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審決分類 審判    E01C
管理番号 1393146
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2021-05-24 
確定日 2022-12-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第3222142号実用新案「抗菌人工芝」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 請求項6ないし10に係る無効審判の請求は、成り立たない。 請求項1ないし5に係る無効審判の請求は、却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯

本件は、請求人が、被請求人が実用新案登録権者である実用新案登録第3222142号(以下「本件実用新案登録」という。請求項の数は10である。)の実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし10に係る実用新案登録を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成31年 4月26日 出願(実願2019−1526号)
令和 1年 6月19日 設定登録
令和 2年 6月 1日 実用新案技術評価請求
令和 3年 1月21日 実用新案技術評価書(作成日)
同年 4月 2日 実用新案法第14条の2第1項の訂正に係る
訂正書提出
同年 5月24日 審判請求書提出(差出日)
同年 9月10日 手続補正書提出
令和 4年 1月21日 審判事件答弁書提出
同年 1月21日 実用新案法第14条の2第7項の訂正に係る
訂正書提出
同年 4月28日 上申書提出(請求人)
同年 5月10日 上申書提出(被請求人)
同年 5月26日 書面審理通知(起案日)

なお、上記の両上申書は、本件審理について書面審理を希望するものである。

第2 本件考案

上記令和4年1月21日提出の訂正書による訂正(以下「本件訂正」という)は、本件登録実用新案の請求項1ないし5を削除するものであるから、本件実用新案登録の請求項6ないし10に係る考案(以下、「本件考案6」等といい、全体を「本件考案」という。)は、実用新案法第14条の2第1項の規定に基づき令和3年4月2日付けで訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項6ないし10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

【請求項6】
基布(1)、基布(1)に固定された抗菌人工芝糸(2)、および基布の底部に塗布した抗菌接着剤層(3)を含み、前記抗菌人工芝糸(2)は、ストレートヤーン(4)、捲縮ヤーン(5)およびスプリットヤーン(6)のうちの1種または複数種を含み、
前記抗菌接着剤層(3)の中部に一層の普通接着剤層(7)が設けられ、
抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し、ベークして硬化させて、セットする抗菌人工芝。
【請求項7】
前記抗菌接着剤層(3)の厚みが普通接着剤層(7)未満であることを特徴とする請求項6に記載の抗菌人工芝。
【請求項8】
前記ストレートヤーン繊維(4)は少なくとも2種の横断面形状を含み、前記捲縮ヤーン繊維(5)は少なくとも1種の横断面形状を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の抗菌人工芝。
【請求項9】
前記ストレートヤーン繊維(4)は、長方形、三角形、菱形、ダブル菱形(Double Diamond)、オリーブ形状、波状、リブ付き形状(ribed shape)、トリプルリブ付き形状(triple ribed shape)、クローバー状、中空形状、C字形、D字形、X字形、S字形、W字形、V字形、U字形およびM字形のうちの少なくとも2種の横断面形状を含み、前記捲縮ヤーン繊維(5)は、長方形、菱形およびリブ付き形状(ribed shape)のうちの少なくとも1種の横断面形状を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の抗菌人工芝。
【請求項10】
前記ストレートヤーン繊維(4)は、長方形、波状、菱形およびS字形の4種類の横断面形状を用い、前記捲縮ヤーン繊維(5)は、リブ付き形状(ribed shape)の横断面形状を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の抗菌人工芝。

第3 請求人の主張

請求人は、登録第3222142号実用新案の実用新案登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書(令和3年9月10日提出の手続補正書により補正されたもの。以下、単に「請求書」という。)において、おおむね以下のとおり主張するとともに、証拠方法として以下の甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。

1.無効理由の概要
本件実用新案登録の請求項1ないし10に係る考案(以下「本件考案1」ないし「本件考案10」という。)は、甲第1号証から甲第5号証までの各考案と、甲第4号証、甲第5号証および甲第6号証の記載事項とに基いて、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が実用新案登録出願前に、きわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、本件登録実用新案は無効とすべきである(請求書第36ページ下から7行〜下から2行)。

<証拠方法>
提出された証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証 実願平4−316126号(実開平6−42987号)の
CD−ROM
甲第2号証 特開2019−52531号公報
甲第3号証 特開平6−146155号公報
甲第4号証 特開平6−277172号公報
甲第5号証 中国特許出願公開第106757468号明細書
甲第6号証 中国実用新案第204417960号明細書

2.具体的な理由
請求項1ないし5は本件訂正により削除されたところ、請求人は本件考案6ないし10について次のとおり主張している。
なお、請求人は請求書において、甲第1号証に記載されていると主張する考案を「甲1考案」等と記載しているが(請求書第16ページ第20〜21行等)、以下では「甲第1号証に記載された考案」等という。

(1)主張の概要
ア.本件考案6は、甲第1号証に記載された考案、甲第2号証に記載された考案、または甲第3号証に記載された考案と甲第4号証または甲第5号証の記載内容とを組み合わせて、また甲第5号証の記載内容から、当業者がきわめて容易に想到し得る。

イ.本件考案7は、甲第5号証の記載内容から、当業者がきわめて容易に想到し得る。

ウ.本件考案8ないし10は、甲第5号証に記載された考案と甲第6号証の記載内容とを組み合わせて、当業者がきわめて容易に想到し得る。
(請求書第11ページ、「(1)請求の理由の要約」の「理由の要点」の項)

(2)請求項6の分説
本件考案の請求項7ないし10は請求項6を引用しているので、以下では本件考案6に着目して請求人の主張を整理する。
請求人は請求項6を次のとおり分説している(請求書第14ページ第23行〜下から2行)。

A.基布(10)、
B.基布(10)に固定された抗菌人工芝糸(2)、
C.および基布の底部に塗布した抗菌接着剤層(3)を含み、
D.前記抗菌人工芝糸(2)は、ストレートヤーン(4)、捲縮ヤーン(5)およびスプリットヤーン(6)のうちの1種または複数種を含み、
K.前記抗菌接着剤層(3)の中部に、一層の普通接着剤層(7)が設けられ、
L.抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し、ベークして硬化させて、セットする
G.抗菌人工芝。

(3)各甲号証の記載
ア.甲第1号証(請求書第16ページ第1〜28行)
甲第1号証の段落【0004】、【0007】〜【0009】の記載によれば、甲第1号証には、以下の考案が記載されている。

「A1.経、緯ともに5%〜30%の伸縮性を有する基布1、
b1.基布1の表面に形成される芝生部2、
c1.および基布1の裏面に設けられ、100〜150℃の温度で加熱乾燥されて形成される柔軟なパッキング樹脂層3を含み、
D1.芝生部2は、ナイロンなどのパイル糸で形成され、
F1.芝生部2の形成は基布1へのタフテイングによる
g1.人工芝生。」

イ.甲第2号証(請求書第16ページ下から7行〜第17ページ第28行)
甲第2号証の段落【0009】、【0013】、【0014】、【0071】及び図10の記載によれば、甲第2号証には、以下の考案が記載されている。

「A2.人工芝生下地1002、
b2.人工芝生下地1002に固定された人工芝生繊維1004、
c2.および人工芝生下地1002の基部に設けられ、接着剤などのコーティング1006を含み、
D2.人工芝生繊維1004はモノフイラメント繊維の束またはグループで、織り糸の重量として50〜30000dtexに達するものであり、
F2.人工芝生繊維内に複数の糸状領域がある、
g2.人工芝生1000。」

