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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1005194
審判番号 審判1997-5820  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-04-17 
確定日 1999-10-18 
事件の表示 平成3年実用新案登録願第107897号「遅延回路付燃料計の残量警告回路」拒絶査定に対する審判事件(平成5年7月30日出願公開、実開平5-57626)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1手続の経緯・本願考案
本願は、平成3年12月27日の出願であって、その請求項1に係る考案は、平成4年5月28日付け手続補正書、平成8年12月9日付け手続補正書及び平成9年5月19日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下本願考案という。)
「【請求項1】燃料中に配置されたセンサの抵抗値に応じて発生するセンサ電圧を、遅延回路を介し出力してムーブメントを駆動するとともに、該出力を比較器に入力して基準電圧と比較し、燃料残量が減少してセンサ電圧が所定値に達すると該比較器の出力電圧が反転することにより警告回路を作動して警告する遅延回路付燃料計の残量警告回路において、前記ムーブメントと前記比較器とで互いの電源ラインを独立させ、前記ムーブメントに対する電源ライン上に、該ムーブメントに対する印加電圧を安定させる定電圧回路を設けるとともに、前記比較器に対する電源ライン上に、大電流を消費する機器にも電力を供給する電源の所定範囲内の電圧低下に対しても出力電圧が変化しない定電圧回路を設けて、該定電圧回路を介して前記比較器の基準電圧を設定したことを特徴とする遅延回路付燃料計の残量警告回路。」
2.引用例の記載事項
これに対して、平成8年10月8日付けで通知された拒絶の理由に引用された本願の出願日前に頒布された特開昭58-206928号公報(以下引用例1という。)及び実願昭63-28180号[実開平1-135321号]のマイクロフィルム(以下引用例2という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
・引用例1
(ア)「自動車の燃料タンク中の燃料レベル・センサの動作をモニタする燃料の低レベル・インディケータ・システムであつて、該システムは2つの入力を有する電圧比較器手段に接続された発光インディケータ手段を含み、前記入力の一方は基準電圧源であり、前記入力の他方は時間遅延回路に前記燃料センサからの電圧信号が提供されたときに該時間遅延回路から発生される電圧信号であり、前記電圧比較手段は該システムが自動車に実装されたとき前記2つの入力を比較して、前記燃料センサ電圧信号がタンク中の燃料の予め定められた低レベルに相応するとき前記発光インディケータ手段を点灯し、前記燃料センサ電圧信号が前記予め定められたレベルり上の燃料レベルに相応するとき前記発光インディケータ手段を消灯し、比較器手段に対する前記他方の入力側の前記時間遅延回路は自動車の運動によって引き起こされる前記タンク内の燃料レベルの急激な変動から比較器手段を実質的に絶縁させるように作用することを特徴とする燃料の低レベル・インディケータ・システム。」(特許請求の範囲第1項)
(イ)「第5図の燃料の低レベル・インジケータ回路は、・・・、およびシステム全体として積分バッファ回路60によつてバツテリ電圧の変動に対する緩衝機能が付与されている」(第7頁左上欄18行目乃至同頁右上欄第3行目)
(ウ)「バツフア回路60は電子回路が電力源の電圧変化の影響を受けないようにするために使用される当業者にあつては周知のバツフア回路である。」(第7頁右上欄第20行目乃至同頁左下欄第3行目)
(エ)「第2図は第1図に概念的に示した本発明の一実施例の回路図を示しており、バイメタル燃料ゲージ26に対するレギュレートされた10ボルトの電圧供給源を有している自動車で使用される燃料の低レベル・イケータ・システムである。」(第4頁左下欄第2行目乃至7行目)
(オ)「自動車の可変抵抗燃料レベル・センサ44は、自動車の燃料タンク中の燃料のレベルが減少するに従って燃料レベル・センサの抵抗が増加するようなセンサである。」(第5頁左上欄第4行目乃至7行目)
・引用例2
(カ)「バッテリ等の直流電源の電源電圧を主定電圧電源回路により定電圧化して車載の各電気機器へ供給するようにした自動車等の車両において、上記主定電圧電源回路とは独立にフューエルセンサ専用の定電圧電源回路を設け、該フューエルセンサ用定電圧電源回路は上記主定電圧電源回路の1定電圧出力を比較基準電圧としてその出力電圧を定電圧化すると共に、過負荷時の過電流を抑制する過電流保護機能を付与し、該フューエルセンサ用定電圧電源回路の定電圧出力をフユーエルセンサへ直接供給するようにしたことを特徴とするフューエルセンサ用電源供給回路。」
(実用新案登録請求の範囲)
(キ)「ところで、上記したフューエルセンサにおいては、フューエルセンサのポテンショメータに供給する電圧が変動すると摺動子から出力する電圧信号か変動し、タンク内の燃料の液面しベルの検出誤差となって表れるため、ポテンショメータに供給する電圧は定電圧化しておく必要がある。
一方、近時の自動車等車両はエレクトロニクス化が進み、IC回路,マイクロコンピュータ等の多数の電子部品が積み込まれており、これらの電子部品に対する電源も定電圧化する必要がある。」
(第2頁第12行目乃至第3頁1行目)
