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審決分類 審判    H01R
管理番号 1211316
審判番号 無効2009-400001  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-02-12 
確定日 2010-02-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第3143107号実用新案「フラットケーブルのジャンプコネクター」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3143107号の請求項1?5に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第3143107号の請求項1?5に係る考案(以下「本件考案1?5」という。)についての出願は、平成20年4月24日に実用新案登録出願され、平成20年6月18日にその実用新案登録の設定登録がなされたものである。
その後、平成21年2月12日に本件実用新案登録に対して実用新案登録無効審判が請求され、その請求書の副本を被請求人へ平成21年3月28日に送達するとともに、期間を決めて答弁書の提出の機会を与えたが、被請求人からは応答がなかった。

2.本件考案
本件考案1?5は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、次の事項により特定されるとおりのものと認める。

本件考案1
「少なくとも回路板、フレキシブルフラットケーブル、第二連接部品から構成されたフラットケーブルのジャンプコネクターにおいて、
複数の回路を設置する回路板と、
各回路と連接する複数の第一ピンを設置するフレキシブルフラットケーブル(FFC)と、
各回路と連接する複数の第二ピンを設置し、各第一ピンの配列順序と第二ピンの配列順序は異なり、該フレキシブルフラットケーブルと第二連接部品は回路板によって相互に連接定位して通電し、且つ各回路がフレキシブルフラットケーブルと第二連接部品のジャンプコネクトを提供する第二連接部品を含むことを特徴とするフラットケーブルのジャンプコネクター。」
本件考案2
「前記該第二連接部品は、同軸線もしくはフレキシブルフラットケーブルとすることを特徴とする請求項1記載のフラットケーブルのジャンプコネクター。
本件考案3
「前記該フレキシブルフラットケーブルは、第二連接部品に相対する別端に第一連接本体を設置し、また該第二連接部品はフレキシブルフラットケーブルに相対する別端に第二連接本体を設置することを特徴とする請求項1記載のフラットケーブルのジャンプコネクター。」
本件考案4
「少なくともフレキシブルフラットケーブル(FFC)、フレキシブル回路板を含むフラットケーブルのジャンプコネクターにおいて、
複数の第一ピンを設置するフレキシブルフラットケーブル(FFC)と、
複数の第三ピン及び第四ピンを設置し、各第三ピンの配列順序と第四ピンの配列順序は異なり、また各第一ピンと第三ピンは相互に連接するフレキシブル回路板を含むことを特徴とする請求項1記載のフラットケーブルのジャンプコネクター。」
本件考案5
「前記該フレキシブルフラットケーブルは、フレキシブル回路板に相対する別端に第一連接本体を設置し、該フレキシブル回路板はフレキシブルフラットケーブルに相対する別端に第二連接本体を設置することを特徴とする請求項4記載のフラットケーブルのジャンプコネクター。」
なお、実用新案登録請求の範囲の「排列」との記載は「配列」の誤記と認められるので、上記にように認定した。

3.請求人の主張
審判請求人は、本件請求項1?5に係る実用新案登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする趣旨の実用新案登録無効審判を請求し、証拠方法として甲第1号証(実願昭62-35980号(実開昭63-143877号)のマイクロフイルム)、甲第2号証(特開平8-293363号公報)及び甲第3号証(特開昭60-44984号公報)を提出し、本件考案1?3は、甲第1?3号証刊行物に記載された考案であるから、また、本件考案4及び5は、甲第3号証刊行物に記載された考案であるから、実用新案登録法第29条第1項第3号に該当し、また、本件考案1?5は、甲第1?3号証刊行物に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから同法第29条第2項の規定に違反して、実用新案登録されたものであるから、同法第37条第1項第2号に該当し、本件請求項1?5に係る実用新案登録は無効とすべきであると主張している。

