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審決分類 |
審判 E01C |
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管理番号 | 1393145 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2021-05-24 |
確定日 | 2022-12-07 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3219916号実用新案「人工芝生」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第3219916号の請求項5ないし9に係る考案についての審判請求は、成り立たない。 登録第3219916号の請求項1ないし4に係る考案についての審判請求は、却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件は、請求人が、被請求人が実用新案登録権者である実用新案登録第3219916号(以下「本件実用新案登録」という。請求項の数は9である。)の実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし9に係る実用新案登録を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。 平成30年11月15日 :出願(実願2018−4427号) 平成31年 1月 9日 :設定登録 令和 2年 6月 1日 :実用新案技術評価請求 令和 2年12月 9日 :実用新案技術評価書(作成日) 令和 3年 3月 9日 :実用新案法第14条の2第1項の訂正に 係る訂正書提出 令和 3年 5月24日 :審判請求書提出(差出日) 令和 3年 9月 8日 :手続補正書提出(請求人) 令和 4年 1月21日 :審判事件答弁書提出 令和 4年 1月21日 :実用新案法第14条の2第7項の訂正に 係る訂正書提出 令和 4年 2月 4日 :上申書提出(被請求人) 令和 4年 4月28日 :上申書提出(請求人) 令和 4年 5月10日 :上申書提出(被請求人) 令和 4年 5月26日 :書面審理通知(起案日) なお、上記の令和4年4月28日提出の上申書及び令和4年5月10日提出の上申書は、本件審理について書面審理を希望するものである。 第2 本件考案 上記令和4年1月21日提出の訂正書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件登録実用新案の請求項1ないし請求項4を削除するものであるから、本件実用新案登録の請求項5ないし9に係る考案(以下、「本件考案5」等といい、全体を「本件考案」という。)は、実用新案法第14条の2第1項の規定に基づき令和3年3月9日付けで訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項5ないし9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項5】 人工芝生であって、 基布(1)と、 前記基布(1)に接続され、かつ前記基布(1)から伸びた人工芝葉と、 前記基布(1)に接続され、かつ前記人工芝葉に接触する繊維(4)とを含み、 前記繊維が括抗静電繊維または導電繊維を含み、 前記人工芝葉が抗静電人工芝葉を含み、 前記基布(1)の前記人工芝葉との反対側に接続された抗静電粘着層(3)をさらに含むことを特徴とする、人工芝生。 【請求項6】 人工芝生であって、 基布(1)と、 前記基布(1)に接続され、かつ前記基布(1)から伸びた人工芝葉と、 前記基布(1)に接続され、かつ前記人工芝葉に接触する繊維(4)とを含み、 前記繊維が括抗静電繊維または導電繊維を含み、 前記人工芝葉が抗静電人工芝葉を含み、 前記基布(1)の前記人工芝葉との反対側に接続された抗静電粘着層(3)をさらに含み、 前記人工芝葉が少なくとも二種類の色の人工芝葉を含み、 前記人工芝葉が少なくとも二種類の繊度の人工芝葉を含み、 前記人工芝葉が少なくとも二種類の断面形状を有する人工芝葉を含み、 人工芝パイルを含み、前記人工芝パイルが複数本の前記人工芝葉を含み、複数個の前記人工芝パイルが並列して設置され、少なくとも一部の前記人工芝パイルがさらに前記繊維(4)を含み、 前記人工芝葉は、さらに直立人工芝葉(2)と前記繊維(4)との外周に巻き付いた湾曲人工芝葉(5)を含み、前記湾曲人工芝葉(5)、前記直立人工芝葉(4)と前記繊維(4)が一つの人工芝パイルを構成することを特徴とする、人工芝生。 【請求項7】 前記繊維(4)が前記人工芝葉の円周方向に沿って螺旋状に前記人工芝葉上に巻き付くことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の人工芝生。 【請求項8】 前記人工芝葉が、網状構造に構成され、かつ糸状に縮れた網状人工芝葉を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の人工芝生。 