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審決分類 |
審判 F24F |
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管理番号 | 1374981 |
審判番号 | 無効2020-400003 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2020-08-19 |
確定日 | 2021-05-24 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3167699号実用新案「換気口」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件無効審判の請求に係る実用新案登録第3167699号(以下「本件登録」という。)の請求項1ないし3に係る考案についての出願は、平成22年9月30日に出願した特願2010-221205号を、平成23年2月22日に実願2011-924号として実用新案登録出願に変更したものであって、平成23年4月13日にその考案について実用新案権の設定登録がなされた。 そして、その後の本件登録に係る手続の概要は、以下のとおりである。 平成28年 9月20日 実用新案技術評価請求 同年10月21日 実用新案技術評価の通知 令和 2年 8月19日 本件無効審判の請求 同年10月 9日 審判事件答弁書の提出 同年12月18日 審理事項通知書 令和 3年 2月 1日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人) 同年 2月15日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 同年 3月 2日 一部請求取下書の提出、口頭審理 第2 本件考案 本件登録の請求項1ないし3に係る考案(以下「本件考案1」ないし「本件考案3」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 フィルター囲み部(C10)の内側に配したフィルター(C20)を、フィルター前面当接部(C30)とその後方に取り付けられるフィルター押さえ具(C40)の間に挟んで保持するようにしたフィルター着脱機構(C)を有し、フィルター囲み部(C10)とフィルター押さえ具(C40)に、互いの相対回転により係脱する係脱手段(C12)(C41)を設けており、フィルター囲み部(C10)に設けた係脱手段(C12)は、前側及び後側にそれぞれ設けた係止部(C12a)(C12b)からなるものとし、フィルター(C20)の厚みに応じて前側及び後側のいずれかの係止部(C12a)(C12b)を選択してフィルター押さえ具(C40)を取り付けられるようにしていることを特徴とする換気口。 【請求項2】 前側及び後側の係止部(C12a)(C12b)は、フィルター囲み部(C10)に形成した切欠部(C11)における周回方向に延びるように形成された凹部である請求項1記載の換気口。 【請求項3】 外枠(A)と、外枠(A)に着脱可能としたガラリー(B)からなり、ガラリー(B)にフィルター囲み部(C10)を設け、その切欠部(C11)の内側において後方に延びる掛止具(C11a)を設けており、外枠(A)とガラリー(B)との相対回転にともなって掛止具(C11a)と外枠(A)の内周面に設けた突起(A11)が係脱するようにしている請求項2記載の換気口。」 第3 請求人の主張の概要 請求人は、審判請求書の「6.請求の趣旨」において、「登録第3167699号実用新案の実用新案登録請求の範囲の請求項1、2及び3に係る考案についての実用新案登録を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めていた。 その後、請求人は令和3年3月2日に、請求項3に係る無効審判の請求を取り下げる旨の一部請求取下書を、被請求人の同意書を添付して提出した。 令和3年3月2日の口頭審理において、以上の点を含め、請求人のした「審判請求の趣旨」、「請求の理由」及び「口頭審理陳述要領書」については、請求項3に係る全ての主張を取り下げたものとし、請求人が主張する無効理由は、概略、以下のとおりに整理されることを、請求人及び被請求人に確認し、両者は了解した(以下甲各号証について、「甲第1号証」を「甲1」等という。)。 無効理由1:本件考案1は、甲2に記載された考案並びに甲3及び甲4に記載された周知技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、請求項1に係る実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 無効理由2:本件考案2は、甲2に記載された考案、甲3及び甲4に記載された周知技術並びに甲5及び甲6に記載された周知技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、請求項2に係る実用新案登録は、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (証拠方法) 甲1 :本件登録の実用新案技術評価書 甲2 :特開2007-309557号公報 甲3 :特開2010-125391号公報 甲4 :特開平9-141026号公報 甲5 :特開2009-174774号公報 甲6 :特開2000-265711号公報 甲20:換気口製品を請求人が撮影した写真 なお、甲1ないし甲6、甲20の書証の成立に争いはない。審判請求書には、上記の証拠の他に甲7ないし甲19が添付されていたが、甲7ないし甲19はいずれも無効審判の請求が取り下げられた請求項3の無効理由に係るものである。 第4 被請求人の主張の概要 これに対して、被請求人の主張は、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び口頭審理の内容を総合すると、概略、本件登録は請求人が主張する無効理由を有していないから、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」というものである。 第5 甲各号証の記載 1 甲2について (1)甲2の記載 甲2には、以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。 ア 「【0026】 図3乃至図6において、前記給排気口1は給排気口本体2と、前記給排気口本体2の内部の前面開口2a側即ち室内側から収納されたブラシ体21と、前記ブラシ体21の前方即ち室内側から該ブラシ体21のブラシ22に当接して取付けられたフィルタ体31と、前記フィルタ体31の前方に取付けられ、前記給排気口本体2の前面開口2aの全体を覆うカバー41とで構成されており、各部材は分解できるようになっている。