4.被請求人の主張
被請求人は、答弁書を提出しなかった。

5.甲各号証の記載
(1)甲第1号証
請求人の提示した、甲第1号証には、第1?3図とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「(1)ピン配列仕様の異なる機器間相互を電気的に結合する通信ケーブルであって、その一方側のピン配列仕様に他方側のその仕様が一致するように接続変更可能なコンバータ部をケーブル亘長間の適宜位置に介設したことを特徴とするピン配列自由変換ケーブル。」(実用新案登録請求の範囲)
イ.「この一実施例にあっては、図示しないポートに対してデータの入出力を行なうホスト機器1と、このホスト機器1に対するデータの入出力を行なうI/O機器2との間に、本考案構造のピン配列自由変換ケープル3を配設している。」(明細書第4頁第10?14行)
ウ.「この6芯構造で示すピン配列自由変換ケーブル3にあっては、各ケーブル301先端にそれぞれコネクタ302を設け、この一端側をホスト機器1のコネクタ101と嵌合させ、他端側をI/O機器3のコネクタ201と嵌合させるようになされている。そして、ケーブル301の適宜位置にコンバータ部303を介設している。
コンバータ部303は、その内部においてホスト機器1側及びI/O機器側ともにケーブルの芯数と一致するようにピンX1?X6,Y1?Y6を設けており、そのピン間がショートピンZにより接続するようになされている。
次に、この一実施例のシステム構成について作用を説明する。
今、第1図に示すようにホスト機器1のコネクタ101がピン配列A→B→C→D→E→Fであり、またI/O機器2のコネクタ201がピン配列B→A→D→C→E→Fであるときに、ショートピンZにより第2図に示すように、X1→Y2接続,X2→Y1接続,X3→Y4接続,X4→Y3接続,X5→Y5接続。及びX6→Y6接続がを行なうことによりピンの配列変換が行なわれる。」(明細書第5頁第2行?第6頁第4行)
エ.「また、以上の各実施例は、RS-232ケーブルについて本考案を適用した各例を示すに過ぎず、本考案を他の通信ケーブルに適用することもできる。換言すれば、同一ピン数の機器間に電気的に結合される通信ケーブルであれば、本考案に従って信号線標準化が可能である。
[考案の効果]
以上説明したように、本考案によれば、コンバータ部において接続設定操作を行なうだけで、機器間相互のピン配列仕様のマッチングを図ることができるから、その一方の機器にピン配列仕様の変更に対応して即座に所望の処置を施すことができる。これにともない、機器毎の専用ケーブルを別途購入したりすることをしないで済む等実用上多大な効果を奏する。」(明細書第7頁第10行?第8頁第4行)