ウ.甲第3号証(請求書第17ページ下から7行〜第18ページ下から4行)
甲第3号証の段落【0009】、【0012】、【0015】、【0017】の記載によれば、甲第3号証には、以下の考案が記載されている。

「A3.第1基布12、
b3.第1基布12に固定されたパイル14、
c3.および第1基布12の底部に100〜130℃で熱融解された第2基布13を含み、
D3.パイル14はスプリットヤーンなどで構成され、
F3.パイル14は第2基布側から第1基布12にタフティングで植設される、
g3.人工芝。」

エ.甲第4号証(請求書第18ページ下から3行〜第19ページ下から7行)
甲第4号証の段落【0006】、【0009】〜【0011】及び図1(a)の記載によれば、甲第4号証には、以下の考案が記載されている。

「A4.基布2、
B4.基布2に固定され、抗菌セラミックスを含むパイル3、
C4.および基布2の底部に塗布した抗菌セラミックスを含むパイル抜け防止材4を含み、
D4.パイル3は抗菌セラミックスを練り混んだ抗菌繊維を含む糸であり、
F4.パイル3は基布2にタフティングされる
G4.ダストコントロールマット。」

オ.甲第5号証(請求書第19ページ下から6行〜第21ページ第6行)
甲第5号証の段落[0004]、[0013]、[0018]〜[0021]の記載によれば、甲第5号証には、以下の考案が記載されている。

「A5.底布、
B5.底布の上面の抗菌性人工芝糸、
C5.底布の下面の抗菌粘着剤を含み、
D5.抗菌性人工芝糸は原料の押し出しからねん糸の工程で製造され、
F5.抗菌性人工芝糸は底布にタフティングされる、
G5.抗菌性を有する人工芝生。」

また、甲第5号証には、以下の特徴も記載されている。

「H5.抗菌性人工芝糸は、芝糸抗菌剤を含み、
I5.芝糸抗菌剤は、固形有機抗菌剤、ナノ銀系無機抗菌剤、ナノ亜鉛系無機抗菌材またはそれらの組み合わせであり、
J5.抗菌粘着剤は、固形有機抗菌剤、ナノ銀系無機抗菌剤、ナノ亜鉛系無機抗菌材またはそれらの組み合わせであり、人工芝繊維を底布層に固着する粘着剤層をさらに含み、
L5.抗菌性粘着剤は人工芝生の底布の底部に均一に塗布して、赤外又は長いオーブンを通して加熱して硬化させる。」

カ.甲第6号証(請求書第21ページ第7行〜第22ページ第6行)
甲第6号証の段落[0005]、[0011]、[0016]、[0019]、[0022]、[0048]、[0049]及び図3の記載によれば、甲第6号証には、以下の考案が記載されている。

「A6.底基布、
b6.底基布の表面上の人工芝生繊維タフト、
c6.および底基布の背面に塗布された粘着剤層からなり、
D6.人工芝生繊維タフトは、押し出して、DTEX 6000/3Fとなるように成形され、
F6.人工芝生繊維タフトは底基布にタフティングされる
g6.人工芝生。」

また、甲第6号証には、以下の特徴も記載されている。

「N6.図3に示すような4階層で階層毎に断面形状が異なる。」

(4)甲第1号証に記載された考案を主とする理由(請求書第32ページ下から8行〜第34ページ第1行)

ア.本件考案6と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、両者は、以下の点で相違する。

(ア)相違点1:本件考案6の作用・効果は、「芝糸繊維も芝生の底部も優れた抑菌効果を有し、ユーザの健康保持によるニーズを効果的に満たす」というものであるが、甲第1号証に記載された考案の作用・効果は、「敷設面に凹凸があってもその凹凸に沿わせることができ、敷設作業を容易に行える」というものである。
このような甲第1号証に記載された考案の作用・効果は、本件考案6でも奏すると認められる。
甲第4号証および甲第5号証には、本件考案6の基布および接着剤層に相当するものに抗菌性を持たせる公知の技術が開示されている。

(イ)相違点2:本件考案6は、甲第1号証に記載された考案に含まれていない次の構成を有する。
「K.前記抗菌接着剤層(3)の中部に、一層の普通接着剤層(7)が設けられ、
L.抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し、ベークして硬化させて、セットする。」

a.しかしながら、「普通接着剤」がどのようなものであるか不明である。

b.さらにKの記載「抗菌接着剤層(3)の中部に、一層の普通接着剤層が設けられ」自体は明確であるけれども、Lの記載は、「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで」、何故「抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し」になるか判らない。

c.抗菌接着剤を塗布し、普通接着剤を塗布し、さらに普通接着剤(当審注:「抗菌接着剤」の誤記と認める。)を塗布することで三層になることを示していると推定されるけれども、ベークして硬化させる前なので、混合して三層にならない可能性もある。

d.いずれにしても、接着剤層の形成は、甲第1号証の構成c1にも記載されている。

イ.したがって、本件考案6は、甲第1号証に記載された考案に甲第4号証または甲第5号証に開示されている抗菌性に関する技術を組合せれば、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に推考し得るものである。

(5)甲第2号証又は甲第3号証に記載された考案を主とする理由(請求書第34ページ第2〜8行)
甲第2号証に記載された考案および甲第3号証に記載された考案とを対比すると、本件考案6の上記構成A、b、c、D、gは、甲第2号証に記載された考案の構成A2、b2、c2、D2、g2または甲第3号証に記載された考案の構成A3、b3、c3、D3、g3にそれぞれ対応し、これらの構成と第4号証または甲第5号証に開示されている抗菌性に関する技術を組合せれば、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に推考し得るものである。

(6)甲第5号証に記載された考案を主とする理由(請求書第34ページ第9行〜第35ページ第1行)
本件考案6と甲第5号証に記載された考案とを対比すると、両者は、以下の点で相違する。
相違点1:本件考案6は、次の構成を含むけれども、甲第5号証に記載された考案は含まない。
「K.前記抗菌接着剤層(3)の中部に、一層の普通接着剤層(7)が設けられる。」
このKの構成は不明であり、甲第5号証に記載された考案の構成C5に含まれると考えられる。
したがって、本件考案6は、甲第5号証に記載された考案に基づき、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に推考し得るものである。

第4 被請求人の主張

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判請求費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。
そして、上記「第3 2.(2)及び(4)ないし(6)」と同様に本件考案6に着目すると、被請求人は令和4年1月21日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)において、本件考案6について次のとおり主張している。

1.請求人の主張に対する反論
(1)請求人は、「「普通接着剤」がどのようなものであるか不明である。」と主張しているが、本件明細書の段落【0028】には、「抗菌接着剤層の中間に普通の接着剤層が設置されるため、第2抑菌成分の使用量を減少させ、抗菌効果を確保するとともにコストを削減させる。」と記載されており、「普通接着剤層」が、抗菌効果を有する高価格の「抗菌接着剤層」ではないと言う意味での低価格の「(抗菌接着剤層でない)普通接着剤層」と理解することは、当業者にとって当然のことであるから、請求人の上記主張は誤っている。(答弁書第5ページ第11〜23行)

