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審決分類 審判    B24B
審判    B24B
管理番号 1205076
審判番号 無効2008-400005  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-06-24 
確定日 2009-10-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第3098915号実用新案「光ディスクメンテナンス装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3098915号の請求項1ないし3に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯

1 本件実用新案登録第3098915号の請求項1ないし3に係る考案についての実用新案登録出願は、平成15年6月27日になされ、平成15年10月22日にその考案について実用新案権の設定登録がされた。

2 これに対し、平成20年6月24日に、請求人プロケア・エレクトロニク・インコーポレイティドより、本件実用新案登録第3098915号の請求項1ないし3に係る考案についての実用新案登録を無効とするとの審決を求める無効審判の請求がなされた。

3 平成20年9月29日に、被請求人林茂松より審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)が提出された。

4 平成20年11月25日に、請求人より審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)が提出された。

5 平成21年2月12日に、請求人及び被請求人よりそれぞれ口頭審理陳述要領書が提出されるとともに、第1回口頭審理が実施された。

6 平成21年3月10日に、被請求人より上申書が提出された。

7 平成21年4月3日に、請求人より上申書が提出された。

第2 本件考案
本件実用新案登録の請求項1ないし3に係る考案(以下「本件考案1」ないし「本件考案3」という。)は、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし3により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】 光ディスクの掃除、研磨、又はメンテナンスに使用される、修理機構(10)を有する光ディスクメンテナンス装置であって、前記修理機構(10)は、伝動部材(1)と、前記伝動部材(1)に配置される連接部材(3)と、前記連接部材(3)に配置される載置部材(4)とを備え、
前記伝動部材(1)は、2つの開口端を有するチューブ状に形成され、一の開口端の内縁部に係止溝(11)を有し、且つ前記開口端の外縁部にギヤ状の駆動部(12)を、前記外縁部を囲むように形成し、且つ前記伝動部材(1)の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設け、さらに、他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部(14)を設けており、
前記連接部材(3)は、カバー(31)を有し、前記カバー(31)の一面の、前記伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置に取り付け部(321)を外方へ突出形成し、前記取り付け部(321)には切り欠き(322)を形成し、前記切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)を形成し、前記係止部(32)の末端部に舌部(311)を形成し、さらに、前記カバー(31)の他の面に係止部(33)を形成しており、
前記伝動部材(1)と前記連接部材(3)との間に付勢部材(2)が配置されており、
前記載置部材(4)は、前記連接部材(3)の係止部(33)に対応する位置に係止溝(41)を形成し、且つ他端部に収納部(42)を形成し、前記収納部(42)の内縁部に操作部(43)を設けており、
前記載置部材(4)の収納部(42)内に修理部材(5)が収納されていることを特徴とし、
前記修理機構が自転しながら、光ディスク上に当接しつつ公転することによって、メンテナンスを実行し、光ディスクの傷ついた部分を研磨してその表面を平坦化して信号をピックアップできるように復元することを特徴とする、光ディスクメンテナンス装置。
【請求項2】 前記修理機構(10)の修理部材(5)として、目の精粗の異なるグラインディング・ホイール又は修理ピースのいずれか一種を使用すると共に、それぞれ異なるランクのメンテナンス用剤を合せて使用することを特徴とする、請求項1に記載の光ディスクメンテナンス装置。
【請求項3】 前記修理機構(10)がベース(6)に配置され、
前記ベース(6)は、電源スイッチ(611)、修理スイッチ(612)、及び掃除スイッチ(613)を具備するコントロール・パネル(61)と、光ディスクを載置する載置ベース(62)と、載置ベース(62)の周りに配設される少なくとも一つの取り付け部(63)とを有しており、
さらに、前記ベース(6)は、カバー(64)を配置し、前記カバー(64)の、前記ベース(6)の載置ベース(62)に対応する部位に弾力性を有する当接部材(641)を設けており、
前記修理機構が前記取り付け部(63)に装着されて駆動されることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の光ディスクメンテナンス装置。」

第3 請求人の主張の要点
請求人は、証拠方法として甲第1ないし10号証を提出し、以下に示す無効理由1及び無効理由2を主張している。

1 無効理由1
本件考案1ないし本件考案3は、甲第1ないし10号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、同法第37条第1項第2号の規定に該当し、無効とされるべきでる。

2 無効理由2
本件考案1は、要するに、下記(1)ないし(9)の点で明確でなく、本件考案1並びに本件考案1を引用する本件考案2及び本件考案3は、実用新案法第5条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、実用新案登録を受けることができないものであるから、同法第37条第1項第4号の規定に該当し、無効とされるべきである。

(1)本件考案1の「前記修理機構(10)は、伝動部材(1)と、前記伝動部材(1)に配置される連接部材(3)と、前記連接部材(3)に配置される載置部材(4)とを備え」との記載について

修理機構(10)の備える伝動部材(1)と連接部材(3)と載置部材(4)とは、単に「?に配置される」とのみ特定されており、具体的にどのように配置されるのか不明である。伝動部材(1)と連接部材(3)と載置部材(4)とが、実施例のように1つの軸方向に連結されていることは、本件考案1からは理解できない。(審判請求書第25ページ下から7行ないし第26ページ第3行)
なお、請求人は、上記記載に関し、弁駁書において、これらの部材名称は、当業者が一般的に用いる名称ではないから、名称のみを羅列しても、考案特定上必要な各々の形状及び位置関係を、想定できない。「配置される」は、極めて広い意味を包含するから一軸上に並んで配置される場合の他に、多様な方向に連結される場合も含まれる、とも主張している。(弁駁書第13ページ下から5行ないし下から2行)

(2)本件考案1の「前記伝動部材(1)は、2つの開口端を有するチューブ状に形成され、一の開口端の内縁部に係止溝(11)を有し、且つ前記開口端の外縁部にギヤ状の駆動部(12)を、前記外縁部を囲むように形成し、且つ前記伝動部材(1)の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設け」との記載における、「一の開口端」について

「一の開口端」の技術的意味が不明である。「一の開口端の内縁部に係止溝(11)を有し、且つ前記開口端の外縁部にギヤ状の駆動部(12)を、前記外縁部を囲むように形成し」の構成において、本件明細書段落【0017】及び図2を参照すると、係止溝(11)は「一の開口端の内縁部」というよりむしろチューブ状の壁の内面に延在し、駆動部(12)は「一の開口端の外縁部」というよりむしろチューブ状の壁の外面に形成されている。したがって、係止溝(11)及び駆動部(12)のいずれについても、一の開口端が開口である必然性はない。
また、「伝動部材(1)の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設け」る構成についても、仮に「一の開口端」が「開口端」でなく閉塞されていれば、その中央部に空洞を設ける、ということは一応理解できる。しかしながら、「開口端」の中央部に「中空状の取り付け部」を設けるということは、どういうことなのか理解できない。(審判請求書第26ページ第4行ないし第18行)

(3)本件考案1の「前記伝動部材(1)は、2つの開口端を有するチューブ状に形成され、一の開口端の内縁部に係止溝(11)を有し、且つ前記開口端の外縁部にギヤ状の駆動部(12)を、前記外縁部を囲むように形成し、且つ前記伝動部材(1)の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設け」との記載における、「伝動部材(1)の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設け」る点について

取り付け部(13)と他の構成要素との関係が十分に記載されていない点において、その技術的意味が不明である。本件明細書段落【0017】、【0021】、図1、図6を参照すると、取り付け部(13)は、ベース(6)への取り付けに用いられる部分と解されるが、本件考案1にはベース(6)は構成要素として含まれておらず、また、詳細な説明及び図面を参酌しても、ベース(6)の対応する取り付け部(63)についてはなんら形状等が特定されていないから、伝動部材(1)の取り付け部(13)を中空状とすることの技術的意味は不明である。(審判請求書第26ページ第19行ないし第27行)
なお、請求人は、上記記載に関し、弁駁書において、取り付け部(13)が何のために設けられているのか、不明である、とも主張している。(弁駁書第14ページ第11行ないし第21行)

(4)本件考案1の伝動部材(1)において、「さらに、他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部(14)を設けており」との記載における、「外方へ突出する」について

「外方へ突出する」の「外方」の意味は、明細書及び図面を参酌しても不明確である。(審判請求書第26ページ下から5行ないし下から4行)
なお、請求人は、上記記載に関し、弁駁書において、図2(b)及び図5(b)における受け取り部(14)は、ほぼ全体が伝動部材(1)の内部に収まり、先端中央部分のみが突出しており、本件考案1は、実施例と整合しない。「外方」といっても伝動部材(1)の軸方向に向かっての外方の場合も、径方向へ向かっての外方の場合もあるから不明であり、図2を見ても、受け取り部(14)は、ほぼ全体が伝動部材(1)の内部に収まっており、外方に突出しているのは先端中央部分のごく一部である、とも主張している。(弁駁書第14ページ下から11行ないし下から7行、及び第15ページ第3行ないし第7行)

