって、パンツ型の使捨ておむつを装着した場合に、被装着者の体型に合った良好な装着を可能にするとともにおむつの製造工程を簡略化しようとするものである。」(本件登録公報第2頁第3欄第26?29行)と記載されているので、「使捨ておむつ」に係る技術的事項として「パンツ型に形成した」ことが記載されている。 以上のとおり、訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲に記載された考案の各構成を明細書中に同構成に係る技術的事項として記載された事項により限定するものである。 したがって、訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲を減縮するものであり、新規事項を追加するものではなく、しかも、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項bについて 実用新案登録請求の範囲の請求項4?7及び請求項10を削除することは、実用新案登録請求の範囲を減縮するものであり、請求項8、9を繰り上げて「請求項4、5」と訂正することは、請求項の削除により不明瞭となる事項を釈明するものであるから、請求項4?7及び請求項10を削除することと一体をなして、実用新案登録請求の範囲を減縮するものである。 また、各請求項に記載の「使捨ておむつ」を「パンツ型使捨ておむつ」と訂正することは、(1)に述べたとおり、実用新案登録請求の範囲に記載された各構成を明細書中に同構成に係る技術的事項として記載された事項により限定するものである。 したがって、訂正事項bは、実用新案登録請求の範囲を減縮するものであり、新規事項を追加するものではなく、しかも、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項cについて 関係する登録時の明細書の記載をみると、実用新案登録請求の範囲の請求項1に「50mm以上」と記載され、「本考案は上述の如き課題を解決するため、液透過性の表面層と液不透過性の防漏層との間に、表面層および防漏層よりも小面積の液吸収性の吸収層を介装することにより、外周にエンドフラップおよびサイドフラップを形成した吸収体と、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定した連結体とから成り、この連結体を少なくともエンドフラップに接触して吸収体に固定し、この連結体を環状に連結して成るものである。」(本件登録公報2頁第3欄第31?39行)と、弾性糸を固定する幅として「50mm以上」であることが記載されている。加えて、実施例においても「一対の帯部材(17)(17)の間に、天然ゴム、ウレタンゴム等の弾性糸(18)を、帯部材(17)の長さ方向に4mm間隔で平行に形成し、腹側連結体(12)に34本、背側連結体(14)には54本固定して、連結体(11)の全幅に伸縮性を得る事を可能としている。」(本件登録公報第3頁第5欄第43?48行)と記載されており、同記載の腹側連結体は4mm間隔で34本であるから、これらは、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って弾性糸が固定されていることとなり、実施例のものの幅も、50mmではなく、50mm以上ある。 このような記載の前提下に、本件登録公報第2頁第4欄第14行、及び、本件登録公報第4頁第7欄第32行に「50mmの」との記載が認められるが、この他に「50mm」を前提として考案を記載する記載はなく、残余の記載は、全て「50mm以上」、即ち、「50mm」よりは広い幅を前提に考案を記載している。 さらに、「50mm以上」であるものが、「50mm」に臨界的意義を有するか否かに関わらず、幅が広いということで技術的な意義を有することは明細書の記載から把握される。そして、「50mm」という値自体に特段の技術的意義があるとする記載は明細書中に認められない。 したがって、上記2箇所の「50mm」は、明らかに「50mm以上」の誤記であると認められる。 したがって、訂正事項cは、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。 しかも、上記各訂正は、新規事項の追加に該当するものではなく、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3-2独立登録要件について 訂正事項bに関して、無効審判請求がなされていない請求項3、4について、訂正事項bにより訂正がなされているので、訂正後のこれら考案についての独立登録要件について、以下、検討する。 訂正後における実用新案登録請求の範囲の請求項3に係る考案は、「連結体は、吸収体の表面層に固定した事」をその構成の一部とし、同請求項4に係る考案は、「連結体の弾性糸の伸長率は、幅方向の中程を外側よりも小さく形成した事」をその構成の一部とするものである。 そして、これら構成を有することにより、それら考案はそれら考案特有の効果を奏するものと認められるところ、これら構成を本件に係る出願の出願時において公知または周知とする客観的事実は何等認められない。 したがって、これら考案について、実用新案登録出願の際、独立して実用新案登録を受けることができないとする理由を発見しない。 なお、実開平1-58610号公報に、複数の弾性部材の弾性係数を異ならせることが記載されるとしても、直ちには、幅方向の中程を外側よりも小さく形成することを開示するものではなく、「連結体の弾性糸の伸長率は、幅方向の中程を外側よりも小さく形成した事」が記載または示唆されるとは、認められない。 なお、請求人は、取り下げられたものとみなされた平成17年6月21日付け訂正請求書における訂正事項に関連して、請求人が想定する各種折り返し形態を挙げて、実用新案登録請求の範囲に新規な折り返しの形態事項を取り込むから、実用新案登録請求の範囲を拡張または変更する旨主張している旨の主張をなしていた。 しかしながら、登録明細書の記載をみると、折返しを行わないものが考案の詳細な説明に記載され、さらに上記の通り、考案の詳細な説明に、「またこの連結体(11)は、幅方向の外側縁(20)を折返す事なく平滑に形成し簡易な製造を可能にしても良いが、一対の帯部材(17)(17)の外側縁(20)(20)の両方を、第8図に示す如く一方側に折返して、外側を破損のない強固なものとする。またこの外側縁(20)は第9図に示す如く、一対の帯部材(17)の一方の外側縁(20)を、他方側の外側縁(20)側に折返して、連結体(11)の外側による、腹部への食い込みを防止しても良い。」(本件登録公報第3頁第5欄第49行?第6欄第7行)と折返すことも記載されている。これら記載を前提として、実用新案登録請求の範囲に「帯部材」を構成として記載しており、この「帯部材」は、「折返す事なく」構成されるものと「折返して」構成されるものとの両者を含むものであることは当然であり、折り返すことを記載したことにより、請求人が主張する各種形態を包含するのであれば、それは、折り返すものと折り返さないものとの両構成を包含する登録明細書の実用新案登録請求の範囲の記載によっても、請求人が主張する形態を包含するとの主張にこそなれ、新規な形態の追加の論拠とはならない。 