(2)請求人は、「L.抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し」の文言の意味が不明であると主張しているが、「L.抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布すること、抗菌接着剤の一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し」というように、「ことで」の「で」を削除して読めば、「抗菌接着剤」の第1層を「基布の底部に塗布すること」、その後に、「(前記)抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布」すること、「次に(前記抗菌接着剤層とは別の)一層の抗菌接着剤を塗布」することにより、「前記抗菌接着剤層(3)の中部に一層の普通接着剤層(7)が設けられ」ることは明白である。このことは、本件公報の図3において、2つの抗菌接着剤層3の中間に普通接着剤層7が明確に示されていることからも明白である。
ここで、「中部」の意味は、本件明細書の段落【0028】での「前記抗菌接着剤層3の中部に一層の普通接着剤層7が設けられ」との文言と、「抗菌接着剤層の中間に普通接着剤層が設置される」との文言は、同じ意味に用いられていることを考慮すれば、「中部」が「中間」と同じ意味を有していることは明白であり、「普通接着剤層」が、2つの「抗菌接着剤層」の中間に設けられ、三層構造を有していることは明白である。このことは、本件公報の図3において、2つの抗菌接着剤層3の中間に普通接着剤層7が明確に示されていることからも明白である。(答弁書第5ページ下から8行〜第6ページ下から6行)

(3)請求人は、「抗菌接着剤を塗布し、普通接着剤を塗布し、さらに普通接着剤(「抗菌接着剤層」の誤記であると思料される)を塗布することで三層になることを示していると推定されるけれども、ベークして硬化させる前なので、混合して三層にならない可能性もある。」と主張している。
本件考案6の技術的主要部は、2つの「抗菌接着剤層」の中間に「普通接着剤層」を配置したことにある。接着剤は塗布前の状態においても、粘度の高い材料が多く、ベークする前の状態で敢えて混合しなければ、接着剤層が混合されることは考えられない。
また、本件考案6は、三層構造を構成することが目的であるため、混合しないような粘度を有する「抗菌接着剤」、「普通接着剤」を選択して使用することは、当業者が当然に行うことである。(答弁書第6ページ下から5行〜第7ページ第11行)

2.甲第1号証に記載された考案について
甲第1号証の構成c1には、一層のみのパッキング樹脂層が形成されているが、これに、甲第4号証に記載された考案、甲第5号証に記載された考案に記載された基布の底部に抗菌剤層を設けることを組み合わせたとしても、当業者は、本件公報の図1に記載されているものに類似する一層の抗菌樹脂層が想到されるにすぎない。
本件考案6の課題である「抗菌効果を確保するともにコストを削減させる」ことについては、甲第1号証、甲第4号証、及び甲第5号証には全く記載されていない。
また、本件考案6の技術的特徴部分である構成要素K.及びL.については、甲第1号証、甲第4号証、及び甲第5号証には全く記載されていない。
さらに、本件考案6の特有かつ顕著な効果である「抗菌接着剤層の中間に普通の接着剤層が設置されるため、第2抑菌成分の使用量を減少させ、抗菌効果を確保するとともにコストを削減させる。」ことについては、甲第1号証、甲第4号証、及び甲第5号証には全く記載されていない。
したがって、本件考案6は、甲第1号証、甲第4号証、及び甲第5号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に想到し得るものでなく、実用新案法第3条第2項に該当しない。(答弁書第9ページ第9行〜下から2行)

3.甲第2号証及び甲第3号証に記載された考案について
本件考案6の課題である「抗菌効果を確保するともにコストを削減させる」ことについては、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、及び甲第5号証には全く記載されていない。
また、本件考案6の技術的特徴部分である構成要素K.及びL.については、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、及び甲第5号証には全く記載されていない。
さらに、本件考案6の特有かつ顕著な効果である「抗菌接着剤層の中間に普通の接着剤層が設置されるため、第2抑菌成分の使用量を減少させ、抗菌効果を確保するとともにコストを削減させる。」ことについては、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、及び甲第5号証には全く記載されていない。
したがって、本件考案6は、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、及び甲第5号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に想到し得るものでなく、実用新案法第3条第2項に該当しない。(答弁書第9ページ最下行〜第10ページ第24行)

4.甲第5号証に記載された考案について
甲第5号証に記載された考案には、「L5.抗菌性粘着剤は人工芝生の底布の底部に均一に塗布して、赤外又は長いオーブンを通して加熱して硬化させる」ことが記載されているのみであり、「L.抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し、ベークして硬化させて、セットする」ことについて記載されていない。
本件考案6の課題である「抗菌効果を確保するともにコストを削減させる」ことについては、甲第5号証には全く記載されていない。
また、本件考案6の技術的特徴部分である構成要素K.及びL.については、甲第5号証には全く記載されていない。
さらに、本件考案6の特有かつ顕著な効果である「抗菌接着剤層の中間に普通の接着剤層が設置されるため、第2抑菌成分の使用量を減少させ、抗菌効果を確保するとともにコストを削減させる。」ことについては、甲第5号証には全く記載されていない。
したがって、本件考案6は、甲第5号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に想到し得るものでなく、実用新案法第3条第2項に該当しない。(第10ページ第25行〜第11ページ下から3行)

第5 当審の判断

1.各甲号証
(1)甲第1号証
ア.甲第1号証には、次の記載がある(下線は当審で付加した。以下同様。)。

(ア)「【請求項1】 経、緯ともに5%〜30%の伸縮性を有するメッシュ状の基布にパイル糸をタフティングして前記基布の表面に芝生部を形成し、前記基布の裏面には柔軟なバッキング樹脂層を設けたことを特徴とする伸縮性を有する人工芝生。」

(イ)「【0004】
【考案が解決しようとする課題】
本考案はこのような課題を解決するもので、敷設面に凹凸があってもその凹凸に沿わせることができ、敷設作業を容易に行なえる人工芝生を提供することを目的とするものである。」

(ウ)「【0007】
次に、前記基布の表面にタフティングにより設けられる芝生部はナイロンからなるパイル糸あるいはポリプロピレンからなるパイル糸あるいは塩化ビニルからなるパイル糸あるいは塩化ビニリデンからなるパイル糸などによって構成される。
【0008】
さらに、前記基布の裏面に設けられるバッキング樹脂層は塩化ビニル樹脂あるいはSBR(スチレン・ブチレンラバー)あるいはウレタン樹脂などの樹脂を主成分とする材料により構成され、これらの樹脂と添加物との割合により柔軟なバッキング樹脂層を得ることができる。バッキング樹脂層の主成分として塩化ビニル樹脂を用いる場合は塩化ビニル樹脂100部に対して、可塑材としてメチルエチルケトン50〜100部と、充填材として炭酸カルシウムあるいはタルク0〜100部を混ぜ合わせる。またバッキング樹脂層の主成分としてSBR(スチレン・ブチレンラバー)を用いる場合は充填材として炭酸カルシウムあるいはタルク0〜200部を混ぜ合わせる。さらにバッキング樹脂層の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合は充填材として炭酸カルシウムあるいはタルク0〜150部を混ぜ合わせる。前記可塑材や充填材の量によりバッキング樹脂層の柔軟性が決定される。また、このような材料からなるバッキング樹脂は液状で基布の裏面に塗布され、その後、100〜150℃の温度で加熱乾燥されて前記基布の表面にタフティングにより設けられる芝生部が基布から外れようとするのを防止するバッキング樹脂層となる。詳しくは基布の裏面に塗布されたバッキング樹脂は基布がメッシュ状であることから基布の表面側に浸透して基布の表面にもバッキング樹脂層が形成される。
【0009】
図1および図2に本考案による人工芝生の一例を示し、1は経、緯ともに5%〜30%の伸縮性を有する基布で、この基布1にパイル糸をタフティングして基布の表面に芝生部2を形成してあり、基布1から芝生部2のパイル糸の抜け落ちを防止するために基布1の裏面には柔軟なバッキング樹脂層3を設けてある。」