前記給排気口本体2、ブラシ体21のブラシ取付枠23、フィルタ体31のフィルタ保持枠33及びカバー41はそれぞれ合成樹脂の一体成形により形成されている。 【0027】 まず、前記給排気口本体2は円筒部3の一端側に環状板からなる鍔部4が一体に形成されており、前記鍔部4の中央部に設けられた穴5の内径は前記円筒部3の内径と同一に形成されている。なお、前記円筒部3の外径は室内壁61に設けられた壁穴の内径と略同一に形成されている。前記鍔部4の周縁には後述するカバー41のフランジ44が外側から嵌合する円弧板状の嵌合壁6が前面即ち前記円筒部3と反対側に立設されている。前記嵌合壁6は周方向に等間隔で4個設けられており、円弧長さはいずれも同一で、各嵌合壁6間の4箇所の隙間は室外から給排気口本体2内に流入した空気を室内に送出するための通気口7を形成している。但し、前記嵌合壁6は4個に限られるものではない。前記鍔部4の外周側壁4aには前記カバー41の取着を容易ならしめるため、位置合わせの指標となる目印線4bが付されている。前記目印線4bは刻印、罫書き線によって形成してもよく、突条によって形成してもよい。なお、カバー41を給排気口本体2の所定位置に取付ける際の位置合わせ手段は前記目印線4bに限られるものではない。」 イ 「【0029】 更に、図7及び図8に示すように、前記鍔部4には給排気口本体2を室内壁62に取付けるための取付ねじ51が挿通されるねじ孔11が複数箇所に設けられている。また、前記鍔部4における互いに反対側となる2箇所には周方向に沿って一定長さの円弧状のガイド孔12が設けられており、その一端部には後述するカバー41のガイド突起46の頭部である係止突部46bが挿入される挿入口12aが形成されている。前記ガイド孔12の長さはカバー41のガイド突起46が回動するストロークより少し大きくしてある。」 ウ 「【0031】 前記板ばね14の両側部において半円状に膨出した部分は嵌合凸部14b及びストッパ14cを構成する。前記板ばね14の嵌合凸部14bは先端部分が鍔部4における環状の段部側壁4cの2箇所に設けられた窓孔4dから内部側に臨み、フィルタ体31のフィルタ保持枠33の外周部に形成された後述する嵌合凹部34aと嵌合するようになっている。前記板ばね14の嵌合凸部14bにより、前記フィルタ体31は支持軸9を軸として回動するとき、通気口7の開度が1/4ずつ変化する位置で仮保持される。なお、板ばね14の付勢力に抗してフィルタ体31に回動方向の一定以上の力を加えれば、前記板ばね14は中間の反転部14aを軸に互いに近接する方向に弾性的に後退し、仮保持している前記嵌合凹部34aとの嵌合が解除されて、前記フィルタ体31は回動を許容され、次の位置に向けて回動する。」 エ 「【0034】 次に、フィルタ体31は、図6、図14等に示すように、フィルタ32をフィルタ保持枠33に取着して成る。前記フィルタ32は防虫ネット等からなり、材質、メッシュ等は室内に侵入する異物の性状に対応して適宜選択すればよく、合成樹脂ネットや金属ネット等を使用できる。前記フィルタ保持枠33は外周部に円環枠部34が形成され、中央部に前記給排気口本体2の支持軸9が挿通する軸孔部35が形成され、前記円環枠部34と軸孔部35とは十字形状に配置された連結材36によって連結された形状に形成されている。前記軸孔部35は周縁部の2箇所に前記給排気口本体2の支持軸9の係合突部10が嵌入する嵌合溝35aが設けられている。前記フィルタ32はフィルタ保持枠33に熱溶着、接着剤等によって接合することができる。 【0035】 前記フィルタ保持枠33は更に円環枠部34の外周端部に前記給排気口本体2の板ばね14の嵌合凸部14bと嵌合する嵌合凹部34aが複数箇所に所定間隔で形成されている。なお、前記嵌合凹部34aはフィルタ体31の回動時に円滑に前記給排気口本体2の板ばね14の嵌合凸部14bと嵌合するよう該嵌合凸部14bと略同形の円弧状の切欠に形成するのが望ましい。更に、前記円環枠部34の180度離間した2箇所には後述するカバー41の裏面に突出するピン受スリーブ45内に嵌入するピン体37がカバー41側に向けて立設されている。前記ピン体37は前記カバー41のピン受スリーブ45内に嵌入した状態でカバー41を回動することにより該カバー41の動作に連動してフィルタ体31を回動せしめるためのものである。したがって、フィルタ体31を回動できればよいから、前記ピン体37は2個に限らず、1個或いは3個以上設けてもよい。また、前記ピン体37はフィルタ体31の円環枠部34以外の位置、例えば、中央寄りの連結材36に立設してもよいが、空気流通上の支障となるおそれもあるので、前記円環枠部34に立設するのが望ましい。」 オ 「【0038】 前記カバー本体42の裏面のフランジ44は該カバー本体42の外周より僅かに内側の位置において該外周に沿って円弧状に設けられており、周方向に等間隔に4個形成されている。前記フランジ44は前記給排気口本体2の鍔部4に等間隔で立設された4個の嵌合壁6の外面に嵌合し、給排気口本体2の支持軸9を中心に前記嵌合壁6の外面に沿って回動するようになっている。前記フランジ44の周方向の長さは前記給排気口本体2の嵌合壁6間の通気口7より僅かに大きく形成されており、全閉状態に設定したときは、前記通気口7全体が閉塞されて空気路は完全に遮断される。また、全開状態に設定したときは、嵌合壁6と全体的に重なり合って、通気口7を全開状態とする。そして、その中間位置に設定したときは、空気路の遮断面積に応じて通気量が調整される。これらの前記カバー41のフランジ44及び給排気口本体2の鍔部4の嵌合壁6は請求項の空気量調整部に相当する。」 カ 「【0040】 更に、前記カバー本体42の裏面には、前記フィルタ本体31のピン体37と対応する位置に該ピン体37が嵌入するピン受スリーブ45が立設されている。また、前記給排気口本体2の鍔部4のガイド孔12の挿入口12aと対応する位置には略L字棒状のガイド突起46が立設されている。前記ガイド突起46は前記給排気口本体2のガイド孔12内を移動する細板状のスライド部46aと、前記スライド部46aの頭部に形成されてカバー本体42の中心側に向けて突出する係止突部46bとで形成されている。前記係止突部46bは前記給排気口本体2のガイド孔12の挿入口12aからガイド孔12内に挿入され、前記ガイド孔12の周縁部に係止してカバー41が給排気口本体2から抜脱するのを防いでいる。」 キ 「【0042】 前記カバー41は給排気口本体2に着脱自在に取付けられており、給排気口本体2から取外すには、カバー41のガイド突起46を給排気口本体2のガイド孔12に沿って回動し、挿入口12aに達したら、前記ガイド突起46の係止突部46bと前記給排気口本体2のガイド孔12との係止が解除されるので、そのまま前方に引出せばよい。」 