また、訂正事項bに関して、「・・請求項1、2および3・・」と訂正することを前提として、訂正請求は、旧実用新案法第40条の2第1項各号の規定に適合ししない旨主張しているが、被請求人の請求する訂正は上述の通りである。 3-3 訂正請求についてのむすび 以上説示のとおり、上記訂正請求は、旧実用新案法第40条の2第1項各号の規定に適合し、同第5項で読み替えられて準用される実用新案法第39条第3?5項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 4.本件の各考案 上述のとおり、被請求人が請求した訂正は認められたので、本件の各考案は、訂正明細書に記載された実用新案登録請求の範囲の請求項1?5に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】液透過性の表面層と液不透過性の防漏層との間に、表面層および防漏層よりも小面積の液吸収性の吸収層を介装することにより、外周にエンドフラップおよびサイドフラップを形成した吸収体と、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定した連結体とから成り、この連結体を少なくともエンドフラップに接触して、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して、かつ弾性糸の一部が吸収層に重なるように、吸収体に固定し、この連結体を環状に連結し、前記帯部材の外側縁を折返した事を特徴とするパンツ型使捨ておむつ。 【請求項2】連結体は、吸収体の防漏層に固定した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。 【請求項3】連結体は、吸収体の表面層に固定した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。 【請求項4】連結体の弾性糸の伸長率は、幅方向の中程を外側よりも小さく形成した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。 【請求項5】複数の弾性糸は、平行に設けた事を特徴とする請求項1、2または3記載のパンツ型便捨ておむつ。」 そして、訂正前の請求項1,2,6及び請求項9に係る考案ついての実用新案登録に対して無効審判の請求がなされていたので、本件無効審判は、訂正後の請求項1、2及び請求項5に係る考案についての実用新案登録に対してなされている。 5.請求人の主張及び被請求人の主張の概略 平成17年6月21日に提出された訂正請求書による訂正請求は、取り下げられたもののとなっているので、同訂正請求に対する主張を略し、平成18年10月23日付け手続補正書により補正された援用明細書に基づく訂正が、上述のとおり認められるので、同訂正請求による訂正を前提に、請求人、被請求人の主張を整理すると、概略以下のとおりである。 5-1 請求人の主張 請求人は、本件実用新案登録に係る出願前に頒布された刊行物に記載された考案を立証するために、 甲第1号証:特開平1-298202号公報 を提出して、訂正後の請求項1、2及び請求項5に係る考案は、甲第1号証に記載された考案である旨主張している。 また、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って設けることが周知であることを例示するものとして、 甲第2号証:特開昭62-231005号公報、 甲第3号証:実願昭56-172966号(実開昭58-78903号)マイクロフィルム を提出するとともに、帯部材の外側縁を折り返すことが慣用される事項であることを例示するものとして、 甲第9号証:特開昭62-162001号公報 甲第10号証:特開昭57-77304号公報 甲第11号証:実公昭51-35285号公報 甲第12号証:特公昭61-56322号公報 甲第14号証:特開昭60-199903号公報 を提出し、さらに、「連結体は、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して吸収体に固定」されることが周知であることを立証するために、 甲第4号証:実願昭60-142117号(実開昭62-50616号)マイクロフィルム、 甲第5号証:実願昭62-77726号(実開昭63-186709号)マイクロフィルム を提出し、加えて、 甲第15号証:実願昭62-153082号(実開平1-58610号)マイクロフィルム を提出し、連結体を外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して、弾性糸の一部が吸収層に重なるように吸収体に固定することが記載されるとするとともに、弾性糸の一部が吸収層に重なるように、吸収体に固定することが格別の事項ではないことを立証するために、 甲第16号証:特開昭58-87303号公報、 甲第17号証:特開昭60-173101号公報 を提出し、パンツ型のおむつにおいて、体にフィットさせることを目的として、ウエスト開口部の開口端形成縁部との間隔をそれぞれ保って両側縁部の中央を通り胴周り全周にわたって実質的に連続したギャザーを形成させる弾性部材を設けることが周知であることを立証するために、 甲第8号証:実願昭55-107567号(実開昭57-34509号)マイクロフィルム を提出している。 加えて、本件各考案の奏する効果が格別のものではなく、当業者が通常に期待するものであることを立証するために、 甲第13号証:阿部幸子 他7名編集「被服学辞典」、朝倉書店1997年7月1日発行、第358頁、 を提出し、訂正によっても、訂正後の請求項1、2及び請求項5に係る考案は、甲第1号証に記載された考案及び周知の技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、無効とされるべき旨主張している。 なお、請求人は、予備的に、公知の連結体の配置位置を立証するために 甲第6号証:実願昭62-120088号(実開昭64-26310号)マイクロフィルム を提出している。 また、甲第7号証は後日撤回された。 5-2 被請求人の主張 被請求人は、補正された援用明細書に基づく訂正請求が認められることを前提として、概略以下の主張をなしている。 「5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定した連結体」を公知または周知とする特段の証拠は示されていないとし、本件各考案は、パンツ型のおむつであり、パンツ型のおむつは、装着前からおむつの寸法が決まっているので装着時に調整ができないことから、特有の問題点として、連結体の外側縁による腹部への食い込みの問題点があり、それを解決するものとして、パンツ型の使捨ておむつが「5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定した連結体」を有することによって、「おむつ装着時のフィット性が良好となり、被装着者の体型に合わせた装着が可能になるとともに被装着者の体の運動を妨げる事がなく、尿等の漏れを防止できる」という特有の効果を奏することができたものであり、ウエストギャザーを形成する弾性部材の収縮力が集中し、装着時のフィット性が悪く、被装着者の体型に合わせた装着ができないという問題点を弾性糸を、多数、広幅に配置することにより解決したものである旨主張している。 