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審決分類 |
審判 D03D 審判 D03D |
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管理番号 | 1283193 |
審判番号 | 無効2013-400002 |
総通号数 | 170 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2014-02-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2013-06-20 |
確定日 | 2013-12-09 |
事件の表示 | 上記当事者間の実用新案登録第3154736号考案「多重織物」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第3154736号の請求項1及び2に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 実用新案登録第3154736号は、平成21年8月10日に実用新案登録出願され、同年9月30日に実用新案の設定登録がなされたものである。 これに対して、請求人から本件無効審判の請求がなされたものであり、本件無効審判における手続の経緯は次のとおりである。 平成25年 6月20日付け 無効審判請求書 平成25年 8月 8日付け 審判事件答弁書 平成25年 8月30日付け 審理事項通知書 平成25年10月 2日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成25年10月 3日付け 口頭審理陳述要領書(請求人) 平成25年10月 9日付け 口頭審理陳述要領書(第2回)(請求人) 平成25年10月16日付け 口頭審理陳述要領書(第2)(被請求人) 平成25年10月16日付け 口頭審理陳述要領書(第3)(被請求人) 平成25年10月16日 口頭審理 本審決において、証拠は、例えば甲第1号証-1を甲1-1のように、簡潔に表記することがある。また、原文の丸囲み数字は、○1のように置き換えた。 第2 本件考案 実用新案登録第3154736号の請求項1及び2に係る考案(以下、それぞれ「本件考案1」及び「本件考案2」という。)は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも第1の織組織と第2の織組織を備えた多重織物において、 前記第1の織組織の経糸及び緯糸と、前記第2の織組織の経糸及び緯糸とが、表裏の織模様設計に対応して表裏交替することにより前記多重織物の表側模様層と裏側模様層が構成され、 前記第1の織組織を構成する経糸及び/または緯糸に無撚糸を用い、 前記第2の織組織を構成する経糸及び緯糸に撚糸を用いることを特徴とする多重織物。 【請求項2】 前記第1,第2の織組織を構成する経糸及び緯糸がいずれも綿糸である請求項1に記載の多重織物。」 第3 請求人の主張 1 請求人は、無効審判請求書において、「登録実用新案第3154736号における実用新案登録請求の範囲の請求項1,2の登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めた。 2 請求人が主張する無効理由は、請求人が提出した無効審判請求書、平成25年10月3日付け口頭審理陳述要領書及び平成25年10月9日付け口頭審理陳述要領書(第2回)並びに第1回口頭審理調書を総合すると、次のとおりであると認める。 「本件実用新案登録第3154736号の請求項1、2の考案(以下「本件考案」という。)の構成を有するタオルについて甲第3号証-2を主たる証拠として主張立証し、前記構成を有するタオルが本件考案の出願前に製造、販売されたことを、甲第1号証ないし甲第16号証により主張立証するものであり、本件考案は、その出願前に日本国内において公然実施をされた考案であり、実用新案法第3条第1項第2号に該当し、又、その出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその出願前に日本国内において公然実施をされた考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法第37条第1項の規定により無効とされるべきものである。」 3 請求人は、証拠方法として、次の甲1-1ないし甲16を提出している。 甲1-1?