【請求項9】 前記人工芝パイルが、 複数本の前記人工芝葉および少なくとも一本の前記繊維(4)を有する第一人工芝パイルと、 複数本の前記人工芝葉のみを有する第二人工芝パイルとを含み、 前記第二人工芝パイルと前記第一人工芝パイルが交互に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の人工芝生。」 第3 請求人の主張 請求人は、登録第3219916号実用新案の実用新案登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書(令和3年9月8日提出の手続補正書により補正されたもの。以下、単に「請求書」という。)において、おおむね以下のとおり主張するとともに、証拠方法として以下の甲第1号証ないし甲第4号証を提出している。 1.無効理由の概要 本件実用新案登録の請求項1ないし9に係る考案(以下「本件考案1」ないし「本件考案9という。)は、甲第1号証に記載の考案、甲第2号証から甲第4号証の記載事項に基いて、その考案の属する分野における通常の知識を有する者が実用新案登録出願前に、きわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、本件登録実用新案は無効とすべきである。 (請求書26頁4〜10行) <証拠方法> 提出された証拠は、以下のとおりである。 甲第1号証:特表2008−502829号公報 甲第2号証:特表2007−538183号公報 甲第3号証:実願昭51−79435号(実開昭53−1871号) のマイクロフィルム 甲第4号証:中国実用新案第204417960号明細書 3 具体的な理由 請求項1ないし4は本件訂正により削除されたところ、請求人は本件考案5ないし9について次のとおり主張している。 なお、請求人は請求書において、甲第1号証に記載されていると主張する考案を「甲1考案」等と記載しているが(請求書15頁13〜14行)、以下では「甲第1号証に記載された考案」等という。 (1)主張の概要 ア.本件登録考案5は、甲第1号証に記載された考案、甲第2号証または甲第3号証に記載された帯電防止剤または導電繊維、甲第4号証に記載の粘着剤層から、当業者がきわめて容易に想到し得る。 イ.本件登録考案6は、甲第1号証に記載された考案、甲第2号証または甲第3号証に記載された帯電防止剤または導電繊維、甲第4号証に記載の粘着剤層及び人工芝葉の色や断面形状から、当業者がきわめて容易に想到し得る。 ウ.本件登録考案7の繊維が人工芝葉に巻き付くことは、甲第1号証や甲第2号証に記載されている。 エ.本件登録考案8の人工芝葉の網状構造は、甲第1号証の記載から、当業者がきわめて容易に想到し得る。 オ.本件登録考案9の人工芝パイルは、甲第1号証の記載から、当業者がきわめて容易に想到し得る。 (請求書9頁、「(1)請求の理由の要約」の「理由の要点」の項。なお、請求項1ないし4と同一の構成については、請求項1ないし4に対する主張も加味した。) (2)請求項5、6の分説 本件考案の請求項7ないし9は、請求項5または請求項6を引用しているので、以下では本件考案5、6に着目して請求人の主張を整理する。 請求人は、請求項5、6を次のとおり分説している。(請求書13頁4行〜14頁4行) (請求項5) A.人工芝生であって、 B.基布(1)と、 C.前記基布(1)に接続され、かつ前記基布(1)から伸びた人工芝葉と、 D.前記基布(1)に接続され、かつ前記人工芝葉に接触する繊維(4)とを含み、 E.前記繊維が括抗静電繊維または導電繊維を含み、 O.前記人工芝葉が抗静電人工芝葉を含み、 P.前記基布(1)の前記人工芝葉との反対側に接続された抗静電粘着層(3)をさらに含むことを特徴とする、人工芝生。 (請求項6) A.人工芝生であって、 B.基布(1)と、 C.前記基布(1)に接続され、かつ前記基布(1)から伸びた人工芝葉と、 D.前記基布(1)に接続され、かつ前記人工芝葉に接触する繊維(4)とを含み、 E.前記繊維が括抗静電繊維または導電繊維を含み、 O.前記人工芝葉が抗静電人工芝葉を含み、 P.前記基布(1)の前記人工芝葉との反対側に接続された抗静電粘着層(3)をさらに含み、 F.前記人工芝葉が少なくとも二種類の色の人工芝葉を含み、 G.前記人工芝葉が少なくとも二種類の繊度の人工芝葉を含み、 H.前記人工芝葉が少なくとも二種類の断面形状を有する人工芝葉を含み、 K.人工芝パイルを含み、 L.前記人工芝パイルが複数本の前記人工芝葉を含み、 M.複数個の前記人工芝パイルが並列して設置され、 N.少なくとも一部の前記人工芝パイルがさらに前記繊維(4)を含み、 I.前記人工芝葉は、さらに直立人工芝葉(2)と前記繊維(4)との外周に巻き付いた湾曲人工芝葉(5)を含み、 J.前記湾曲人工芝葉(5)、前記直立人工芝葉(2)と前記繊維(4)が一つの人工芝パイルを構成することを特徴とする、人工芝生。 (3)各甲号証の記載 ア.