次に、本件各考案は、「帯部材の外側縁を折返した」を構成として併せ持つことにより、「帯部材の外側縁を折返した」ことによって、帯部材の外側を破損のない強固なものとすることができ、連結体の外側による腹部への食い込みを防止することができ、生産性にもすぐれるという、本考案に特有の効果を奏することができたのであり、甲各号証には、パンツ型の使い捨ておむつに於いて、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定した連結体を用い、帯部材の外側縁を折返したものは示されていなく、いわゆるパンツ、おむつに係る技術には、パンツ型の使捨ておむつ固有の課題を有するものではなく、それら技術を直ちにパンツ型の使捨ておむつに適用できるものではないとしている。 加えて、連結体を「外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して」吸収体に固定する連結体を、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して吸収体に固定することを、甲各号証のいずれも記載ないし示唆せず、本件各考案は、同構造を採用することにより、連結体の伸縮性を吸収体に妨げられる事が少なく、フィット性が向上し、さらに良好な装着が可能となるという特有の効果を奏することができるものであり、この効果は、当業者といえども予測し得るものではない。 さらに、連結体を「弾性糸の一部が吸収層に重なるように」吸収体に固定することを、甲各号証は記載ないし示唆するものではなく、これらの刊行物に記載された考案の実施の態様を示す図面には、両者を重ならないようにした態様が示されているとして、甲第1号証の第2図及び第4図には、装着ベルト7を吸収体2と重ならないように配置したおむつが示されている旨主張している。 さらに、訂正後の各考案のおむつにおいては、弾性糸の一部が吸収層に重なるように連結体を吸収体に固定するという特定の構造を採用することにより、おむつ装着時のフィット性が良好となり、被装着者の体型に合わせた装着が可能になるとともに被装着者の体の運動を妨げる事がなく、尿等の漏れを防止できるという特有の効果を奏することができ、さらに、連結体の伸縮性は連結体に固定された弾性糸によるものであり、「連結体の帯部材の長さ方向に、5本以上の弾性糸を50皿以上の幅に渡って幅広く固定しているので、おむつ装着時のフィット性が良好となり、被装着者の体型に合わせた装着が可能になるとともに被装着者の体の運動を妨げる事がなく、尿等の漏れを防止できる」ものである。 したがって、本件各考案についての実用新案登録は、無効とされるべきものではない。 6.甲第1号証の記載 甲第1号証は、本件に係る出願の出願前に頒布されたものであり、甲第1号証には、「簡易立体おむつ」について図面とともに以下の点が記載されている。 甲第1号証には、「【請求項1】・・おむつに於いて、・・バックシートはトップシートの輪郭とほぼ等しい台形状に形成し、トップシートとバックシートを少なくとも吸収体のその両縁の近傍に於いて接着剤を以て接合することにより吸収体を固定する・・簡易立体おむつ。」(特許請求の範囲) と記載されており、上記甲第1号証の記載より、 <把握事項1> トップシートとバックシートを少なくとも吸収体のその両縁の近傍に於いて接着剤を以て接合することにより吸収体を固定する簡易立体おむつ を把握可能である。 また、甲第1号証には、 「【請求項1】非透水性のバックシートと疎水性且つ透水性のトップシートの間にマット状態のパルプ等を主体とした吸収体を挟み込んでその主要部分を形成するおむつに於いて、トップシートは吸収体より幅の広いシートを使用し吸収体を被覆する部分の左右をシートの表面を内側にし・・内方へに折込み・・バックシートはトップシートの輪郭とほぼ等しい台形状に形成し、・・第1折目線の両側及びシートの両辺部等に於いて接合しておむつ本体を形成し、・・た簡易立体おむつ。」(特許請求の範囲)と、 「第1図を参照して、合成繊維等疎水性の材料で形成した不織布等の長方形不透水性シート3′……おむつのトップシート3とする。」(第2頁右上欄第2?11行)と、 「第2図を参照して、トップシート3の輪郭とほぼ同形の台形をなすポリエチレンフイルム等の水分不透過性のシートをもってボトムシート1を形成し、その中央に人体より排泄される尿等を吸収保持できる吸収体2をトップシート3の折込線aの幅よりやや狭く形成して搭載し、その上にトップシート3を重ねる。 トップシート3とボトムシート1を吸収体の両側縁部に於いてホットメルト等の接着剤H1により接着させることにより吸収体2の位置を固定し、更に第1折目線の両側H2,H3、シートの両辺部H4に於いても接着させることによりおむつ本体10を形成する。」(第2頁右上欄第12行?左下欄第4行)と、 記載され、おむつに於いて、吸収体が液吸収性を有することはその目的からして明らかな事項であるので、甲第1号証の記載から、 <把握事項2> 透水性のトップシートと非透水性のバックシートとの間にトップシート、バックシートより面積の小さい液吸収性の吸収体が介装されること が把握され、かつ、 <把握事項3> 吸収体の外周上下左右方向にトップシートとバックシートからなり両シートが接着される部分が存在し、同部分で接合しておむつ本体を形成すること が把握可能である。 さらに、甲第1号証には、 「○本発明の目的 本発明は、・・使い捨ておむつ出現当時に比べはるかに進歩した原材料、設計、製造技術を利用し簡易軽量ながら、おむつ本体の機能は効果的にはたし得るおむつにより、消費者の経済的負担を軽減し、省資源をはかり、かつおむつ製造工程の簡易化をはかることを目的とするものである。 ○上記目的達成のための手段 本発明は、トップシートおよびボトムシートを四角形状に近い形状とし、シートの両側部に二段折込みにより第1折曲片と第2折曲片を形成し、両折曲片の間に伸長状態のまま接着剤を塗布して糸ゴムを貼付けておむつ本体を形成し、該おむつ本体の幅より長い弾性ベルトを弾性体の伸長状態でおむつ本体の上端部および下端部に固定して装着ベルトとした簡易立体おむつを提供する。」(第1頁右下欄第20行?第2頁左上欄第18行)と、 「おむつ本体10の上側および下側にポリウレタンバンド等の弾性バンドを伸長状態でホットメルト等接着剤を塗布ののち固定し装着ベルト7とする(第2図参照)。」(第2頁左上欄第5行?8行)と 「【請求項1】・・・・おむつ本体の幅より長い弾性体ベルトを弾性体の伸長状態でおむつ本体の上端部および下端部に固定して装着ベルトとした簡易立体おむつ。」(特許請求の範囲) と記載されており、第1図に図示される作業工程を前提に第2図をみれば、装着ベルト7の上縁の下方にトップシート3の上縁が位置するものと認められ、第4図を見ると、トップシート3の下縁が装着ベルト7の下縁の上方に位置するものと認められる。 さらに、第4図には、装着ベルトとがボトムシートとに接合されるものが記載されている。 