甲1-6:受注伝票、納品伝票及び仕入伝票 甲2-1:表紙に「UCHINO」、「Lifestyle Designing」及び「2006 Spring and Summer Collection」と記載されたカタログ 甲2-2:表紙に「UCHINO」、「Lifestyle Designing」及び「2007 Fall and Winter Collection」と記載されたカタログ 甲2-3:表紙に「UCHINO」、「Lifestyle Designing」及び「2009 Spring and Summer Collection」と記載されたカタログ 検甲3-1:「得意先:内野(株)06SS」、「品名:エアーガーゼ」、「本番修正有り」、「2005.12.5」、「●P配のみ本番色修正有り」、「●パイル・ヨコ糸にツイストフリーAD(無撚糸)を使用」及び「●糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」と記載され、「野村」という捺印がされたタグが付された織物 検甲3-2:「得意先:内野(株)06SS」、「品名:エアーガーゼ」、「本番修正有り」、「2005.12.5」、「●パイル・ヨコ糸にツイストフリーAD(無撚糸)を使用」及び「●糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」と記載され、「野村」という捺印がされたタグが付された織物 甲4-1?甲4-2:公益財団法人日本繊維検査協会東京事業所の「試験証明書」 甲5-1?甲5-3:財団法人日本タオル検査協会中四国検査所の「品質検査報告書」 甲6:一般財団法人日本タオル検査協会中四国検査所の「品質検査報告書に対する証明」と題された書面 甲7-1:株式会社ハートウエルの「製品出荷証明書」 甲7-2:縞割表(「2005/8/30 呂様」及び「内野(株) TG市松ガーゼ」との記載がある書面) 甲7-3:設計の元データ(「受註先 内野」、「H17年9月17日」及び「設計No.10202」との記載がある書面) 甲7-4:「タオル試作発注依頼書 No.H100019834」 甲7-5:「タオル試作決定連絡書 No.K100019834(1)」 甲7-6:「製織(指図)書(控)」 甲7-7:「2006SS 製品規格書」 甲7-8:染色縫製工程用の指図書 甲7-9:意匠データの出力 甲7-10:株式会社ハートウエルの宣誓書 甲7-11:内野株式会社の宣誓書 甲8-1?甲8-12:納品書 甲9-1?甲9-6:入荷記録 甲10-1?甲10-6:エアーガーゼ販売実績表 甲11:「クラボウのシリーズ広告ギャラリー」「シリーズ6 スピンエアー 綿合繊事業部」のインターネットにおける記事 甲12:繊維ニュース(2003年08月04日(月曜日))のインターネットにおける記事 検甲13-1?検甲13-2:エアーガーゼのサンプル 甲14:株式会社ハートウエルによる説明書 甲15:公益財団法人日本繊維検査協会東京事業所の「証明書」 甲16:一般財団法人日本タオル検査協会中四国検査所の「『品質検査報告書に対する証明』の補足事項」と題する書面 甲1-1ないし甲16の成立について、当事者間に争いはない、 第4 被請求人の主張 1 被請求人は、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として乙1ないし乙6を提出し、無効理由は成り立たないと主張している。 乙1:「postman@1101.com」の「やさしいタオル」と題するウエブ・ページからの出力 乙2:「ベルメゾンネット」のホームページからの出力 乙3:「LOHACO」のホームページからの出力 乙4:「WATABOUSHI」のホームページからの出力 乙5:請求人のインターネット・ホームページ[(内野)UCHINO The Body Bath Shop (ザ・ボデイ&バスショップ)]からの出力 乙6:Yahoo検索「片面ガーゼタオルはいつごろできた」で求めた検索ページの出力 乙1ないし乙6の成立について、当事者間に争いはない。 第5 当審の判断 1 無効理由についての請求人の主張について 無効理由について、請求人は次の主張をしている。 ア 「検甲第3号証-1及び検甲第3号証-2(以下、単に、甲第3号証-1及び甲第3号証-2とも言う。)は、株式会社ハートウエルが保管していたタオル「エアーガーゼ」のマスターサンプルである。 株式会社ハートウエルは、生産ロット単位で、マスターサンプルとの照合を行うことを義務付けている。本件マスターサンプルは、2005年の生産開始時より2011年末まで、生産現場に、置かれていたものである。このことは、2005年の生産開始時から2011年末までに製造された「エアーガーゼ」は、本件マスターサンプルと同一のものであることを意味する。 ・・・・・ 甲第3号証-2には、「得意先:内野(株)06SS」「品名:エアーガーゼ」「本番修正有り」「2005.12.5」「●パイル・ヨコ糸にツイストフリーAD(無撚糸)を使用」「●糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」「野村の捺印」のタグが付いている。」(無効審判請求書9頁5?20行) イ 「甲第4号証-1,2は、タオル「エアーガーゼ」のマスターサンプル(甲第3号証-2)の内容を説明したものである。 タオル「エアーガーゼ」のマスターサンプル(甲第3号証-2)の断面図や組織図は甲第4号証に示される断面図や組織図であることが示されている。」(無効審判請求書9頁下から4?1行) ウ 「株式会社ハートウエルは、生産ロット単位でマスターサンプルとの照合を行うことを義務付けている為、2005年の生産開始時より2011年末まで、生産現場にはマスターサンプル(甲第3号証)を置いていた。 