(5)本件考案1の伝動部材(1)において、「さらに、他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部(14)を設けており」との記載における、「外方へ突出する受け取り部(14)」と、「取り付け部(13)」以外の他の構成要素との関係について

受け取り部(14)は、取り付け部(13)以外の他の構成要素との関係が記載されておらず、技術的意味が不明である。本件明細書段落【0017】、【0020】、図2、図5を参照すると、受け取り部(14)には付勢部材(2)が配置されると解されるが、本件考案1には付勢部材(2)との関係は全く記載されていない。(審判請求書第26ページ下から12行ないし下から6行)
なお、請求人は、上記記載に関し、弁駁書において、受け取り部(14)については、「取り付け部(13)に対応する」と記載されているのみであり、何を受け取るのか、全く不明である。また、受け取り部(14)が付勢部材(2)に関係することは全く読み取れない。本件明細書段落【0020】には、「付勢部材2を受け取り部14に配置し」と記載されているが、図5(b)を参照すると、付勢部材(2)は、受け取り部(14)における外方に突出した部分ではなく、伝動部材(1)の内部に収まった本体部分に配置されている。この点においても、「外方へ突出する受け取り部(14)」の技術的意味は不明である、とも主張している。(弁駁書第14ページ下から12行ないし下から11行、及び下から6行ないし最終行)

(6)本件考案1の「前記連接部材(3)は、カバー(31)を有し、前記カバー(31)の一面の、前記伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置に取り付け部(321)を外方へ突出形成し」との記載における「外方」について

「外方」の意味が、いずれの方向であるのか、本件明細書及び図面を参酌しても不明確である。また、受け取り部(14)における「外方」と同じ表現であるが、同じ方向を意味するのか否かも不明である。(審判請求書第26ページ下から3行ないし第27ページ第1行)

(7)「前記連接部材(3)は、カバー(31)を有し、前記カバー(31)の一面の、前記伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置に取り付け部(321)を外方へ突出形成し、前記取り付け部(321)には切り欠き(322)を形成し、前記切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)を形成し、前記係止部(32)の末端部に舌部(311)を形成し、さらに、前記カバー(31)の他の面に係止部(33)を形成しており」との記載について

連接部材(3)の取り付け部(321)については、「伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置」に形成、とのみ記載されており、取り付け部(321)と係止溝(11)との関係が不明確である。
取り付け部(321)における切り欠き(322)、係止部(32)及び舌部(311)については、これらの要素間の位置関係は一応明確であるが、それぞれどの様な形状や向きで連接部材(3)に設けられているのか、本件考案1からは理解できず、これらの要素と、「伝動部材(1)の係止溝(11)」との関係も不明確である。係止溝(11)は、伝動部材(1)における「一の開口端の内縁部」にあると記載されている。よって、連接部材(3)が、伝動部材(1)の「一の開口端」の側に配置されるのか、「他の開口端」の側に配置されるのか、本件考案1からは理解できない。(審判請求書第27ページ第2行ないし第12行)
なお、請求人は、上記記載に関し、弁駁書において、「切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)を形成し」については、本件明細書段落【0020】には、「係止部32の両側には切り欠き322を有し」と記載され、図3(b)からも一対の切り欠き(322)の間に1つの係止部(32)が形成されていると解され、切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)はなく、係止部(32)は「1つ」であるから、実施例と整合していない、とも主張している。(弁駁書第16ページ第1行ないし第5行)
さらに、請求人は、上記記載に関し、平成21年4月3日付け上申書において、「伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置」にあるのは、切り欠き(322)でも係止部(32)でもなく取り付け部(321)となっており、「伝動部材(1)の係止溝(11)」が、取り付け部(321)の何処と係合するのかまでは、本件考案1では特定されていない。図面を参酌すれば切り欠き(322)と係止部(32)の関係が明確になるとしても、連接部材(3)における切り欠き(322)、係止部(32)の位置や伝動部材(1)の係止溝(11)との対応関係が本件考案1に記載されていない以上、本件考案1は不明確である、とも主張している。(上記上申書第6ページ下から5行ないし第7ページ第9行)

(8)「前記伝動部材(1)と前記連接部材(3)との間に付勢部材(2)が配置されており」との記載について

伝動部材(1)と連接部材(3)との間の付勢部材(2)についても、どのように働くのか、本件考案1からは理解できない。(審判請求書第27ページ第13行ないし第14行)

(9)「前記載置部材(4)は、前記連接部材(3)の係止部(33)に対応する位置に係止溝(41)を形成し」との記載について

載置部材(4)の係止溝(41)は、「連接部材(3)の係止部(33)に対応する位置」に形成、とのみ記載されており、係止溝(41)と、連接部材(3)の係止部(33)の関係が不明確である。(審判請求書第27ページ第25行ないし第27行)

3 証拠方法
甲第1号証:特開昭63-20787号公報
甲第2号証:登録実用新案第3039735号公報
甲第3号証:特開昭61-126647号公報
甲第4号証:特許第3066714号公報
甲第5号証:特開平8-121444号公報
甲第6号証:特開2001-304215号公報
甲第7号証:特開昭62-239389号公報
甲第8号証:実願昭61-107342号(実開昭63-13482号)のマイクロフィルム
甲第9号証:特開昭63-46675号公報
甲第10号証:登録実用新案第3068746号公報

第4 被請求人の主張の要点
被請求人は、請求人の主張する無効理由1及び無効理由2に対し、下記のように反論している。

1 無効理由1に対して
本件考案1ないし本件考案3は、甲第1ないし10号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。

2 無効理由2に対して
本件考案1は明確である。その要点は、下記(1)ないし(6)のとおりである。

(1)「伝動部材(1)は、2つの開口端を有する」について

「『伝動部材(1)は、2つの開口端を有する』とは、文字通り伝動部材(1)が2つの開口端を有すると言う状態を述べたもので、その意味は明確である。」(答弁書第35ページ第9行ないし第10行)

(2)伝動部材(1)の開口端、取り付け部(13)について

「伝動部材1の一の開口端には、中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設けている。この取り付け部(13)には下方から回転支持軸(図示なし)が挿入され、伝動部材1、付勢部材2、連接部材3、載置部材4、修理部材5から成る修理機構10を支持する機能を有している。伝動部材1は、上記のとおり、係止溝(11)、取り付け部(13)、受け取り部(14)の他、チューブ状伝動部材1の半径方向の強度を確保するために取り付け部(13)から内周部に放射状に伸びる3個の補強材を備えた構造になっている。・・・。本件考案は、当然のことながら射出成形法を選択したもので、両端部が開放端であることは、製造工程が少なくコスト低減が可能な射出成形法によることを意味する。射出成形では、射出成形後、伝動部材1の両端部から金型を抜き出すために、両端部ともに開放端になっている。」(口頭審理陳述要領書第11ページ第5行ないし第22行)

(3)「他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部(14)」について

「請求項1には、『他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部(14)を設けており、』と記載しており、『外方』は当然のことながら『取り付け部(13)とこれに対応する受け取り部(14)を結ぶチューブ状伝動部材1の軸方向線上で伝動部材1の外周部端末より外方』を意味する。」(口頭審理陳述要領書第2ページ下から8行ないし下から4行)
「『外方へ突出する受け取り部(14)』は、『伝動部材(1)の外周端末より伝動部材(1)の軸方向外側に突出しているテーパー状の部分を有する受け取り部(14)』の意味である。(第1回口頭審理調書、陳述の要領、被請求人の3)
「『受け取り部(14)』自体は、受け取り部(14)の円柱状本体の外周部に付勢部材(2)を装着し、付勢部材(2)の底部を支持するとともに、中央部が台形状となって伝動部材(1)から突出し、連接部材(3)の中央部に設けられた台形状の孔に入り込むようになっており、付勢部材(2)により上下動が可能となっている。」(口頭審理陳述要領書第3ページ第3行ないし第7行)
「本件考案の光ディスクメンテナンス装置の運転中は、カバー(64)に装着されている当接部材(641)でディスクを押さえ、ディスクの裏面を修理部材(5)に圧接させることで、上の左図(当審注:図5(b)に対応。以下同様。)において受け取り部(14)が連接部材(3)と接触します。
上の左図において受け取り部(14)が連接部材(3)と接触すると、受け取り部(14)中央の突出部は連接部材(3)の中央部に設けられた台形状の孔に入り込んで連接部材(3)と接触し、伝動部材(1)と連接部材(3)との連結構造を強化する効果を有しています。
『受け取り部(14)』が『外方へ突出』しているのは、上記のとおり、連接部材(3)の中央部に設けられた台形状の孔に嵌り込んで、伝動部材(1)と連接部材(3)との連結構造を強化するためであります。
伝動部材(1)の受け取り部(14)の突出部と、突出部に対応する連接部材(3)の受け入れ空間を何れも円錐台状としているのは、受け取り部(14)の突出部と、突出部に対応する連接部材(3)の限られた領域での接触面積を増やして圧着を強化、安定化するためです。・・・。
本件考案の光ディスクメンテナンス装置では、光ディスクと修理部材5の摺接状態を安定化させ、修理部材(5)の研磨・補修効果を上げるため所定の圧力で光ディスクを押し下げています。従って、通常の研磨・補修状態では伝動部材(1)の受け取り部(14)と連接部材(3)は圧着しています。」(平成21年3月10日付け上申書第2ページ下から11行ないし第3ページ最終行)