(ク)「上記定電圧出力Voを供拾されたフューエルセンサ5は、図示を略した燃料タンク内の燃料の液面レベルの変化によるフロートの上下動に連動して摺動子10を移動し、該摺動子10の端子11から燃料の液面レベルに比例した電圧信号を取り出してマイクロコンピュータ9に送り、該電圧信号をマイクロコンピュータ9内外のA/D変換器によりアナログ信号からディジタル信号に変換した後所定の信号処理を行って燃料残量を算出し、運転席の計器盤のフューエルメータに表示するものである。」
(第3頁15行目乃至第4頁第5行目)
3 対比
引用例1の第5図に基づく第2実施例の「自動車の燃料タンク中の燃料レベル・センサ」、「バイメタル燃料ゲージ」、「時間遅延回路」、「電圧比較器手段」、「基準電圧源」、「燃料センサ電圧信号がタンク中の燃料の予め定められた低レベルに相応するとき前記発光インディケータ手段を点灯させる手段」、は、本願考案の「燃料中に配置されたセンサ」、「ムーブメント」、「遅延回路」、「比較器」、「比較器の基準電圧」、「残量警告回路」、に相当し、また、第5図によれば、バイメタル燃料ゲージ26の電源ラインと電圧比較器手段への電源ラインが独立していることがみてとれ、また、引用例1の「バッファ回路」は第5図及び上記記載事項(イ)、(ウ)の記載内容からみて、本願考案の「比較器に対する電源ライン上に、定電圧回路を設け」る構成に相当するものと認められ、さらに、バツフア回路の出力は電圧比較器手段の基準電圧源の設定にも用いられいるので、本願考案と引用例1記載の考案とを対比すると、「燃料中に配置されたセンサの抵抗値に応じて発生するセンサ電圧を出力し、ムーブメントを駆動するとともに、該出力を比較器に入力して基準電圧と比較し、燃料残量が減少してセンサ電圧が所定値に達すると該比較器の出力電圧が反転することにより警告回路を作動して警告する遅延回路付燃料計の残量警告回路において、前記ムーブメントと前記比較器とで互いの電源ラインを独立させ、前記比較器に対する電源ライン上に、定電圧回路を設けて、定電圧回路を介して前記比較器の基準電圧を設定したことを特徴とする遅延回路付燃料計の残量警告回路。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本願考案は、「センサ電圧を、遅延回路を介し出力してムーブメントを駆動」しているのに対して、引用例1記載の考案では、上記記載事項(ウ)により、センサ電圧によりムーブメントを駆動する点は読みとれるが、遅延回路を介して出力された電圧信号に基づき駆動する点は記載されていない点。
相違点2
本願考案は、「ムーブメントに対する電源ライン上に、該ムーブメントに対する印加電圧を安定させる定電圧回路を設け」ているのに対して、引用例1記載のものでは、12ボルトの電源から直接バイメタル燃料ゲージに電圧が供給されている点。
相違点3
本願考案は、比較器に対する電源ライン上に設けられた定電圧回路が、「大電流を消費する機器にも電力を供給する電源の所定範囲内の電圧低下に対しても出力電圧が変化しない」ものであるのに対して、引用例1記載の「バツフア回路」はその点不明である点。
4 相違点の判断
上記相違点1について検討すると、上記記載事項(ア)には、「発光インディケータ」の点灯及び消灯に関、「時間遅延回路は自動車の運動によって引き起こされる前記タンク内の燃料レベルの急激な変動から比較器手段を実質的に絶縁させるように作用する」の記載があり、また、引用例1の「バイメタル燃料ゲージ」も燃料の残量を表示する意味においては「発光インディケータ」と共通しているので、自動車の運動によって引き起こされる前記タンク内の燃料レベルの急激な変動を絶縁するために、「センサ電圧を、遅延回路を介し出力してムーブメントを駆動」することは、当業者であれば必要に応じてなし得る設計的事項にすぎない。
上記相違点2について検討すると、引用例2には、上記記載事項(カ)により、電気機器とフューエルセンサとで電源ラインを独立させ、かつ各々に定電圧回路をもうける構成が記載されている。そして引用例1の記載事項(エ)には、バイメタル燃料ゲージにレギュレートされた10ボルトの電圧を供給する点の示唆かなされているので、バイメタル燃料ゲージに対する電源ライン上にも、該バイメタル燃料ゲージに対する印加電圧を安定させる定電圧回路を付加することは当業者であればきわめて容易に想到し得る程度のものにすぎない。
上記相違点3について検討すると、基準電圧を定電圧化する目的は、引用例1においても上記記載事項(イ)及び(ウ)に記載されているように電力源の電圧変化の影響を受けないように一定に保つものであり、また、本願考案においても該相違点に関し、具体的構成を格別に有しているものでもないので、「比較器に対する電源ライン上に設ける定電圧回路として、大電流を消費する機器にも電力を供給する電源の所定範囲内の電圧低下に対しても出力電圧が変化しない定電圧回路を設け」ることは、当業者であれば当然考慮に入れるべき設計的事項にすぎない。
そして、本願考案の奏する作用効果は、引用例1及び2の記載事項から当業者か予測しうる程度のものである。
5.むすび
したがって、本願考案は、引用例1及び引用例2に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-07-13 
結審通知日 1999-07-30 
審決日 1999-08-06 
出願番号 実願平3-107897 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (G01F)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 渡部 葉子  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 渡邊 聡
島田 信一
考案の名称 遅延回路付燃料計の残量警告回路  
代理人 中内 康雄  
代理人 瀧野 秀雄  

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