以上の記載を総合すると、 <把握事項4> 帯状の装着ベルト7を吸収体の外周上下方向のトップシートとバックシートとを接着した部分である上端部、下端部に接触して、装着ベルト7の上縁の下方付近にトップシート3の上縁を位置させて、おむつ本体のバックシートであるボトムシートに固定すること、 及び <把握事項5> 甲第1号証から把握される各把握事項が、「使捨ておむつ」に係るものであること が把握される。 加えて、甲第1号証には、 「第2図に於いては・・おむつ本体10の上下端に固定しており、装着に際し臍を圧迫しない形状構造とした。 第4図に於いては、ウレタンシートの代りに数本の糸ゴム7aを伸長状態でホットメルトを塗布ののちポリエチレン等の支持テープ7bに塗り合わせて形成した弾性ベルトを使用した例を示す。」(第2頁左上欄第11?19行)と、 「おむつ本体の上端部および下端部に装着ベルトを両側部に糸ゴムを装着したので弾性体の弾性作用でおむつ本体の自然状態を全体的に中凹の形状とすることにより体液の吸収性、濡れ防止性を高めることができる効果を有する。」(第2頁右下欄第10?14行)と、 「なお、装着ベルト7にはホットメルト等を利用した止着部12を形成することは公知である。」(第2頁右下欄第12行?左下欄第4行)、 と記載されており、第4図の記載は、その本数を開示する意志を持って作図されたか否かは定かでないものの、装着ベルト7の一定の幅に間隔を持って平行に数本の糸ゴム7aが配置されることを表している。 そして、止着部12により、装着ベルト7は、装着時には環状に連結されることは、明らかであるので、これら記載を総合すれば、甲第1号証には、 <把握事項6> 装着ベルトには、数本の糸ゴムが、平行かつ幅方向に分布させて弾性のベルトである装着ベルトの長さ方向に固定され、装着ベルトには装着時に環状に連結を行うための止着部12を有すること が把握される。 したがって、以上各把握事項を総合すると、甲第1号証には、 透水性のトップシートと非透水性のバックシートとの間に、トップシート及びバックシートよりも小面積の液吸収性の吸収体を介装することにより、吸収体の外周上下左右方向にトップシートとバックシートからなり両シートが接着される部分で接合して形成したおむつ本体と、複数本の糸ゴムを平行かつ幅方向に分布させて装着ベルトの長さ方向に固定し、止着部12により連結される装着ベルトとから成り、この装着ベルトを吸収体の外周上下方向のトップシートとバックシートとを接着した部分である上端部、下端部に接触して、装着ベルト7の上縁の下方付近にトップシート3の上縁を位置させて、おむつ本体のバックシートに固定し、装着ベルトは装着時には環状に連結される使捨ておむつである簡易立体おむつの考案(以下、「甲1号証考案」という。) が記載されるものと認める。 7.対比・判断 7-1 本件請求項1に係る考案について、 本件の請求項1に係る考案(以下、「本件考案1」という。)と甲1号証考案とを対比すると、本件考案1の「パンツ型使捨ておむつ」と甲1号証考案の「簡易立体おむつ」とは、いずれも使捨ておむつである点においては差異を有するものではなく、甲1号証考案の「透水性のトップシート」、「非透水性のバックシート」、「吸収体」及び「おむつ本体」は、そのおむつとしての機能は位置から見て、本件考案1の「液透過性の表面層」、「液不透過性の防漏層」「吸収層」及び「吸収体」に相当し、甲1号証考案の「吸収体の外周上下左右方向にトップシートとバックシートからなり両シートが接着される部分」において、「上下方向の接着された部分」は、本件考案1の「エンドフラップ」に、「左右方向の接着された部分」が本件考案1の「サイドフラップ」に、それぞれ相当するということができる。 また、甲1号証考案の装着ベルトは、その形状機能からみて、本件考案1の「帯部材」に相当するものであり、かつ、装着時には連結されることとなる点においては、本件考案1の「連結体」に対応するものと認める。さらに、甲1号証考案の「糸ゴム」は、弾性の糸というべき部材であり、その弾性を付与する機能からみて、本件考案の「弾性糸」に対応するものと認める。 したがって、両考案は、 液透過性の表面層と液不透過性の防漏層との間に、表面層および防漏層よりも小面積の液吸収性の吸収層を介装することにより、外周にエンドフラップおよびサイドフラップを形成した吸収体と、複数本の弾性の糸を幅方向に渡って設けて帯部材の長さ方向に固定した連結体とから成り、この連結体を少なくともエンドフラップに接触して吸収体に固定した使捨ておむつ の考案である点で一致し、以下の点で両考案は相違している。 相違点1 本件考案1が、連結体を環状に連結したパンツ型使捨ておむつであるのに対し、甲1号証考案は、使捨てのおむつであり、装着ベルトが装着時には環状に連結されるものではあるが、環状に連結されたパンツ型の使捨ておむつではない点 相違点2 本件考案1が帯部材の外側縁を折返し、連結体が5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定されるものであり、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置し、弾性糸の一部が吸収層に重なるように吸収体に固定するものであるのに対して、甲1号証考案においては折返しの記載はなく、装着ベルトは、複数本の糸ゴムを用いるもののその本数及び設けられる幅は特定はされず、装着ベルト7の上縁の下方付近にトップシート3の上縁を位置させる図示があるものの、装着ベルト7の上縁をトップシート3の上縁の外側とする明記はなく、おむつ本体のボトムシートに固定するものの糸ゴムの一部が吸収層に重なるように固定することは記載されない点。 以下、相違点について検討する。 <相違点1について> 甲1号証考案の装着ベルトは、使用の前より環状に連結されてはいないものの、装着時には、環状に連結されるべき部材であり、甲1号証考案及び本件考案1が属する技術分野である使捨ておむつにおいて、装着前より胴部の前後を左右で連結して環状になっているものは、いわゆる「パンツ型」なる用語で知られるように従来周知の一形式であるとともに、胴部の左右が連結してない長尺状で、装着時にオムツの前後の左右角部や脇部を止着手段で止めて着用する非パンツ型も、当該技術分野において周知である。 そして、被請求人は、本件考案1は、装着時に寸法調整ができないパンツ型の使い捨ておむつ固有の問題点を解決する手段として、相違点2の構成を採用する旨主張しているが、甲1号証考案の装着ベルトにおいても、弾性を有するものであり、装着後にも寸法の調整を行うことなく被装着者の運動・呼吸等に応じて弾性的に調節され続けるものであるから、それを事前に連結すること自体を選択不能な事項とすることはできず、相違点2の構成の採用に係る効果において、パンツ型である点が考慮されるべきであるとしても、甲1号証考案の装着ベルトを事前に連結せずに非パンツ型の使捨ておむつとするか、事前に連結しパンツ型使捨ておむつとするかは、その使い捨ておむつの設計にあたり、設計者が周知の形式の範囲で適宜選択し得た事項に属するものと認める。 <相違点2について> 一般に、布地を切断した端縁は、そのままでは、ほつれ等の破損が生じやすいことから、該切断した端縁を折り返して折り線を製品の縁とし、該切断した端縁自体が、縁にならないようすることは、たとえば、ポケットの上縁や手提げ袋の上縁、浴衣やズボンの裾等(該折返しが戻らないように、該折返した端縁をかがりつけたり、折り部にミシンをかけたりすることが多いが)に見られるように縫製一般において従来から普通に行われていた事項である。 そうすると、本件考案1において、帯部材(連結体(11))の「外側縁(上記「切断端縁」に相当)を折り返した」構成により破損のない強固なものとすることは、使い捨ておむつにおいても端縁部が存在し、そのほつれ等がないことが商品として好ましいことにおいては、使い捨ておむつを他の商品と敢えて異なるとすることはできず、当業者であれば当然にほつれ等を防止することを商品として期待するというべきであり、当業者がそのほつれ等を防止するために、周知の技術を適用してきわめて容易になしえる事項というべきであり、そのほつれ防止等の効果は、当業者であれば、予測しうるものであり、格段の効果とはいうことができない。 さらに、該折返しによる腹部への食い込みを防止する旨の主張についてさらに検討する。 肌着のゴム、袖口のゴム等の圧迫が不快である場合に、それを折返すことにより、全圧力が増しても圧迫感を弱めることは、着用者において適宜試みられることが知られる事項である。 また、請求人が述べるように、パンツにおいても、折返すことにより着用時の圧迫感、肌への食い込みを減らすを期待することが知られていたと認められる。 これに対して、被請求人は、パンツ型おむつは装着者が装着したまま排尿、排便することを前提とし、尿等がおむつの外に漏れないように吸収体が装着者に常にフィットさせるものであるのに対して、下着のパンツは密閉性が重要視されず、着心地などが重視されて肌への食い込みが生じることがないように設計されるものであり、下着のパンツには、パンツ型のおむつが有する課題がそもそも存在しないのである旨主張している。 しかしながら、甲第13号証に、「被服圧許容限界」の項に、「過度の被服圧は皮膚血流量の低下、内臓変位変形、発汗量の低下等生理的影響がある。・・被服圧許容限界は圧迫する面積、部位、材料の伸張特性等によって変化する」と記載されるように、「人体を被覆するもの」により過度に人体を圧迫しないように配慮することは、周知の技術的課題である。さらに、漏れを防止するようにフィットさせることは、おむつとしての当然の課題であり、被請求人が主張するようにそのような課題の少ない下着においても、上記の通り、「人体を被覆するもの」により過度に人体を圧迫しないように配慮することは、被服分野一般において当業者にとって周知の事項である以上、パンツ型の使捨ておむつにおいて、外側縁を折返すことを採用することは、当業者であれば当然に検討される事項というべきである。 してみれば、折返しによる腹部への食い込みを防止することは、当業者が予測しえる以上の格別の効果とすることはできない。 さらに、相違点2の残余の構成について検討すると、本件考案1の「弾性糸」は、弾性回復にすぐれた糸の意味(「JIS用語辞典VI繊維編」財団法人日本企画発行1978年11月1日発行)と解され、甲1号証考案の「糸ゴム」も、一種の糸状の弾性体であり、ゴムも弾性回復性に優れるものである。したがって、本件考案1の「弾性糸」と甲1号証考案の「糸ゴム」との差異は、文言上差異を有するものの格別の差異とすることはできない。 また、本件考案1においては、「5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って」と、数値を特定したことの効果については、明細書には各数値に関する特段の記載はなく、その数値自体には、臨界的意義は認められないものの、5本以上に締め付ける力が分散し、それが50mm以上の幅に渡って分布する事により、集中がさけられ、強いフィット性を有する場合においても、肌への圧迫、不快感を解消するという効果があることは明らかである。 これに対して、甲1号証考案の帯部材は、数値は特定されていないが、糸ゴムは複数本設けられており、帯部材の幅方向に分布させてて設けられており、これが、1本のゴム紐の場合と比べ、肌への食い込みをより少なくすることは、当業者であれば当然に推測可能なことであり、甲1号証考案の構成が肌への圧迫感を防止することを意図することは、甲第1号証の記載に接した当業者であれば、当然に理解すべき事項である。 そして、甲第1号証のものを具体的に設計するにあたり、糸ゴムの本数、その設ける幅を設計者が決定することが必須であり、その本数は、多い方が力の分散を図れることは当然であるので、「5本以上」の限定は、当業者であれば通常その選択に含める数値というべきである。 さらに、甲第1号証の第4図の記載は、その本数を開示する意志を持って作図されたか否かは定かでないものの、装着ベルト7の一定の幅に間隔を持って平行に5本の糸ゴム7aが配置されることを記載しており、5本以上なる数値を選択することを甲第1号証の記載が排除するものではなく、5本以上とすることは、甲1号証考案の設計にあたり、当業者が適宜なしえた事項と認められる。 また、その設計にあたり、通常採用される幅について検討すると、甲第3号証にも示されるように50mm以上とすることは通常に行われる範囲であり、本件考案1がパンツ型であるとしても、非パンツ型のものにおいて採用される幅を排除すべきものとは認められず、50mm以上とすることを格別の幅と認めることはできない。 さらに、5本及び50mmの各値自体に臨界的意義を有する旨の開示が訂正明細書中になされていないことは、上述のとおりであり、さらに、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って設けたものを折り返すとしても、本件訂正明細書の記載は、それにより、弾性糸が設けられる範囲が重なることにより、幅が狭くなり圧迫が強まるものをも含めて記載していると解すべきものであるから、各数値を定めた点に格別の意味を認めない。 次に、「弾性糸の一部が吸収層に重なるように吸収体に固定する」ことの意義について検討すると、本件明細書には、「弾性糸の一部が吸収層に重なるように吸収体に固定する」ことに関して、「また連結体を、エ字型の接着層を介して吸収体の防漏層または表面層に固定すれば、接着剤の使用量を少なくしながら、連結効果を高め、経済的で確実な固定が可能になるとともに連結体の伸縮性を妨げる吸収層部分への接着面箱を小さくして、連結体の伸縮性を向上できる。 また連結体を、ロ字型の接着層を介して吸収体の防漏層または表面層に固定すれば、多少伸縮性を低するものの、さらに確実な固定が可能となる。 また連結体を、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して吸収体に固定すれば、連結体の伸縮性を吸収体に妨げられる事が少なく、フィット性が向上し、さらに良好な装着が可能となる。」