甲第3号証のマスターサンプルと、株式会社ハートウエルから内野株式会社に出荷した製品とは同じ内容のタオルである。」(無効審判請求書16頁13?17行) エ 「甲第1号証?甲第12号証、特に、甲第3号証(エアーガーゼ(マスターサンプル))、甲第4号証(公益財団法人日本繊維検査協会の「エアーガーゼ」試験証明書)、甲第6号証(一般財団法人日本タオル検査協会中四国検査所品質検査報告書に対する証明書)、甲第7号証(株式会社ハートウエルの製品出荷証明書)などによれば、 「エアーガーゼ」で特定されるタオルは、 例えば、甲第4号証や甲第7号証の断面図および組織図から判る通り、 「タテ糸A,Bとヨコ糸○1,○3とで構成される第1の織組織と、タテ糸C,Dとヨコ糸○2,○4とで構成される第2の織組織を備えた二重織物であり、 第1の織組織のタテ糸A,B及びヨコ糸○1,○3と、第2の織組織のタテ糸C,D及びヨコ糸○2,○4とが、表裏の織模様設計に対応して表裏交替しており、この表裏交代によって前記二重織物の表側模様層と裏側模様層が構成されており、 前記第1の織組織を構成するタテ糸A,B及びヨコ糸○1,○3は無撚糸であり、 前記第2の織組織を構成するタテ糸C,D及びヨコ糸○2,○4は撚糸である。」 ことが判る。 なお、甲第1号証他により、「エアーガーゼ」が出願前に販売されていたことが判る。」(審判請求書23頁1?17行) オ 「『6.甲各号証について 被請求人が主張する点(上記1.参照)の他に、次の点について意見又は釈明等があれば述べられたい。 (1) 検甲第3号証-1及び検甲3号証-2について ア これら証拠の出所(いつ・どこで製造され、2011年末以降どこに保管されていたのかタグはいつ付されたのか等)が不明である。 ・・・・・・」とは言えないのではないか。』に関して この点については、株式会社ハートウェルによる説明書(甲第14号証)を提出致します。そして、疑問は解消したと思慮しております。」(平成25年10月3日付け口頭審理陳述要領書3頁8?16行) 無効理由(上記第3の2)及び上記アないしオの主張を整理すると、無効理由についての請求人の主張は、要するに、「エアーガーゼ」という品名のタオル(以下、単に「エアーガーゼ」という。)が、本件実用新案登録出願前に製造及び販売されたのであり、そして、本件考案1及び2は、「エアーガーゼ」の構成と同一であるか、又は「エアーガーゼ」の構成に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである、というものである。そして、「エアーガーゼ」のマスターサンプルであるとする検甲3-2の構成によって、製造及び販売された「エアーガーゼ」の構成を立証しようとするものである。 したがって、無効理由の成否を判断するには、次の点を検討する必要がある。 ・本件実用新案登録出願前に「エアーガーゼ」が公然と製造又は販売されたか。 ・販売された「エアーガーゼ」の構成は検甲3-2の構成と同一か。 及び ・本件考案1及び2は、検甲3-2の構成と同一、又は検甲3-2の構成に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものであるか。 2 本件実用新案登録出願前に「エアーガーゼ」が公然と製造又は販売されたか。 甲2-1は、表紙の「UCHINO」及び「2006 Spring and Summer Collection」との記載並びに裏表紙の「本社 〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町1-7-15」との記載からみて、本件無効審判の請求人である内野株式会社の平成18年春夏用の商品カタログであると認められる。 甲2-1の103頁右上に、「中空糸+無撚糸+ガーゼ」及び「中空糸と無撚糸をガーゼ織りにしました。さらに軽くて柔らかな肌触り。」との記載の下に「エアーガーゼ」と記載され、さらにその下に「8825B282バスタオル(約70×140)」、「8810F282フェイスタオル(約34×85)」及び「8805G282ゲストタオル(約34×40)」との記載がそれぞれの価格とともに表示されている。さらに、「中空糸、無撚糸[Twist Free-AD使用]、片面ガーゼ)B・P・W」及び「※エコテックススタンダード100クラス1認証商品」との記載が認められる。また、これら記載に隣接して、商品の写真が掲載されている。 上記の甲2-1の記載から、内野株式会社の2006年春夏用の商品に「エアーガーゼ」が含まれていたことが認められる。 なお、甲2-1において、上記した103頁右上の記載の他に、「エアーガーゼ」という商品は記載されていない。 甲1-1は、内野株式会社の受注伝票であり、「受注日」の欄に「2006/06/05」、「出荷希望日」の欄に「2006/06/06」、「納伝指定日」の欄に「2006/06/09」、「御得意先名」の欄に「丸井今井 函館」、「社内品番/品名」の欄に「<7644>8805G282エアーガーゼ」、「色/サイズ」の欄に「P」、「数量」の欄に「6」、「得意先品番/値札品番・備考」の欄に「6113244」と、それぞれ記載され、「検品済 18.6.6」との表示のある印が押されている。 