(2)甲第3号証
請求人の提示した、甲第3号証には、第1?4図とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「多芯コネクタを具備したフラットケーブルを接続する前記多芯のプラグコネクタとソケットコネクタ間に回路切替用コネクタ部材を設け、該ランダムコネクタ部材内に異なる接続パターンを形成した複数の回路板を自在に挿抜可能な構成としたことを特徴とする回路切替用コネクタ」(特許請求の範囲)
イ.「本発明は、フラットケーブル間の線路の切り換えを行う回路切替用コネクタに係り、とくに任意の接続パターンを形成した回路板を回路切替用コネクタに挿入して線路の切り換えを行うようにした回路切替用コネクタに関するものである。」(第1頁左下欄第13?17行)
ウ.「第1図は、従来のプラグイン方式を説明するための接続図で、1は(A)側機器端子収容配列,2は(B)側機器端子収容配列,3はフラットケーブルである。
(A)側機器端子収容配列1が下から上方へ1aから4a,(B)側機器端子収容配列2が同様下から上方へ1aから4a,さらにこれら(A),(B)機器の中間にフラットケーブル3を構成する各線路が前述と同様下から上方へ1aから4aがそれぞれ位置し、例えば(A)側機器端子番号1aはフラットケーブル1aを介し(B)側機器端子番号1aと接続される。
第2図は、(A)側機器端子を下から上方へ1aから4aと配列し、(B)側機器端子を下から上方へ4a,3a、2a、1aと配列の異なった場合の接続図で、本接続の場合(A)側機器1の端子と、(B)側機器2の端子との端子収容配列が異なるので、たとえば(A)側機器1の端子1aと(B)側機器2の端子4a,又(A)側機器1の端子3aと(B)側機器2の端子2aが中間に設けたフラットケーブル3の線路番号1aおよび3aにより、1a-1a-4a又は3a-3a-2aと接続され、目的の接続1a-1a-1a又は3a-3a-3aがえられず、突際の接続と回路図とが一致せずフラットケーブル3を用いた低コストのプラグイン接続方式が採用できなくなる。このためジャンパー配線を行わなければならないという問題点があった。
(d) 発明の目的
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、異なる接続パターンを形成した複数のフイルムを自在に挿抜可能とした回路切替用コネクタを提供することを目的とするものである。」(第1頁右下欄第13行?第2頁右上欄第4行)
エ.「以下図面を参照しながら本発明に係る回路切替用コネクタの実施例について詳細に説明する。
第3図は、本発明に係る回路切替用コネクタの一実施例を説明するための(a)は平面図,(b)は要部断面図で、第4図はパターンを形成した回路板を説明するための(a)は平面図,(b)は回路板保持具を具備した平面図であり、前図と同等の部分については同一符号を付しており、5はプラグコネクタ,6はソケットコネクタ,7は回路切替用コネクタ,8は回路板,9は回路板保持具,71は回路切替用コネタタ本体,72は接続片,73は弾性体部材,74はキャップ,81は切欠き,82は導体パターン,83は接続部である。
合成樹脂等からなり一辺に回路板8を挿抜する開口部を形成した回路切替用コネクタ本体71の対向する一方の辺にプラグコネクタ5に対応するソケットを付設し、他方の辺にソケットコネクタ6に対応するプラグを設け、前記ソケットおよびプラグにそれぞれ弾性体部材73に付設された接続片72を接続してなる前記回路切替用コネクタ本体71にキャップ74を取着するとともに、前記ソケットおよびプラグにプラグコネタタ5およびソケットコネクタ6を具備したフラットケーブル3を装着する。ここで合成樹脂等からなり、対抗辺に前記ソケットおよびプラグに対応する切欠き81を形成した回路板8に所望の導体パターン82を形成し、該導体パターン82の両端部の切欠き81に接続部83を連設する。そして導体パタ一ン82を形成した回路板8にフイルム保持具9を取付けて、前記回路切替用コネクタ本体71の開口部に挿入すると、例えば第4図(a)のパターンを形成しておけばAとCが接続されることになる。そして前記回路切替用コネクタ本体71の開口部にはフイルム8が、4枚収納されるようになっている。」(第2頁右上欄第14行?右下欄第7行)
上記の記載事項ア.?エ.及び図面の図示内容を総合すると、甲第3号証には、以下の考案(以下「引用考案」という。)が記載されていると認められる。
「(A)側機器1の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3と、
(A)側機器1の端子と端子収容配列が異なる(B)側機器2の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3と、
これらフラットケーブル3,3に接続される多芯のプラグコネクタ5とソケットコネクタ6間に設けられ、フイルムである複数の回路板8を挿抜可能とする回路切替用コネクタ本体71とから構成される回路切替用コネクタにおいて、
異なる接続パターン82を形成した複数の回路板8と、
各接続パターン82に前記多芯のプラグコネクタ5またはソケットコネクタ6を介して接続される、(A)側機器1の端子の端子収容配列に対応する、線路を有するフラットケーブル3と、
各接続パターン82に多芯のソケットコネクタ6またはプラグコネクタ5を介して接続される、(A)側機器1の端子と端子収容配列が異なる(B)側機器2の端子に対応する、線路を有し、
端子収容配列が異なる(A)側機器1の端子と(B)側機器2の端子とを複数の回路板8に形成された接続パターン82によって接続してジャンパー配線を不要とするフラットケーブル3からなる
フラットケーブル3の回路切替用コネクタ。」