甲第1号証(請求書14頁下から6行〜15頁21行) 甲第1号証の段落【0021】〜【0023】の記載によれば、甲第1号証には、以下の考案が記載されている。 「A1.人工芝運動場であって、 B1.基部と、 C1.基部に取り付けられる合成繊維と、 D1.絡み合った合成繊維と、 e1.帯電防止添加剤が添加された顆粒状充填材とを含む。」 また、図1aには、「Q1.合成繊維が円周方向に沿って螺旋状に他の合成繊維と巻き付く。」ことが記載されている。 イ.甲第2号証(請求書15頁22行〜16頁21行) 甲第2号証の段落【0041】、【0023】、【0019】の記載によれば、甲第2号証には、以下の考案が記載されている。 「A2.人工芝の運動競技場であって、 B2.基材と、 C2.基材に取り付けられる合成繊維と、 D2.編まれた合成真意の束とを含み、 E2.合成繊維が帯電防止剤の層を有する。」 また、図2aには、「Q2.合成繊維が円周方向に沿って螺旋状に他の合成繊維に巻き付く。」ことが記載されている。 ウ.甲第3号証(請求書16頁22行〜17頁19行) 甲第3号証の明細書1頁9〜13行、3頁13行〜4頁1行、4頁11行〜5頁2行の記載によれば、甲第3号証には以下の考案が記載されている。 「A3.人工芝生であって、 B3.基体部と、 C3.基体部の表面に植立している葉状部とを含み、 D3.葉状部は、多数密生させて全体として芝生状の外観を呈するように構成され、 E3.葉状部には、導電性繊維を介在させる。」 エ.甲第4号証(請求書17頁20行〜18頁7行) 甲第4号証の段落[0011]、[0016]、[0048]、[0049]及び図3の記載によれば、甲第4号証には以下の考案が記載されている。 「A4.人工芝生繊維タフトであって、 B4.底布部と、 C4.底布層に接続され、かつ底布層から伸びた人工芝繊維を含み、 F4.人工芝繊維が少なくとも二種類の色の人工芝繊維を含み、 H4.人工芝繊維が少なくとも二種類の断面形状を有する人工芝繊維を含み、 P4.底布層の人工芝繊維との反対側に接続された粘着剤層をさらに含む。」 (4)本件登録考案5について(請求書23頁8行〜24頁2行、18頁下から7行〜19頁25行) ア.本件登録考案5と甲第1号証に記載された考案を対比すると、両者は、以下の点で相違する。 (ア)相違点1:「静電気」について、本件登録考案5は、「E.前記繊維が括抗静電繊維または導電繊維を含」むであるが、甲第1号証に記載された考案は、「e1.帯電防止添加物が添加された顆粒状充填材」を含む点で相違する。 そこで相違点1について検討するに、甲第2号証には、 「A2.人工芝の運動競技場であって、 B2.基材と、 C2.基材に取り付けられる合成繊維と、 D2.編まれた合成繊維の束とを含み、 E2.合成繊維が帯電防止剤の層を有する。」 構成が記載されており(以下「甲2記載事項」という。)、甲2記載事項の「合成繊維の束」は、本件登録考案5における「人工芝葉」と「繊維」とに相当するから、甲2記載事項を甲第1号証に記載された考案に適用して、「e1.帯電防止添加剤が添加された顆粒状充填材」を含む点を、「E2.合成繊維が帯電防止剤の層を有する」点に替えることは、当業者がきわめて容易に推考し得るものである。 また、甲第3号証には、 「A3.人工芝生であって、 B3.基体部と、 C3.基体部の表面に植立している葉状部とを含み、 D3.葉状部は、導電性繊維を介在させる。」 構成が記載されており(以下「甲3記載事項」という。)、甲3記載事項の「葉状部」は、本件登録考案5の「人工芝葉」と「繊維」に相当するから、甲3記載事項を甲第1号証に記載された考案に適用して、「e1.帯電防止添加剤が添加された顆粒状充填材」を含む点を、「E3.には、導電性繊維を介在させる」点に替えることは、当業者がきわめて容易に推考し得るものである。 なお、本件登録考案5のE.に記載されている「括抗静電繊維」は意味不明である。 (イ)相違点2:本件登録考案5は、 「O.前記人工芝葉が抗静電人工芝葉を含み、 P.前記基布(1)の前記人工芝葉との反対側に接続された抗静電粘着層(3)をさらに含むことを特徴とする、」構成を有するけれども、甲第1号証に記載された考案は有していない点。 そこで、相違点2について検討するに、Oの「抗静電人工芝葉」は、明細書にどのようなものか記載されておらず、どのようなものか不明である。 Pは甲4記載事項の「接着剤層」から、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に推考し得るものである。 (5)本件登録考案6について(請求書24頁3行〜25頁7行、19頁下から3行〜20頁15行、23頁5〜7行) ア.本件登録考案6と甲第1号証に記載された考案を対比すると、両者は、以下の点で相違する。 (ア)相違点1:「静電気」について、本件登録考案6は、「E.前記繊維が括抗静電繊維または導電繊維を含」むであるが、甲第1号証に記載された考案は、「e1.帯電防止添加物が添加された顆粒状充填材」を含む点。 上記(4)ア.