ク 「【0045】 次に、図16に示すように、フィルタ体31の前方から給排気口本体2の前面開口2aにカバー41を取付ける。このとき、カバー41のフランジ44の一方の端部を給排気口本体2の鍔部4の外周側壁4aに付された位置決め用の目印線4bに合致させつつカバー41を給排気口本体2の前面開口2aに接近させれば、自ずと、カバー41中央の軸ピン43は給排気口本体2の中空円柱状の支持軸9内に嵌入するとともに、2箇所のピン受スリーブ45はフィルタ体31のピン体37に外嵌され、また、2箇所のガイド突起46先端の係止突部46bは給排気口本体2の鍔部4のガイド孔12の挿入口12aに嵌入する。図17(a)はカバー41を給排気口本体2に取付けた状態を示す。 【0046】 次いで、図17(b)に示すように、手でカバー41の外周縁部を把持して僅かに回動すれば、そのガイド突起46はスライド部46aが給排気口本体2の鍔部4のガイド孔12内を移動するとともに、係止突部46bが前記ガイド孔12の周縁部に係止するので、給排気口本体2からのカバー41の抜脱が防止される。次に、カバー41を給排気口本体2における板ばね14のストッパ14cの位置まで回動したら、該ストッパ14cの外方への付勢力に抗して強制的に更に回動する。すると、前記ガイド突起46の係止突部46bは前記板ばね14のストッパ14cを押下げつつこれを乗り越える。これにより、前記カバー41のガイド突起46はカバー41の往復回動に伴って、給排気口本体2の鍔部4のガイド孔12内を前記板ばね14のストッパ14cとガイド孔12の奥側先端との間をストロークとして往復移動する状態となる。以上によって、給排気口1の組付けが完了する。」 ケ 「【0052】 次に、更に換気量を絞って通気口7を1/2開或いは1/4開の開度とする場合は、同様にして、カバー41を更に回動して給排気口本体2の鍔部4の嵌合壁6に対するカバー41のフランジ44の位置を相対的に移動させればよい。そして、冬季等における冷気や春季等における花粉、黄砂などが室内に侵入するのを防止するために、給排気口1を全閉状態として換気を行なわない場合は、ガイド突起46が給排気口本体2のガイド孔12の奥側先端に当接するまでカバー41を回動し、通気口7を全閉とする。」 コ 「【0058】 加えて、カバー41はガイド突起46の係止突部46bを給排気口本体2のガイド孔12の挿入口12aから抜き出すことにより、簡単に給排気口本体2から取外すことができるから、フィルタ体31の交換を前面側から直接行なうことができ、楽に交換作業を行なえる。」 サ 「 ![]() 」(図3) シ 「 ![]() 」(図5) ス 「 ![]() 」(図6) セ 「 ![]() 」(図7) ソ 「 ![]() 」(図8) タ 「 ![]() 」(図10) チ 「 ![]() 」(図11) ツ 「 ![]() 」(図14) テ 「 ![]() 」(図15) ト 「 ![]() 」(図16) ナ 「 ![]() 」(図17) (2)上記(1)の記載から認められること ア 段落【0026】、図5、図6から、給排気口1は、給排気口本体2と、給排気口本体2の内部の室内側から収納されたブラシ体21と、ブラシ体21の室内側から該ブラシ体21のブラシ22に当接して取付けられたフィルタ体31と、フィルタ体31の室内側に取付けられ、給排気口本体2の前面開口2aの全体を覆うカバー41とで構成されていると認められる。 イ 段落【0034】、図6、図14から、フィルタ体31は、合成樹脂ネットや金属ネット等のフィルタ32を熱溶着、接着剤等によってフィルタ保持枠33に接合して構成されていると認められる。 ウ 段落【0026】、【0027】、図5、図6から、給排気口本体2の円筒部3の室内側一端に環状板からなる鍔部4が一体形成されていると認められる。 エ 段落【0031】、図10、図15、図16から、フィルタ体31の外周は鍔部4における環状の段部側壁4cによって囲まれるとともに、段部側壁4cの2箇所に設けられた窓孔4dから内部側に臨む、板ばね14の嵌合凸部14bは、フィルタ体31のフィルタ保持枠33の外周部に形成された嵌合凹部34aと嵌合するようになっており、フィルタ体31の室外側の面は段部側壁4cに当接するよう配置されていると認められる。 オ 段落【0035】、図6、図14から、フィルタ体31の円環枠部34の室内側の面にピン体37が立設されていると認められる。 カ 段落【0035】、【0040】、【0045】、【0058】、図11、図16から、カバー41の裏面に突出するピン受スリーブ45内にピン体37を嵌入させることでカバー41がフィルタ体31の室内側に取りつけられ、フィルタ体31の交換を行うことができるように構成されていると認められる。 キ 段落【0029】、図7、図8、図10から、給排気口本体2の鍔部4における互いに反対側となる2箇所には周方向に沿って一定長さの円弧状のガイド孔12が設けられ、その一端部には挿入口12aが形成されていると認められる。 ク 段落【0040】、【0046】、図11から、カバー41のカバー本体42の裏面には略L字棒状のガイド突起46が立設され、ガイド突起46は給排気口本体2のガイド孔12内を移動する細板状のスライド部46aと、スライド部46aの頭部に形成されてカバー本体42の中心側に向けて突出する係止突部46bとで形成され、係止突部46bはガイド孔12の周縁部に係止してカバー41が給排気口本体2から抜脱するのを防いでいると認められる。 ケ 段落【0042】、図16から、カバー41のガイド突起46を給排気口本体2のガイド孔12に沿って回動し、挿入口12aに達したら、ガイド突起46の係止突部46bと給排気口本体2のガイド孔12との係止が解除されるよう構成されていると認められる。 コ 段落【0038】、図11から、カバー本体42の裏面には、該カバー本体42の外周より僅かに内側の位置において該外周に沿ってフランジ44が円弧状に周方向に等間隔で4個形成されていると認められる。 サ 段落【0027】、図3、図6から、鍔部4の周縁には、円弧板状の嵌合壁6が円筒部3と反対側に立設され、嵌合壁6は周方向に等間隔で4個設けられ、各嵌合壁6間の4箇所の隙間は室外から給排気口本体2内に流入した空気を室内に送出するための通気口7を形成していると認められる。 シ 段落【0052】、図17から、カバー41を回動して給排気口本体2の鍔部4の嵌合壁6に対するカバー41のフランジ44の位置を相対的に移動させることで、通気口7を全閉とすることができるように構成していると認められる。 (3)甲2に記載された考案 上記(1)及び(2)から、甲2には、以下の考案(以下「甲2考案」という。)