(4)「伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置に取り付け部(321)を外方へ突出形成し」について

「上図(図3(b))から分かるとおり、『取り付け部(321)を外方へ突出形成』するの『外方』とは、連接部材3の円盤状カバー31の盤面に垂直で、連接部材3が連結される伝動部材1の軸方向に平行な方向を意味する。」(口頭審理陳述要領書第4ページ第5行ないし第8行)
「『取り付け部(321)を外方へ突出形成』は、『取り付け部(321)が、連接部材(3)の円盤状カバー(31)の盤面に垂直で、連結部材(3)(当審注:「連接部材(3)」の誤記と認める。)が連結される伝動部材(1)の軸方向に平行な方向に突出形成』の意味である。」(第1回口頭審理調書、陳述の要領、被請求人の3)
「『伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置』とは、伝動部材(1)の3箇所の係止溝(11)が形成する円周上の位置を意味する。連接部材(3)の一面では、伝動部材(1)の3箇所の係止溝(11)が形成する円周上と同一の円周上に取り付け部(321)が外方に形成され、円周状の取り付け部(321)に切り欠き(322)および切り欠き(322)の間の係止部(32)が形成される。」(口頭審理陳述要領書第5ページ下から6行ないし最終行)
「『前記伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置に取り付け部(321)を外方へ突出形成し』は、『伝動部材(1)の複数の係止溝(11)が形成する円周上の位置に取り付け部(321)を外方へ突出形成し』の意味である。」(第1回口頭審理調書、陳述の要領、被請求人の3)

(5)「前記切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)を形成」について

「上図(当審注:図3(b)及び図1の一部に対応。)には、円周状の取り付け部(321)に切り欠き(322)が形成され、切り欠き(322)の間には、複数の係止部(32)(実施例では3箇所)が形成されていることを明確に示しています。」(平成21年3月10日付け上申書第5ページ下から2行ないし第6ページ第1行)

(6)連接部材(3)と伝動部材(1)の開口端との関係について

「連接部材(3)が、伝動部材(1)の『一の開口端』の側に配置されるのか、『他の開口端』の側に配置されるのか、は図1,3、に各々明示されており、当業者であれば容易に理解できる筈である。」(答弁書第37ページ第15行ないし第17行)

第5 当審の判断
請求人は、無効理由として無効理由1及び無効理由2(上記第3の1及び2参照。)を主張しているところ、本件においては、事案の性質にかんがみ、まず、無効理由2について検討を行う。

1 無効理由2について

(1)本件考案1の「前記修理機構(10)は、伝動部材(1)と、前記伝動部材(1)に配置される連接部材(3)と、前記連接部材(3)に配置される載置部材(4)とを備え」との記載について

本件考案1には、「修理機構(10)は、伝動部材(1)と、前記伝動部材(1)に配置される連接部材(3)と、前記連接部材(3)に配置される載置部材(4)とを備え」と記載されていることから、「修理機構(10)」が、「伝動部材(1)と、前記伝動部材(1)に配置される連接部材(3)と、前記連接部材(3)に配置される載置部材(4)とを備え」ている点が明らかである。
本件考案1の「修理機構(10)は、伝動部材(1)と、前記伝動部材(1)に配置される連接部材(3)と、前記連接部材(3)に配置される載置部材(4)とを備え」るとの記載部分のみからは、請求人の主張のごとく「一軸上に並んで配置される場合の他に、多様な方向に連結される場合も含まれる」(弁駁書第13ページ下から5行ないし下から2行)としても、本件考案1の「修理機構が自転しながら」との記載からみて、伝動部材(1)と連接部材(3)と載置部材(4)とが、「多様な方向」、例えば、一軸上と垂直な方向に連結される場合には、修理機構の自転が妨げられることは明らかであること、及び本件明細書及び図面の記載からみて、実質上は、一軸上に並んで配置される場合を意味することが明らかである。

(2)本件考案1の「前記伝動部材(1)は、2つの開口端を有するチューブ状に形成され、一の開口端の内縁部に係止溝(11)を有し、且つ前記開口端の外縁部にギヤ状の駆動部(12)を、前記外縁部を囲むように形成し、且つ前記伝動部材(1)の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設け」との記載における、「一の開口端」について

本件考案1では、「伝動部材(1)は、2つの開口端を有するチューブ状に形成され」ているのであるから、本件考案1の「伝動部材(1)」が「2つの開口端」のうちの「一の開口端」を有していることが明らかである。
また、本件考案1において、「伝動部材(1)は、・・・、一の開口端の内縁部に係止溝(11)を有し、且つ前記開口端の外縁部にギヤ状の駆動部(12)を、前記外縁部を囲むように形成し、且つ前記伝動部材(1)の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設け」ている点を、図1(a)に照らすと、「一の開口端」において「伝動部材(1)の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)」が設けられていることは明らかである。
してみると、本件考案1の「一の開口端」は、その構成として明確である。

請求人は、「係止溝11及び駆動部12のいずれについても、『一の開口端』が『開口』である必然性はない」、「『開口端』の中央部に『中空状の取り付け部』を設けるということは、どういうことなのか理解できない」(審判請求書第26ページ第4行ないし第18行参照)と主張する。
しかしながら、「『一の開口端』が『開口』である必然性」の有無については、本件考案1の明確性自体に影響を及ぼすものではなく、「『開口端』の中央部に『中空状の取り付け部』を設ける」ことについては、図2(a)を参照すれば、取り付け部(13)から放射状に伸びる3個のリブ状の部材を備えた構造により実現できることが理解できるから、その主張は採用できない。

(3)本件考案1の「前記伝動部材(1)は、2つの開口端を有するチューブ状に形成され、一の開口端の内縁部に係止溝(11)を有し、且つ前記開口端の外縁部にギヤ状の駆動部(12)を、前記外縁部を囲むように形成し、且つ前記伝動部材(1)の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設け」との記載における、「伝動部材(1)の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設け」について

「中空状を呈する取り付け部(13)」は、本件考案1の「修理機構が自転しながら」との記載を図5(b)及び図6に照らすと、「取り付け部(13)」の中空状の部分には、修理機構(10)を自転させるための回転軸が挿入され、修理機構(10)を支持するものであることが理解できる。

(4)本件考案1の伝動部材(1)において、「さらに、他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部(14)を設けており」との記載における、「外方へ突出する」について
本件明細書段落【0017】には、「図2(a)と(b)に、伝動部材1の外見斜視図を示す。・・・、さらに、他の開口端の中央部の、取り付け部13に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部14を形成している。」と記載されているところ、広辞苑(第四版)を参照すると、「外方」は「そと側、外部」の意味とされ、「突出」は「丸1 突き破って出ること。まただしぬけに飛び出すこと。『地下ガスの-』 丸2 高く鋭く突き出ること。『-部』 丸3 ほかの水準にくらべて、突き出ていること。『-した軍事費』」の意味とされる(当審注:丸囲み数字は、「丸1」のように表記した。)から、「外方」の意味は、「伝動部材(1)の外形輪郭部より外側」と解することが自然である。
そのうえで、本件考案1の「伝動部材(1)」は「チューブ状」であることをふまえつつ、図5(b)を参照すると、チューブ状伝動部材(1)における中央部が伝動部材(1)の軸方向で該伝動部材(1)の外周部端末より外方へ突出していることが理解できる。
してみると、「他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部(14)を設け」との記載は、「他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、チューブ状伝動部材(1)の軸方向で該伝動部材(1)の外周部端末より外方へ突出する受け取り部(14)を設け」と解することができるから、不明確とまではいえない。

請求人も、「図2を見ても、受け取り部14は、ほぼ全体が伝動部材1の内部に収まっており、外方に突出しているのは先端中央部分のごく一部である」(弁駁書第15ページ第5行ないし第7行参照)と主張し、受け取り部(14)の先端中央部分が突出していることを理解できるのであるから、「外方へ突出する」の「外方」の意味が不明確である旨の主張は採用できない。