6.対比・判断
(1)本件考案1について
本件考案1と引用考案とを対比すると、後者の「接続パターン82」は、その機能からみて、前者の「回路」に相当し、後者の「異なる接続パターン82を形成した複数の回路板8」と前者の「複数の回路を設置する回路板」とは、複数の回路を有する回路装置である点で共通する。
後者の「(A)側機器1の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3」及び「(A)側機器1の端子と端子収容配列が異なる(B)側機器2の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3」は、その機能・構成からみて、前者の「フラットケーブル」及び「第二連接部品」に相当し、同様に、後者の「回路切替用コネクタ」は前者の「フラットケーブルのジャンプコネクター」に相当する。
後者の「各接続パターン82に多芯のプラグコネクタ5またはソケットコネクタ6を介して接続される、(A)側機器1の端子と端子収容配列に対応する、線路を有するフラットケーブル3」と前者の「各回路と連接する複数の第一ピンを設置するフレキシブルフラットケーブル(FFC)」とは、フレキシブルフラットケーブルも複数の線路を有することが自明であり、前者のフレキシブルフラットケーブルは複数の第一ピンを介して各回路と連接されるものであるから、「各回路と連接する線路を有するフラットケーブル」である点で共通する。そして、後者のフラットケーブル3は多芯のプラグコネクタ5またはソケットコネクタ6を介して接続されるものであって、多芯のプラグコネクタ5またはソケットコネクタ6は、通常、(A)側機器1の端子の端子収容配列に対応する端子収容配列である。
また、後者の「各接続パターン82に多芯のソケットコネクタ6またはプラグコネクタ5を介して接続される、(A)側機器1の端子と端子収容配列が異なる(B)側機器2の端子に対応する、線路を有し、端子収容配列が異なる(A)側機器1の端子と(B)側機器2の端子とを複数の回路板8に形成された接続パターン82によって接続してジャンパー配線を不要とするフラットケーブル3」と前者の「各回路と連接する複数の第二ピンを設置し、各第一ピンの配列順序と第二ピンの配列順序は異なり、該フレキシブルフラットケーブルと第二連接部品は回路板によって相互に連接定位して通電し、且つ各回路がフレキシブルフラットケーブルと第二連接部品のジャンプコネクトを提供する第二連接部品」について、
前者の「第二連接部品」も複数の線路を有することが自明であるから「各回路と連接する複数の第二ピンを設置」するとはこれら複数の線路が複数の第二ピンを介して各回路と連接するものといえる。そして、後者のフラットケーブル3は多芯のソケットコネクタ6またはプラグコネクタ5を介して接続されるものであって、通常、多芯のソケットコネクタ6またはプラグコネクタ5は(B)側機器2の端子の端子収容配列に対応する端子収容配列である。
そして、後者は「端子収容配列が異なる(A)側機器1の端子と(B)側機器2の端子」であるから、後者の2つのフラットケーブル3,3の複数の線路の配列順序も、これら複数の線路が各接続パターン82に接続するときに2つのフラットケーブル3,3にそれぞれ接続される多芯のプラグコネクタ5の端子収容配列と多芯のソケットコネクタ6の端子収容配列も異なっているといえる。
後者の「端子収容配列が異なる(A)側機器1の端子と(B)側機器2の端子とを複数の回路板8に形成された導体パターン82によって接続」することと前者の「フレキシブルフラットケーブルと第二連接部品は回路板によって相互に連接定位して通電」することは、「フレキシブルフラットケーブルと第二連接部品は回路装置によって相互に連接定位して通電」する点で共通し、後者はその接続パターン82によって「ジャンパー配線を不要とする」から、後者の複数の回路板8に形成された導体パターン82も、前者の「各回路がフレキシブルフラットケーブルと第二連接部品のジャンプコネクトを提供する」作用をなすものといえる。
したがって、本件考案1と引用考案とは、
「回路装置、フラットケーブル、第二連接部品から構成されたフラットケーブルのジャンプコネクターにおいて、
複数の回路を設置する回路装置と、
各回路と連接する複数の線路を有するフラットケーブルと、
各回路と連接する複数の線路を有し、該フレキシブルフラットケーブルと第二連接部品は回路装置によって相互に連接定位して通電し、且つ各回路がフレキシブルフラットケーブルと第二連接部品のジャンプコネクトを提供する第二連接部品を含むフラットケーブルのジャンプコネクター。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点A:回路装置について、本件考案1は「複数の回路を設置する回路板」であるのに対して、引用考案は「異なる接続パターン82を形成した複数の回路板8」である点。
相違点B:フラットケーブルについて、本件考案1は「フレキシブルフラットケーブル」であるのに対して引用発明は「フラットケーブル3」である点。
相違点C:各回路とフラットケーブル及び第二連接部品との連接について、本件考案1はフレキシブルフラットケーブルに設置された複数の第一ピン及び第二連接部品に設置された複数の第二ピンを介して連接されており、各第一ピンの配列順序と第二ピンの配列順序は異なっているのに対し、引用考案は、一方のフラットケーブル3は多芯のプラグコネクタ5またはソケットコネクタ6を介して接続され、他方のフラットケーブル3は多芯のソケットコネクタ6またはプラグコネクタ5を介して接続され、2つのフラットケーブル3,3にそれぞれ接続される多芯のプラグコネクタ5の端子収容配列と多芯のソケットコネクタ6の端子収容配列は異なっている点。