が記載されていると認められる。 「給排気口本体2と、給排気口本体2の内部の室内側から収納されたブラシ体21と、ブラシ体21の室内側から該ブラシ体21のブラシ22に当接して取付けられたフィルタ体31と、フィルタ体31の室内側に取付けられ、給排気口本体2の前面開口2aの全体を覆うカバー41とで構成される給排気口1であって、 フィルタ体31は、合成樹脂ネットや金属ネット等のフィルタ32を熱溶着、接着剤等によってフィルタ保持枠33に接合して構成され、 給排気口本体2の円筒部3の室内側一端に環状板からなる鍔部4が一体形成され、 フィルタ体31の外周は鍔部4における環状の段部側壁4cによって囲まれるとともに、段部側壁4cの2箇所に設けられた窓孔4dから内部側に臨む、板ばね14の嵌合凸部14bは、フィルタ体31のフィルタ保持枠33の外周部に形成された嵌合凹部34aと嵌合するようになっており、フィルタ体31の室外側の面は段部側壁4cに当接するよう配置され、 フィルタ体31の円環枠部34の室内側の面にピン体37が立設され、 カバー41の裏面に突出するピン受スリーブ45内にピン体37を嵌入させることでカバー41がフィルタ体31の室内側に取りつけられ、フィルタ体31の交換を行うことができるように構成され、 給排気口本体2の鍔部4における互いに反対側となる2箇所には周方向に沿って一定長さの円弧状のガイド孔12が設けられ、その一端部には挿入口12aが形成され、 カバー41のカバー本体42の裏面には略L字棒状のガイド突起46が立設され、ガイド突起46は給排気口本体2のガイド孔12内を移動する細板状のスライド部46aと、スライド部46aの頭部に形成されてカバー本体42の中心側に向けて突出する係止突部46bとで形成され、係止突部46bはガイド孔12の周縁部に係止してカバー41が給排気口本体2から抜脱するのを防いでおり、 カバー41のガイド突起46を給排気口本体2のガイド孔12に沿って回動し、挿入口12aに達したら、ガイド突起46の係止突部46bと給排気口本体2のガイド孔12との係止が解除されるよう構成されており、 カバー本体42の裏面には、該カバー本体42の外周より僅かに内側の位置において該外周に沿ってフランジ44が円弧状に周方向に等間隔で4個形成され、 鍔部4の周縁には、円弧板状の嵌合壁6が円筒部3と反対側に立設され、嵌合壁6は周方向に等間隔で4個設けられ、各嵌合壁6間の4箇所の隙間は室外から給排気口本体2内に流入した空気を室内に送出するための通気口7を形成し、 カバー41を回動して給排気口本体2の鍔部4の嵌合壁6に対するカバー41のフランジ44の位置を相対的に移動させることで、通気口7を全閉とすることができるように構成した、 給排気口1。」 2 甲3について (1)甲3の記載 甲3には、以下の記載がある。 ア 「【0015】 フィルタ装置14は、細かな塵埃を捕獲するメインフィルタ15と、比較的大きい塵埃を捕獲するプレフィルタ16と、メインフィルタ15とプレフィルタ16を収納するフィルタ枠体21から構成される。 【0016】 フィルタ枠体21は、図3の如く矩形状をしており、前記仕切板11に形成した収納部12に嵌めこまれる。フィルタ枠体21の四方の周壁には、後述するプレフィルタ16の係合部16aと係合する被係合部22が形成される。被係合部22は、風の通過する向きにおいて異なる3つの位置に設けられた係合穴22a、22b、22cである。即ち、被係合部22は、3列の係合穴22a、22b、22cからなり、風上側から風下側に向かって係合穴22a、22b、22cの順に並んでいる。」 イ 「【0018】 プレフィルタ16は、合成樹脂製の枠体16bと、枠体と一体に形成された網16cとからなる。枠体16bの周囲には、図3の如き合計6個の突片からなる係合部16aが一体に形成されている。この係合部16aは前記被係合部22である係合穴22a、22b、22cに選択的に嵌めこまれ、プレフィルタ16をフィルタ枠体21に取り付けると同時に、メインフィルタ15がフィルタ枠体21から外れることのないように、プレフィルタ16でもって、メインフィルタ15の風上側よりメインフィルタ21を押さえている。 【0019】 このフィルタ枠体21には、厚み(風の流れる方向における幅)が異なる3種類のメインフィルタ15を収納できるようになっている。このことを図4乃至図6に基いて詳述する。なお、図4乃至図6では、集塵フィルタ17と脱臭フィルタ25をまとめてメインフィルタ15として表示している。 【0020】 最も厚みの太いメインフィルタ15aを収納する場合、図4のように、メインフィルタ15aをフィルタ枠体21内に収納した後、プレフィルタ16をメインフィルタ15aの風上側からフィルタ枠体21内に収納し、プレフィルタ16の突片16aを、フィルタ枠体21周壁の最も風上側に形成した係合穴22aに嵌め込むことにより、プレフィルタ16がフィルタ枠体21より外れないようにする。同時に、メインフィルタ15aをフィルタ枠体21より外れないように、プレフィルタ16で押さえ込む。 【0021】 最も厚みの薄いメインフィルタ15cを収納する場合、図6のように、メインフィルタ15cをフィルタ枠体21内に収納した後、プレフィルタ16をメインフィルタ15cの風上側からフィルタ枠体21内に収納し、プレフィルタ16の突片16aを、フィルタ枠体21周壁の最も風下側に形成した係合穴22cに嵌め込むことにより、プレフィルタ16がフィルタ枠体21より外れないようにする。同時に、メインフィルタ15cをフィルタ枠体21より外れないように、プレフィルタ21で押さえ込む。 【0022】 厚みが中間のメインフィルタ15bを収納する場合、図5のように、メインフィルタ15bをフィルタ枠体21内に収納した後、プレフィルタ16をメインフィルタ15bの風上側からフィルタ枠体21内に収納し、プレフィルタ16の突片16aを、フィルタ枠体21周壁の風の流れる方向における中間に形成した穴22bに嵌め込むことにより、プレフィルタ16がフィルタ枠体21より外れないようにする。同時に、メインフィルタ15bをフィルタ枠体21より外れないように、プレフィルタ16で押さえ込む。 【0023】 このように、メインフィルタ15(15a、15b、15c)の厚みに応じて、プレフィルタ16の突片16aが嵌り込むフィルタ枠体21の係合穴22a、22b、22cを選択することにより、異なる厚みのメインフィルタ15を共通のフィルタ枠体21内に収納することができる。」 ウ 「 ![]() 」(図2) エ 「 ![]() 」(図3) オ 「 ![]() 」(図4) カ 「 ![]() 」(図5) キ 「 ![]() 」(図6) (2)甲3に記載された技術的事項 上記(1)から、甲3には、以下の技術的事項(以下「甲3事項」という。)が記載されていると認められる。 