(補正された援用明細書第3頁第21?29行(本件登録公報第2頁第4欄31?42行))との記載は、弾性糸を吸収体の吸収層に重なることの作用を、連結体の伸縮性に係る利点として述べるものではなく、本件考案1がその構成としない特定の接着の形状に起因して、接着面の減少により、弾性糸を吸収体の吸収層に重ねることの問題を解決する範囲で「伸縮性を向上」と述べるとともに、特定の接着の形状に関して「多少伸縮性を低する」ことを前提とする記載であり、同記載中、「連結体の伸縮性」の向上に寄与する構成としては、「外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して吸収体に固定」することを述べるものであり、弾性糸の一部が吸収層に重なるように吸収体に固定することは、「フィット」、「連結体の伸縮性」の向上について、周知技術の採用から予測される以上の寄与をするものとしては、記載されていていない。 このような意図での、固定位置の選択として「弾性糸の一部が吸収層に重なる」位置を選択することは、例え重なる部分に「弾性糸」が存在するとしても、重なることにより、特定の接着では、「弾性糸」の機能を阻害しない以上のものでしかなく、「弾性糸」の機能に新たな効果を追加するものではないので、弾性糸の存否にかかわらず、「連結体」と「吸収層」との配置接続関係として、フラップのみならず「吸収層」に重なる配置が通常に行われるものであれば、設計にあたり、単なる通常の配置を採用する行為以上のものとは認められないところ、連結体を吸収層に重なるように吸収体に固定することは、甲第4号証、甲第16号証にもみられるように、周知の一配置形態であると認められるので、弾性糸の一部が吸収層に重なるように吸収体に固定した点は、当業者が適宜なしえた設計上の事項と認める。 さらに、連結体の外方の長辺とエンドフラップの外端縁の位置関係は、両者を一致させる配置と上下の2配置の総計3位置からの選択であるところ、甲第16号証に複数の位置関係が記載されている。また、甲第1号証考案は、第2図のものは、装着ベルト7の上縁の下方にトップシート3の上縁が位置する配置であり、第4図のものは、トップシート3の下縁が装着ベルト7の下縁の上方に位置する配置であり、それらの位置を一致させると解されるものも記載されていることから、その配置は、特定位置への配置のみが開示されるものとは認められないので、甲第1号証考案の装着ベルト7の上縁とトップシート3の上縁との位置関係は、特定の配置関係を排除してのみ記載されるものとは認められない。 そして、本件考案1が外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して固定することにより奏する効果は、当業者が当然に予測する以上のものとは認められない。 したがって、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して固定することも、当業者がきわめて容易になしえたものと認める。 以上のとおり、相違点2は、甲第1号証の記載及び周知の技術に基づいて当業者がきわめて容易になしえたものと認める。 そして、本件考案1が奏する効果は、甲1号証考案及び周知の技術から予測される以上の格別のものとは認められない。 したがって、本件考案1は、甲1号証考案、及び、周知技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 7-2 本件請求項2、5に係る考案について、 本件請求項2、5に係る考案と甲1号証考案とを比較すると、甲1号証考案は、連結体は、吸収体の防漏層に相当するバックシートであるボトムシートに固定したこと、及び、複数の弾性糸は、平行に設けたことを開示するものであり、本件請求項2、5に係る考案は、7-1に述べた相違点1、2の点で甲1号証考案とそれぞれ相違し、残余の点で、甲1号証考案と一致している。 そして、相違点1、2は、7-1に述べたとおり、当業者がきわめて容易になしえたものであるから、本件請求項2、9に係る考案は、甲1号証考案、及び、周知技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 8.むすび 以上説示のとおり、本件請求項1、請求項2及び請求項5に係る考案についての実用新案登録は、旧実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第1号の規定により無効とする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 使捨ておむつ (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】液透過性の表面層と液不透過性の防漏層との間に、表面層および防漏層よりも小面積の液吸収性の吸収層を介装することにより、外周にエンドフラップおよびサイドフラップを形成した吸収体と、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定した連結体とから成り、この連結体を少なくともエンドフラップに接触して、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して、かつ弾性糸の一部が吸収層に重なるように、吸収体に固定し、この連結体を環状に連結し、前記帯部材の外側縁が折返されている事を特徴とするパンツ型使捨ておむつ。 【請求項2】連結体は、吸収体の防漏層に固定した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。 【請求項3】連結体は、吸収体の表面層に固定した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。 【請求項4】連結体の弾性糸の伸長率は、幅方向の中程を外側よりも小さく形成した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。 【請求項5】複数の弾性糸は、平行に設けた事を特徴とする請求項1、2または3記載の使捨ておむつ。 【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案はパンツ型に形成した使捨ておむつに係るものであって、おむつの良好な装着を行おうとするものである。 従来の技術 従来、予めパンツ型に形成した使捨ておむつには、特開昭62-231005号公報記載の発明が存在する。この発明は、ウエストギャザーを形成する弾性部材として、一本のウレタンフォームを使用している。従って、一本の幅狭なウレタンフォーム部に収縮力が集中し、装着時のフィット性が悪く、被装着者の体型に合わせた装着ができない。そのため被装着者の腰や足の運動の妨げとなったり、無理な引っ張り力を生じて、おむつが偏って尿等の漏れの原因となるものであった。 またこの発明は、環状のウエスト部と吸収体とを一体的に成形しているので、成形型を複雑で高価にするとともにおむつ製造時には、製造ラインの移動方向とは交差する方向から、弾性部材をウエスト部に固定する必要があるため、製造工程が複雑となっていた。 考案が解決しようとする課題 本考案は上述のごとき課題を解決しようとするものであって、パンツ型の使捨ておむつを装着した場合に、被装着者の体型に合った良好な装着を可能にするとともにおむつの製造工程を簡略化しようとするものである。 課題を解決するための手段 本考案は上述の如き課題を解決するため、液透過性の表面層と液不透過性の防漏層との間に、表面層および防漏層よりも小面積の液吸収性の吸収層を介装することにより、外周にエンドフラップおよびサイドフラップを形成した吸収体と、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定した連結体とから成り、この連結体を少なくともエンドフラップに接触して吸収体に固定し、この連結体を環状に連結して成るものである。 