(5)本件考案1の伝動部材(1)において、「さらに、他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部(14)を設けており」との記載における、「外方へ突出する受け取り部(14)」と、「取り付け部(13)」以外の他の構成要素との関係について

本件考案1の「他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部(14)を設け」が、「他の開口端の中央部の、前記取り付け部(13)に対応する位置に、チューブ状伝動部材(1)の軸方向で該伝動部材(1)の外周部端末より外方へ突出する受け取り部(14)を設け」と解されることは、上記(4)で述べたとおりである。
そして、本件考案1の「伝動部材(1)と連接部材(3)との間に付勢部材(2)が配置されて」いるとの記載を、図5(b)、及び本件明細書段落【0020】の「前記の付勢部材2の付勢力によって連接部材3を常時上向きに突き上げる状態になるようにし」との記載に照らすと、連接部材(3)と伝動部材(1)とが軸方向において離れる方向に付勢されるよう、付勢部材(2)を設けていることは明らかであり、付勢部材(2)が収縮すると、すなわち、伝動部材(1)と連接部材(3)との間隔が狭まると、本件考案1の「外方へ突出する受け取り部(14)」、すなわち、「チューブ状伝動部材(1)の軸方向で該伝動部材(1)の外周端末より外方へ突出する受け取り部(14)」が、「連接部材(3)」と接触し得るものであることは明らかであるから、「外方へ突出する受け取り部(14)」と、「取り付け部(13)」以外の他の構成要素との関係が不明確とまではいえない。

請求人は、「受け取り部(14)」は、「取り付け部(13)」以外の他の構成要素との関係が記載されておらず、技術的意味が不明である旨、また、本件明細書段落【0017】、【0020】、図2、図5を参照すると、受け取り部(14)には付勢部材(2)が配置されると解されるが、本件考案1には付勢部材(2)との関係は全く記載されていない旨(審判請求書第26ページ第28行ないし第34行)主張するが、受け取り部(14)と連接部材(3)との関係が明らかであることは、上記したとおりであり、付勢部材(2)については、本件考案1では、「伝動部材(1)と連接部材(3)との間に付勢部材(2)が配置されて」いることで特定されており、本件考案1の「外方へ突出する受け取り部(14)」との関係で特定されているのではないから、上記の主張は採用できない。

(6)本件考案1の「前記連接部材(3)は、カバー(31)を有し、前記カバー(31)の一面の、前記伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置に取り付け部(321)を外方へ突出形成し」との記載における「外方」について

本件明細書段落【0018】には、「図3(a)と(b)に、連接部材3の平面図と、図3(a)におけるA-A箇所の断面図を示す。連接部材3は、カバー31を有し、カバー31の一面の、伝動部材1の係止溝11に対応する位置に外方へ突出する取り付け部321を形成し」と説明されており、それ以外の説明はなされていない。
してみると、本件考案1の「取り付け部(321)を外方へ突出形成し」における「外方」の意味は、図3(a)と(b)を参照することにより、「連接部材(3)のカバー(31)の盤面に垂直で、連接部材(3)が連結される伝動部材(1)の軸方向に平行な方向」と解することが相当であり、「取り付け部(321)を外方へ突出形成し」の意味は、「取り付け部(321)を、連接部材(3)のカバー(31)の盤面に垂直で、連接部材(3)が連結される伝動部材(1)の軸方向に平行な方向に突出形成し」と解することが相当であるから、不明確とはいえない。

(7)「前記連接部材(3)は、カバー(31)を有し、前記カバー(31)の一面の、前記伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置に取り付け部(321)を外方へ突出形成し、前記取り付け部(321)には切り欠き(322)を形成し、前記切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)を形成し、前記係止部(32)の末端部に舌部(311)を形成し、さらに、前記カバー(31)の他の面に係止部(33)を形成しており」との記載について

「取り付け部(321)を外方へ突出形成し」が、「取り付け部(321)を、連接部材(3)のカバー(31)の盤面に垂直で、連接部材(3)が連結される伝動部材(1)の軸方向に平行な方向に突出形成し」と解されることは、上記(6)で述べたとおりである。
そして、本件考案1では、「伝動部材(1)に配置される連接部材(3)」と記載され、「伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置に取り付け部(321)を外方へ突出形成し、前記取り付け部(321)には切り欠き(322)を形成し、前記切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)を形成し、前記係止部(32)の末端部に舌部(311)を形成し」と記載されていることからみて、伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置に、連接部材(3)のカバー(31)の盤面に垂直で、連接部材(3)が連結される伝動部材(1)の軸方向に平行な方向に突出形成された取り付け部(321)が形成され、伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置の取り付け部(321)に切り欠き(322)が形成されることで係止部(32)が形成され、その係止部(32)の末端部に舌部(311)が形成されたものであることが理解できる。
本件考案1の「切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)を形成し」との記載は、一見したところ明らかでないものの、切り欠きの間に複数の係止部が形成されるためには、係止部と係止部との間にも切り欠きが存在しなければならない(換言すれば、係止部と係止部との間に切り欠きが存在しなければ切り欠きが複数となり得ない)ことは明らかであり、このことは、本件明細書段落【0020】の「係止部32の両側には切り欠き322を有し」との記載、図3(b)及び図5(a)からも明らかであり、さらには、図1を参照すると、連接部材(3)の周方向に3つの係止部(32)が存在していることから、「切り欠き(322)の間に形成された係止部(32)を複数形成し」と解することができる。
また、連接部材(3)が、伝動部材(1)の「一の開口端」の側に配置されるのか、「他の開口端」の側に配置されるのかについては、本件明細書及び図面には、連接部材(3)が、外方へ突出する受け取り部(14)の設けられる「他の開口端」の側に配置される例のみ開示され、それ以外の例は開示されていないのであるから、「他の開口端」の側に配置されることは明らかである。
してみると、取り付け部(321)と係止溝(11)との関係、取り付け部(321)における切り欠き(322)、係止部(32)及び舌部(311)の構成、これらの要素と伝動部材(1)の係止溝(11)との関係が不明確とまではいえず、伝動部材(1)の開口端と連接部材(1)との関係も不明確とまではいえない。

(8)「前記伝動部材(1)と前記連接部材(3)との間に付勢部材(2)が配置されており」との記載について

明細書段落【0020】に、「図5(a)と(b)に、本考案による修理機構10の、組立終了後の側面図と図5(a)のB-B位置の断面図を示す。・・・また、前記の付勢部材2の付勢力によって連接部材3を常時上向きに突き上げる状態になるようにし、・・・。これで本考案による修理機構の組立が終了し」と記載されていることからみて、付勢部材(2)が、連接部材(3)と伝動部材(1)とが軸方向において離れる方向に作用することが明らかである。

(9)「前記載置部材(4)は、前記連接部材(3)の係止部(33)に対応する位置に係止溝(41)を形成し」との記載について

本件考案1では、「連接部材(3)に配置される載置部材(4)」と特定したうえで、「載置部材(4)は、前記連接部材(3)の係止部(33)に対応する位置に係止溝(41)を形成し」と特定しているのであるから、連接部材(3)に載置部材(4)を配置するために、「載置部材(4)は、前記連接部材(3)の係止部(33)に対応する位置に係止溝(41)を形成し」ていることが明らかである。
してみると、係止溝(41)と、連接部材(3)の係止部(33)の関係が不明確とはいえない。

(10)無効理由2についてのまとめ

上記(1)ないし(9)で述べたとおりであるから、本件考案1が明確でないとすることはできない。
また、本件考案1を引用する本件考案2及び本件考案3についても、明確でないとすることはできない。
以上のとおりであるので、本件考案1ないし本件考案3は実用新案法第5条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
よって、本件考案1ないし本件考案3についての実用新案登録は、同法第37条第1項第4号の規定に該当しないから、無効とすることはできない。

2 無効理由1について

(1)甲号証の記載内容
請求人が提出した甲第1ないし10号証のうち、甲第1号証には以下の事項が記載されている。

ア 甲第1号証
(ア)第1ページ右欄下から3行ないし第2ページ上左欄第1行
「この発明は、例えば、ディジタルオーディオディスク(商品名コンパクトディスク)、光ディスクなどに付着している塵埃や指紋などの汚れを効果的に拭き取るディスククリーナに関する。」

