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審決分類 |
審判 A47K |
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管理番号 | 1384312 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2021-04-19 |
確定日 | 2022-04-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3220857号実用新案「マグネット付き湯おけ」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第3220857号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 実用新案登録第3220857号(以下「本件実用新案登録」という。)の請求項1に係る考案についての出願は、平成30年12月13日に実用新案登録出願がされ、平成31年2月7日付けで手続補正がされ、同年3月20日にその請求項1に係る考案(以下「本件考案」という。)について実用新案権の設定登録がされ、令和元年5月17日に実用新案技術評価書が作成された。 これに対して、請求人である新輝合成株式会社より、令和3年4月19日(受付)に、本件考案に係る実用新案登録について実用新案登録無効審判の請求がされ、被請求人である株式会社マーナより、同年6月10日に審判請求答弁書が提出された。 その後、当審より、令和3年7月30日付けで口頭審理における審理事項を通知し、同年9月7日に請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、同年9月16日に第1回口頭審理が行われた。 そして、令和3年12月6日付けで無効理由通知(以下「当審無効理由通知」という。)及び職権審理結果通知をし、期間を指定して意見を求めたものの請求人及び被請求人からは何らの応答もなかった。 第2 本件考案 本件考案は、平成31年2月7日付けの手続補正により補正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 底面または側面にマグネットを備え浴室の壁面に取り付けられることを特徴とする湯おけ。 第3 請求の趣旨、請求人の主張する無効理由及び証拠方法 本件審判の請求の趣旨は、「登録第3220857号実用新案の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」というものであり、請求人が審判請求書において主張する無効理由及び証拠方法は、次のとおりである。 (無効理由) 本件実用新案登録の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案は、その出願前に頒布された甲第1号証から甲第3号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであるから、その実用新案登録は、同法第37条第1項第2号により無効とすべきである。 (証拠方法) 甲第1号証:特開2007−236899号公報(以下「甲1」という。) 甲第2号証:特開2013−91500号公報(以下「甲2」という。) 甲第3号証:特開平9−75253号公報(以下「甲3」という。) 第4 答弁の趣旨、被請求人の主張の概要 答弁の趣旨は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」というもので、被請求人の主張の概要は、次のとおりである。 (主張の概要) 請求人が主張する本件考案と甲1に記載された考案(以下「甲1考案」という。)との相違点(本件考案においては、マグネットは湯おけの底面または側面に取り付けられるのに対し、甲1考案においては底面に取り付けられている点)について異論はない。 上記相違点について、甲2に記載の容器又は甲3に記載のシャワーヘッドと甲1に記載の洗面器とでは、壁面に取り付けることとした技術的課題が異なると共に、壁面に取り付けることで得られる作用・効果も異なり、甲2又は甲3に記載の考案を甲1考案に適用する動機付けはない。 なお、本件考案は「湯おけ」であり、「洗面器」である甲1考案とは異なる。 第5 当審無効理由通知の概要 当審が、職権により当審無効理由通知で通知した無効理由の概要は、次のとおりである。 本件考案は、その出願前に頒布された甲第1号証に記載された考案であり、実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 第6 当審の判断 1 当審無効理由通知で通知した無効理由の検討 (1)甲第1号証 ア 甲1の記載 本件実用新案登録出願の出願前に頒布された甲1には、以下の記載がある。(下線は当審で付した。) (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、浴室用プラスチック洗面器の形状に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、浴室用プラスチック洗面器を収納する場合、浴室内に台がある場合はその上においたり、台がない場合は、浴槽のフタの上においたり、浴室の床に直接、置いたままにしていた。