また連結体は、吸収体の防漏層に固定しても良い。 また連結体は、吸収体の表面層に固定しても良い。 また連結体は、エ字型の接着層を介して吸収体の防漏層または表面層に固定しても良い。 また連結体は、ロ字型の接着層を介して吸収体の防漏層または表面層に固定しても良い。 また連結体は、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して吸収体に固定して良い。 また連結体は、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも内方もしくは面一に位置して吸収体に固定しても良い。 また連結体の弾性糸の伸長率は、幅方向の中程を外側よりも小さく形成しても良い。 また複数の弾性糸は、平行に設けても良い。 また複数の弾性糸は、互いに交差して連結体に固定する事により形成しても良い。 作用 本考案は上述のごとく構成したものであるから、使捨ておむつを被装着者に装着するには、環状の連結体に被装着者の足を片側ずつ挿入し、サイドフラップと環状の連結体との間に形成された開口部から左右の足を露出した後、おむつを引き上げて連結体を被装着者の腹部に係止する。 このおむつは、連結体の帯部材の長さ方向に、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って幅広く固定しているので、おむつ装着時のフィット性が良好となり、被装着者の体型に合わせた装着が可能になるとともに被装着者の体の運動を妨げる事がなく、尿等の漏れを防止できる。 またこのおむつは、予め別工程で弾性糸を固定した連結体を、少なくともエンドフラップに接触して吸収体に固定するものであるから、複数本の弾性糸を連結体に固定するのに、おむつの製造ラインの移動方向と交差する方向に弾性糸をセットする必要がなく、おむつの製造を簡易な工程で可能とする また連結体を、吸収体の防漏層に固定すれば、吸収体の表面を被覆する事なく連結体を吸収体に固定できるので、おむつの吸収能力を妨げる事がない。 また連結体を、吸収体の表面層に固定すれば、吸収体の表面を被覆し、多少の吸収能力の低下はあるものの、エンドフラップへの尿のしみ上がりを連結体で防止でき、漏れ防止を可能とする。 また連結体を、エ字型の接着層を介して吸収体の防漏層または表面層に固定すれば、接着剤の使用量を少なくしながら、連結効果を高め、経済的で確実な固定が可能になるとともに連結体の伸縮性を妨げる吸収層部分への接着面積を小さくして、連結体の伸縮性を向上できる。 また連結体を、ロ字型の接着層を介して吸収体の防漏層または表面層に固定すれば、多少伸縮性を低下するものの、さらに確実な固定が可能となる。 また連結体を、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して吸収体に固定すれば、連結体の伸縮性を吸収体に妨げられる事が少なく、フィット性が向上し、さらに良好な装着が可能となる。 また連結体を、外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも内方もしくは面一に位置して吸収体に固定すれば、連結体と吸収体との固定が大きな固定面積で可能となり、丈夫なおむつの成形が可能となる。 また連結体の弾性糸の伸長率を、幅方向の中程を外側よりも小さく形成すれば、被装着者の腹部に当たる部分の弾性糸の弾性力を軽減して、腹部を無理に圧迫するような事がなく、連結体を被装着者の腹部に柔軟に係止する事が可能となる。 また複数の弾性糸を、平行に設ければ、連結体への弾性糸の固定方法が容易となり、おむつの容易な製造可能となる。 また複数の弾性糸を、互いに交差して連結体に固定する事により形成すれば、連結体は長さ方向の伸縮性ばかりではなく、幅方向の伸縮性も備わるものであるから、被装着者の動きに対応できる立体的なフィット性を得る事が可能となるものである。 実施例 以下本考案の一実施例を説明すれば、(1)は吸収体で、液透過性の不織布等で形成した表面層(2)と、液不透過性のポリエチレンフィルム等で形成した防漏層(3)との間に、この表面層(2)および防漏層(3)よりも小面積の液吸収性の吸収層(4)を介装している。また吸収体(1)は、外周に表面層(2)と防漏層(3)から成るサイドフラップ(5)、腹側エンドフラップ(6)および背側エンドフラップ(7)を形成し、サイドフラップ(5)に、発泡ウレタン、糸ゴム等の弾性部材(8)を介装してサイドギャザー(10)を形成している。また、吸収体(1)の防漏層(3)には、腹側エンドフラップ(6)や、背側エンドフラップ(7)に接触して、連結体(11)を固定している。この固定は、ホットメルト等でエ字型に設けた接着層(9)を介して行い、その接着層(9)の一辺を、吸収層(4)の存在しない腹側エンドフラップ(6)、背側エンドフラップ(7)に接着する事により、連結体(11)の伸縮性を確保している。また、連結体(11)は、第3図に示す如く展開状態に於て、腹側エンドフラップ(6)に腹側連結体(12)を固定している。また背側連結体(14)を、背側エンドフラップ(7)に固定し、この背側連結体(14)の腹側連結体(12)方向に、この腹側連結体(12)方向を幅狭とするハ字型の延長部(13)を形成して、尿等の横漏れを防止するとともに腹側連結体(12)と背側連結体(14)の長さ方向の端部を、ホットメルト等により環状に連結している。また腹側連結体(12)と背側連結体(14)の外方の長辺を、腹側エンドフラップ(6)や背側エンドフラップ(7)の外端縁(15)(16)と面一に位置して固定している。また、この連結体(11)の固定は、外方の長辺を腹側および背側のエンドフラップ(6)(7)の外端縁(15)(16)よりも内方に位置して固定しても良い。また連結体(11)は、撥水性不織布または防漏性フィルム等により形成された、一対の帯部材(17)(17)の間に、天然ゴム、ウレタンゴム等の弾性糸(18)を、帯部材(17)の長さ方向に4mm間隔で平行に形成し、腹側連結体(12)に34本、背側連結体(14)には54本固定して、連結体(11)の全幅に伸縮性を得る事を可能としている。 またこの連結体(11)は、幅方向の外側縁(20)を折返す事なく平滑に形成し簡易な製造を可能にしても良いが、一対の帯部材(17)(17)の外側縁(20)(20)の両方を、第8図に示す如く一方側に折返して、外側を破損のない強固なものとする。またこの外側縁(20)は第9図に示す如く、一対の帯部材(17)の一方の外側縁(20)を、他方側の外側縁(20)側に折返して、連結体(11)の外側による、腹部への食い込みを防止しても良い。 上述のごとく構成したものであるから、使捨ておむつ(21)を被装着者に装着するには、環状の連結体(11)に被装着者の足を片側ずつ挿入し、サイドフラップ(5)と環状の連結体(11)との間に形成された開口部から左右の足を露出した後、使捨ておむつ(21)を引き上げて連結体(11)を被装着者の腹部に係止する。 