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審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て不成立) B65D |
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管理番号 | 1362384 |
判定請求番号 | 判定2019-600036 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案判定公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2019-11-29 |
確定日 | 2020-05-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3208933号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す容器は、登録第3208933号実用新案の技術的範囲に属する。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す容器(以下、「イ号物件」という。)が、実用新案登録第3208933号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 なお、判定請求書の「4 請求の趣旨」では、判定の対象となる請求項の記載はないが、令和2年1月17日付けの当審よりの審尋に対する、令和2年1月27日提出の請求人からの回答書の1.(2)には、「実用新案登録第3208933号【実用新案登録請求の範囲】記載【請求項1】上下ボトルの内ネジ、外ネジにより、2つに分離、及び結合することのできる特徴をもつ容器であることに対し、イ号容器は3点の部品が結合される事から、相違である事を求めるものであります。」と記載されていることから、技術的範囲について判定を求める考案は、請求項1に係る考案であると認める。 2.本件考案 (1)手続の経緯 本件考案に係る実用新案登録出願(実願2016-4259号)は、平成28年8月16日に被請求人によって出願され、平成29年2月8日にその実用新案権の設定登録がされ、同年3月2日に登録実用新案公報(登録実用新案第3208933号公報)が発行されたものである。そして、令和元年11月29日に本件判定の請求がされたものであり、令和2年1月17日付けの当審よりの審尋に対して、令和2年1月27日に請求人から回答書(以下、「回答書」という。)が提出されたものである。さらに、令和2年2月7日付けの請求書副本の送達通知において、被請求人に期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人からは何らの応答もない。 (2)本件考案 本件考案は、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲及び図面(以下、「本件考案明細書」という。)の記載からみて、平成28年11月15日の手続補正により補正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって、符号A?Dを付して分説すると次のとおりである。 「A 円柱状の2つのボトルから成り、 B 上下に配置・構成される容器であり、 C 二つのボトルを上段になるボトルの内ネジと、下段になるボトルの外ネジにより結合、及び分離することのできる D 特徴をもつ飲食物収容用途の容器。」 (3)本件考案の課題及び効果 ア.本件考案明細書 本件考案明細書には、本件考案の課題及び効果等に関連して、以下の記載がある。なお、下線は当審が付したものである。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本考案は、食料や飲料用ボトルを分解&結合させることのできる容器である。 【背景技術】 【0002】 【先行技術文献】 特に携帯したボトルの飲料物を開栓し飲む毎に残っているものの炭酸の抜けや、温度変化が進み易く悩んでいた。」 (イ)「【考案が解決しようとする課題】 【0005】 1、 必要以上に内容物を空気にふれさせる事なく飲み物の温度変化を遅らせたり、炭酸の抜けを遅らせたりする。 2、 2種類の違った飲食物を保存&携帯を可能にする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 保存したい飲食物の量を2つに分け、それぞれを独立して保存&携帯させるよう容器を2つにする。 【考案の効果】 【0007】 2つの容器をそれぞれ独立させることにより、飲み物の温度変化を遅らせたり、2種類の異なる飲み物を携帯させたりする事が可能になる。 上用ボトルの下部をもう片方のボトル肩部にねじ込み固定させることにより、同時に携帯&持運びしやすくする事が可能になる。」 (ウ)「【図面の簡単な説明】 【0008】 【図1】完成図 【図2】上段ボトル 【図3】下段ボトル」 (エ)「【発明を実施するための形態】 【0009】 図1は容器ボトル上下の2つを連結させた図である。 ボトルは上段と下段の計2段に分かれている。 図2は上段用ボトル図面である。 上段には、水量を調整する役目と、氷ストッパーの役目をする内蓋、及びパッキングが内蔵されている。 