甲1-2は、納品伝票であり、「取引先名」の欄に「ウチノK.K」、「百貨店名」の欄に「マルイイマイ ハコダテ」、「A」の欄に「6113244」、「品名」の欄に「8805G282エアーガーゼ」、「納品数量」の欄に「6」、「日付」の欄に「06年06月06日」、「納期」の欄に「06年06月09日」と、それぞれ記載され、「検品済 18.6.6」との表示がある印が押されている。 甲1-3は、内野株式会社の受注伝票であり、「受注日」の欄に「2006/06/07」、「出荷希望日」の欄に「2006/06/08」、「納伝指定日」の欄に「2006/06/11」、「御得意先名」の欄に「丸井今井 函館」、「社内品番/品名」の欄に「<7729>8825B282エアーガーゼ」、「<7705>8825B282エアーガーゼ」、「<7675>8810F282エアーガーゼ」、「<7668>8810F282エアーガーゼ」、「色/サイズ」の欄に「P」、「B」、「P」、「B」、「数量」の欄に「6」、「6」、「10」、「10」、「得意先品番/値札品番・備考」の欄に「6116244」、「6116244」、「6114244」、「6114244」と、それぞれ記載され、「検品済 18.6.8」との表示のある印が押されている。 甲1-4は、納品伝票であり、「取引先名」の欄に「ウチノK.K」、「百貨店名」の欄に「マルイイマイ ハコダテ」、「A」の欄に「6116244」、「6114244」、「品名」の欄に「8825B282エアーガーゼ」、「8810F282エアーガーゼ」、「納品数量」の欄に「12」、「20」、「日付」の欄に「06年06月08日」、「納期」の欄に「06年06月11日」と、それぞれ記載され、「検品済 18.6.8」との表示がある印が押されている。 甲1-5は、仕入伝票であり、「取引先名」の欄に「ウチノK.K」、「百貨店名」の欄に「トウキュウ ホンテン」、「品名」の欄の5行すべてに「エアーガーゼ」、「納品数量」の欄に「5」、「5」、「5」、「2」、「4」、「日付」の欄に「06年06月20日」、「納期」の欄に「06年06月21日」と、それぞれ記載されている。 甲1-6は、仕入伝票であり、「百貨店名」の欄に「株式会社東急百貨店 本店」、「取引先名」の欄に「ウチノ」、「品名」の欄に「キカ.ソノタ8805G282」、「キカ.ソノタ8825B282」、「キカ.ソノタ8825B230」、「発注数量」の欄に「15」、「6」、「2」、「訂正後数量(納品数量)」の欄に「15」、「6」、「0」、「発注日」の欄に「06年06月19日」、「納品予定日」の欄に「06年06月21日」と、それぞれ記載されている。 甲1-1ないし甲1-6によれば、品名、品番、数量、日付に不自然なところはないから、平成18年6月に、内野株式会社から「丸井今井 函館」及び「株式会社東急百貨店 本店」に「エアーガーゼ」が販売されたことがうかがわれる。 そして、甲2-1の平成18年春夏用の商品カタログに販売された品番の「エアーガーゼ」が掲載されていることから、上記の「エアーガーゼ」の販売は、特段の秘密とされることなく、公然と行われたものと推認できる。 以上のことから、内野株式会社の「エアーガーゼ」が、少なくとも本件実用新案登録出願前である平成18年6月に、公然と販売すなわち譲渡されたと推認できる。 3 販売された「エアーガーゼ」の構成は検甲3-2の構成と同一か。 ア 検甲3-2は、「エアーガーゼ」のマスターサンプルであるか。 請求人は、検甲3-2は、株式会社ハートウエルが保管していたものであり、「エアーガーゼ」のマスターサンプルであると主張しているので、まずこの点について検討する。 検甲3-2には、次の事項が記載されたタグが付されている。 「得意先:内野(株)06SS 品名:エアーガーゼ 本番修正有り 2005.12.5 ●パイル・ヨコ糸にツイストフリーAD(無撚糸)を使用 ●糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」 及び 「野村」の捺印 甲7-4は、内野株式会社から株式会社ハートウェルあてのタオル試作発注依頼書であり、「品名」の欄に「エアーガーゼ」、「発注日」の欄に「2005年08月25日 木曜日」と、それぞれ記載されている。 甲7-5は、内野株式会社から株式会社ハートウェルあてのタオル試作決定連絡書であり、「品名」の欄に「エアーガーゼ」、「決定日」の欄に「2005年11月18日 金曜日」、「発売年月」の欄に「2006/02/01」とそれぞれ記載され、「商品明細」の欄において、「品種」の欄に「バスタオル」、「フェイスタ」、「ゲストタオ」、「配色」の欄の3行すべてに「B,P,W」、「品番」の欄に「8825B282」、「8810F282」、「8805G282」とそれぞれ記載され、「備考」の欄において「B、W配は展示会サンプルでO.Kです。P配は黄味の方のピンクの色のみ11/6の23358の40%濃度downビーカーに本番で修正して下さい。」と記載されている。 