イ.上記「ア.」を総合すると、甲第1号証には次の考案(以下「甲1考案」という。)が記載されている。

(甲1考案)
「パイル糸をタフティングして基布の表面に芝生部を形成し、前記基布の裏面にはバッキング樹脂層を設けた人工芝生であって、
芝生部はパイル糸によって構成され、
バッキング樹脂は液状で基布の裏面に塗布され、加熱乾燥されて芝生部が基布から外れようとするのを防止するバッキング樹脂層となる
人工芝生。」

(2)甲第2号証
ア.甲第2号証には、次の記載がある。

(ア)「【0008】
当該方法はさらに、人工芝生繊維を人工芝生下地へと組み込む工程を備える。いくつかの例では、人工芝生下地は、織物または織物マットである。
【0009】
人工芝生繊維の人工芝生下地へとの組み込みは、例えば、人工芝生繊維を房状に形成して人工芝生下地内に入れ、房状に形成した複数の人工芝生繊維を人工芝生下地に結合することによって実行することができる。例えば、人工芝生繊維は、針で当該下地へと挿入され、カーペットが房状に形成されるようなやり方である。人工芝生繊維のループが形成されたならば、同じ工程中に切られてもよい。当該方法はさらに、複数の人工芝生繊維を人工芝生下地に結合する工程を備える。この工程において、人工芝生繊維は、人工芝生下地に結合または取り付けられる。これは、人工芝生下地の表面を糊付けまたはコーティングするなどの、適所に人工芝生繊維を保持する様々な手法にて行われてもよい。これは例えば、人工芝生下地の表面または部分をラテックスまたはポリウレタンなどの材料を用いてコーティングすることにより行われる。」

(イ)「【0013】
他の例では、人工芝生繊維は、一般に一緒にケーブル化された、撚られた、または結束された、いくつかの延伸されたモノフィラメント繊維の束またはグループであってもよい。いくつか場合に、束はいわゆる巻き返し織り糸で巻き返され、これが織り糸の束を一緒に維持し、後の房状に形成するプロセス、または、織りこみプロセスに対する準備をする。
【0014】
複数のモノフィラメントのサイズは、例えば、直径50〜600マイクロメートルである。織り糸の重量は典型的には、50〜3000dtexに達してもよい。」

(ウ)「【0071】
図10は、人工芝生1000の例の断面の例を示す。人工芝生1000は、人工芝生下地1002を備える。人工芝生繊維1004は、人工芝生下地1002中に房状に形成されている。人工芝生下地1002の基部にコーティング1006が示されている。コーティングは、人工芝生繊維1004を人工芝生下地1002に結合または固定するために役立つかもしれない。コーティング1006は、任意であってもよい。例えば、複数の人工芝生繊維1004は、代わりに人工芝生下地1002中に織りこまれる。様々な種類の糊、コーティングまたは接着剤が、コーティング1006に対して使用することができる。複数の人工芝生繊維1004は、人工芝生下地1002の上方に距離1008だけ延在するものとして示されている。距離1008は、本質的に複数の人工芝生繊維1004のパイルの高さである。複数の人工芝生繊維1004内の複数の糸状領域の長さは、距離1008の半分以下である。」

(エ)図10は次のものである。


イ.上記「ア.」を総合すると、甲第2号証には次の考案(以下「甲2考案」という。)が記載されている。

(甲2考案)
「織物である人工芝生下地を備え、
人工芝生繊維は、人工芝生下地中に房状に形成されており、
人工芝生下地の基部にコーティングが設けられ、
コーティングは、人工芝生繊維を人工芝生下地に結合または固定するために役立ち、
接着剤が、コーティングに対して使用することができる
人工芝生。」

(3)甲第3号証
ア.甲第3号証には、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】 基布上にナイロンやポリプロピレン等の合成樹脂で作られたパイルを所定の間隔で多数植設してなる人工芝において、前記基布は、上面に位置する合成樹脂製の第1基布と、この第1基布の下面に位置し、少なくともその一部が前記第1基布よりもその融点が低い合成樹脂で作られ、熱融着により前記パイルを前記第1基布に固着する第2基布とから構成されていることを特徴とする人工芝。」

(イ)「【0009】
【作用】人工芝の基布は第1基布と第2基布とから構成され、第2基布を熱融解するだけで簡単にパイルを第1基布に固定することができ、従来の人工芝に比べて極めて簡単に製造することができ、安価に提供することができる。更に第3基布を設けることによりパイルは第1基布の上下面で一層確実強固に固定することができる。」

(ウ)「【0012】図1はこの発明による人工芝の一実施例を示しており、基布11は従来の裏打ち基布と同様に、例えばポリプロピレンの平織物等で構成された第1基布12と、この第1基布12の裏面に位置し、少なくともその一部が第1基布の融点より低い融点の例えばポリプロピレンやポリエチレン繊維で作られた不織布等で構成された第2基布13とで構成されている。基布11には第2基布13側から、ナイロンやポリプロピレン等の合成樹脂から作られたスプリットヤーンやモノフィラメントヤーンで構成されたパイル14がタフティングにより植設されている。これらパイル14は、熱により溶解された第2基布13により第1基布12の裏面に固定されている。なお、第1基布12と第2基布13とは、パイル14をタフティングする前に予め一体化させておりても、パイル14をタフティングする時にパイル14によりあたかも縫い合わされるようにして一体化してもよい。」

(エ)「【0015】この実施例の具体的な例を挙げると、第1基布12は縦糸を500デニールで、1インチ当たり24本のポリプロピレンを使用し、横糸を1000デニールで、1インチ当たり15本のポリプロピレンを使用した平織物で構成し、第2基布13は上述した商品名「EP繊維」の不織布で構成した。この「EP繊維」は、6〜7デニールで、1平方m当たり100gで、低融点樹脂の融点は110℃、高融点樹脂の融点は140℃である。パイル14は融点が160℃のポリプロピレンを使用した。加熱手段25により100〜130℃に加熱したところ、第2基布13の低融点樹脂は溶解して、第1基布12のパイル14の植設部に浸透し、パイル14は強固に固定されていた。また第2基布13の高融点樹脂は融解されずに残り、融解された低融点樹脂により第1基布12の裏面に固着しパイル14の固定を一層確実にした。」

(オ)「【0017】
【発明の効果】以上のようにこの発明の人工芝は、基布をその上面に位置する合成樹脂製の第1基布と、この第1基布の下面に位置し、少なくとも第1基布よりもその融点が低い合成樹脂で作られ、熱融着によりパイルを第1基布に固着する第2基布とから構成しているので、第2基布を熱融解するだけで簡単にパイルを第1基布に固定することができ、従来の人工芝に比べて極めて簡単に製造することができ、安価に提供することができる。また、請求項2に記載のように第1基布の上面にも第2基布と同様な材料で構成された第3基布を更に設けてもよく、これによりパイルは第1基布の上下面で一層確実強固に固定することができる。」