また、上記実施例では連結体(11)を、吸収体(1)の防漏層(3)に固定しているが、他の異なる実施例に於ては、第2図に示す如く吸収体(1)の表面層(2)に固定している。このように固定する事により、吸収体(1)の表面を被覆し、多少の吸収能力の低下はあるものの、背側および腹側エンドフラップ(6)(7)への尿のしみ上がりを連結体(11)で防止でき、漏れ防止を可能とする。 また上記実施例では連結体(11)を、外方の長辺が腹側および背側のエンドフラップ(6)(7)の外端縁(15)(16)よりも、内方もしくは面一に位置するように吸収体(1)に固定した。しかしながら他の異なる実施例に於ては、連結体(11)を第4図に示す如く、連結体(11)外方の長辺を腹側エンドフラップ(6)、背側エンドフラップ(7)の外端縁(15)(16)よりも外方に位置して吸収体(1)に固定している。このように固定すれば、連結体(11)の伸縮性を吸収体(1)に妨げられる事が少なく、フィット性が向上し、さらに良好な装着が可能となる。 またさらに、連結体(11)の吸収体(1)への固定方法を、第6図に示す如く、吸収体(1)の表面層(2)部分を残して接着層(9)をコ字型に形成すれば、第7図に示す如く、連結体(11)と表面層(2)との間に、ポケット状の間隙部(22)を形成する事ができ、吸収層(4)の吸収能力を低下する事がないとともに間隙部(22)に尿等が侵入した場合にも、連結体(11)で被覆しているから、被装着者に不快感を与える事がない。また腹側、背側のエンドフラップ(6)(7)への尿のしみ上がりを防止し、尿等の漏れ防止を可能とする。 また連結体(11)の弾性糸(18)の伸長率を、外側よりも幅方向の中程を小さく形成すれば、被装着者の腹部に当たる部分の弾性糸(18)の弾性力を軽減して、腹部を無理に圧迫するような事がなく、連結体(11)を被装着者の腹部に柔軟に係止する事が可能となる。また上記実施例では連結体(11)の弾性糸(18)の伸長率を、外側よりも幅方向の中程を小さく形成したが、他の異なる実施例に於ては、第10図に示す如く、幅方向の外側の弾性糸(18)の固定間隔を小さく形成する事により、幅方向の中程の弾性力を小さくしても良い。また、連結体(11)の幅方向の外側の弾性糸(18)を第11図に示す如く、幅広状に形成しても、幅方向の中程の弾性力を小さくし、腹部への柔軟な係止を可能とする。 また上記実施例に於ては、連結体(11)の全幅に、平行に位置する弾性糸(18)を固定したが、他の異なる実施例に於ては、腹側連結体(12)や背側連結体(14)の弾性糸(18)を、第5図に示す如く、4mm間隔で平行に34本形成し、帯部材(17)の長さ方向に幅140mmで固定すれば、背側連結体(14)の延長部(13)に弾性糸(18)を固定しないから、被装着者の股部を強く締め付けるような事がなく、少ない本数の弾性糸(18)によって、廉価に尿等の漏れ防止効果を得る事ができ、おむつ(21)の良好な装着を可能とする。 また連結体(11)の延長部(13)を、ロ字型の接着層(9)を介して吸収体(13)の防漏層(3)または表面層(2)に固定すれば、延長部(13)には弾性糸(18)を固定していないので、接着面積が多少大きくなっても、連結体(11)の伸縮性を妨げる事がなく、吸収体(1)と連結体(11)の確実な固定が可能となる。 また上記実施例では、複数の弾性糸(18)を平行に設けているが、他の異なる実施例に於ては、第12図に示す如く、複数の弾性糸(18)を互いに交差して連結体(11)に固定する事により形成すれば、連結体(11)は長さ方向の伸縮性ばかりではなく、幅方向の伸縮性も備わるものであるから、被装着者の動きに対応できる立体的なフィット性を得る事が可能となるものである。 考案の効果 本考案は上述のごとく構成したものであるから、使捨ておむつを装着した場合に、連結体の帯部材の長さ方向には、5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って幅広く固定しているので、おむつ装着時のフィット性が良好となり、被装着者の体型に合った装着が可能になる。またおむつの装着によって、被装着者の体の運動を妨げる事がなく、おむつが一方に偏るような事がないので、尿等の漏れ防止を可能とする。 またこのおむつは、予め別工程で弾性糸を固定した連結体を、少なくともエンドフラップに接触して吸収体に固定するものであるから、複数本の弾性糸を連結体に固定するのに、おむつの製造ラインの移動方向と交差する方向に弾性糸をセットする必要がなく、おむつの製造が簡易な工程で可能となるものである。 【図面の簡単な説明】 図面は本考案の実施例を示すものであって、第1図は防漏層に連結体を固定したおむつの斜視図、第2図は表面層に連結体を固定したおむつの斜視図、第3図は連結体と吸収体の分離状態を示す平面図、第4図は連結体の外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置したおむつの展開状態を示す平面図、第5図は連結体に弾性糸を部分的に介装したおむつの展開状態を示す平面図、第6図は連結体をコ字型の接着層を介して表面層側に固定した状態を示す一部平面図、第7図は第6図の斜視図、第8図は帯部材の外側縁を折返して設けた連結体の断面図、第9図は帯部材の外側縁の一方を折返して設けた連結体の断面図、第10図は幅方向の外側の弾性糸の固定間隔を小さく形成した連結体の断面図、第11図は幅方向の外側の弾性糸を幅広状に形成した連結体の断面図、第12図は弾性糸を交差して設けた連結体の一部切欠平面図である。 (1)……吸収体 (2)……表面層 (3)……防漏層 (4)……吸収層 (5)……サイドフラップ (6)……腹側エンドフラップ (7)……背側エンドフラップ (9)……接着層 (11)……連結体 (15)……外端縁 (16)……外端縁 (17)……帯部材 (18)……弾性糸 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2006-11-22 |
結審通知日 | 2005-12-01 |
審決日 | 2006-01-18 |
出願番号 | 実願平2-73465 |
審決分類 |
U
1
123・
121-
ZA
(A41B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松縄 正登 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
西村 綾子 溝渕 良一 |
登録日 | 1996-07-09 |
登録番号 | 実用新案登録第2511428号(U2511428) |
考案の名称 | 使捨ておむつ |
復代理人 | 竹内 麻子 |
代理人 | 平山 孝二 |
代理人 | 永井 義久 |
代理人 | 高石 秀樹 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 竹内 麻子 |
代理人 | 奥村 直樹 |
代理人 | 平山 孝二 |
代理人 | 奥村 直樹 |
代理人 | 高石 秀樹 |
復代理人 | 外村 玲子 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 外村 玲子 |