(ア)と同様に、甲2記載事項または甲3記載事項を甲第1号証に記載された考案に組み合わせれば、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に推考し得るものである。 (イ)相違点2:本件登録考案6は、 「O.前記人工芝葉が抗静電人工芝葉を含み、 P.前記基布(1)の前記人工芝葉との反対側に接続された抗静電粘着層(3)をさらに含み、 F.前記人工芝葉が少なくとも二種類の色の人工芝葉を含み、 G.前記人工芝葉が少なくとも二種類の繊度の人工芝葉を含み、 H.前記人工芝葉が少なくとも二種類の断面形状を有する人工芝葉を含み、 K.人工芝パイルを含み、 L.前記人工芝パイルが複数本の前記人工芝葉を含み、 M.複数個の前記人工芝パイルが並列して設置され、 N.少なくとも一部の前記人工芝パイルがさらに前記繊維(4)を含み、 I.前記人工芝葉は、さらに直立人工芝葉(2)と前記繊維(4)との外周に巻き付いた湾曲人工芝葉(5)を含み、 J.前記湾曲人工芝葉(5)、前記直立人工芝葉(2)と前記繊維(4)が一つの人工芝パイルを構成する」 構成を有するけれども、甲1考案は有していない点。 そこで相違点2について検討するに、 O、Pについては、上記(4)と同様に、 F、G、Hについては、甲第4号証に、 「A4.人工草プラトーであって、 B4.基布層と、 C4.基布層に接続され、かつ基布から伸びた人工芝繊維とを含み、 F4.人工芝繊維が少なくとも二種類の色の人工芝繊維を含み、 H4.人工芝繊維が少なくとも二種類の断面形状を有する人工芝繊維を含」む構成が記載されており(以下「甲4記載事項」という。)、甲4記載事項のうちの、「人工草プラトー」、「基布層」、「人工芝繊維」は、本件登録考案6の「人工芝生」、「基布」、「人工芝葉」に相当し、F4およびH4はFおよびHに相当することは明らかであるから、甲4記載事項を甲1考案に適用することは、当業者がきわめて容易に推考し得るものであり、欠いた構成であるGの点については、本件考案の明細書に「繊度」についての記載が段落[0027]に、「選択により、人工芝葉は少なくとも二種類の繊度の人工芝葉を含む。」と記載されているだけであって、「繊度」は糸状のものの太さを示すと考えられているだけであり、「繊度」は、糸状のものの太さを示すと考えられるけれども、これだけの記載では内容が不明であり、K、L、M、N、I、Jについては、甲1考案のD1からその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に推考し得ることである。 第4 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。 そして、上記第3の2.(2)、(4)及び(5)と同様に本件考案5及び本件考案6に着目すると、被請求人は令和4年1月21日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)において、本件考案5及び本件考案6について次のとおり主張している。 1.請求人の主張に対する反論 (1)「括抗静電繊維」について(答弁書5頁7〜15行) 請求人は、「括抗静電繊維」は意味不明と主張しています。 ここで「括」の文字は、訓読みで「くく」ると読み、ある性質を持つ物の総称を呼ぶときに、中国語で使用される言葉であり、技術的意味としては、「抗静電機能を有する繊維の総称」の意味であり、「抗静電繊維」と同じ意味です。 (2)本件考案5について(答弁書7頁3〜9行、24〜26行) 請求人は、甲4考案の抄訳分として、段落(0001)、(0016)、(0048)、(0049)を証拠説明書に添えて提出しています。図1乃至図4には、底布層2の人工芝葉31〜34との反対側に「粘着剤層1」が塗布されることが記載されています。 しかしながら、「粘着剤層1」は、単なる粘着性を有する材料層に過ぎず、本件考案5の技術的本質である「抗静電性」を有する「抗静電粘着層3」については全く記載されていません。 したがいまして、本件考案5は、当業者がきわめて容易に考案し得たものでなく、無効となりません。 (3)本件考案6について(答弁書8頁19〜25行) 本件考案6の技術的本質は、本件考案5と同じ構成要素である「P.前記基布(1)の前記人工芝葉との反対側に接続された抗静電粘着層(3)をさらに含むこと」にあります。 したがいまして、本件考案6は、上記(2)で述べた理由により、当業者が極めて容易に考案し得たものではなく、無効となりません。 第5 当審の判断 1.各甲号証 (1)甲第1号証 ア.甲第1号証には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。) (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、運動場に適した人工芝に係り、人工芝は、 基部であり、当該基部へ第1人工芝繊維が取り付けられる、ところの基部と、 第1人工芝繊維の間に提供され且つ再生利用可能な合成材料で作成される、顆粒状充填材と、 を少なくとも有する。 【0002】 本発明は更に、運動場に適した人工芝に用いられる顆粒状充填材に係る。」 (イ)「【0021】 図1a及び図1bは、人工芝運動場の少数の実施形態を示し、この人工芝運動場には、本発明による顆粒状充填材を用いることができる。図1a及び図1bの両方において、人工芝運動場は、基部(substrate)1を含み、基部1へ、幾つかの合成繊維2が、取り付けられている。合成繊維2は、参照符号3によって指示された位置で、たとえば芝付けによって取り付けられる。合成繊維は、如何なる材料の組み合わせをも含んでもよく、且つ如何なる合成材料又は合成材料の混合物で作成されてもよい。合成繊維2は、個々に基部1へ取り付けられてもよく、又は一つの束、たとえば絡み合った複数の繊維2a〜2cとして取り付けられてもよい。更に特に、用いられる繊維は、解繊された帯状繊維であってもよい。 【0022】 顆粒状充填材4が、複数の合成繊維2間に設けられ、充填剤4は、(単に例示のため)強く拡大された縮尺で球体形状において示される。顆粒状充填材4が設けられたかかる人工芝運動場自体は、知られており、且つあらゆる種類の異なった実施形態において用いられるが、人工芝運動場のプレー特徴(playing characteristics)を向上させる本発明による添加剤が、顆粒状充填材4へ添加されている。 【0023】 特定の実施形態において、上記添加剤の一つは、残炎防止剤であってもよく、特にアルミニウムトリハイドレイト(ATH)であってもよい。その一方で、機能的な一実施形態において、添加剤は、帯電防止添加剤であってもよく、帯電防止添加剤は、顆粒状充填材の製造中に顆粒状充填材へ添加される。 【0024】 通常、顆粒状充填材は、合成材料、たとえばポリオレフィンベースの材料又はビニルポリマーベースの材料で作成され、それら材料はまた、再生利用可能である。顆粒状充填材における帯電防止添加剤の使用により、プレー中に生成された如何なる静電気をも放電できることが、達成される。帯電防止添加剤の使用は、顆粒状充填材がプレー中に帯電されて、人工芝運動場において反発作用により顆粒状充填材を上方に拡散させることから防ぐ。帯電防止添加剤の使用は、顆粒状充填材が、プレー中に空中に広がることを防ぐ。更に、帯電防止添加剤は、生成され得る如何なる静電荷をも放電することを確実にし、放電は、プレーヤーよりむしろ人工芝運動場を介して放電される。 【0025】 帯電防止添加剤は、ポリマー、特にポリアミド又はポリエステルブロックアミドのような永久帯電防止剤であってもよい。その一方で別の実施形態において、帯電防止添加剤は、ポリエステルブロック共重合体、グリセロールエステル、合成アミン又はスルフォン酸アルキルであってもよい。」 (ウ)「【0027】 このように取得された人工芝運動場は、湿気(水分)を、顆粒状充填材を介して吸収できるという、この特定の機能の特徴を有する。結果として、当該人工芝運動場は、より長時間湿った状態が留まり、このことはプレーヤーのプレー方法(スライディングタックルを決める等)において好ましい効果を有する。運動場でプレーが行われると、吸収された湿気が、天然芝と同じく再度解放される。 【0028】 その一方で、添加剤は、含油添加剤であってもよく、特に、パラフィンオイルであってもよい。このように取得された人工芝運動場は、プレーヤーとフィールドとの間の相互作用による抵抗が少なく、一方では、プレー特徴の向上へつながり、且つもう一方では、怪我のリスクを強く低減する(たとえば、フィールド上でスライディングタックルをするとき)。」 (エ)図1aは以下のものである。 ![]() イ.上記ア.を総合すると、甲第1号証には次の考案(以下「甲1考案」という。)が記載されている。 (甲1考案) 「基部1と、 基部1に取り付けられた合成繊維2と、 複数の合成繊維2間に設けられた顆粒状充填材4を有し、 顆粒状充填剤4は、添加剤が添加されており、 添加剤は、帯電防止添加剤であってもよい、 人工芝運動場に適した人工芝。」 (2)甲第2号証 ア.甲第2号証には、次の記載がある。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、人工芝の運動競技場における使用に対する合成繊維を製造する方法に係る。当該方法は、 i)合成物質の層を与える段階、及び、 ii)合成物質の層から前記合成繊維を得る段階、を有する。 【0002】 本発明はまた、かかる合成繊維、及び、本発明に従った合成繊維が取り付けられる基材を有する運動競技場に対して適切な人工芝に係る。」 (イ)「【0019】 更に他の一実施例では、他の合成物質のうちの少なくとも1つは、帯電防止剤を有し得る。結果として、競技場が利用される際に生成されるいかなる静電気も、放電し得る。通常は、繊維間における散布剤は、多くの人工芝の運動競技場において使用され、競技中に静的に帯電され、結果的に競技場において上方向に移動する。故に、粒状散布剤は、空気を介して蔓延され得、競技中は好ましくはない。」 (ウ)「【0023】 繊維(10,20,30,40)は、合成物質のフォイルから得られている。該フォイルは、共押出しによって得られ、図1A中に示される通り少なくとも2つの異なる合成物質の層(11,12)を有する。