甲7-6は、製織指図書であり、「H17年11月19日」と記載され、「受註先」の欄に「内野(株)」、「本生産名」の欄に「エアーガーゼ GT」とそれぞれ記載され、「〔備考〕」の欄の右下に、「本番修正点」、「・P配のみ色変更あり」、「・パイル・緯糸にツイストフリーADを使用」及び「・糸WO2でソーピング時にケイコー入れに変更」と記載され、「印」の欄に「野村」の捺印がされている。 甲7-7は、製品規格書であり、「得意先」の欄に「内野株式会社」、「品名」の欄に「エアーガーゼ」、「得意先品番」の欄に「8825B282」、「8810F282」、「8805G282」とそれぞれ記載され、右上に「2005/12/2」と記載され、右下の「本番修正」の欄に「・P配のみ色変更あり」、「・パイル・緯糸にツイストフリーADを使用」及び「・糸WO2でソーピング時でケイコー入れに変更」と記載されている。 さらに、検甲3-2について、株式会社ハートウェルの担当者によって、次の説明がされている(甲14)。 「2005年9月に内野株式会社の2006年春夏展示会用のサンプルとして作成された。上記サンプルが、マスターサンプル(検甲第3号証-1及び検甲第3号証-2)として用いられた。 2005年12月5日に、当社のタオル事業部タオル営業部企画担当の野村美雪が、本番時に行われる修正内容及び注意事項を記載したタグを付けた。その後、その上司である山内幸浩(所属・担当は同じ)が、サンプルとタグの内容の確認を行った。 2011年末頃まで、上記マスターサンプルは、生産現場の確認用(製織の現場にて糸の縞割及び織組織の確認用、縫製の現場でミミ部分の縫製の確認用)として使用された。 2011年末に生産が終了した。 2012年1月頃、上記マスターサンプルは、製品倉庫の一角に移され、他の使用済みサンプルと一緒に段ボールケースに詰めて、保管されていた。」 「検甲第3号証-1のタグに記載の 「●P配のみ本番色修正あり」は、 P配、即ち、ピンク配色のみ、本番生産の際に色の微調整が行われ、他の色(ブルー、ホワイト)には染色に関する修正が無いことを意味している。 「●パイル・ヨコ糸にツイストフリーAD(無撚糸)を使用」は、 修正内容ではなく、注意事項である。 当社では無撚糸を使用した製品が多いため、間違って他の糸(無撚糸)を使用しないよう、注意を促す意味であえて記載している。 「●糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」は、 元の綿糸の色をWO2(無蛍光の白)にし、製織後のソーピング(洗浄工程)で蛍光増白剤を投入するという意味である。 展示会用のサンプルの段階では、ホワイト配色のみを「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れ」で作成し、先染めのピンク配色、ブルー配色は、白糸にWO1(蛍光増白剤入りの白)を使用している。しかし糸の段階で蛍光増白剤を入れ、生地を織り上げた後のソーピングを蛍光増白剤なしで行うと、糸に付けられた蛍光増白剤が落ちてしまい、ピンク配色、ブルー配色の白糸の部分とホワイト配色の白度が微妙に異なってしまうことが判ったため、本番生産時に微調整(修正)することにした。」 「[ウ タグにある捺印の「野村」というひとは、いかなる立場の人か。]に関して 野村は上記野村美雪である。」 「製品に添付されたタグに得意先名、シーズン、修正内容が記載されていることから、検甲第3号証-1及び検甲第3号証-2は、当社の社内の生産現場において、マスターサンプルとして使用していたことが判る。 逆に言うと、『得意先:内野(株)06SS 品名:エアガーゼ 本番修正有り 2005.12.5 「野村の検印」 「●P配のみ本番色修正あり」「●パイル・ヨコ糸にツイストフリーAD(無撚糸)を使用」 「●糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」』や、 『得意先:内野(株)06SS 品名:エアガーゼ 本番修正有り 2005.12.5 「野付の検印」 「●パイル・ヨコ糸にツイストフリーAD(無撚糸)を使用」 「●糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」』の情報が記載されたタグの付いた製品は、当社では、マスターサンプル以外には、考えられない。 マスターサンプルでなければ、上記情報のタグを、わざわざ、サンプルに付したりしない。 更に、マスターサンプルであるからこそ、2005年12月のものが、残されていたと言える。」 「生産現場において、本番のタオルとの照合は、各生産現場において、本番生産品のロット単位(1ロットに対して1回)で行っている。マスターサンプルを用いる生産現場は、製織、ミミ巻き(縫製)、検品になる。製織工程では縞割り(経糸の順列と本数)、表裏の色糸交替、織組織等の確認、ミミ巻き(縫製)工程では、縫い方、縫い糸の色の確認、検品工程では、外観、寸法、重量、触感の確認を行っている。 カットされる前の生地の状態である製織工程とミミ巻き(縫製)工程では、仕掛り中の生地1ロットに対し、マスターサンプルを付け合せて確認している。 検品工程では、任意に抜き取った代表サンプル1点とマスターサンプルを付け合せて確認している。 