イ.上記「ア.」を総合すると、甲第3号証には次の考案(以下「甲3考案」という。)が記載されている。

(甲3考案)
「基布上にスプリットヤーンで構成されたパイルを所定の間隔で多数植設してなる人工芝において、
前記基布は、上面に位置する第1基布と、この第1基布の下面に位置し、熱融着により前記パイルを前記第1基布に固着する第2基布とから構成されている、
人工芝。」

(4)甲第4号証
ア.甲第4号証には、次の記載がある。

(ア)「【0006】そこで、本発明は、繰り返し洗浄を行う必要のあるレンタル用のダストコントロールマットにあっても優れた抗菌効果を発揮し、且つ、成型加工時の温度によって抗菌剤が分解することなく、抗菌効果を持続的に発揮し得るダストコントロールマットを提供することを目的とする。」

(イ)「【0009】
【実施例】以下、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。図1(a),(b)は本発明の実施例を示すダストコントロールマットの断面構造の一部を示す概略断面図である。図において、ダストコントロールマット1は基布(織布又は不織布)2にパイル3を植設して形成されたタフテッドカーペット(表面材)を備え、このタフテッドカーペットの裏側はパイル抜け防止材4とバッキング材5により裏貼りを施してある。
【0010】前記パイル3は図1(a)に示すようにカットパイルに形成したり、図1(b)に示すようにループパイルに形成され、これらのパイル3は抗菌セラミックスを練り混んだポリエステル(例えば、株式会社クラレが製造する商品名〔サニター30〕)65%とレギュラーポリエステル35%とによる混紡8番双糸(商品名〔スペルバーセット〕)を用いて形成してある。また、前記パイル3は高圧染色法にて染色してあり、前記タフテッドカーペットは1/8ゲージ・ハイカット/ローループに形成している。なお、表面材はニードルパンチカーペットであってもよく、パイルは抗菌セラミックスを含む抗菌繊維(糸を製造するときに原材料に抗菌セラミックスを練り混んだもの)を100%としてもよい。また、パイルは非抗菌繊維(天然繊維、化学繊維又はこれらを組み合わせたもの)に対し抗菌繊維混合比率を30%以上として混撚あるいは交織とすることもできる。
【0011】前記基布2の裏面に接する部分には抗菌セラミックスを重量比1%以上(好ましくは1〜10%)の割合で練り混んだNBRラテックスを80g/m2(乾燥時)に塗布して前記パイル3の抜け防止(目留め)を施してある。なお、前記表面材だけに抗菌セラミックスを含ませ、他は従来通りの構成により製品とすることもでき、前記表面材に対し抗菌セラミックスを含むNBRラテックスで前記抜け防止4を施してから通常のバッキングを行い製品としてもよい。」

(ウ)図1(a)は次のものである。


イ.上記「ア.」を総合すると、甲第4号証には次の考案(以下「甲4考案」という。)が記載されている。

(甲4考案)
「基布にパイルを植設して形成されたタフテッドカーペット(表面材)を備え、
パイルは抗菌繊維を100%としてもよく、
基布の裏面に接する部分には抗菌セラミックスを練り混んだNBRラテックスを塗布して前記パイルの抜け防止(目留め)を施してある
ダストコントロールマット。」

(5)甲第5号証
ア.甲第5号証には、次の記載がある(括弧内に請求人が作成した日本語訳を付した。)。

(ア)「


([0004] 本発明は、上記従来技術に存在する問題点及び欠点を解決し、抗菌性を有する人工芝生を提供する。この人工芝生は、芝生の両面(芝糸及びベース粘着剤)のいずれにも抗菌性を有する。芝生が陰湿な環境又は水の溜まった環境にあると、芝生の底背面(地面に近い)に細菌、カビ、真菌、湿虫が最も発生しやすく、本発明の抗菌芝生によれば、これらの有害物質の生成を効果的に抑制することができ、抗菌効果持続時間が長く、添加量が少ないため、使用者の健康を守る。)

(イ)



([0013] 本発明の上記抗菌性を有する人工芝生の更なる技術案としては、前記芝糸抗菌剤は固形有機抗菌剤、ナノ銀系無機抗菌剤、ナノ亜鉛系無機抗菌剤又はそれらの組み合わせであり、前記ベース粘着剤抗菌剤は無機抗菌剤、耐高温有機抗菌剤又はその組み合わせである。更なる技術案としては、前記無機抗菌剤は液体又は固形粉状のナノ銀系無機抗菌剤、ナノ銅系無機抗菌剤、ナノ亜鉛系無機抗菌剤又はそれらの組み合わせであり、前記耐高温有機抗菌剤はアニリン系、バニリン系、エチルバニリン系又は有機エーテル類抗菌剤である。抗菌剤は、耐高温と耐加水分解の特性を有し、ナノ無機抗菌剤はケイ酸塩又はゼオライトで銀、銅、亜鉛の無機鉱物と酸化物の一つ又は複数を担持することで構成され、抗菌率≧98%である。)

(ウ)



([0018] 本発明の上記抗菌性を有する人工芝生の製造方法は、以下のステップを含む:
[0019] (1)製法規定量のキャリア、カラーマスターバッチ、抗菌剤及び助剤をスクリュー押出機で混合、押し出し、引き伸ばし、定型、ねん糸して、抗菌性人工芝糸に加工する抗菌性人工芝糸の製造ステップと、
[0020] (2)抗菌人工芝糸を底布とともにタフティング機により人工芝生に加工するステップと、
[0021] (3)製法規定量のカルボキシル化スチレンブタジエンラテックス又はポリウレタン成分、フィラー及び抗菌剤を均一に混合してから、人工芝生の底部に均一に塗布して、且つ赤外又は長いオーブンを通して硬化し成形されることで、抗菌性を有する人工芝生を得る抗菌粘着剤の調製ステップ。)

(エ)上記「(ウ)」の「製法規定量のカルボキシル化スチレンブタジエンラテックス又はポリウレタン成分、フィラー及び抗菌剤を均一に混合してから、人工芝生の底部に均一に塗布して、且つ赤外又は長いオーブンを通して硬化し成形されることで、抗菌性を有する人工芝生を得る抗菌粘着剤の調製ステップ」との記載からみて、「抗菌粘着剤」を「人工芝生の底部に均一に塗布して、且つ赤外又は長いオーブンを通して硬化し成形されることで、抗菌性を有する人工芝生を得る」ものと認められる。

イ.上記「ア.」を総合すると、甲第5号証には次の考案(以下「甲5考案」という。)が記載されている。

(甲5考案)
「抗菌人工芝糸を底布とともにタフティング機により人工芝生に加工し、
抗菌粘着剤を人工芝生の底部に均一に塗布して、且つ赤外又は長いオーブンを通して硬化し成形されることで、抗菌性を有する人工芝生を得る
抗菌性を有する人工芝生。」

(6)甲第6号証
ア.甲第6号証には、次の記載がある(括弧内に請求人が作成した日本語訳を付した。)。

(ア)「


([0005] 本発明の高迫真性人工芝生は、底基布、底基布上にタフティングされた人工芝繊維タフトと底基布の背面に塗布された粘着剤層からなり、前記底基布上にタフティングされた人工芝繊維タフトは少なくとも二種類の高さが異なる人工芝繊維タフトを含む。)