(イ)第2ページ下右欄第13行ないし第3ページ下左欄最終行
「第1図ないし第3図において、このディスククリーナは、本体ケース1の上面に凹設されたディスク載置面2にディスク3を置き、ディスク3は静止固定させたままで、その上面を清掃体4で拭いて清掃する。
清掃体4は、本体ケース1の上面全体を覆い軸5まわりに開閉回動自在な蓋6の内面上に支持されており、本体ケース1側に設けられた駆動機構7によって、蓋6が閉じられた状態でのみ回転駆動される。すなわち、スイッチボタン24が蓋6に装着されるが、蓋6を閉じてはじめて本体ケース1内に設けた駆動スイッチをオン操作できるようにしてある。
駆動機構7は、本体ケース1内に電池9を電源とするモータ10を備え、ディスク載置面2の中央から駆動ギヤ8を突出してモータ10の動力を駆動ギヤ8にベルト伝動する。ベルト伝動は、モータ10の軸上のウオーム11に噛合しているウオームギヤ12と駆動ギヤ8とにわたってタイミングベルト13を掛けてなる。駆動ギヤ8は本体ケース1の内面上に垂直に固定されたギヤ軸14まわりに回転自在に支持されている。
蓋6の内面上には、前記駆動ギヤ8から回転を受けて清掃体4を公転させながら自転させるための清掃体回転機構15を装備している。
この清掃体回転機構15は、蓋6の内面の略中央部にねじ16で固定されたプラスチック製の太陽ギヤ17と、プラスチック製の回転盤18と、該回転盤18の上面中央から一体に突設した遊星ギヤ19と、太陽ギヤ17と遊星ギヤ19に掛けたタイミングベルト20と、回転盤18を太陽ギヤ17の中心、すなわち公転中心O1のまわりに回転支持する金属製の支持プレート21などからなる。公転中心O1は蓋6を閉じたときディスク3の中心線上に位置する。支持プレート21はその基端を太陽ギヤ17上に回転自在に挿通し、その先端に支持ピン22を下向きに突設してこのピン22に前記回転盤18の遊星ギヤ19を回転自在に挿通支持している。
清掃体回転機構15は前述したように駆動ギヤ8によって駆動されるため、回転盤18の外周縁に入力ギヤ23を形成し、蓋6を閉じたとき該入力ギヤ23が駆動ギヤ8と噛合するようにしている。
第3図において、駆動ギヤ8が反時計方向Aに回転するとき、回転盤18は支持ピン22まわりに時計方向Bに自転する。また回転盤18と一体の遊星ギヤ19も時計方向Bに回転し、タイミングベルト20を相対回転させながら回転盤18を反時計方向Cへ公転させる。つまり、回転盤18は自転方向と公転方向を逆向きにする。
回転盤18の下面側に清掃体4が清掃体装着プレート25をもって装着される。清掃体装着プレート25は、回転盤18の下面中央から突出した前記支持ピン22の下端に上下動自在にかつ回り止め状に挿通して抜け止め状に支持される。そして、清掃体装着プレート25と回転盤18との間にはコイルばねからなる第1弾性体26を介装し、この第1弾性体26の弾力性で清掃体装着プレート25を支持ピン22上で常に下向きに押し下げ付勢している。清掃体4は、その装着プレート25の下面側に装着され、蓋6を閉じたとき前記第1弾性体26の押し下げ付勢力を受けてディスク3の面上に所定の面圧で接当するように設定される。
築3図に示すように回転盤18と清掃体装着プレート25との対向面間において、第1弾性体26はその円周方向に等間隔おきに配置される。」

(ウ)第3ページ下右欄第1行ないし第4行上左欄第5行
「回転盤18はこの下面の外周縁に沿って第1弾性体26の外周を囲む囲繞壁27を形成する一方、清掃体装着プレート25もこの上面外周縁に沿って囲繞壁28を形成するが、清掃体装着プレート25の囲繞壁28は回転盤18の囲繞壁27の内径よりも小径に形成して該囲繞壁27の内部にはまり込む形に形成している。そして、清掃体装着プレート25が第1弾性体26の弾力性で回転盤18から最も離間する状態でも清掃体装着プレート25側の囲繞壁28の上端28aが回転盤18の囲繞壁27の下端27aから外れ出ることなくそれら上下端28a・27aどうしが重合する状態となるように設定している。第2図においてその上下端28a・27aの重合量Lを示している。
このように囲繞壁27・28を構成することによって、回転盤18と清掃体装着プレート25との対向面間に塵埃などが侵入したり、第1弾性体26が回転盤18または清掃体装着プレート25と擦れることによって発生する粉塵がディスク3の上に落ちたりする不具合をもなくすることができる。また、回転盤18と清掃体装着プレート25との対向面間が悪戯にドライバーなどでこじあけられたりするような危惧もなくなる。
回転盤18の囲繞壁27はこの外周に前記入力ギヤ23を刻設して駆動伝達手段に兼用している。」

(エ)第4ページ上左欄第6行ないし第4ページ下左欄第2行
「清掃体4は環状に形成された第2弾性体30の下面側に清掃層31を形成してなる。第2弾性体30としては発泡プラスチック、スポンジゴムなどを用い、前記第1弾性体26の弾力性よりも強く設定しである。清掃層31としては、例えば、立毛部を有する多孔質ウレタンシート、あるいは羊皮などが用いられ、これを第2弾性体30の下面にはり合わせている。
この清掃体4は前記清掃体装着プレート25の下面側に着脱自在に装着するが、この脱着操作が簡易に行えるように第2弾性体30の上面にプラスチック製の清掃体ベース32をはり合わせ、この清掃体ベース32を清掃体装着プレート25の下面に対しバヨネット結合手段でもって着脱自在に接合している。バヨネット結合手段は、第3図および第4図に示すように清掃体装着プレート25の下面に係合爪33を突設し、清掃体ベース32に該係合爪33が嵌合する溝34を設けて、清掃体ベース32を回転しながら係合爪33を溝34にはめ込ませる。また清掃体ベース32の回り止めを確実にするために清掃体装着プレート25に弾性変形自在な節度アーム35を設け、清掃体ベース32に該アーム35の先端の突起35aがバヨネット結合と同時に係合する凹部36を設けてある。
このように清掃体装着プレート25に装着された清掃体4は、前記清掃体回転機構15によって太陽ギヤ17の中心まわりに公転しながら支持ピン22まわりに自転する。例えば、太陽ギヤ17と遊星ギヤ19のギヤ比をおよそ2.3:1に設定することにより、第5図に示すように軌跡Pのサイクロイド曲線を描いてディスク3の面を拭き取る。このとき、第6図(a)に示すようにディスク3面上を摺接する清掃体4は、第6図(b)に示すように第2弾性体30をたわみ、清掃層31と清掃体装着プレート25との間で時間的ずれを生ぜしめて拭い取り効果を向上させる。」

(オ)第4ページ下左欄第8行ないし下右欄第8行
「〔別実施例〕
上記実施例では回転盤18と清掃体装着プレート25との対向面間において、回転盤18および清掃体装着プレート25の各外周縁に沿って形成した囲繞壁27・28で複数個の第1弾性体26の外周を共通して囲むようにしてなるが、これに代えて、第7図に示すように第1弾性体26個々にそれぞれの外周を囲む囲繞壁27・28を第1弾性体26の数だけ独立配置させて設けるもよい。
また、第1弾性体26としては、第8図に示すように回転盤18と清掃体装着プレート25との対向面間に支持ピン22まわりを囲む形のコイルばねを一個だけ設けるものであってもよい。
さらに、回転盤18の囲繞壁27の外周に入力ギヤ23を設けてこれを直接駆動ギヤ8に噛合させることによって囲繞壁27を駆動伝達手段に兼用してなるが、これに代えて、回転盤18と駆動ギヤ8とにフリクションベルトを掛けて伝動するようにしてもよく、この場合は回転盤18の囲繞壁27の外周面がベルト巻き付け面たる駆動伝達手段として兼用されることになる。」

(カ)第4ページ下右欄下から6行ないし下から3行
「また、清掃体4は清掃体装着プレート25に着脱自在に装着してあるので、清掃体4の汚れなどに伴いこの交換が行えるという利点もある。」

(キ)「回転盤18はこの下面の外周縁に沿って第1弾性体26の外周を囲む囲繞壁27を形成する」(上記摘記事項(ウ):第3頁下右欄第1行ないし第2行)との記載、第1図、第4図及び第8図からみて、回転盤18が1つの開口端を有する筒状に形成されていることが理解できる。

(ク)第1図、第4図及び第8図からみて、回転盤18の中央部に支持ピン22が挿通される中空状部分が設けられていることが理解できる。

(ケ)上記(キ)及び(ク)の認定事項、並びに第1図、第4図及び第8図からみて、回転盤18の開口端の第1弾性体26よりも中央部側の支持ピン22を取り囲む位置に円周壁が設けられていることが理解できる。

(コ)甲第1号証に記載された発明の認定
上記(ア)ないし(カ)の摘記事項及び上記(キ)ないし(ケ)の認定事項を、技術常識を勘案しつつ本願考案に照らしてして整理すると、甲第1号証には、次の考案(以下「甲1考案」、「甲1考案の2」という。)が記載されていると認められる。