「検甲第3号証のマスターサンプル」は、本体のみでは完全でないが、タグに修正内容を付記することで、最終形が判る。 例えば、「甲第3号証のマスターサンプル」は、本番生産品の内容に対して、蛍光増白剤の投入方法が異なることと3色のバリエーションのうち1色(ピンク)だけに色の微調整が行われている以外は、製品としての本質的な部分(原材料、織組織、寸法、重量、デザイン、触感)が同一であることから、実質的に、マスターサンプルと同じ内容のタオルである。 マスターサンプルと照合する内容は工程毎に異なり、完全なサンプルでなくとも、修正内容を付記することでマスターサンプルとして使うことができ、再度サンプルを作成することによって発生する経費の節減、本番生産投入までの時間の短縮を目的として、実務上問題が無いと考えられる工程においては、一番本番生産品に近いサンプルに修正内容を付記したものをマスターサンプルとして使用している。」 甲7-4ないし甲7-7によれば、遅くとも平成17年8月頃、内野株式会社から株式会社ハートウェルへ「エアーガーゼ」の試作発注の依頼がなされ、同年11月ないし12月頃、株式会社ハートウェルにおいて「エアーガーゼ」の製造のための書面が作成され、当該書面において本番修正点(例えば、P配の色調整)の指示がなされたという経緯が推認できる。 甲14は、検甲3-2を製造した株式会社ハートウェルの担当者によって作成された書面であると認められること、甲14に記載された内容は、上記甲7-4ないし甲7-7によって推認される経緯と符号するものであること、及び「甲第14号証に記載された、株式会社ハートウェルの「専務取締役 村瀬 雄二」は、内野株式会社向け製品について、製造を含めて、全般にわたる責任者である。」との請求人の主張(第1回口頭審理調書)を踏まえれば、甲14に記載された内容に事実と異なるところがあるとは考えにくい。 前記甲7-4ないし甲7-7によって推認される経緯に加え、甲14における株式会社ハートウェルの担当者による説明を踏まえると、検甲3-2に付されたタグにおける「2005.12.5」という記載は、2005年12月5日を意味すると考えるのが自然である。また、甲14における「「●パイル・ヨコ糸にツイストフリーAD(無撚糸)を使用」は、修正内容ではなく、注意事項である。当社では無撚糸を使用した製品が多いため、間違って他の糸(無撚糸)を使用しないよう、注意を促す意味であえて記載している。」及び「●糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」は、 元の綿糸の色をWO2(無蛍光の白)にし、製織後のソーピング(洗浄工程)で蛍光増白剤を投入するという意味である。」との説明を踏まえると、前記タグにおける「本番修正有り」との記載は、同タグに記載された「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という点を指すと推認できる。 さらに、前記タグには「本番修正有り」、「パイル・ヨコ糸にツイストフリーAD(無撚糸)を使用」及び「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という留意事項であることをうかがわせる記載があることから、当該タグは、検甲3-2の織物が爾後に参照されることを前提として付されたものと推認できる。 検甲3-2に付されたタグの記載、甲7-4ないし甲7-7及び甲14を総合すると、検甲3-2は、内野株式会社の「エアーガーゼ」の製造にあたり、株式会社ハートウェルにおいて、本番修正の「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という点を除き、マスターサンプルとして、製織の現場等で製造品との照合のために用いられたものであると推認できる。 イ 販売された「エアーガーゼ」の構成は検甲3-2の構成と同一か。 株式会社ハートウエルからの「納品書」(甲8-1ないし甲8-12)及び内野株式会社の「入荷記録」(甲9-1ないし甲9-6)によれば、少なくとも平成18年4月?同年7月の期間に、「エアーガーゼ」が株式会社ハートウェルから内野株式会社に納品されたことが推認できる。 上記アで検討したとおり、検甲3-2は、本番修正の「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という点を除き、「エアーガーゼ」の製造にあたり、製造品との照合に用いられたマスターサンプルであると認められるから、株式会社ハートウェルで製造され、内野株式会社へ納品され、さらに内野株式会社から公然と販売された「エアーガーゼ」の構成は、本番修正の「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という点を除き、検甲3-2の構成と同一であると推認できる。 4 本件考案1、2は、検甲3-2の構成と同一、又は検甲3-2の構成に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものであるか。 ア 検甲3-2の構成 甲4-1は、公益財団法人日本繊維検査協会東京事業所の試験証明書であり、次の記載が認められる。 (ア)「No.060026」、「特許庁長官殿」、「品名 エアガーゼ」、「試験項目 組織分析」、「平成25年6月3日提出の資料に対する試験結果は、下記のとおりです。」、「『得意先:内野株式会社06SS、品名:エアガーゼ、本番修正有り、2005.12.5』と記載された下げ札が付けられた試料(写真1)による組織は、図1の組織図によって示される。また、その断面図は、図2の断面図によって示される。」 (イ)「上記試料は二重織りである。その第1織組織に用いられている経糸A,B、緯糸○1,○3は綿95%,ポリエステル5%の無撚状の糸である。第2組織に用いられている経糸C,D、緯糸○2,○4は綿100%の撚糸である。そして、経糸A,B及び緯糸○1,○3からなる第1の織組織と、経糸C,D及び緯糸○2,○4からなる第2織組織とを備え、第1織組織と第2織組織とは表裏交替しており、図2の断面図で示される断面特徴の二重織物である。」 (ウ)また、写真1において、下げ札が付された白色の試料が見てとれる。前記写真1において、前記下げ札の記載は鮮明でないところがあるが、当該下げ札と検甲3-2の織物に付されたタグとの間に、明らかに異なるところは認められない。 ここで、上記(ア)における下げ札についての記載は検甲3-2の織物に付されたタグの記載と符号すること、及び上記(ウ)のとおり写真1の白色の試料の下げ札が、検甲3-2の織物に付されたタグと明らかに異なるところは認められないことから、甲4-1の試験証明書において試験対象とされた試料は、請求人が説明するとおり(無効審判請求書9頁下から4行?下から3行)、検甲3-2の織物であると推認される。 そして、甲4-1は、公益財団法人日本繊維検査協会東京事業所という中立・公平な立場にあり、かつ、繊維製品について専門的な検査又は試験を行う能力を有していると考えられる機関によって作成された書面であるから、その内容は正しく真実が記載されていると認めるのが相当である。 以上のことから、前記試料すなわち検甲3-2の織物は、次の構成を有していると認めるのが相当である。 「経糸A,B及び緯糸○1,○3からなる第1織組織と、経糸C,D及び緯糸○2,○4からなる第2織組織とを備えた二重織物であって、前記第1織組織に用いられている経糸A,B、緯糸○1,○3は綿95%,ポリエステル5%の無撚状の糸であり、前記第2織組織に用いられている経糸C,D、緯糸○2,○4は綿100%の撚糸であり、前記第1織組織と前記第2織組織とは表裏交替している二重織物。」 イ 引用考案 検甲3-2は、本番修正の「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という点を除き、「エアーガーゼ」の構成についてのマスターサンプルであると認められるところ、本番修正の「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という点は、蛍光増白剤の使用に関する修正であるから(甲14)、糸の種類(撚糸、無撚糸)、糸の成分及び織組織とは無関係である。 したがって、株式会社ハートウェルにおいて本番で製造された「エアーガーゼ」は、上記の検甲3-2の織物の構成と、本番修正の「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という点を除き、同一の構成を有していたと推認でき、株式会社ハートウェルから内野株式会社へ納品され、内野株式会社から客先へ公然と販売すなわち譲渡された「エアーガーゼ」もまた、検甲3-2の織物の構成と、本番修正の「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という点を除き、同一の構成を有していたと推認できる。 したがって、「エアーガーゼ」が公然と譲渡されたことにより、次の考案(以下「引用考案」という。)が、本件実用新案登録出願前に、公然実施されたといえる。 「経糸A,B及び緯糸○1,○3からなる第1織組織と、経糸C,D及び緯糸○2,○4からなる第2織組織とを備えた二重織物であって、前記第1織組織に用いられている経糸A,B、緯糸○1,○3は綿95%,ポリエステル5%の無撚状の糸であり、前記第2織組織に用いられている経糸C,D、緯糸○2,○4は綿100%の撚糸であり、前記第1織組織と前記第2織組織とは表裏交替している二重織物。」 ウ 本件考案1について 本件考案1と引用考案とを対比する。 引用考案における「第1織組織に用いられている経糸A,B、緯糸○1,○3は綿95%,ポリエステル5%の無撚状の糸であり」という事項及び「第2織組織に用いられている経糸C,D、緯糸○2,○4は綿100%の撚糸であり」という事項は、それぞれ本件考案1における「第1の織組織を構成する経糸及び/または緯糸に無撚糸を用い」という事項及び「第2の織組織を構成する経糸及び緯糸に撚糸を用いる」という事項に相当する。 そして、引用考案における「第1織組織」、「第2織組織」及び「二重織物」は、それぞれ本件考案1における「第1の織組織」、「第2の織組織」及び「多重織物」に相当する。 