合成物質の均質な混合物を有する既知の合成繊維に反して、本発明に従った合成繊維(10,20,30,40)の重層構造は、各層(本実施例ではサブ層11及び12)に機能特定特性を与えることを可能にする。結果として、合成繊維の特別な一部分において特定特性を有する合成物質の使用は、この合成物質及び関連する機能特定特性が繊維の他の場所で存在する必要性を、未然に防ぐかあるいは強く低減する。」 (エ)「【0041】 図2A及び図2Bは、本発明に従った合成繊維が適用され得る人工芝の運動競技の複数の実施例を示す。両図において、人工芝の運動競技場は、基材1を有し、該基材に対して、本発明に従った方法を使用することによって得られる複数の合成繊維2は、例えばタフティングによって参照符号3で示される位置において取り付けられる合成繊維2は、合成物質の層から得られており、該物質は、共押出し工程によって少なくとも2つの異なる合成物質から製造されている。合成繊維は、基材に対して、又は、例えば編まれた繊維2a−2cの束として個別に取り付けられ得る。より特には、共押出しによって得られる繊維は、フィブリル化された帯状繊維であり得る。」 イ.上記ア.を総合すると、甲第2号証には次の技術事項(以下「甲2技術事項」という。)が記載されている。 「人工芝の陸上競技場の合成繊維2において、 編まれた繊維の束であって、 繊維(10、20、30、40)は、少なくとも2つの異なる合成物質の層(11、12)を有し、 他の合成物質のうちの少なくとも1つは、帯電防止剤を有し得ること。」 (3)甲第3号証 ア.甲第3号証には、次の記載がある。 (ア)「本考案は、合成樹脂より作られた人工芝生の葉状部分に導電性繊維を介在させてなる帯電防止性人工芝生に関するものである。 合成樹脂は一般に電気絶縁性を有し、これよりえられた成型品は摩擦等によつて帯電する。」(明細書1頁8〜12行) (イ)「図中1は葉状部を示し多数密生させて全体として芝生状の外観を呈するように構成されている。・・・。2は、その表面に上記葉状部1が多数植立している基体部であつて、葉状部1と一体に形成されていても、或いはその基体部2に穿孔し、葉状部を植えつけてもよい。・・・3,3’は夫々、葉状部と葉状部の間に埋めこむようにして介在させた導電性繊維、葉状部と葉状部を数個連結して葉状部本体に絡みつかせるようにし介在させた導電性繊維である。・・・又、導電性繊維を葉状部に介在させるには、葉状部へのりづけ接着、或いは単に物理的に絡ませるなどいづれの方法をとつてもよい。この導電性繊維としては炭素繊維又は鋼、真鍮、アルミニウム、鉄等の金属の繊維が良好に用いられる。4は本考案の人工芝生の敷設下地で、例えば、コンクリート面、地面、アスフアルト面、その他人工芝生の裏面と接する面を示す。 以上のべたとおり、本考案の帯電防止性人工芝生は、葉状部分、即ち、人体と接する部分に単に導電性繊維を物理的に介在させるだけの構成よりなり、・・・」(明細書3頁13行〜5頁2行) イ.上記ア.を総合すると、甲第3号証には次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されている。 「人工芝生の葉状部1において、 導電性繊維3、3’を介在させており、 導電性繊維3、3’は、葉状部と葉状部の間に埋め込むか、葉状部本体を複数個連結して葉状部に絡みつかせており、さらに、葉状部へのりづけ接着、或いは単に物理的に絡ませること。」 (4)甲第4号証 ア.甲第4号証には、次の記載がある(訳文は、請求人による。)。 (ア)「 ![]() 」 (訳文)「本考案の高迫真性人工芝生は異なる芝高さと異なる葉幅を有し、階層感がはっきりしているとともに、異なる色を持つことができるだけではなく、季節の移り変わりによって、季節に応じた色の人工芝を加えて、天然芝により近くするようにできる。」 (イ)「 ![]() 」 (訳文)「その中の符号の説明: 1 粘着剤層 2 底布層 31 第一階層の人工芝生繊維タフト 32 第二階層の人工芝生繊維タフト 33 第三階層の人工芝生繊維タフト 34 第四階層の人工芝生繊維タフト」 (ウ)「 ![]() 」 (訳文) 「・・・人工芝生の製造: 上記人工芝生繊維を、行ピッチ3/8インチのタフティング機で、芝高さ50mm、ステッチレート14針/10cmで、人工芝生半製品としてタフティングして、粘着剤を塗布してから、オーブン上部の温度を150℃、オーブン下部を110℃として、最終的に図3に示すような人工芝生を得る:第一層のエメラルドグリーンの人工芝繊維の高さが38mmで、葉幅が1.5mmであり、第二層のオリーブグリーンの人工芝繊維の高さが43mmで、葉幅が1.2mmであり、第三層のオリーブグリーンの人工芝繊維の高さが46mmで、葉幅が0.9mmであり、第四層のエメラルドグリーンの人工芝繊維の高さが50mmで、葉幅が0.5mmである。 このような人工芝生によれば、貯水温度低減型人工芝繊維、形状が天然芝とより似たV形人工芝繊維、成長により幅が一様ではなく高さも揃わない人工芝繊維を組み合わせたことになり、機能性がより強く、階層感がよりはっきりしており、模擬性がよりよくなる。」 