(イ)「


([0011] 本考案の高迫真性人工芝生は異なる芝高さと異なる葉幅を有し、階層感がはっきりしているとともに、異なる色を持つことができるだけではなく、季節の移り変わりによって、季節に応じた色の人工芝を加えて、天然芝により近くするようにできる。)

(ウ)「


([0016] その中の符号の説明:1−粘着剤層,2−底布層,31−第一階層の人工芝生繊維タフト,32−第二階層の人工芝生繊維タフト,33−第三階層の人工芝生繊維タフト,34−第四階層の人工芝生繊維タフト。)

(エ)「

・・・


([0019] ポリエチレン、草色のカラーマスター、助剤などを帯状茎形の型から押し出して、DTEX 6000/3Fで、幅が1.5mmであるエメラルドグリーンの人工芝繊維を製造する。押出成形温度は210℃で、熱処理の温度は110℃である。
・・・
[0022] 上記人工芝生繊維を、行ピッチ3/8インチのタフティング機で、芝高さ60mm、ステッチレート14針/10cmで、人工芝生半製品としてタフティングして、粘着剤を塗布してから、オーブン上部の温度を150℃、オーブン下部を120℃として、最終的に図1に示すような人工芝生を得る:第一層の薄黄緑色の人工芝繊維の高さが57mmで、葉幅が1.1mmであり、第二層の草色の人工芝繊維の高さが60mmで、葉幅が1.5mmである。)

(オ)「


([0048] 上記人工芝生繊維を、行ピッチ3/8インチのタフティング機で、芝高さ50mm、ステッチレート14針/10cmで、人工芝生半製品としてタフティングして、粘着剤を塗布してから、オーブン上部の温度を150℃、オーブン下部を110℃として、最終的に図3に示すような人工芝生を得る:第一層のエメラルドグリーンの人工芝繊維の高さが38mmで、葉幅が1.5mmであり、第二層のオリーブグリーンの人工芝繊維の高さが43mmで、葉幅が1.2mmであり、第三階層のオリーブグリーンの人工芝繊維の高さが46mmで、葉幅が0.9mmであり、第四階層のエメラルドグリーンの人工芝繊維の高さが50mmで、葉幅が0.5cmである。
[0049] このような人工芝生によれば、貯水温度低減型人工芝繊維、形状が天然芝とより似たV形人工芝繊維、成長により幅が一様ではなく高さも揃わない人工芝繊維を組み合わせたことになり、機能性がより強く、階層感がよりはっきりしており、模擬性能がよりよくなる。)

(カ)図3は次のものである。


イ.上記「ア.」を総合すると、甲第6号証には次の考案(以下「甲6考案」という。)が記載されている。

(甲6考案)
「底基布、底基布上にタフティングされた人工芝繊維タフトと底基布の背面に塗布された粘着剤層からなり、
人工芝生繊維を、タフティング機で、人工芝生半製品としてタフティングして、粘着剤を塗布してから、オーブン上部の温度を150℃、オーブン下部を120℃として、最終的に人工芝生を得る
高迫真性人工芝生。」

2.本件考案6の解釈について
請求人は上記「第3 2.(4)ア.(イ)」のとおり本件考案6の解釈について主張しているところ、まず、当該主張について検討する。

(1)「普通接着剤層」について
本件考案6において、「普通接着剤層」は「抗菌接着剤層」と対で用いられているから、「普通接着剤層」が抗菌性でない接着剤層を意味することは明らかである。

(2)「前記抗菌接着剤層(3)の中部に一層の普通接着剤層(7)が設けられ」について
本件考案6の「抗菌接着剤層(3)」及び「普通接着剤層(7)」がそれぞれ層をなすことはその名称から自明である。
そして、「前記抗菌接着剤層(3)の中部に一層の普通接着剤層(7)が設けられ」るためには、「抗菌接着剤層(3)」は「一層の普通接着剤層(7)」がその「中部」に位置し得るように2つの層をなす必要があることは明らかであるから、「前記抗菌接着剤層(3)の中部に一層の普通接着剤層(7)が設けられ」は、2層の「抗菌接着剤層(3)」の中間に1層の「普通接着剤層(7)」が設けられることを意味すると解される。
そして、このような解釈は、本件明細書の段落【0028】の「抗菌接着剤層の中間に普通の接着剤層が設置されるため、第2抑菌成分の使用量を減少させ、抗菌効果を確保するとともにコストを削減させる。」との記載とも整合する。

(3)「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し」について
本件考案6は「前記抗菌接着剤層(3)の中部に一層の普通接着剤層(7)が設けられ」るものであって、上記「b.」のとおり、2層の「抗菌接着剤層(3)」の中間に1層の「普通接着剤層(7)」が設けられて、3層の接着剤層を有するものと認められる。
そして、本件考案6の「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し」という事項は、全体としてみれば各接着剤を塗布する順序を特定するものと認められるところ、本件考案6が上記のとおりの3層の接着剤層を有することに照らせば、「抗菌人工芝の基布の底部」に「抗菌接着剤」、「普通接着剤」及び「抗菌接着剤」の3つの層を順に塗布することを意味すると解することができる。

3.甲1考案を主引用考案とする場合
(1)本件考案6について
ア.対比
(ア)甲1考案の「基布」は、本件考案6の「基布(1)」に相当する。

(イ)甲1考案の「芝生部」は、「パイル糸をタフティングして基布の表面に」「形成し」たものであるから、「基布」に固定されていることは明らかである。また、「人工芝生」をなすものであるから、「芝生部」が人工のものであることは自明である。そうすると、甲1考案の当該「芝生部」と、本件考案6の「基布(1)に固定された抗菌人工芝糸(2)」とは、「基布に固定された人工芝糸」の点で共通する。

(ウ)甲1考案の「バッキング樹脂層」は「バッキング樹脂は液状で基布の裏面に塗布され、加熱乾燥されて芝生部が基布から外れようとするのを防止するバッキング樹脂層となる」ものであるから、「基布の裏面に塗布され」るものであり、芝生部を基布に接着する作用を有すると言える。そうすると、甲1考案の当該「バッキング樹脂層」と、本件考案6の「基布の底部に塗布した抗菌接着剤層(3)」とは、「基布の底部に塗布した接着剤層」の点で共通する。

(エ)甲1考案の「バッキング樹脂は液状で基布の裏面に塗布され、加熱乾燥されて芝生部が基布から外れようとするのを防止するバッキング樹脂層となる」と、本件考案6の「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し、ベークして硬化させて、セットする」とは、「接着剤を人工芝の基布の底部に塗布し、ベークして硬化させて、セットする」点で共通する。

(オ)甲1考案の「人工芝生」と、本件考案6の「抗菌人工芝」とは、「人工芝」の点で共通する。

(カ)以上を総合すると、本件考案6と甲1考案とは、
「基布、基布に固定された人工芝糸、および基布の底部に塗布した接着剤層を含み、
接着剤を人工芝の基布の底部に塗布し、ベークして硬化させて、セットする人工芝。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
人工芝糸が、本件考案6においては「抗菌」人工芝糸であるのに対して、甲1考案においてはそのようなものでない点。