「メインフィルタ15と、プレフィルタ16と、メインフィルタ15とプレフィルタ16を収納するフィルタ枠体21とから構成されるフィルタ装置14において(段落【0015】、図2)、 フィルタ枠体21の四方の周壁には、風の通過する向きにおいて異なる3つの位置に設けられた係合穴22a、22b、22cを含み(段落【0016】、図2、図3)、 プレフィルタ16は周囲に係合部16aが設けられ、係合部16aはフィルタ枠体21の係合穴22a、22b、22cに選択的に嵌めこまれ、プレフィルタ16をフィルタ枠体21に取り付けるとメインフィルタ15がフィルタ枠体21から外れることのないように構成され(段落【0018】、図2、図3参照)、 メインフィルタ15(15a、15b、15c)の厚みに応じて、プレフィルタ16の係合部16aが嵌り込むフィルタ枠体21の係合穴22a、22b、22cを選択することにより、異なる厚みのメインフィルタ15を共通のフィルタ枠体21内に収納することができるようにした(段落【0023】、図4-6参照)点。」 3 甲4について (1)甲4の記載 甲4には、以下の記載がある。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、空気清浄用フィルタ等のフィルタを取付けるためのフィルタ用枠体、及びそれに用いるフィルタに関するものであり、主としてビル空調設備やクリーンルーム設備において、部屋の壁や天井等に設けられた吸気口若しくは噴出口に取付けられるフィルタ用枠体及びフィルタに関するものである。」 イ 「【0012】以下に、固定式の第1止め部材と可動式の第2止め部材を備えたフィルタ用枠体を例にとって本発明を説明する。図1の(a) は本発明に係るフィルタ用枠体の一具体例を示す斜視図であり、図1の(b) は該フィルタ用枠体1にフィルタ2を取付けた様子を表す斜視図である。図2は本発明に係るフィルタの一具体例を示す斜視図であり、(a) はフィルタ2を上流側から見た図、(b) はフィルタ2を下流側から見た図である。 【0013】フィルタ用枠体1の枠本体13は、上流側及び下流側が開口した角筒体であり、この筒の内部にフィルタ2がぴったりと嵌め込まれる様になっている。枠本体13の下流側には固定式の第1止め部材として、縁枠6及び止め棒5が設けられている。枠体1の下流側の開口は、縁枠6によって、フィルタ2の外側形状よりやや小さく開口する様になっており、また止め棒5が下流側開口の中央を横断する様に配設されている。フィルタ2は、その下流側の縁部や中央部が、上記縁枠6や止め棒5に当接して下流側から脱落しない様に位置決め固定されている。 【0014】枠本体13の内壁には、互いに対向する内壁に1対の穴4(手前側の穴4は図面に現れない)が、夫々被処理流体(空気)の進行方向に複数組形成されている。該穴4には棒部材3が脱着自在に取付け可能となっており、該棒部材3が上記1対の穴4の間を架け渡す様に装着さて、フィルタ2の上流側の面に対して、そのほぼ中央を横断する様に当接し、フィルタ2を上流側から位置決め固定をする。こうしてフィルタ2は上流側及び下流側の両方から挟み付けられる様にして固定される。尚、被処理流体は図1における左手前側から右奥側に流れている(矢印A参照)。 【0015】本具体例の第2止め部材は上記穴4と上記棒部材3により構成されており、複数組形成された上記穴4のうちの任意の対の穴4を選ぶことで、被処理流体の進行方向の任意位置に棒部材3を取付けることができ、フィルタ厚みに対応する。枠本体13や棒部材3の材質としては、金属,プラスチック,或いは木材が推奨される。」 ウ 「 ![]() 」(図1) (2)甲4に記載された技術的事項 上記(1)から、甲4には、以下の技術的事項(以下「甲4事項」という。)が記載されていると認められる。 「フィルタ2を取付けるためのフィルタ用枠体1において(段落【0001】、図1参照)、 フィルタ用枠体1の枠本体13の下流側には縁枠6及び止め棒5が設けられ(段落【0013】、図1参照)、 フィルタ用枠体1に取り付けられるフィルタ2は、縁枠6や止め棒5に当接して下流側から脱落しない様に位置決め固定され(段落【0012】、【0013】、図1参照)、 枠本体13の内壁には、互いに対向する内壁に1対の穴4が、空気の進行方向に複数組形成され、該穴4には棒部材3が脱着自在に取付け可能となっており(段落【0014】、図1参照)、 該棒部材3を上記1対の穴4の間を架け渡す様に装着して、フィルタ2を上流側から位置決め固定して、フィルタ2を上流側及び下流側の両方から挟み付けられる様にして固定し(段落【0014】、図1参照)、 複数組形成された上記穴4のうちの任意の対の穴4を選ぶことで、空気の進行方向の任意位置に棒部材3を取付けることができ、フィルタ厚みに対応できるようにした(段落【0015】、図1参照)点。」 4 甲5について (1)甲5の記載 甲5には、以下の記載がある。 ア 「【0030】 ≪ケース体の構成≫ ケース体3-1は、図1、図2および図5に示すように、ファンケーシング2aに開口されている接続口5の開口面積よりも大きく、ファンケーシング2aの輪郭外径よりも一回りほど小さい外径を有する断面が略円形状に形成されている。 また、ケース体3-1は、流入口9と流出口10との対面間隔を前後方向に可変し得るように形成されている。 ここで、対面間隔とは、図3に示すように、流入口9が開口されているケース体3-1の壁面(前面壁)と、流出口10が開口されている壁面(後面壁)との厚さLを意味する。そして、図1および図5に示すように、厚さLを可変させることによってケース体3-1の内部空間(容積)を前後方向に広く、狭く変えることができるようにしている。 そして、このケース体3-1は、図4に示すように、流入口9を有する第1のケース部3-1aと、流出口10を有する第2のケース部3-1bとから分離可能に形成されている。」 イ 「【0033】 本実施形態では、図4に示すように、第1のケース部3-1aの周壁外周面に等間隔をおいてそれぞれ設けられている3ヶ所の連結凸部11と、この各連結凸部11と筒方向(軸方向)において対向させた第2のケース部3-1bの周壁内周面にそれぞれ設けられている3ヶ所の連結部12との係脱自在な連繋によってケース体3-1の厚さLを可変し得るように形成している。 【0034】 連結凸部11は、第1のケース部3-1aの開放端部側に位置させた周壁外周面に半円形状など適宜の突出形状にてそれぞれ設けられている。 連結部12は、図3に示すように、第2のケース部3-1bの開放端部から内底部側に至る筒方向に向けて溝状に設けられる挿入部12aと、この挿入部12aから周方向に向けて同じく溝状に設けられる係止部12bとから略L字形状に形成されている。 