イ.上記ア.を総合すると、甲第4号証には次の2つの技術事項(以下、それぞれ「甲4技術事項1」、「甲4技術事項2」という。)が記載されている。 (甲4技術事項1) 「人工芝の人工芝生繊維タフトであって、 エメラルドグリーンの高さ38mm葉幅1.5mmの第1階層31、 オリーブグリーンの高さ43mm葉幅1.2mmの第2階層32、 オリーブグリーンの高さ46mm葉幅0.9mmの第3階層33、 エメラルドグリーンの高さ50mm葉幅0.5cmの第4階層34、 を有すること。」 (甲4技術事項2) 「人工芝の底布層2の裏面に粘着剤層1を有すること。」 2.本件考案5について (1)対比 本件考案5と甲1考案を対比する。 甲1考案の「基部1」、「合成繊維2」、「人工芝運動場」の「人工芝」は、それぞれ本件考案5の「基布(1)」、「人工芝葉」、「人工芝生」に相当する。 甲1考案の「基部1に取り付けられた合成繊維2」は、本件考案5の「前記基布(1)に接続され、かつ前記基布(1)から伸びた人工芝葉」に相当する。 以上を総合すると、本件考案5と甲1考案とは、 「人工芝生であって、 基布(1)と、 前記基布(1)に接続され、かつ前記基布(1)から伸びた人工芝葉と、 を含む、人工芝生。」で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 本件考案5は、「前記基布(1)に接続され、かつ前記人工芝葉に接触する繊維(4)とを含み、前記繊維が括抗静電繊維または導電繊維を含」むのに対し、甲1考案はそのような繊維を含むか不明な点。 (相違点2) 本件考案5は、「前記人工芝葉が抗静電人工芝葉を含」むのに対し、甲1考案は、そのような特定がない点。 (相違点3) 本件考案5は、「前記基布(1)の前記人工芝葉との反対側に接続された抗静電粘着層(3)をさらに含む」のに対し、甲1考案は、そのような特定がない点。 (2)判断 上記相違点1〜3について検討する。 ア.相違点1及び相違点2について 上記相違点1及び相違点2について、併せて検討する。 本件考案5において、「人工芝葉」は「前記基布(1)に接続され、かつ前記基布(1)から伸びた」と特定されているのに対し、「繊維(4)」は「前記基布(1)に接続され、かつ前記人工芝葉に接触する」と特定されており、実質的に基布(1)に接続され、基布(1)から伸びているといえる。 さらに、「人工芝葉」は「抗静電人工芝葉を含み」と特定され、「繊維(4)」も「括抗静電繊維または導電繊維を含み」と特定されていることから、本件考案5の特定においては、「人工芝葉」と「繊維(4)」は表現に違いがあるものの、本件考案5においては、実質的に同一の構成を備えるものである。 なお、本件実用新案明細書には、「繊維(4)」について、「人工芝葉」と実質的に区別すべき説明は見当たらない。 ここで、甲1考案をみると、抗静電性や導電性について、「帯電防止添加剤」が添加された「顆粒状充填材4」が「複数の合成繊維2間に設けられ」ている。 当該「顆粒状充填材4」について、甲第1号証には、「顆粒状充填材における帯電防止添加剤の使用により、プレー中に生成された如何なる静電気をも放電できることが、達成される。帯電防止添加剤の使用は、顆粒状充填材がプレー中に帯電されて、人工芝運動場において反発作用により顆粒状充填材を上方に拡散させることから防ぐ。帯電防止添加剤の使用は、顆粒状充填材が、プレー中に空中に広がることを防ぐ。更に、帯電防止添加剤は、生成され得る如何なる静電荷をも放電することを確実にし、放電は、プレーヤーよりむしろ人工芝運動場を介して放電される。」(【0024】)と記載されているように、「帯電防止添加剤」を使用した「顆粒状充填材4」により、「人工芝運動場を介して」「静電気」を「放電」するという課題を解決し、かつ、「顆粒状充填材4」には、「顆粒状充填材が、プレー中に空中に広がることを防ぐ」ために帯電防止添加剤を使用することが必要でもあるから、甲1考案において、「顆粒状充填材4」に使用された「帯電防止添加剤」を、「人工芝葉」や「合成繊維2」に使用することにより、該「人工芝葉」や「合成繊維」に抗静電性や導電性を付与するには、阻害要因が存在しており、また、すでに「顆粒状充填材4」に「帯電防止添加剤」が使用されているのであるから、該「人工芝葉」や「合成繊維2」にさらに抗静電性や導電性を付与する動機付けはない。 よって、甲2技術事項や甲3技術事項で示されるように、人工芝葉に抗静電性や導電性を付与することが公知または周知の技術であったとしても、甲1考案に甲2技術事項又は甲3技術事項を適用することにより、上記相違点1及び2に係る本件考案5の構成とすることは、当業者がきわめて容易になし得たことではない。 イ.相違点3について 甲4技術事項2は、本件考案5の粘着層に相当する「粘着剤層1」を備えているが、甲第4号証には該「粘着剤層1」に、「抗静電」性を備えることは記載されておらず、「抗静電」性を示唆する記載もない。 また、「粘着層」に、「抗静電」性を備えることを示唆する証拠は示されていない。 