(相違点2)
接着剤層が、本件考案6においては「抗菌」接着剤層であり、「抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」、「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布」するのに対して、甲1考案においてはそのようなものでない点。

(相違点3)
人工芝糸が、本件考案6においては「ストレートヤーン、捲縮ヤーンおよびスプリットヤーンのうちの1種または複数種を含」むのに対して、甲1考案においてはその点につき特定されていない点。

(相違点4)
人工芝が、本件考案6においては「抗菌」人工芝であるのに対して、甲1考案においてはそのようなものでない点。

イ.検討
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。

(ア)甲4考案に基づく検討
a.甲4考案の「抗菌セラミックスを練り混んだNBRラテックス」は「塗布して前記パイルの抜け防止(目留め)を施」すものであるから、塗布することにより「パイル」が抜けることを防止するものであって接着の作用を有するものであるといえる。また、通常、ラテックスは凝固するから、「NBRラテックスを塗布」すれば層が形成されることは明らかである。
そうすると、甲4考案の当該「基布の裏面に接する部分に」「塗布して前記パイルの抜け防止(目留め)を施してある」「抗菌セラミックスを練り混んだNBRラテックス」の層は、本件考案6の「基布の底部に塗布した抗菌接着剤層」に相当する。

b.しかしながら、本件考案6の相違点2に係る事項は上記「2.」のとおりに解されるところ、甲第4号証には、「抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」ることや、「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布」することについては、記載も示唆もない。

c.そうすると、甲1考案に甲4考案を適用しても、本件考案6の相違点2に係る構成に至るものではない。

(イ)甲5考案に基づく検討
a.甲5考案の「抗菌性を有する人工芝生」は「抗菌人工芝糸を底布とともに人工芝生に加工」するものであるところ、「抗菌粘着剤」がその名称からして「粘着剤」であり、かつ、「硬化し成形されることで、抗菌性を有する人工芝生を得る」ことからすれば、「抗菌人工芝糸を底布とともに人工芝生に加工」する際には「抗菌粘着剤」が「抗菌人工芝糸」と「底布」とを固定すると解するのが自然であって、当該「抗菌粘着剤」は接着の作用を有するということができる。
そうすると、甲5考案の「人工芝生の底部に均一に塗布して、且つ赤外又は長いオーブンを通して硬化し成形されることで、抗菌性を有する人工芝生を得る」ものである「抗菌粘着剤」は、本件考案6の「基布の底部に塗布した抗菌接着剤層」に相当する。

b.しかしながら、本件考案6の相違点2に係る事項は上記「2.」のとおりに解されるところ、甲第5号証には、「抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」ることや、「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布」することについては、記載も示唆もない。

c.そうすると、甲1考案に甲5考案を適用しても、本件考案6の相違点2に係る構成に至るものではない。

(ウ)そして、本件考案6は相違点2に係る構成を備えることにより、本件明細書の段落【0028】に記載の「抗菌接着剤層の中間に普通の接着剤層が設置されるため、第2抑菌成分の使用量を減少させ、抗菌効果を確保するとともにコストを削減させる。」という効果を奏するものと認められる。

ウ.請求人の主張について
請求人の上記「第3 2.(4)ア.(イ)」における主張について検討する。

(ア)「普通接着剤層」及び「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し」との事項については、上記「2.」で検討したとおりに解されるものであって、これらの点についての請求人の主張は採用することができない。

(イ)接着剤が混合して三層にならない可能性もあるとの主張について、本件考案6は「前記抗菌接着剤層(3)の中部に一層の普通接着剤層(7)が設けられ」との構成を有するところ、仮に、塗布した「抗菌接着剤層(3)」、「普通接着剤層(7)」及び「抗菌接着剤層(3)」が「ベークして硬化させて」る前に混合して三層にならない場合には、「前記抗菌接着剤層(3)の中部に一層の普通接着剤層(7)が設けられ」るという本件考案6の構成を備えないから、そのようなものは本件考案6に含まれないこととなる。
そうすると、請求人の上記主張は本件考案6についてするものとは認められないから、採用することができない。

(ウ)接着剤層の形成は、甲第1号証の構成c1にも記載されているとの主張について、甲第1号証には「バッキング樹脂層」が記載されており、上記「3.(1)ア.(ウ)」で検討したとおり、甲1考案の当該「バッキング樹脂層」と、本件考案6の「基布の底部に塗布した抗菌接着剤層(3)」とは、「基布の底部に塗布した接着剤層」の点で共通する。
しかしながら、甲第1号証には「抗菌接着剤層」については記載も示唆もなく、ましてや「前記抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」ることについては何ら記載されていない。
また、請求人は、接着剤層の形成が甲第1号証に記載されている旨を主張するのみであって、甲第1号証のいずれの記載が「抗菌接着剤層」や「前記抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」ることにあたるのかついて具体的に主張していない。
そうすると、請求人の上記主張を参酌しても、甲1考案において本件考案6の相違点2に係る構成を備えるものとすることは、当業者がきわめて容易に想到できたことではない。

エ.小括
そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件考案6は、甲1考案及び甲4考案又は甲5考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。

4.甲2考案を主引用考案とする場合
(1)本件考案6について
ア.対比
(ア)甲2考案の「織物である人工芝生下地」は、本件考案6の「基布(1)」に相当する。

(イ)甲2考案においては、「コーティング」が「人工芝生繊維を人工芝生下地に結合または固定するために役立」つのであるから、「人工芝生繊維」が「人工芝生下地に結合または固定」されていることは明らかであって、甲2考案の当該「人工芝生繊維」と、本件考案6の「基布(1)に固定された抗菌人工芝糸(2)」とは、「基布に固定された人工芝糸」の点で共通する。

(ウ)甲2考案の「コーティング」は「人工芝生下地の基部に」「設けられ」るものであり、「接着剤が、コーティングに対して使用することができる」から、甲2考案の当該「コーティング」と、本件考案6の「基布の底部に塗布した抗菌接着剤層(3)」とは、「基布の底部に塗布した接着剤層」の点で共通する。

(エ)甲2考案の「人工芝生」と、本件考案6の「抗菌人工芝」とは、「人工芝」の点で共通する。

(オ)以上を総合すると、本件考案6と甲2考案とは、
「基布、基布に固定された人工芝糸、および基布の底部に塗布した接着剤層を含み、
接着剤を人工芝の基布の底部に塗布する人工芝。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点A)
人工芝糸が、本件考案6においては「抗菌」人工芝糸であるのに対して、甲2考案においてはそのようなものでない点。

(相違点B)
接着剤層が、本件考案6においては「抗菌」接着剤層であり、「抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」、「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し、ベークして硬化させて、セットする」のに対して、甲2考案においてはそのようなものでない点。

(相違点C)
人工芝糸が、本件考案6においては「ストレートヤーン、捲縮ヤーンおよびスプリットヤーンのうちの1種または複数種を含」むのに対して、甲2考案においてはその点につき特定されていない点。

(相違点D)
人工芝が、本件考案6においては「抗菌」人工芝であるのに対して、甲2考案においてはそのようなものでない点。

イ.検討
事案に鑑み、まず相違点Bについて検討する。
相違点Bは、上記「3.(1)ア.(カ)」における相違点2を含むものである。
そうすると、本件考案6は、上記「3.(1)イ.」と同様の理由により、甲2考案及び甲4考案又は甲5考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。