そして、連結部12は、第2のケース部3-1bに対する第1のケース部3-1aの嵌め合せ深さを変えたときに、その各可変部位においてそれぞれ連結状態を保持し得るように数本の係止部12bを、予め設定された可変間隔(流入口9と流出口10との対面間隔)に合わせてそれぞれ設けている。本実施形態では、3本の係止部12bを設けることで、三段階に分けて可変し得るようにしている。」 ウ 「 ![]() 」(図4) (2)甲5に記載された技術的事項 上記(1)から、甲5には、以下の技術的事項(以下「甲5事項」という。)が記載されていると認められる。 「第1のケース部3-1aと連結してケース体3-1を形成する第2のケース部3-1bにおいて(段落【0030】、【0034】、図4参照)、 周壁内周面に、第1のケース部3-1と連結するための連結部12を備え(段落【0033】、図4参照)、 連結部12は、第2のケース部3-1bの開放端部から内底部側に至る筒方向に向けて溝状に設けられる挿入部12aと、この挿入部12aから周方向に向けて溝状に設けられる係止部12bとから略L字形状に形成されている(段落【0034】、図4参照)点。」 5 甲6について (1)甲6の記載 甲6には、以下の記載がある。 ア 「【0012】図10に示すものは、前記実施例における縦樋穴22と縦樋ホース24との接続構造を示す斜視図であり、縦樋穴22には水平方向にフランジを有する円筒状の穴筒23が接続されており、該穴筒23の内周壁面上にはピン23aが接合されている。また縦樋ホース24には上部にほぼL字状の切り欠き24bを有する円筒状の接続筒24aが接続されており、該接続筒24aの切り欠き24bの縦溝と穴筒23のピン23aとが一致する位置にて、接続筒24aを溝に沿って持ち上げ、その後反時計回りに筒24aを回すことにより着脱自在に取り付けることが可能な構造となっている。」 イ 「 ![]() 」(図10) (2)甲6に記載された技術的事項 上記(1)から、甲6には、以下の技術的事項(以下「甲6事項」という。)が記載されていると認められる。 「円筒状の穴筒23が接続される縦樋ホース24において、 穴筒23の内周壁面上に設けられたピン23aに接続するための円筒状の接続筒24aを備え、 接続筒24aがほぼL字状の切り欠き24bを有する点(段落【0012】、図10参照)。」 第6 当審の判断 1 無効理由1について (1)対比 本件考案1と甲2考案とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲2考案の「フィルタ体31」は、本件考案1の「フィルター」に相当する。 また、甲2考案の「給排気口本体2」は、「給排気口本体2の円筒部3の室内側一端に環状板からなる鍔部4が一体形成され、フィルタ体31の外周は鍔部4における環状の段部側壁4cによって囲まれる」ことから、本件考案1の「フィルター囲み部」に相当する。 また、甲2考案では、「カバー41の裏面に突出するピン受スリーブ45内にピン体37を嵌入させることでカバー41がフィルタ体31の室内側に取りつけられ、フィルタ体31の交換を行うことができるように構成され」、「カバー41のカバー本体42の裏面には略L字棒状のガイド突起46が立設され、ガイド突起46は給排気口本体2のガイド孔12内を移動する細板状のスライド部46aと、スライド部46aの頭部に形成されてカバー本体42の中心側に向けて突出する係止突部46bとで形成され、係止突部46bはガイド孔12の周縁部に係止してカバー41が給排気口本体2から抜脱するのを防いで」いることから、甲2考案の「カバー41」は、本件考案1の「フィルター押さえ具」に相当する。 また、甲2考案では、「段部側壁4cの2箇所に設けられた窓孔4dから内部側に臨む、板ばね14の嵌合凸部14bは、フィルタ体31のフィルタ保持枠33の外周部に形成された嵌合凹部34aと嵌合するようになっており、フィルタ体31の室外側の面は段部側壁4cに当接するよう配置され」ており、「カバー41」、「フィルタ体31」及び「段部側壁4c」の配置からみて、甲2考案の「鍔部4における環状の段部側壁4c」は、本件考案1の「フィルター前面当接部」に相当する。 また、甲2考案では、「フィルタ体31の円環枠部34の室内側の面にピン体37が立設され」、「カバー41の裏面に突出するピン受スリーブ45内にピン体37を嵌入させることでカバー41がフィルタ体31の室内側に取りつけられ、フィルタ体31の交換を行うことができるように構成され」、「カバー41のカバー本体42の裏面には略L字棒状のガイド突起46が立設され、ガイド突起46は給排気口本体2のガイド孔12内を移動する細板状のスライド部46aと、スライド部46aの頭部に形成されてカバー本体42の中心側に向けて突出する係止突部46bとで形成され、係止突部46bはガイド孔12の周縁部に係止してカバー41が給排気口本体2から抜脱するのを防いで」いることから、甲2考案は、フィルタ体31を、鍔部4における環状の段部側壁4cとそのカバー41の間に挟んで保持する「フィルタ体の着脱機構」を備えているといえる。 また、甲2考案の、「給排気口本体2の鍔部4における互いに反対側となる2箇所には周方向に沿って一定長さの円弧状のガイド孔12が設けられ、その一端部には挿入口12aが形成され」、「係止突部46bはガイド孔12の周縁部に係止してカバー41が給排気口本体2から抜脱するのを防いでおり」、「カバー41のガイド突起46を給排気口本体2のガイド孔12に沿って回動し、挿入口12aに達したら、ガイド突起46の係止突部46bと給排気口本体2のガイド孔12との係止が解除されるよう構成されて」いることは、本件考案1の「フィルター囲み部とフィルター押さえ具に、互いの相対回転により係脱する係脱手段を設けた」ことに相当する。 そして、甲2考案の「給排気口1」は、本件考案1の「換気口」に相当する。 そうすると、両者は以下の点で一致する一方、以下の点で相違する。 <一致点> 「フィルター囲み部の内側に配したフィルターを、フィルター前面当接部とその後方に取り付けられるフィルター押さえ具の間に挟んで保持するようにしたフィルター着脱機構を有し、 フィルター囲み部とフィルター押さえ具に、互いの相対回転により係脱する係脱手段を設けた、 換気口。」 <相違点1> フィルター囲み部とフィルター押さえ具の互いの相対回転により係脱する係脱手段に関して、本件考案1では、「フィルター囲み部(C10)に設けた係脱手段(C12)は、前側及び後側にそれぞれ設けた係止部(C12a)(C12b)からなるものとし、フィルター(C20)の厚みに応じて前側及び後側のいずれかの係止部(C12a)(C12b)を選択してフィルター押さえ具(C40)を取り付けられるようにしている」のに対し、甲2考案では、「給排気口本体2の鍔部4における互いに反対側となる2箇所には周方向に沿って一定長さの円弧状のガイド孔12が設けられ、その一端部には挿入口12aが形成され、カバー41のカバー本体42の裏面には略L字棒状のガイド突起46が立設され、ガイド突起46は給排気口本体2のガイド孔12内を移動する細板状のスライド部46aと、スライド部46aの頭部に形成されてカバー本体42の中心側に向けて突出する係止突部46bとで形成され、係止突部46bはガイド孔12の周縁部に係止してカバー41が給排気口本体2から抜脱するのを防いでおり、カバー41のガイド突起46を給排気口本体2のガイド孔12に沿って回動し、挿入口12aに達したら、ガイド突起46の係止突部46bと給排気口本体2のガイド孔12との係止が解除されるよう構成されて」いる点。 (2)判断 甲3事項、甲4事項に示されるとおり、公知の技術として以下の技術的事項(以下「技術事項A」という。)が認められる。 「空気清浄用フィルタの取付構成に関し、フィルタの厚みに応じて選択可能な複数のフィルタ押え具の係止部を設けること。」 しかし、以下のアないしエに示される理由から、甲2考案に技術事項Aを適用する動機付けを認めることができない。 ア フィルタ体31に設けられたフィルタ32の材質による特性 甲2考案のフィルタ体31に設けられたフィルタ32として使用される合成樹脂ネットや金属ネット等のネットは、本件登録の明細書等に記載されたモダクリル・ポリエステル製のフィルターC20と異なり、一般に、厚みを種々異ならせて用いることは想定されておらず、用いるネットの厚みを変える必要性がない。 イ フィルタ体31の構造 仮に、甲2考案において、合成樹脂ネットや金属ネット等のフィルタ32の厚みを変える必要があったとしても、合成樹脂ネットや金属ネット等のフィルタ32は熱溶着、接着剤等によってフィルタ保持枠33に接合されており、合成樹脂ネットや金属ネット等のフィルタ32の厚みのみを変えて、合成樹脂ネットや金属ネット等のフィルタ32を接合するフィルタ保持枠33の厚みはそのままとすることが自然であり、その場合、給排気口本体2に対するカバー41の相対位置は変化しないから、前後方向に複数の係止部を設ける必要性がない。 ウ カバー41を、給排気口本体2に対して、より室内側に位置させる上での阻害要因の存在 甲2考案において、フィルタ体31全体の厚みを変えて、給排気口本体2に対してカバー41をより室内側に位置させた場合、給排気口本体2の鍔部4の周縁とカバー41のフランジ44との間や給排気口本体2の鍔部4の嵌合壁6とカバー41のカバー本体42との間に隙間が生じ、通気口7全体を閉塞して空気路を完全に遮断する全閉状態を実現できなくなる。そのため、甲2考案において、カバー41を、給排気口本体2に対して、より室内側に位置させることは阻害事由にあたる。 エ 甲2考案に技術事項Aを適用した場合の係脱手段の具体的な構造 甲2考案に技術事項Aを適用する際、甲2考案において、係脱手段として給排気口本体2の鍔部4のガイド孔12を、前側と後側に設けるように構成したものが具体的にどのような構造となるのかについて、想定することができない。 したがって、本件考案1は、甲2考案並びに甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者がきわめて容易に考案することができたとはいえない。 (3)相違点1における容易想到性に関する請求人の主張について 請求人は、令和3年2月1日の口頭審理陳述要領書の「e.合議体の見解に対する反論」において、上記(2)アないしエで示した甲2考案に技術事項Aを適用する動機付けが認められない理由に対して反論しているので、以下、請求人の主張について検討する。 ア 請求人は、上記(2)ア、イに関連して、以下の主張をしている。 「甲2の給排気口に取り付けられるフィルタ体31の設置目的は空気清浄のための防虫防塵であり、そのフィルタ32は防虫ネット等からなり、材質、メッシュ等は室内に侵入する異物の性状に対応して適宜選択すればよいとあり(段落[0034])、このような記載からフィルタ32としては、実施例に示されるようなネットに狭く限定される必要はなく、合議体が指摘するように、本件考案の実施例にあるモダクリル・ポリエステル製のフィルタを排除するものではないと思料する。 甲2に記載のフィルタ32は防虫ネット等からなる単一のネットであるが、本件考案の出願時の技術常識としては、この種の空気清浄用のフィルタとしては、一般的に、複数の異なる種類・異なる厚さのフィルタを重ねて組み合わせたり、フィルタの材質を変えるなどして、具体的な使用態様において求められる清浄度等、目的に応じた最適なフィルタ構成が適宜採用されていた(例えば、甲3考案従来技術を示す甲3の段落[0002]?[0004]、甲4考案の従来技術を示す甲4の段落[002]?[0006]参照)。」(第6ページ第5行-第19行) 「少なくとも本件考案の出願時点においては、フィルタの材質や厚みを変えることができる構造など、本件考案に係る換気口のフィルタとしても、目的に応じたフィルタ構成が求められ、特に実際の換気口の使用現場からの要請は、既に技術常識となっていたものと思料する。」(第6ページ第21行-第25行)、 「少なくとも本件考案の原出願時点においては、本件考案や甲2考案における換気口のフィルタにおいても、フィルタの材料や厚みを変えることができる構造など、目的に応じたフィルタ構成が要請されることは、技術常識となっていた。」(第7ページ第25行-第28行) しかし、甲2考案において、清浄度等の目的に応じて最適なフィルタ構成とすることが求められたとしても、フィルタ32の材質や種類を変えた、合成樹脂ネットや金属ネットを使用できる程度にとどまり、甲2は、モダクリル・ポリエステル製のフィルタを用いることや、厚さの異なる複数のフィルタ体31に対応できる構成や複数のフィルタ体31を重ねて組み合わせることができる構成を開示するものでない。 さらに、請求人が提出した各証拠からは、本件登録の原出願日時点において、換気口において厚さの異なる複数のフィルタに対応できる構成とすることが技術常識であったとは認められない。 加えて、換気口においてフィルタの材質を変えることが求められていたとしても、フィルタ32の材質を変えれば足り、フィルタ体31全体の厚さを変える必要性があるとは認められない。 以上のとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。 イ また、請求人は、上記(2)ウに関連して、以下の主張をしている。 「給排気本体2の鍔部4の外周に外周壁4aが設けられ、この周方向に嵌合壁6が複数個設けられているところ、フィルタ体31全体の厚みが大きくなった場合あるいはフィルタ体31を複数積層して装着した場合は、この外周壁4aの軸方向幅をフィルタ体31の増えた厚み相応分だけ大きくすればよい。