引用考案の二重織物において、第1織組織と第2織組織とは、無撚糸と撚糸という糸の種類において異なるから、前記第1織組織の経糸及び緯糸と前記第2織組織の経糸及び緯糸とが表裏交替することにより模様が発現し、表側模様層と裏側模様層が構成されることは明らかである。また、引用考案の二重織物において、第1織組織と第2織組織の表裏交替は、表裏の模様設計に対応して行われていることは明らかである。 したがって、本件考案1と引用考案とは、次の点で一致し、相違点はない。 (一致点) 「少なくとも第1の織組織と第2の織組織を備えた多重織物において、 前記第1の織組織の経糸及び緯糸と、前記第2の織組織の経糸及び緯糸とが、表裏の織模様設計に対応して表裏交替することにより前記多重織物の表側模様層と裏側模様層が構成され、 前記第1の織組織を構成する経糸及び/または緯糸に無撚糸を用い、 前記第2の織組織を構成する経糸及び緯糸に撚糸を用いることを特徴とする多重織物。」 よって、本件考案1は、引用考案と同一である。 エ 本件考案2について 本件考案2は、本件考案1に、「前記第1,第2の織組織を構成する経糸及び緯糸がいずれも綿糸である」という特定事項を付加したものである。 本件考案2と引用考案とを対比する。 引用考案において、第2の織組織の経糸及び緯糸は、「綿100%」であるから、綿糸である。 よって、本件考案2と引用考案とは、本件考案1と引用考案との一致点(上記ウ参照)で一致し、次の点(以下「相違点」という。)で相違する。 (相違点) 糸の成分について、本件考案2においては、「前記第1,第2の織組織を構成する経糸及び緯糸がいずれも綿糸である」と限定されているのに対し、引用考案においては、第2の織組織の経糸及び緯糸は綿糸であるものの、第1の織組織を構成する経糸及び緯糸は、「綿95%,ポリエステル5%」であり、必ずしも「綿糸」とはいえない点。 上記相違点について検討する。 引用考案は、「エアーガーゼ」なるタオルの生地の構成である。そして、経糸及び緯糸のすべてが綿糸からなるタオル生地は周知であり、また、無撚糸であって綿100%のもの、及びそのような無撚糸を用いたタオルは、いずれも本件実用新案登録出願前に知られている(甲12)。 したがって、タオル生地の構成である引用考案において、第1の織組織を構成する経糸及び緯糸を綿100%の綿糸に変更して、第1及び第2の織組織の経糸及び緯糸をいずれも綿糸とすること、すなわち上記相違点2に係る本件考案2の構成とすることは、当業者がきわめて容易に想到し得ることである。 そして、本件考案2において、「前記第1,第2の織組織を構成する経糸及び緯糸がいずれも綿糸である」と限定することにより、当業者が予期し得ない格別顕著な効果が奏されるとは認められない。 したがって、本件考案2は、引用考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。 5 被請求人の主張について 被請求人は、検甲第3号証-2と製造・販売品との同一性について、客観的・具体的な証拠はないと主張している(第1回口頭審理調書)。 しかしながら、上記(3ア)したとおり、検甲3-2に付されたタグの記載、甲7-5ないし甲7-7、及び甲14を総合すると、検甲3-2は、本番修正の「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という点を除き、「エアーガーゼ」の構成についてのマスターサンプルであると認めるのが相当であり、実際に販売された「エアーガーゼ」が、本番修正の「糸WO2を使用しソーピング時にケイコー入れに変更」という点を除き、検甲3-2の構成を有していると推認できることも、上記(3イ)したとおりである。 第6 むすび 以上のとおり、本件考案1は、その出願前に日本国内において公然実施をされた考案であり、実用新案法第3条第1項第2号に該当する。また、本件考案2は、その出願前に、日本国内において公然実施をされた考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。 よって、本件考案1及び2についての実用新案登録は、実用新案法第37条第1項の規定により無効とすべきものである。 以上のとおりであるから、本件考案1及び2についての実用新案登録は、請求人の主張する無効理由により、無効とすべきである。 審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2013-10-29 |
出願番号 | 実願2009-5670(U2009-5670) |
審決分類 |
U
1
124・
112-
Z
(D03D)
U 1 124・ 121- Z (D03D) |
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
河原 英雄 |
特許庁審判官 |
千葉 成就 紀本 孝 |
登録日 | 2009-09-30 |
登録番号 | 実用新案登録第3154736号(U3154736) |
考案の名称 | 多重織物 |
代理人 | 宇高 克己 |
代理人 | 前島 大吾 |
代理人 | 菅河 忠志 |
代理人 | 植木 久一 |
代理人 | 植木 久彦 |