そこで、上記相違点につき検討する。
ア.相違点Aについて
引用考案の「異なる接続パターン82を形成した複数の回路板8」は、複数の回路を設置するための、複数の回路板からなる回路装置である。そして、甲第1号証にピンの配列変換を行う複数のショートピンを1つのコンバータ部303に配することが示されるように、1つの回路板上に複数の回路を構成することは当業者にとって通常なすことといえるから、上記複数の回路を構成するにあたり、1つの回路板上に異なる接続パターン82である複数の回路を形成することは当業者が適宜なし得た設計的事項であるといえる。
そしてそのことによる格別の効果もない。

イ.相違点Bについて
多芯のケーブルとしてフレキシブルフラットケーブルは従来周知であって、引用考案のフラットケーブルをフレキシブルフラットケーブルとすることは、そのことによる格別の効果もないことからみて、当業者が適宜なし得たことと言わざるを得ない。

ウ.相違点Cについて
引用考案は、多芯のプラグコネクタ5またはソケットコネクタ6を介して接続するものであって、接続用の部材を介して回路と線路を接続することは通常行われることであり、甲第1号証にはコンバータ部303にピンX1?X6、Y1?Y6を設けることが示されるように、ピンを介して接続することは当業者にとって格別の困難性を要することなくなし得たことと言え、ケーブル側にピンを設けることも格別のこととはいえない。
そうすると、各回路とフラットケーブル3の複数の線路を接続するに、多芯のプラグコネクタ5またはソケットコネクタ6に代えてピンを用いるとき、引用考案の2つのフラットケーブル3,3にそれぞれ接続される多芯のプラグコネクタ5の端子収容配列と多芯のソケットコネクタ6の端子収容配列は異なっているのであるから、第一ピンの配列順序と第二ピンの配列順序も通常、異なるようなすものといえる。
そしてこのように構成したことによる格別の効果もない。

なお、本件考案1の複数の第一ピン及び複数の第二ピンについて、図3及び10を参照すると、フレキシブルフラットケーブル21の端部に、連続して同じ幅で延出する部分の上に、フレキシブルフラットケーブル21の長手方向の線状部材が、複数並んで配される様子が図示され、第1ピン211と指示されていて、当業者であれば、通常、フレキシブルフラットケーブルの線路導体が露出されて第1ピン211となっているものと解するものである。また、図3には複数並列の同軸線22の端部からそれぞれ延出する導軸線22より細い線状部材が図示され、第2ピン221と指示されており、当業者にとって通常芯線と解するものといえる。図10では、フレキシブル回路板27上に直方体上の第三ピン271及び第四ピン272が図示されていて、当業者であれば、フレキシブル回路板27上の回路パターンにより形成された端子部分と解するものといえる。さらに、多芯のコネクタやケーブルにおいて、その各端子や芯線の接続に関する配置をピン配置ということが通常であること及びこれら複数の第一ピン及び複数の第二ピンは回路板の各回路に連接する作用をなすのみであることからみても、本件考案1における第一ピン及び第二ピンはケーブルの端部に於いて露出されたケーブルの導体等を含むものといえる。
そうすると、引用考案において、各ケーブルの端部を接続しやすいように露出処理することは、半田付けやかしめ取り付け等のために通常なすことと言え、当業者が適宜なし得たことにすぎない。そしてこの場合においても第一ピンの配列順序と第二ピンの配列順序もは異なるようなすものといえる。