<甲1考案>
「光ディスクの清掃に使用されるディスククリーナであって、
回転盤18と、前記回転盤18に配置される清掃体装着プレート25と、前記清掃体装着プレート25に配置される清掃体ベース32とを備え、
前記回転盤18は、該回転盤18の下面の外周縁に沿って第1弾性体26の外周を囲む囲繞壁27が形成された1つの開口端を有する筒状に形成され、且つ前記回転盤18の外周縁に入力ギヤ23を形成し、且つ前記回転盤18の中央部に支持ピン22が挿通される中空状部分を設け、さらに、前記1つの開口端の前記第1弾性体26よりも中央部側の支持ピン22を取り囲む位置に円周壁を設けており、
前記清掃体装着プレート25は、該プレート25の上面外周縁に沿って囲繞壁28を前記回転盤18の囲繞壁27の内部にはまり込む形に形成し、さらに、該プレート25の下面に係合爪33を形成しており、
前記回転盤18と前記清掃体装着プレート25との間に前記第1弾性体26が配置されており、
前記清掃体ベース32は、前記清掃体装着プレート25の係合爪33に嵌合する溝34を形成し、且つ前記清掃体ベース32の下面に清掃体4をはり合わせており、
前記回転盤18と前記清掃体装着プレート25と前記清掃体ベース32とが公転しながら、光ディスク面上を摺接しつつ自転することによって、清掃を実行し、光ディスクを清掃する、ディスククリーナ。」

<甲1考案の2>
「甲1考案のディスククリーナにおいて、本体ケース1は、駆動スイッチと、ディスク載置面2を有しており、
さらに、前記本体ケース1は、蓋6を配置し、前記蓋6はスイッチボタン24を有している、甲1考案のディスククリーナ。」

(2)対比・判断
ア 本件考案1について
(ア)対比
本件考案1と甲1考案とを対比する。
甲1考案の「回転盤18」、「清掃体装着プレート25」、「清掃体ベース32」は、それぞれ、本件考案1の「伝動部材(1)」、「連接部材(3)」、「載置部材(4)」に相当する。甲1考案の「回転盤18と、前記回転盤18に配置される清掃体装着プレート25と、前記清掃体装着プレート25に配置される清掃体ベース32とを備え」たものは、本件考案1の「修理機構(10)」に相当する。
そうすると、甲1考案の「光ディスクの清掃に使用されるディスククリーナ」は、「光ディスクの掃除に使用される、修理機構を有する光ディスクメンテナンス装置」という限りにおいて、本件考案1の「光ディスクの掃除、研磨、又はメンテナンスに使用される、修理機構(10)を有する光ディスクメンテナンス装置」と共通する。
甲1考案の「回転盤18の下面の外周縁に沿って第1弾性体26の外周を囲む囲繞壁27が形成された1つの開口端を有する筒状に形成され」は、「開口端を有する筒状に形成され」という限りにおいて、本件考案1の「2つの開口端を有するチューブ状に形成され」と共通する。
甲1考案の「回転盤18の外周縁に入力ギヤ23を形成し」は、「伝動部材の外縁部にギヤ状の駆動部を、前記外縁部を囲むように形成し」という限りにおいて、本件考案1の「一の」「開口端の外縁部にギヤ状の駆動部(12)を、前記外縁部を囲むように形成し」と共通する。
甲1考案の「回転盤18の中央部に支持ピン22が挿通される中空状部分を設け」は、本件考案1の「伝動部材の中央部に中空状を呈する取り付け部(13)を設け」に相当する。
甲1考案の「清掃体プレート25は、該プレート25の上面外周縁に沿って囲繞壁28を前記回転盤18の囲繞壁27の内部にはまり込む形に形成し」は、「連接部材は、カバーを有し、前記カバーの一面の、伝動部材の内縁部に対応する位置に壁部材を外方へ突出形成し」という限りにおいて、本件考案1の「連接部材(3)は、カバー(31)を有し、前記カバー(31)の一面の、前記伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置に取り付け部(321)を外方へ突出形成し、前記取り付け部(321)には切り欠き(322)を形成し、前記切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)を形成し、前記係止部(32)の末端部に舌部(311)を形成し」と共通する。
甲1考案の「プレート25の下面に係合爪33を形成し」は、本件考案1の「カバー(31)の他の面に係止部(33)を形成し」に相当する。
甲1考案の「第1弾性体26」は、本件考案1の「付勢部材(2)」に相当する。
甲1考案の「清掃体装着プレート25の係合爪33に嵌合する溝34を形成し」は、本件考案1の「連接部材(3)の係止部(33)に対応する位置に係止溝(41)を形成し」に相当する。
甲1考案の「清掃体ベース32の下面に清掃体4をはり合わせて」は、「他端部に修理部材を設け」という限りにおいて、本件考案1の「他端部に収納部(42)を形成し、前記収納部(42)の内縁部に操作部(43)を設けており、前記載置部材(4)の収納部(42)内に修理部材(5)が収納されて」と共通する。
甲1考案の「前記回転盤18と前記清掃体装着プレート25と前記清掃体ベース32とが公転しながら、光ディスク面上を摺接しつつ自転する」は、本件考案1の「前記修理機構が自転しながら、光ディスク上に当接しつつ公転する」に相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。

<一致点>
「光ディスクの掃除に使用される、修理機構を有する光ディスクメンテナンス装置であって、前記修理機構は、伝動部材と、前記伝動部材に配置される連接部材と、前記連接部材に配置される載置部材とを備え、
前記伝動部材は、開口端を有する筒状に形成され、前記伝動部材の外縁部にギヤ状の駆動部を、前記外縁部を囲むように形成し、且つ伝動部材の中央部に中空状を呈する取り付け部を設け、
前記連接部材は、カバーを有し、前記カバーの一面の、伝動部材の内縁部に対応する位置に壁部材を外方へ突出形成し、さらに、前記カバーの他の面に係止部を形成しており、
前記伝動部材と前記連接部材との間に付勢部材が配置されており、
前記載置部材は、前記連接部材の係止部に対応する位置に係止溝を形成し、且つ他端部に修理部材を設けており、
前記修理機構が自転しながら、光ディスク上に当接しつつ公転する、光ディスクメンテナンス装置。」の点。

<相違点1>
伝動部材について、
本件考案1は、「2つの開口端を有するチューブ状に形成され」、一の開口端の「外縁部にギヤ状の駆動部(12)」を形成しているのに対し、
甲1考案は、1つの開口端を有する筒状に形成され、伝動部材としての回転盤18の外周縁に、ギヤ状の駆動部としての入力ギヤ23が設けられている点。

<相違点2>
伝動部材について、
本件考案1は、「他の開口端の中央部の、取り付け部(13)に対応する位置に、外方へ突出する受け取り部(14)を設けて」いるのに対し、
甲1考案は、1つの開口端の第1弾性体26よりも中央部側の支持ピン22を取り囲む位置に円周壁を設けている点。

<相違点3>
伝動部材の構造と、連接部材のカバーの一面の、伝動部材の内縁部に対応する位置に外方に突出形成された壁部材の構造に関し、
本件考案1は、伝動部材の「一の開口端の内縁部に係止溝(11)を有し」、また、「伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置」に突出形成された「取り付け部(321)」であって、「前記取り付け部(321)には切り欠き(322)を形成し、前記切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)を形成し、前記係止部(32)の末端部に舌部(311)を形成」しているのに対し、
甲1考案は、伝動部材の「一の開口端の内縁部に係止溝(11)」を有しておらず、また、連接部材のカバーの一面の、伝動部材の内縁部に対応する位置に突出形成された壁部材には、切り欠きが形成されておらず、ひいては、前記切り欠きの間に複数の係止部が形成されておらず、前記係止部の末端部に舌部が形成されていない点。

<相違点4>
本件考案1は、載置部材の「他端部に収納部(42)を形成し、前記収納部(42)の内縁部に操作部(43)を設けており、前記載置部材(4)の収納部(42)内に修理部材(5)が収納されている」のに対し、
甲1考案では、載置部材としての清掃体ベース32の下面、すなわち他端部に修理部材としての清掃体4がはり合わされており、収納部は有しておらず、また、操作部が設けられているかは不明な点。

<相違点5>
本件考案1の「光ディスクメンテナンス装置」は、「光ディスクの掃除、研磨、又はメンテナンスに使用」され、「メンテナンスを実行し、光ディスクの傷ついた部分を研磨してその表面を平坦化して信号をピックアップできるように復元する」のに対し、
甲1考案のディスククリーナは、光ディスクの清掃に使用される点。

