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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01L |
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管理番号 | 1032429 |
審判番号 | 審判1999-11359 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-07-08 |
確定日 | 2000-12-20 |
事件の表示 | 平成 5年実用新案登録願第 72706号「X線応力測定装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 9月26日出願公開、実開平 7- 43886]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成5年12月18日の出願であって、平成11年7月8日付けで拒絶査定に対する審判が請求され、平成12年5月16日付けで当審が拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたところ、請求人からは何らの応答もなかった。 2.本願考案 本願請求項1に係る考案(以下、「本願考案」という)は、平成9年7月19日付けおよび平成11年4月6日付け手続補正書によって明細書が補正されたので、補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。 「 試料台の測定部位にセットされた試料に白色X線を照射するX線発生機と、前記試料から発生した回折X線を検出する検出器と、該検出器の後段に設けられた計数回路とからなり、エネルギ分散回折法により試料の残留応力を測定するエネルギ分散型X線応力測定装置において、前記計数回路を一定温度に制御する温調手段を備えたことを特徴とするX線応力測定装置。」 3.刊行物の記載事項等 当審の拒絶理由通知で引用した刊行物1(特開昭56-111438号公報)には次の記載がある。 「本発明は金属材のひずみを非破壊的に検査する白色X線応力測定装置に関するものである。従来の白色X線応力測定装置は、1個の白色X線源から白色X線を試料面に照射し、試料面法線と回折面法線とのなす傾角ψが異なる場所からの回折線を回折角θが等しい方向に設置した一対の検出器で検出して増幅し比較測定していた。一般に増幅器の利得は精密に調整することができるが、白色X線応力測定装置においてはエネルギ較正を一万分の1以下の精度で行なう必要があり、一対の検出器の特性を揃えることは困難である。例えば、検出器の温度による変動や増幅器を含めた時間的変動を除くことはできなかった。」(第2頁左上欄9行?右上欄2行) 「現在市販されている純Ge検出器の・・・温度によるドリフトも約3×10-4/°Cである。一方、検出信号を増幅する増幅器の直進性は0.03%であり、10万分の3程度の精度を得るのは困難であった。」(第3頁左上欄15行?右上欄1行) 「試料3で回折された一対のX線は検出器4で検出され、単一の前置増幅器6、主増幅器9で増幅される。この信号はシャッタ17,18と同期して作動するマルチプレクサ10を通りマルチチャンネルアナライザ11でエネルギ分析される。この分析信号はマルチプレクサ10の指示により、白色X線源2からのX線が照射されている時はメモリ12にデータを蓄え、白色X線源16からのX線が照射されている時はメモリ13にデータを蓄える。このようにして蓄えたエネルギーピーク強度が所定値に達したときは、そのデータをマイクロコンピュータ14に送って解析し試料の応力値を算出する。このようにすれば、従来の1個の白色X線源と1個の検知器を用いた場合のように、X線入射角を変更する必要がない。」第4頁右上欄20行?左下欄14行) 当審の拒絶理由通知書で引用した刊行物2(特開昭63-232362号公報)には次の記載がある。 「本発明は一般電気・電子機器において、外気温、或いは回路内の温度変化に依り発振回路、増幅回路等の能動素子パラメータが変動し、機器製品としての機能が損なわれることを回避する為に、ベルチェ素子の一定恒温制御効果に着目して、セラミック製ベルチェ素子の被制御面に温度変化を排除すべき回路ブロックのパターンを挿着した温度特性安定化面実装基板に関する。」(第1頁左下欄18行?右下欄7行) 当審の拒絶理由通知書で引用した刊行物3(特開平2-311702号公報)には次の記載がある。 「原子スケールの分解能をもったSTMでは、より安定した高分解能を達成するために、振動および温度変化による影響を充分に除去することが重要である。」(第2頁右下欄8行?11行) 「ベルチェー素子53による冷却効果によってこの熱の影響を排除することができる。・・・該基板上にトンネル電流検出用のプリアンプ等を作成することも可能であるが、その場合に、当該プリアンプ等の温度による特性を防止して安定した出力信号を得ることができる。」(第4頁右上欄8行?14行) 4.対比 そこで本願考案と刊行物1に記載された考案とを対比すると、両者は、下記1の一致点で一致し、下記2の相違点で相違する。 記1(一致点) 試料台の測定部位にセットされた試料に白色X線を照射するX線発生機と、前記試料から発生した回折X線を検出する検出器と、該検出器の後段に設けられた計数回路とからなり、エネルギ分散回折法により試料の残留応力を測定するエネルギ分散型X線応力測定装置。 記2(相違点) 本願考案は前記計数回路を一定温度に制御する温調手段を備えているのに対し、刊行物1に記載されたものにはそれを有していない点。 5.相違点の判断 まず、本願考案の「計数回路」とは、明細書の発明の詳細な説明の0015欄に「検出器の後段に設けられた計数回路は基本的にアナログ計数回路とマルチチャンネルアナライザとから構成されており、この計数回路は入射したX線を各エネルギ値にカウントするものであって、アナログ計数回路部が、検出器に接続されたプリアンプと、検出器からのパルス出力信号を増幅するリニアアンプと、電流や電圧に変換された入射X線エネルギのアナログ計測値をデジタルに変換してエネルギ毎にマルチチャンネルアナライザ(MCA)に入力するA-D変換器から主としてなる。」と記載されているように、プリアンプ、リニアアンプ、A-D変換器を含むものである。 また、刊行物1の白色X線応力測定装置において、増幅器の利得の調整を行うこと、検出器の温度による変動や増幅器を含めた時間的変動が存在することが記載されており、これらの中には、計数回路に含まれる増幅器の温度による変動も刊行物3の記載を見れば当然に含まれるものである。 そこで検討するに、温度変化による増幅回路の機能パラメータの変動を防止し、機器製品の機能が損なわれることを回避するために一定温度制御効果を有するベルチェ素子を用いたことが刊行物2に記載されているから、相違点は、刊行物1に記載の白色X線応力測定装置に刊行物2のベルチェ素子を適用することにより当業者がきわめて容易に想到しうる程度のことにすぎない。 そして、本願考案の効果は、前記刊行物1乃至刊行物3の記載事項から当業者であれば予測できる程度のことにすぎない。 6.むすび したがって、本願考案は、刊行物1乃至刊行物3に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-09-29 |
結審通知日 | 2000-10-13 |
審決日 | 2000-10-26 |
出願番号 | 実願平5-72706 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
WZ
(G01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福田 裕司 |
特許庁審判長 |
高瀬 浩一 |
特許庁審判官 |
渡邊 聡 平井 良憲 |
考案の名称 | X線応力測定装置 |
代理人 | 藤本 英夫 |
代理人 | 藤本 英夫 |