エ.まとめ
そして、上記相違点A?Cを合わせ考えても、本件考案1の効果が格別であるとはいえない。
したがって、本件考案1は、引用考案及び甲第1号証記載の事項に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(2)本件考案2について
本件考案2は請求項1の記載事項を含み、さらに第二連接部品について、同軸線もしくはフレキシブルフラットケーブルとすることを特定するものである。
一方、上記(1)で述べたように、引用考案の「(A)側機器1の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3」及び「(A)側機器1の端子と端子収容配列が異なる(B)側機器2の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3」は、本件考案1の「フラットケーブル」及び「第二連接部品」に相当するものである。
したがって、本件考案2と引用考案とを対比すると、上記(1)で述べた相違点A?Cに加え、
相違点D:第二連接部品について、引用考案2は「同軸線もしくはフレキシブルフラットケーブル」であるのに対し引用考案が「フラットケーブル」である点で相違し、その他の点で一致するものといえる。

上記相違点について検討すると、相違点A?Cについては上記(1)のア.?ウ.で述べたとおり当業者が容易に想到し得たことといえる。
また、相違点Dについても、上記(1)イ.で述べたと同様に当業者が適宜なし得たことである。
そして、上記相違点A?Dを合わせ考えても、本件考案2の効果が格別であるとはいえない。
したがって、本件考案2は、引用考案及び甲第1号証記載の事項に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(3)本件考案3について
本件考案3は請求項1の記載事項を含み、さらに「フレキシブルフラットケーブルは、第二連接部品に相対する別端に第一連接本体を設置」すること及び「第二連接部品はフレキシブルフラットケーブルに相対する別端に第二連接本体を設置すること」を特定するものである。
ところで、引用考案は「(A)側機器1の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3と、(A)側機器1の端子と端子収容配列が異なる(B)側機器2の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3」を有するものであり、上記(1)で述べたように、これらフラットケーブル3,3は本件考案1の「フラットケーブル」及び「第二連接部品」に相当するものである。
そうすると、引用考案の「(A)側機器1の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3と、(A)側機器1の端子と端子収容配列が異なる(B)側機器2の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3」との態様は、本件考案3の「フラットケーブルは、第二連接部品に相対する別端に第一連接本体を設置し、また該第二連接部品は」「フラットケーブルに相対する別端に第二連接本体を設置」した態様と同様である。なお、第一連接本体及び第二連接本体を用いることは甲第1号証にコネクタ302として示されるように周知でもある。
したがって、上記請求項3で、請求項1に加えて特定した事項は、引用考案に含まれる事項といえるから、相違点は本件考案1と同じであるといえる。
そうすると、上記(1)で検討したと同様に、本件考案3も、引用考案及び甲第1号証記載の事項に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(4)本件考案4について
本件考案4は本件考案1の「回路板」を「フレキシブル回路板」とするとともに、さらに「フレキシブル回路板」について、「複数の第三ピン及び第四ピンを設置し、各第三ピンの配列順序と第四ピンの配列順序は異なり、また各第一ピンと第三ピンは相互に連接する」ことを特定するものといえる。
したがって、引用考案と対比すると、上記(1)で述べた相違点B及びCに加え、
相違点E:回路装置について、本件考案4が「複数の回路を設置するフレキシブル回路板」であるのに対して、引用考案は「異なる接続パターン82を形成した、フイルムである複数の回路板8」である点、及び、
相違点F:回路装置の具体的構成について、本件考案4が「複数の第三ピン及び第四ピンを設置し、各第三ピンの配列順序と第四ピンの配列順序は異なり、また各第一ピンと第三ピンは相互に連接する」のに対して、引用考案はピンを有していない点で、両者は相違し、その他の点で一致する。