(イ)相違点についての判断

(イ-1)相違点1について
甲第1号証の第1図をみると、入力ギヤ23が、回転盤18の1つの開口とは反対側の端部にも及んでいることが窺える。また、この入力ギヤ23を回転盤18の外周縁すなわち外縁部に設ける際に、回転盤の軸方向におけるどの位置に設けるかは、入力ギヤ23と噛み合うギヤの配置関係等をふまえ、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
甲1考案の筒状の部材としての「回転盤18」を、2つの開口端を有するものとするかどうかは、回転盤の強度や重さ、適用する製造方法に応じて当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
してみると、甲1考案の「回転盤18」を2つの開口端を有するチューブ状とするとともに、一の開口端の外縁部にギヤ状の駆動部を設けることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。

(イ-2)相違点2について
甲1考案では、「1つの開口端の第1弾性体26よりも中央部側の支持ピン22を取り囲む位置に円周壁」が設けられている。この「円周壁」は、甲第1号証の第1図、第2図、第4図及び第8図の配置関係からみて、回転盤18と清掃体装着プレート25との軸方向の間隔が狭まると、清掃体プレート25に接触することが理解できる。そうすると、甲1考案は、「円周壁」が「清掃体プレート25」に接触し得る点において、本件考案1の「外方へ突出する受け取り部(14)」が「連接部材(3)」と接触し得る(上記第5の1(5)参照。)点と機能が共通する。
そして、甲1考案において、「円周壁」を、回転盤18の軸方向で囲繞壁27の端末より外方へ突出させるかどうかは、回転盤18と清掃体装着プレート25との軸方向の間隔をどの程度狭めたときに、回転盤18の「円周壁」を清掃体装着プレート25に接触させるか等をふまえ、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
甲1考案における、「1つの開口端の第1弾性体26よりも中央部側の支持ピン22を取り囲む位置」に設けられた「円周壁」と、「回転盤18の中央部」の「支持ピン22が挿通される中空状部分」とは、甲第1号証の第1図、第4図及び第8図からみて、支持ピン22を中心としている点で対応しているといえ、かつ、甲1考案の「第1弾性体26よりも中央部側の円周壁」を、どの程度の中央部側とするかは、他の部材との配置関係等をふまえ当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
甲1考案の「1つの開口端」が、本件考案1のごとく「他の開口端」となることは、甲1考案の「回転盤18」を、2つの開口端を有するチューブ状とすること(上記(イ-1)「相違点1についての判断」を参照。)に伴って、当然なし得る事項にすぎない。
してみると、甲1考案において相違点2に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。

被請求人は、以下を主張する。
「『受け取り部(14)』自体は、・・・、中央部が台形状となって伝動部材(1)から突出し、連接部材(3)の中央部に設けられた台形状の孔に入り込むようになって」いる。(口頭審理陳述要領書第3ページ第3行ないし第7行)
「本件考案の光ディスクメンテナンス装置の運転中は、・・・受け取り部(14)が連接部材(3)と接触します。
上の左図(当審注:図5(b)に対応。)において受け取り部(14)が連接部材(3)と接触すると、受け取り部(14)中央の突出部は連接部材(3)の中央部に設けられた台形状の孔に入り込んで連接部材(3)と接触し、伝動部材(1)と連接部材(3)との連結構造を強化する効果を有しています。『受け取り部(14)』が『外方へ突出』しているのは、上記のとおり、連接部材(3)の中央部に設けられた台形状の孔に嵌り込んで、伝動部材(1)と連接部材(3)との連結構造を強化するためであります。
伝動部材(1)の受け取り部(14)の突出部と、突出部に対応する連接部材(3)の受け入れ空間をいずれも円錐台状としているのは、受け取り部(14)の突出部と、突出部に対応する連接部材(3)の限られた領域での接触面積を増やして圧着を強化、安定化するためです。・・・
本件考案の光ディスクメンテナンス装置では、光ディスクと修理部材5の摺接状態を安定化させ、修理部材(5)の研磨・補修効果を上げるため所定の圧力で光ディスクを押し下げています。従って、通常の研磨・補修状態では伝動部材(1)の受け取り部(14)と連接部材(3)は圧着しています。」(平成21年3月10日付け上申書第2ページ下から11行ないし第3ページ最終行)
しかしながら、受け取り部(14)の突出部と、その突出部に対応する連接部材(3)の受け入れ空間とによる圧着という主張は、本件考案1で特定された事項に基づくものではないのみならず、本件明細書にも記載されていないのであるから、採用できない。

(イ-3)相違点3について
本件考案1において、伝動部材の構造と、連接部材のカバーの一面の、伝動部材の内縁部に対応する位置に外方に突出形成された壁部材の構造とについては、それぞれ、伝動部材を、「一の開口端の内縁部に係止溝(11)を有し」と特定し、壁部材を、「伝動部材(1)の係止溝(11)に対応する位置」に突出形成された「取り付け部(321)」であって、「前記取り付け部(321)には切り欠き(322)を形成し、前記切り欠き(322)の間に複数の係止部(32)を形成し、前記係止部(32)の末端部に舌部(311)を形成」したと特定している。
上記のごとく特定された本件考案1からは、係止部(32)の末端部に形成された舌部(311)と、伝動部材(1)の一の開口端の内縁部に設けられた係止溝(11)との係合関係までは特定されていないものの、その係合関係は、図5(b)を参照すると、前記舌部(311)と、前記係止溝(11)によって形成された係止面(すなわち、溝(11)の底面と、伝動部材(1)における溝の形成されていない箇所の内周面とを繋いで形成される段差面により形成される面)とが係合することが理解できる。
しかしながら、部材同士の係合構造として、一方の部材に切り欠きを設け、その切り欠きの間に係止部を形成し、該係止部の末端部に舌部を形成し、他方の部材に、一方の部材の舌部と係合する係止面を設けることは、以下に示すように周知の事項である。
例えば、甲第4号証の段落【0018】ないし【0025】、図1、図3を参照すると、一方の部材の切り欠きとしての「切れ込み部29」、係止部としての「弾性片30」、舌部としての「係合突起24」が設けられ、他方の部材の係止面としての「係止面27」が設けられている。
また、甲第5号証の請求項1、図1及び図2を参照すると、一方の部材の切り欠きとしての「スリット」、係止部としての「帯状の基板」、舌部としての「鉤」が設けられ、他方の部材の係止面としての、前記「鉤」と係合する「被係止具」の面が設けられている。
また、例えば、特開2003-156021号公報の段落【0011】ないし【0013】、図2を参照すると、一方の部材の切り欠きとしての「弾性ツメ13」の両側の切れ込み、係止部としての「弾性ツメ13」、舌部としての「凸部12」が設けられ、他方の部材の係止面を構成するための「嵌合溝22」が設けられている。
そして、甲第1号証の第3図及び第4図を参照すると、清掃体装着プレート25の囲繞壁28の外周側に凸部が設けられ、回転盤18の囲繞壁27の内周側に設けられた凹部に係合することが窺えること、及び、上記周知の事項をふまえると、甲1考案の囲繞壁27を有する回転盤18と、該回転盤18の囲繞壁27の内部にはまり込む形に、清掃体装着プレート25の囲繞壁28が設けられる清掃体装着プレート25との配置関係において、清掃体装着プレート25の囲繞壁28に、切り欠きを設け、その切り欠きの間に係止部を形成し、該係止部の末端部に舌部を形成するとともに、回転盤18の囲繞壁27に、前記舌部と係合する係止面を形成することは、当業者がきわめて容易になし得たことである。
その際、舌部と係合するための係止面の形成を、回転盤18の囲繞壁27の一端の内縁部を含めて溝を形成することにより行うことは、甲1考案においては、回転盤18と清掃体装着プレート25との軸方向の移動を可能とする必要があるのであるから、そのために当業者が適宜なし得る事項にすぎない。また、係止部を複数とすることは、回転盤18と清掃体装着プレート25との結合強度をふまえ、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
してみると、甲1考案において相違点3に係る構成とするとは、当業者がきわめて容易になし得たことである。

(イ-4)相違点4について
甲1号証(上記摘記事項(エ):第4ページ上左欄第14行ないし上右欄第5行)には、「この清掃体4は前記清掃体装着プレート25の下面側に着脱自在に装着するが、この脱着操作が簡易に行えるように第2弾性体30の上面にプラスチック製の清掃体ベース32をはり合わせ、この清掃体ベース32を清掃体装着プレート25の下面に対しバヨネット結合手段でもって着脱自在に接合している。バヨネット結合手段は、第3図および第4図に示すように清掃体装着プレート25の下面に係合爪33を突設し、清掃体ベース32に該係合爪33が嵌合する溝34を設けて、清掃体ベース32を回転しながら係合爪33を溝34にはめ込ませる。」と記載されていることから、清掃体ベース32を回転させることによって、清掃体ベース32を清掃体装着プレート25の下面に対し着脱自在に装着することが理解できる。
ここで、キャップや蓋等の平板状部材を回転操作により着脱するのに、その回転操作を行うための操作部を平板状部材の中心部に設けることは、周知の事項(例えば、特開平11-352580号公報の【0022】、【0023】、特開平11-273648号公報の図7、図10を参照。)にすぎず、さらに、甲第1号証の第1図、第2図及び第4図を参照すると、清掃体ベース32の中心部が清掃体装着プレート25側に窪んでおり、この窪みにコインやドライバ等を挿入することで清掃体ベース32を回転し得ることも窺える。
また、本件考案1の清掃体4を清掃体ベース32に設けるのに、収納部を用いるかどうかは、清掃体4の安定性や取り付け強度、清掃体4を清掃体ベース32に取り付ける際の位置合わせの簡便性等をふまえて、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
してみると、甲1考案において相違点4に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。