これによって、フィルタ体31の厚みが増えてカバー41を室内側に位置させても、外周壁4aの幅増加分によって、通気口7の通気量が全閉から全開まで段階的に調整することができる。」(第9ページ第14行-第21行) しかし、フィルタ体31全体の厚みが大きくなった場合やフィルタ体31を複数積層して装着した場合のカバー41の位置にあわせて外周壁4aの軸方向幅を設定すれば、薄いフィルタ体31を使用する場合、すなわち、カバー41の裏面に突出するピン受スリーブ45内にピン体37を嵌入させる際に、カバー41をより室外側に位置させるようにした場合に、鍔部4の周縁とカバー41のフランジ44との間や鍔部4の嵌合壁6とカバー41のカバー本体42との間で物理的な干渉が生じることとなる。そのため、フィルタ体31全体の厚みが大きくなった場合やフィルタ体31を複数積層して装着した場合のカバー41の位置にあわせて外周壁4aの軸方向幅を設定すると、それより薄いフィルタ体31を使用することができず、その結果、厚さの異なる複数のフィルタ体31に対応できる構成や複数のフィルタ体31を重ねて組み合わせることができる構成とはならない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 さらに、請求人は、 「そもそも甲2の段落[0039]には、『見栄えの点から空気口7(通気口7の誤り)はカバー41の側面に設けているが、意匠性を害しなければ、正面に設けてもよい。』とあり、図示の実施例のような位置に通気口7を設ける必要もなく、このようにすれば、上記合議体の指摘するような事態は生じ得ない。」(第10ページ第1行-第5行) とも主張している。 甲2考案において通気口7をカバー41の正面に設けた場合に具体的にどのような構造となるかは甲2の記載からは必ずしも明確ではないが、甲2の段落【0038】における「これらの前記カバー41のフランジ44及び給排気口本体2の鍔部4の嵌合壁6は請求項の空気量調整部に相当する。」との記載、特許請求の範囲の「空気量調整部」に関する記載、及び、段落【0011】における「前記給排気口本体とカバーとを相対移動させることにより、空気路の開閉量を調整できるようになっている。」との記載等を踏まえると、通気口7は給排気口本体2とカバー41との間で相対移動させることによりその面積を変化させて空気量を調整できるものであることが前提となっていると認められる。 そのため、通気口7をカバー41の正面に設けたとしても、その開閉が給排気口本体2とカバー41との間の相対移動によって実現されるものであることに代わりはなく、フィルタ体31の厚みを変えてカバー41をより室内側に位置させた場合、すなわち、カバー41が給排気口本体2から離れた位置に配置された場合には通気口7を全閉できなくなる。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 ウ また、請求人は、上記(2)エに関連して、以下の主張をしている。 「フィルタ体31の厚みを変更可能とするには、給排気口本体2の鍔部4の円弧状のガイド孔12に挿入係止するカバー41のガイド突起46の構造を設計変更するのが比較的簡単である。つまり、ガイド突起46の先端部分に係止突部46bを二つ間隔をあけて形成し、この両者46b、46bの間隔を、使用する二つのフィルタ体31、31の厚みの寸法さに設定すれば良い。」(第10ページ第18行-第24行) しかし、甲2考案の「カバー41」は、本件考案1の「フィルター囲み部(C10)」ではなく、「フィルター押さえ具(C40)」に相当するから、請求人が主張するように、カバー41のガイド突起46の構造を設計変更して、ガイド突起46の先端部分に間隔をあけて2つの係止突部46bを形成しても、本件考案1の「フィルター囲み部(C10)に設けた係脱手段(C12)は、前側及び後側にそれぞれ設けた係止部(C12a)(C12b)からなるものとし、」との事項に相当しない。 なお、甲2考案の「給排気口本体2」が本件考案1の「フィルター囲み部(C10)」に相当し、甲2考案の「カバー41」が本件考案1の「フィルター押さえ具(C40)」に相当することは、請求人も認めていることである(審判請求書第11ページ第16行-第22行)。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 エ 以上のとおり、甲2考案に技術事項Aを適用する動機付けに関する請求人の主張はいずれも採用することができない。 2 無効理由2について 本件考案2は、本件考案1を引用し、本件考案1のすべての事項を含んだものであるところ、本件考案1は、上記1.(2)で示したとおり、甲2考案並びに甲3及び甲4に記載された事項に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものでなく、また、甲5事項、甲6事項は、上記の認定のとおり、請求項2でさらに特定された、「前側及び後側の係止部(C12a)(C12b)は、フィルター囲み部(C10)に形成した切欠部(C11)における周回方向に延びるように形成された凹部である」との事項に関するものであって上記相違点1の容易想到性を肯定するものではないから、本件考案2も、本件考案1と同様に、当業者がきわめて容易に考案することができたものではない。 3 その他の甲号証についての検討 甲1は、本件登録の実用新案技術評価書である。また、甲20は、本件考案2のフィルター着脱機構の構成が本件登録の原出願日前に周知技術であったことを立証する目的で提出された、換気口を示すものである。 しかし、甲1、甲20の記載内容を参酌しても、上記相違点1に係る本件考案1及び2の構成とすることが当業者にとってきわめて容易であったというものではなく、いずれも当審の上記判断の結論に影響を及ぼすものではない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件考案1、2に係る実用新案登録を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-03-26 |
結審通知日 | 2021-03-31 |
審決日 | 2021-04-15 |
出願番号 | 実願2011-924(U2011-924) |
審決分類 |
U
1
124・
121-
Y
(F24F)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
後藤 健志 槙原 進 |
登録日 | 2011-04-13 |
登録番号 | 実用新案登録第3167699号(U3167699) |
考案の名称 | 換気口 |
代理人 | 佐野 章吾 |
代理人 | 辻本 希世士 |
代理人 | 辻本 良知 |
代理人 | 丸山 英之 |
代理人 | 佐野 みず紀 |