よって、甲1考案に甲4技術事項2を適用して、上記相違点3に係る本件考案5の構成とすることは、当業者がきわめて容易になし得たことではない。 ウ.小括 以上のとおりであるから、本件考案5は、甲1考案、甲2技術事項、甲3技術事項、甲4技術事項2に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。 なお、「括抗静電繊維」については、被請求人が主張するように、「括」を加えることで「抗静電繊維」の総称を意味するものであって、実質的に「抗静電繊維」と同意であることは自明である。 また、仮に「括」がそのような意味ではないとしても、実用新案登録請求の範囲及び明細書全体では、大部分で「抗静電繊維」と記載されているのであるから、「括抗静電繊維」が「抗静電繊維」を意味することは明らかである。 3.本件考案6について (1)対比 本件考案6と甲1考案を対比する。 上記2.(1)の対比を踏まえると、本件考案6と甲1考案とは、 「人工芝生であって、 基布(1)と、 前記基布(1)に接続され、かつ前記基布(1)から伸びた人工芝葉と、 を含む、人工芝生。」で一致し、次の点で相違する。 (相違点A) 本件考案6は、「前記基布(1)に接続され、かつ前記人工芝葉に接触する繊維(4)とを含み、前記繊維が括抗静電繊維または導電繊維を含」むのに対し、甲1考案はそのような繊維を含むか不明な点。 (相違点B) 本件考案6は、「前記人工芝葉が抗静電人工芝葉を含」むのに対し、甲1考案は、そのような特定がない点。 (相違点C) 本件考案6は、「前記基布(1)の前記人工芝葉との反対側に接続された抗静電粘着層(3)をさらに含む」のに対し、甲1考案は、そのような特定がない点。 (相違点D) 本件考案6は、「前記人工芝葉が少なくとも二種類の色の人工芝葉を含み、 前記人工芝葉が少なくとも二種類の繊度の人工芝葉を含み、 前記人工芝葉が少なくとも二種類の断面形状を有する人工芝葉を含」むのに対し、甲1考案は、そのような特定がない点。 (相違点E) 本件考案6は、「人工芝パイルを含み、前記人工芝パイルが複数本の前記人工芝葉を含み、複数個の前記人工芝パイルが並列して設置され、少なくとも一部の前記人工芝パイルがさらに前記繊維(4)を含」むのに対し、甲1考案は、そのような特定がない点。 (相違点F) 本件考案6は、「前記人工芝葉は、さらに直立人工芝葉(2)と前記繊維(4)との外周に巻き付いた湾曲人工芝葉(5)を含み、前記湾曲人工芝葉(5)、前記直立人工芝葉(4)と前記繊維(4)が一つの人工芝パイルを構成する」のに対し、甲1考案は、そのような特定がない点。 (2)判断 上記相違点A〜Fについて検討する。 上記相違点A〜Cは、上記2.(1)で挙げた相違点1〜3と同じものであるから、相違点A〜Cについては、上記2.(2)ア.及びイ.で検討した理由と同じ理由により、当業者がきわめて容易に想到し得たことではない。 よって、請求人が主張するように、甲第4号証に記載された甲4技術事項1が上記相違点Dの構成に相当するとしても、その他の相違点E、Fについて検討するまでもなく、本件考案6は、甲1考案、甲2技術事項、甲3技術事項、甲4技術事項1、甲4技術事項2に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。 4.本件考案7〜9について 本件考案7〜9は、本件考案5又は6の構成をすべて含み、さらに限定を加えた考案であるから、上記2.又は3.で検討した理由と同じ理由により、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本件考案5ないし9に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものではないから、請求人の主張する無効理由及び証拠によって、本件考案5ないし9に係る実用新案登録を無効とすることはできない。 また、請求項1ないし4に係る無効審判の請求は却下する。 審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定において準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 審判長 居島 一仁 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2022-06-24 |
結審通知日 | 2022-06-29 |
審決日 | 2022-07-29 |
出願番号 | U2018-004427 |
審決分類 |
U
1
114・
121-
Y
(E01C)
|
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
居島 一仁 |
特許庁審判官 |
前川 慎喜 住田 秀弘 |
登録日 | 2019-01-09 |
登録番号 | 3219916 |
考案の名称 | 人工芝生 |
代理人 | 瀬戸 麻希 |
代理人 | 坪内 康治 |
代理人 | 廣瀬 峰太郎 |
代理人 | 弁理士法人コスモス国際特許商標事務所 |