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、浴室内に台や浴室壁面に収納部がなくても浴槽のフタの上においたり、床に直接置くことなく、開口部を横向きに簡単に浴室の壁面に保持できる浴室用プラスチック洗面器を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0004】 (イ)浴室用プラスチック洗面器本体の外底の中央部に被保持部を設け、この被保持部は、磁石体ないし磁性体で形成し、浴室の壁面には保持部を設け、この保持部も磁石体ないし磁性体で形成し、磁気吸着力を用いて被保持部と保持部とを着脱自在に吸着させて浴室用プラスチック洗面器の開口部を横向きに保持できるようにしたことを特徴とする浴室用プラスチック洗面器。 ・・・ 【発明の効果】 【0006】 この発明によれば、浴室用プラスチック洗面器本体の外低に固着された被保持部を浴室壁面に設けられる保持部に対して、簡単な着脱操作によつて支持させたり、取り外すことが出来ると共に、支持の場合は浴室用プラスチック洗面器の開口部を横向き状態にすることができるので水切りが良く、また足元の邪魔にならず整理整頓が出来る。」 (イ)「【発明を実施するための最良の形態】 【0007】 以下、この浴室用プラスチック洗面器(以下、単に洗面器という)(1)を、その実施の形態について説明する。 ・・・ 【0009】 (3)は洗面器(I)の外底(2)の中央部に固着した被保持部を示し、図示では磁石体(3a)、特に永久磁石、フェライトまたは鉄板、ステンレスなどの磁性金属(3b)より成り、(4)は前記被保持部(3)を着脱自在に係止できる保持部を示し、図示では磁石体または鉄板、ステンレスなどの磁性金属(4a)より形成され、この保持部(4)を所望の浴室の非磁性面の壁面(6)などに対して図示では剥離紙を備えた接着剤、または通常の接着剤、ネジ、ビス止めで確固に固着できるようになっている。 【0010】 本発明は以上の構成より成るので、磁石体または磁性金属(4a)より成る保持部(4)を図示のような非磁性面の壁面(5)に予め剥離紙を備えた接着剤、または通常の接着剤、ネジ、ビス止めで固着する。 この保持部(4)に係止できる被保持部(3)を有する洗面器(1)を図2、3、4、5のように開口部(5)を横向きにして被保持部(3)を磁気吸着作用を以て吸着させることが出来る。 ・・・ 【0017】 なお、本明細書の浴室用プラスチック洗面器とは、一般の洗面器、浴室用洗い桶、湯桶を指している。」 (ウ)図1及び図2は、次のものである。 「【図1】 【図2】 ![]() 」 イ 甲1考案 上記アで摘記した各記載によれば、甲1には、次の甲1考案が記載されているといえる。 【甲1考案】 浴室用プラスチック洗面器本体の外底の中央部に被保持部を設け、この被保持部は、磁石体ないし磁性体で形成し、浴室の壁面には保持部を設け、この保持部も磁石体ないし磁性体で形成し、磁気吸着力を用いて被保持部と保持部とを着脱自在に吸着させて浴室用プラスチック洗面器の開口部を横向きに保持できるようにした浴室用プラスチック洗面器。 (2)本件考案について ア 甲1考案との対比 甲1の段落【0017】に「本明細書の浴室用プラスチック洗面器」が「湯桶」を指すことが明記されていることを踏まえると、甲1考案における「浴室用プラスチック洗面器」は、本件考案における『湯おけ』に相当するから、甲1考案における「浴室用プラスチック洗面器本体の外底」は、本件考案の『湯おけ』における『底面』に相当する。 甲1考案の「磁石体」は、本件考案における『マグネット』に相当する。 以上から、甲1考案の「浴室用プラスチック洗面器」において、「浴室用プラスチック洗面器本体の外底」の中央部に設けられた「磁石体」で形成した被保持部を、「浴室の壁面」に設けられた磁性体で形成した保持部に吸着させて「保持できる」ように構成したことは、本件考案の『湯おけ』において、『底面』に『マグネット』を備え、『浴室の壁面』に『取り付けられる』ように構成したことに相当する。 そうすると、本件考案と甲1考案とは、「底面にマグネットを備え浴室の壁面に取り付けられる湯おけ」である点で一致するから、本件考案と甲1考案とに相違点は存在しない。 したがって、本件考案は、甲1考案と同一である。 2 小括 以上のとおり、本件考案は、その出願前に頒布された甲第1号証に記載された考案である。 第7 むすび 以上のとおりであるから、当審無効理由通知で通知した無効理由には理由があり、本件考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 したがって、請求人が審判請求書において主張する無効理由について検討するまでもなく、請求項1に係る本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり、審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2022-02-17 |
結審通知日 | 2022-02-22 |
審決日 | 2022-03-07 |
出願番号 | U2018-004866 |
審決分類 |
U
1
114・
113-
Z
(A47K)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
森次 顕 |
特許庁審判官 |
長井 真一 住田 秀弘 |
登録日 | 2019-03-20 |
登録番号 | 3220857 |
考案の名称 | マグネット付き湯おけ |
代理人 | 神保 欣正 |
代理人 | 服部 耕市 |