上記相違点について検討する。
ア.相違点B及びCについて
上記(1)のイ.及びウ.で述べたとおり当業者が容易に想到し得たことといえる。

イ.相違点E及びFについて
引用考案の「異なる接続パターン82を形成した、フイルムである複数の回路板8」は、複数の回路を設置するための、複数の回路板からなる回路装置である。
そして、複数の回路を設けるのに1つの回路板上に複数の回路を形成することは当業者にとって常套手段といえ、回路基板との接続に基板に設けたピンを用いることも周知であって、甲第1号証にも、ケーブルに接続される複数のピンとその配列変換を行う複数のショートピンを1つのコンバータ部303に配することが示されている。
そうすると、引用考案の「異なる接続パターン82を形成した、フイルムである複数の回路板8」を、複数の回路を形成した1つの回路板とし、ケーブルを接続するピンを設けることは、当業者が格別の困難性を要することなくなし得たことである。
そして、引用考案の複数の回路板8はフイルムであり、上記のように1つの回路板とするに際してもフイルムとし、フレキシブル回路板となすことも、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
なお、引用考案は「フイルムである複数の回路板8を挿抜可能とする回路切替用コネクタ本体71」を有するものであるが、甲第1号証に記載の事項に倣って1つの回路板とするとき、複数の回路板8ではないのであるから、1つの回路板のみで構成することは、当業者が適宜なし得た設計的事項であると言え、それに接続されるケーブルに合わせて、フレキシブル回路板とすることも、当業者にとって格別とはいえない。
以上のようであるから、相違点E及びFに係る本件考案の特定事項とすることも当業者にとってきわめて容易であり、そのことによる格別の効果もない。

ウ.まとめ
そして、上記相違点B、C、E及びFを合わせ考えても、本件考案4の効果が格別であるとはいえない。
したがって、本件考案4は、引用考案及び甲第1号証記載の事項に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(5)本件考案5について
本件考案5は請求項4の記載事項を含み、さらに「フレキシブルフラットケーブルは、フレキシブル回路板に相対する別端に第一連接本体を設置」すること及び「フレキシブル回路板はフレキシブルフラットケーブルに相対する別端に第二連接本体を設置すること」を特定するものである。
ところで、引用考案は「(A)側機器1の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3」を有するものであり、上記(1)で述べたように、これらフラットケーブル3,3は本件考案1の「フラットケーブル」及び「第二連接部品」に相当するものである。
そうすると、引用考案の「(A)側機器1の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3」との態様は、本件考案5の「フレキシブルフラットケーブルは、フレキシブル回路板に相対する別端に第一連接本体を設置」した態様と同様である。
一方、引用考案の「(B)側機器2の端子に接続される多芯コネクタを具備したフラットケーブル3」と「複数の回路板8」の「各接続パターン82」とは、「多芯のソケットコネクタ6またはプラグコネクタ5を介して接続される」ものである。
したがって、本件考案5と引用考案とは上記(4)で述べた相違点B、C、E及びFに加え、
相違点G:回路装置について、本件考案5が「フラットケーブルに相対する別端に第二連接本体を設置する」のに対して、引用考案は「フラットケーブル3」に接続された「多芯のソケットコネクタ6またはプラグコネクタ5を介して接続される」ものの、回路装置側がいかなるものか不明である点で両者は相違し、その他の点は一致する。

そこで、上記相違点につき検討する。
ア.相違点B、C、E及びFについて
上記(4)のア.及びイ.で述べたとおり当業者が容易に想到し得たことといえる。

イ.相違点Gについて
「多芯のソケットコネクタ6またはプラグコネクタ5」に対応して接続されるコネクタとして、これに対応する同様のコネクタを用いることは、当業者が適宜なし得た、単なる設計的事項といわざるを得ない。

ウ.まとめ
そして、上記相違点B、C、E、F及びGを合わせ考えても、本件考案5の効果が格別であるとはいえない。
したがって、本件考案5は、引用考案及び甲第1号証記載の事項に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

以上(1)?(5)で述べたように、本件考案1?5は、引用考案及び甲第1号証に記載の事項に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得たものというべきである。

7.むすび
したがって、本件請求項1?5に係る考案は、甲第1及び3号証に記載の考案に基いて当業者が容易に考案をすることができたものであるので、本件請求項1?5に係る考案についての実用新案登録は、実用新案登録法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案登録法第41条の規定で準用する特許法169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人がそれを負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2009-08-27 
結審通知日 2009-09-03 
審決日 2009-09-24 
出願番号 実願2008-2651(U2008-2651) 
審決分類 U 1 114・ 121- Z (H01R)
最終処分 成立    
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 岡本 昌直
豊島 唯
登録日 2008-06-18 
登録番号 実用新案登録第3143107号(U3143107) 
考案の名称 フラットケーブルのジャンプコネクター  
代理人 前田 均  
代理人 鈴木 征四郎  
代理人 鈴木 亨  

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