(イ-5)相違点5について
光ディスクのメンテナンスとして、光ディスクの傷を研磨することは、従来周知の事項にすぎない(例えば、甲第2号証の段落【0028】、図11、甲第3号証の特許請求の範囲、第3ページ下左欄第4行ないし下右欄第5行を参照のこと。)。
してみると、甲1考案の光ディスクメンテナンス装置としてのディスククリーナを、清掃に加え、研磨又はメンテナンスに使用し、メンテナンスを実行することで、光ディスクの傷ついた部分を研磨してその表面を平坦化して信号をピックアップできるように復元することは、当業者がきわめて容易になし得たことである。

(ウ)本件考案1の効果について
本件考案1の効果についてみても、甲1考案及び周知の事項から当業者が十分予測できる範囲内のものであって、顕著なものとはいえない。

(エ)まとめ
したがって、本件考案1は、甲1考案及び周知の事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

イ 本件考案2について
(ア)対比
本件考案2は、本件考案1記載の光ディスクメンテナンス装置において、「前記修理機構(10)の修理部材(5)として、目の精粗の異なるグラインディング・ホイール又は修理ピースのいずれか一種を使用すると共に、それぞれ異なるランクのメンテナンス用剤を合せて使用することを特徴とする」という限定を付すものである。
そこで、本件考案2と甲1考案とを対比すると、両者は、前記ア(ア)で示した点で一致し、前記ア(ア)で示した相違点1ないし相違点5に加え、以下の相違点6で相違する。

<相違点6>
本件考案2は、「修理機構(10)の修理部材(5)として、目の精粗の異なるグラインディング・ホイール又は修理ピースのいずれか一種を使用すると共に、それぞれ異なるランクのメンテナンス用剤を合せて使用する」ものであるのに対し、甲1考案は、そのようなものではない点。

(イ)相違点6についての判断
光ディスクのメンテナンスとして、修理ピースやグラインディングホイールを用いて光ディスクの傷を研磨することは、従来周知の事項にすぎない(例えば、甲第2号証の段落【0028】、図11、甲第3号証の特許請求の範囲、第3ページ下左欄第4行ないし下右欄第5行を参照のこと。)。
また、研磨の際に、目の精粗の異なるグラインディングホイールやそれぞれ異なるランクのメンテナンス用剤を用いることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
してみると、甲1考案において、目の精粗の異なるグラインディング・ホイール又は修理ピースのいずれか一種を使用すると共に、それぞれ異なるランクのメンテナンス用剤を用いることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。

(ウ)本件考案2の効果について
本件考案2の効果についてみても、甲1考案及び周知の事項から当業者が十分予測できる範囲内のものであって、顕著なものとはいえない。

(エ)まとめ
したがって、本件考案2は、甲1考案及び周知の事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

ウ 本件考案3について
(ア)対比
本件考案3は、本件考案1又は本件考案2記載の光ディスクメンテナンス装置において、「前記修理機構(10)がベース(6)に配置され、
前記ベース(6)は、電源スイッチ(611)、修理スイッチ(612)、及び掃除スイッチ(613)を具備するコントロール・パネル(61)と、光ディスクを載置する載置ベース(62)と、載置ベース(62)の周りに配設される少なくとも一つの取り付け部(63)とを有しており、
さらに、前記ベース(6)は、カバー(64)を配置し、前記カバー(64)の、前記ベース(6)の載置ベース(62)に対応する部位に弾力性を有する当接部材(641)を設けており、
前記修理機構が前記取り付け部(63)に装着されて駆動されることを特徴とする」という限定を付すものである。

本件考案3と甲1考案の2(「甲1考案のディスククリーナにおいて、本体ケース1は、駆動スイッチと、ディスク載置面2を有しており、さらに、前記本体ケース1は、蓋6を配置し、前記蓋6はスイッチボタン24を有している、甲1考案のディスククリーナ。」:第5の2(1)ア(コ)参照)とを対比する。
甲1考案の2の「本体ケース1」、「ディスク載置面2」は、それぞれ、本件考案3の「ベース(6)」、「載置ベース(62)」に相当する。
甲1考案の2の「駆動スイッチ」及び「スイッチボタン24」は、「スイッチ」という限りにおいて、本件考案3の「電源スイッチ(611)、修理スイッチ(612)、及び掃除スイッチ(613)」と共通する。
甲1考案の2の「蓋6」は、本件考案3の「カバー(64)」に相当する。

してみると、両者は、第5の2(2)ア(ア)で示した一致点に加え、以下の一致点の2で一致し、第5の2(2)ア(ア)及び第5の2(2)イ(ア)で示した相違点1ないし相違点6に加え、以下の相違点7、相違点8で相違する。

<一致点の2>
「スイッチを有し、ベースは、載置ベースを有しており、さらに、前記ベースは、カバーを配置している、光ディスクメンテナンス装置。」の点。

<相違点7>
本件考案3は、「修理機構(10)がベース(6)に配置され」、「前記ベース(6)は載置ベース(62)の周りに配設される少なくとも一つの取り付け部(63)」を有しており、「カバー(64)の、前記ベース(6)の載置ベース(62)に対応する部位に弾力性を有する当接部材(641)を設けており、前記修理機構が前記取り付け部(63)に装着されている」のに対し、
甲1考案の2では、そのようになっていない点。

<相違点8>
スイッチに関して、
本件考案3は、「ベース(6)は、電源スイッチ(611)、修理スイッチ(612)、及び掃除スイッチ(613)を具備するコントロール・パネル(61)」を有しているのに対し、
甲1考案の2では、本体ケース1に駆動スイッチを有しており、蓋6にスイッチボタンを有している点。

(イ)相違点についての判断
(イ-1)相違点7について
修理機構をベースに配置し、該ベースは、載置ベースの周りに配設される少なくとも一つの取り付け部を有し、前記修理機構が前記取り付け部に装着される点は、周知の事項である(例えば、甲第9号証の第3ページ上右欄第15行ないし下左欄7行、第1図、第2図、甲第10号証の段落【0008】ないし【0010】、【0012】、【0015】、図2、図4、図5参照。)。
また、カバーの、載置ベースに対応する部位に弾力性を有する当接部材を設ける点も、周知の事項である(例えば、甲第9号証の第3ページ下左欄第11行ないし下右欄第4行参照)。
してみると、甲1考案の2において、相違点7に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。

(イ-2)相違点8について
電源スイッチを具備するコントロールパネルをベースに設けることにより、光ディスクメンテナンス装置にスイッチを設けることは、従来周知の事項である(例えば、甲第10号証の図1、図2における、電源のスタートボタン223の配置箇所を参照のこと)。
また、電源スイッチに加えて、修理スイッチや掃除スイッチを設けることは、メンテナンスの種類やユーザの操作性等を勘案して、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。
してみると、甲1考案の2において、相違点8に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易になし得たことである。

(ウ)本件考案3の効果について
本件考案3の効果についてみても、甲1考案及び周知の事項から当業者が十分予測できる範囲内のものであって、顕著なものとはいえない。

(エ)まとめ
したがって、本件考案3は、甲1考案の2及び周知の事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(3)無効理由1についてのまとめ
以上のとおり、本件考案1ないし本件考案3は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
よって、本件考案1ないし本件考案3についての実用新案登録は、同法第37条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。

第6 むすび
以上のとおり、本件考案1ないし本件考案3は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
したがって、本件考案1ないし本件考案3についての実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-04-28 
結審通知日 2009-05-11 
審決日 2009-05-22 
出願番号 実願2003-3857(U2003-3857) 
審決分類 U 1 114・ 537- Z (B24B)
U 1 114・ 121- Z (B24B)
最終処分 成立    
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 鈴木 敏史
菅澤 洋二
登録日 2003-10-22 
登録番号 実用新案登録第3098915号(U3098915) 
考案の名称 光ディスクメンテナンス装置  
代理人 河合 典子  
代理人 小島 高城郎  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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