上段用ボトルの下部は内ネジになっており、下段用ボトルと連結させる事が可能な構造である。 図3は下段用ボトルの図である。 飲料出し入れ口の蓋はペットボトルのキャップが栓として使用可能な構造である。また、 肩部に上段用ボトルと連結させる為のネジがある。」 (オ)「【実施例】 【0010】 コーヒーとお茶、水とジュース、麺と麺つゆ、ヨーグルトとソースなど異なった種類の飲食物の保存&持運びが可能。また、炭酸入りジュースを2分割して携帯し、順に使用することにより、必要以上の炭酸抜けを遅らせる。」 (カ)「 【図1】 ![]() 【図2】 ![]() 【図3】 ![]() 」 イ.本件考案の課題及び効果 上記ア.(ア)?(カ)の記載からみて、本件考案は、従来、携帯したボトルの飲料物を開栓し飲む毎に残っているものの炭酸の抜けや、温度変化が進み易く悩んでいたということを前提に、必要以上に内容物を空気にふれさせる事なく飲み物の温度変化を遅らせたり、炭酸の抜けを遅らせたりすること、2種類の違った飲食物を保存&携帯を可能にすることを課題としたものであると認められる。 そして、本件考案は、特に「二つのボトルを上段になるボトルの内ネジと、下段になるボトルの外ネジにより結合、及び分離することのできる」ものとしたため、2つの容器をそれぞれ独立させることにより、飲み物の温度変化を遅らせたり、2種類の異なる飲み物を携帯させたりする事が可能になり、上用ボトルの下部をもう片方のボトル肩部にねじ込み固定させることにより、同時に携帯&持運びしやすくする事が可能になるという効果を奏するものである。 3.イ号物件 回答書には、判定請求書に添付されたイ号図面の上下各ボトルが結合した状態の断面図(以下、「イ号断面図」という。)と、イ号物件と本件考案の各構成の対応関係について記載した別紙1(以下、「別紙1」という。)が添付されている。 (1)判定請求書の記載事項 判定請求書の5(1)には、「請求人が開発を進めているイ号図面容器」と記載され、同じく5(4)には、「イ号考案においては、上段ボトルの底蓋と下段ボトルの上蓋を一括化し、その口径の何れかからかも飲料水を飲む事が出来、且つ急角度にする必要性がない。また、本体部品で連結する為、外部からの部品を要せず、イ号案件のみにて商品として成立するものである。」と記載され、同じく5(5)には、「本件登録実用新案においては、外部部品としてペットボトルキャップを利用した上段と下段のボトル 結合である事に対し、イ号考案では、ボトル本体の一部分を結合させており、本体のみで結合が完了し、外部部品の影響を受ける事がない。」と記載されている。 (2)回答書の記載事項 回答書の1.(1)には、「請求人が開発しているものは、上部ボトル、下部ボトル蓋、下部ボトル本体に備わったネジにより結合するものであります。」と記載され、同じく「2.(1)」には、「イ号図面容器:図面7.記載の下蓋を上下各ボトルの結合媒体として結合を行う」と記載されている。 (3)イ号断面図の記載事項 ア.イ号断面図には、φ60の上蓋と上ボトル外殻が記載されている(なお、イ号断面図の各構成の名称は、別紙1の図面名称と日本語の対応関係に基づき、日本語で記載している。以下同じ)。 イ.イ号断面図には、φ60の下ボトル外殻が記載されている。 ウ.イ号断面図には、上ボトル外殻と下ボトル外殻とが上下に配置・構成されている図が記載されている。 エ.イ号断面図には、上ボトル外殻の底の内側としたぶたの外側とが結合されている図が記載されている。 (4)上記(1)?(3)から、イ号物件について、以下のように理解できる。 ア.上記(1)から、イ号物件は、飲料水を収容する容器であること。 イ.上記(2)及び(3)ウ.から、イ号物件の容器は、上部ボトルと下部ボトルからなり、上部ボトルと下部ボトルは上下に配置・構成されていること。 ウ.上記(2)及び(3)ア.から、イ号物件の上部ボトルは円柱状であること。 エ.上記(2)及び(3)イ.から、イ号物件の下部ボトルは円柱状であること。 オ.上記(2)及び(3)エ.から、イ号物件は、上部ボトルの内ネジと下蓋の外ネジにより上部ボトルと下部ボトルを結合、及び分離することのできるものであること。 (5)上記(4)から、イ号物件は、以下の構成a?dを備えるものといえる。 「a 円柱状の上部ボトルと円柱状の下部ボトルから成り、 b 上下に配置・構成される容器であり、 c 上部ボトルと下部ボトルを上部ボトルの内ネジと、下部ボトルの蓋の外ネジにより結合、及び分離することのできる d 飲料水を収容する容器。」 4.対比・判断 (1)構成要件Cの充足性について まず、構成要件Cの充足性について検討する。 ア 「ボトル」の意義について (ア)本件考案明細書の【0009】に、「図1は容器ボトル上下の2つを連結させた図である。」、「ボトルは上段と下段の計2段に分かれている。」と記載され、 本件考案明細書の図2の上段用ボトル図面には、上段用ボトルの構成として、上蓋、上中間蓋及び上ボトルが図示され、 (イ)同じく図3の下段用ボトルの図には、ペットボトルキャップを備えた下ボトルが図示され、 (ウ)さらに、これらの上段用ボトルと下段用ボトルにより得られる効果について、【0007】に、「2つの容器をそれぞれ独立させることにより、飲み物の温度変化を遅らせたり、2種類の異なる飲み物を携帯させたりする事が可能になる。」と記載されている。 (エ)【0005】の「必要以上に内容物を空気にふれさせる事なく」、【0006】の「保存したい飲食物の量を2つに分け、それぞれを独立して保存&携帯させるよう容器を2つにする」及び上記(ウ)の記載によれば、本件考案における「容器」とは内容物を空気に必要以上に触れさせずに保存・携帯が可能なものを指し、そのためには蓋を伴うことが必須であるといえる。 また、上記(ア)の記載(特に「容器ボトル」)から、本件明細書において「容器」及び「ボトル」は区別なく用いられていると解される。 さらに、本件考案の「ボトル」についても、【0002】に「携帯したボトルの飲料物を開栓」との記載があるとおり「栓」が施されたものを指すと解され、このことは、上記(イ)において「下ボトル」の図として「ペットボトルの蓋」が備わった構成が描かれていることと整合する。 そして、請求項1において特定される「飲食物収容用途の容器」に対しては、蓋を含め「ボトル」と呼称することが、「ペットボトル」などの用例からみても一般的である。 また、逆に、本件考案の「下段になるボトル」について、蓋を含まないボトル本体部分のみを指すとの解釈を根拠づける記載は、本件登録実用新案公報の何れの箇所にも見いだせない。 そうすると、構成要件Cの「二つのボトル」の「ボトル」とは、それぞれの「ボトル」単体で液体を収容する容器として機能し得るものであり、ボトルを閉じる蓋を備えたものも含むものと解される。 イ 「下段になるボトルの外ネジ」について 構成要件Cにおいて、「下段になるボトルの外ネジ」の形成箇所についての特定はないこと、及び「下段になるボトルの外ネジ」の技術的意義は、「上段になるボトルの内ネジ」と「結合、及び分離」することにあることが明らかであることから、構成要件Cの「下段になるボトルの外ネジ」は、「上段になるボトルの内ネジ」との間で「結合、及び分離」することができる態様のものであれば足りると解される。 そして、上記アにおいて説示したとおり、本件考案の「ボトル」は蓋をも備えるものと解されるから、「外ネジ」には、例えば「ボトル」の蓋に形成される「ネジ」が含まれると解することができる。 そして、このような解釈をしても、本件考案明細書の【0005】に記載された本件考案の課題は解決され、上記ア(ウ)の効果を得ることができるといえる。 この点、結合箇所が下段になるボトルの「肩部」であることによる効果の記載が【0007】にあるが、「路肩」などの用例からも明らかなとおり、構造体の「肩」とは水平面が下方に屈曲する部位を指す用語であるから、蓋がボトルの一部を成すとの解釈に立っても、前記「肩部」を該蓋の上面近傍(の側面)として観念することができるといえるし、当該段落に記載された、肩部で結合することによる「上用ボトルの下部をもう片方のボトル肩部にねじ込み固定させることにより、同時に携帯&持運びしやすくする事が可能」となる効果についても、ボトル上部の蓋に形成した外ネジによって上下のボトルを結合した場合にも得られることが明らかである。 ウ したがって、イ号物件の構成cにおける「上部ボトルの内ネジと、下蓋の外ネジ」により二つのボトルを「結合、及び分離する」構成は、本件考案の構成要件Cの「二つのボトルを上段になるボトルの内ネジと、下段になるボトルの外ネジにより結合、及び分離する」構成を充足する。 以上の認定判断は、イ号物件について請求人が判定請求書5(5)において「イ号考案では、ボトル本体の一部分を結合させており、本体のみで結合が完了し、」と主張することとも整合する。 エ なお、請求人は上記主張に続き(結合に)「外部部品の影響を受けることがない」とも主張し、本件明細書にも下段のボトルの蓋にペットボトルの蓋を使用する態様が記載されているが、これは、上記回答書において請求人が本件請求の対象から排除した本件請求項2に係る考案についての主張及び態様であるし、このような態様が本件考案に含まれること自体は上記本件考案(特に構成要件C)の解釈と矛盾しない。 オ 以上アないしエのとおりであるから、イ号物件の構成cは、本件考案の構成要件Cを充足する。 (2)構成要件Aの充足性について イ号物件の構成aの「円柱状の上部ボトル」と「円柱状の下部ボトル」はいずれも円柱状のボトルであるから、イ号物件の構成aは、本件考案の構成要件Aを充足する。 (3)構成要件Bの充足性について イ号物件の構成bと本件考案の構成要件Bは、いずれも「上下に配置・構成される容器」であるから、イ号物件の構成bは、本件考案の構成要件Bを充足する。 (4)構成要件Dの充足性について イ号物件の構成dの「飲料水を収容する容器」は、本件考案の構成要件Dの「飲食物収容用途の容器」に相当するから、イ号物件の構成dは、本件考案の構成要件Dを充足する。 5.むすび 以上のとおり、イ号物件について、本件考案の構成要件A?Dを、すべて充足するから、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属するものである。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
イ号図面![]() 請求人提出の回答書 ![]() ![]() ![]() |
判定日 | 2020-05-13 |
出願番号 | 実願2016-4259(U2016-4259) |
審決分類 |
U
1
2・
1-
YB
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 武内 大志 |
登録日 | 2017-02-08 |
登録番号 | 実用新案登録第3208933号(U3208933) |
考案の名称 | ツインボトル |