5.甲3考案を主引用考案とする場合
(1)本件考案6について
ア.対比
(ア)甲3考案の「第1基布」は、本件考案6の「基布(1)」に相当する。

(イ)甲3考案の「パイル」は、「熱融着により」「第1基布に固着」されるから、甲3考案の当該「パイル」と、本件考案6の「基布(1)に固定された抗菌人工芝糸(2)」とは、「基布に固定された人工芝糸」の点で共通する。

(ウ)甲3考案の「第2基布」は、「第1基布の下面に位置し、熱融着により前記パイルを前記第1基布に固着する」ものであるから、甲3考案の当該「第2基布」と、本件考案6の「基布の底部に塗布した抗菌接着剤層(3)」とは、「基布の底部に位置する接着剤層」の点で共通する。

(エ)甲3考案の「パイル」が「スプリットヤーンで構成された」点と、本件考案6の「前記抗菌人工芝糸(2)は、ストレートヤーン(4)、捲縮ヤーン(5)およびスプリットヤーン(6)のうちの1種または複数種を含み」は、「人工芝糸は、ストレートヤーンを含み」の点で共通する。

(オ)甲3考案の「人工芝」と、本件考案6の「抗菌人工芝」とは、「人工芝」の点で共通する。

(カ)以上を総合すると、本件考案6と甲3考案とは、
「基布、基布に固定された人工芝糸、および基布の底部に位置する接着剤層を含み、
前記人工芝糸は、スプリットヤーンを含む人工芝。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点a)
人工芝糸が、本件考案6においては「抗菌」人工芝糸であるのに対して、甲3考案においてはそのようなものでない点。

(相違点b)
接着剤層が、本件考案6においては「抗菌」接着剤層であり、基布の底部に「塗布した」ものであり、「抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」、「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し、ベークして硬化させて、セットする」のに対して、甲3考案はそのようなものでない点。

(相違点c)
人工芝が、本件考案6においては「抗菌」人工芝であるのに対して、甲3考案においてはそのようなものでない点。

イ.検討
事案に鑑み、まず相違点bについて検討する。
相違点bは、上記「3.(1)ア.(カ)」における相違点2と同様の点を含むものである。
そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件考案6は上記「2.(1)イ.」と同様の理由により、甲3考案及び甲4考案又は甲5考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。

6.甲5考案を主引用考案とする場合
(1)本件考案6について
ア.対比
(ア)甲5考案の「底布」は、本件考案6の「基布(1)」に相当する。

(イ)甲5考案の「抗菌人工芝糸」は、「底布とともにタフティング機により人工芝生に加工し」たものであるから、「底布」に固定されていることは明らかである。そうすると、甲1考案の当該「抗菌人工芝糸」は、本件考案6の「基布(1)に固定された抗菌人工芝糸(2)」に相当する。

(ウ)甲5考案の「抗菌粘着剤」は「人工芝生の底部に均一に塗布」するものであるから、本件考案6の「基布の底部に塗布した抗菌接着剤層(3)」に相当する。

(エ)甲5考案の「抗菌粘着剤を人工芝生の底部に均一に塗布して、且つ赤外又は長いオーブンを通して硬化し成形されることで、抗菌性を有する人工芝生を得る」と、本件考案6の「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布し、ベークして硬化させて、セットする」とは、「抗菌接着剤を人工芝の基布の底部に塗布し、ベークして硬化させて、セットする」点で共通する。

(オ)甲5考案の「抗菌性を有する人工芝生」は、本件考案6の「抗菌人工芝」に相当する。

(カ)以上を総合すると、本件考案6と甲5考案とは、
「基布、基布に固定された抗菌人工芝糸、および基布の底部に塗布した抗菌接着剤層を含み、
抗菌接着剤を人工芝の基布の底部に塗布し、ベークして硬化させて、セットする人工芝。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点α)
抗菌人工芝糸が、本件考案6においては「ストレートヤーン、捲縮ヤーンおよびスプリットヤーンのうちの1種または複数種を含」むのに対して、甲5考案においてはその点につき特定されていない点。

(相違点β)
抗菌接着剤層が、本件考案6においては「抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」、「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布」するのに対して、甲5考案においてはそのようなものでない点。

イ.検討
事案に鑑み、まず相違点βについて検討する。
甲第5号証には、「抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」ることや、「抗菌接着剤を抗菌人工芝の基布の底部に塗布することで、抗菌接着剤の底部に一層の普通接着剤を塗布し、次に一層の抗菌接着剤を塗布」することについては、記載も示唆もない。
また、請求人は、本件考案6の「前記抗菌接着剤層(3)の中部に、一層の普通接着剤層(7)が設けられる。」という構成は不明であり、請求人が甲5考案の構成C5として主張する「底布の下面の抗菌粘着剤を含み」という構成に含まれる旨主張する(上記「第3 2.(6)」)。
しかしながら、本件考案6の「抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」は上記「2.(3)」のとおりに明確に理解されるものであって、甲第5号証には「抗菌接着剤層」については記載も示唆もなく、ましてや「前記抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」ることについては何ら記載されていない。
そうすると、甲5考案において本件考案6の相違点βに係る構成を備えるものとすることは、当業者がきわめて容易に想到できたことではない。

ウ.小括
そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件考案6は、甲5考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。

(2)本件考案7について
本件考案7は、本件考案6の構成をすべて含みさらに限定したものであるから、上記「(1)」と同様の理由により、甲5考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。

(3)本件考案8ないし10について
ア.対比
本件考案8ないし10は、本件考案6の構成をすべて含みさらに限定したものであるから、本件考案8ないし10と甲5考案とは、少なくとも上記「(1)ア.(カ)」の相違点α及びβにおいて相違する。

イ.検討
事案に鑑み、まず相違点βについて検討する。

a.甲5考案については、上記「(1)イ.」で検討したとおりである。

b.また、甲6考案は「底基布の背面に塗布された粘着剤層」を有し、「人工芝生繊維を、タフティング機で、人工芝生半製品としてタフティングして、粘着剤を塗布してから、オーブン上部の温度を150℃、オーブン下部を120℃として、最終的に人工芝生を得る」ものであるが、甲第6号証には、「抗菌接着剤層」については記載も示唆もなく、ましてや「前記抗菌接着剤層の中部に一層の普通接着剤層が設けられ」ることについては何ら記載されていない。

ウ.小括
そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件考案8ないし10は、甲5考案及び甲6考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。

第6 むすび

以上のとおり、本件考案6ないし10に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものではないから、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件考案6ないし10に係る実用新案登録を無効とすることはできない。
請求項1ないし5に係る無効審判の請求は却下する。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定において準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

審判長 住田 秀弘
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
審理終結日 2022-06-20 
結審通知日 2022-06-23 
審決日 2022-07-29 
出願番号 U2019-001526 
審決分類 U 1 114・ 121- Y (E01C)
最終処分 02   不成立  
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 居島 一仁
前川 慎喜
登録日 2019-06-19 
登録番号 3222142 
考案の名称 抗菌人工芝  
代理人 瀬戸 麻希  
代理人 坪内 康治  
代理人 弁理士法人コスモス国際特許商標事務所  
代理人 廣瀬 峰太郎  

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