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審決分類 審判 全部申し立て   G03B
審判 全部申し立て   G03B
管理番号 1051718
異議申立番号 異議2001-70998  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-26 
確定日 2001-11-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2606159号「光量可変装置の駆動モータ」の請求項1ないし4に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2606159号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1、手続きの経緯
本件実用新案登録第2606159号の考案は、平成5年12月28日に出願された実願平5-74765号の一部を新たな実願平9-11824号として出願したものであって、平成12年7月21日にその実用新案登録の設定登録がなされ、その後、遠山鉄之と日本電産コパル株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年8月14日に訂正請求(その後取り下げ)がなされ、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年10月3日に訂正請求がなされたものである。

2、訂正の適否についての判断
(1)訂正の要旨
訂正事項a
実用新案登録請求の範囲
「【請求項1】
磁気コイルを外周に巻回したボビン内部で回動するロータにより光量可変装置を駆動する駆動モータにおいて、前記ロータは、前記ボビンに回動自在に支持された永久磁石と、この永久磁石に固定され前記光量可変装置を駆動する回動力伝達用の作動アームから成り、前記ボビンは、前記ロータの回動軸方向を上下とし2体に分割可能であるとともに、分割可能な上下2体の少なくとも一方に前記作動アームをボビン外部へ突出させる開口を有するものである、ことを特徴とする光量可変装置の駆動モータ。
【請求項2】
前記ボビンは、外周に前記磁気コイルを巻回する凹部と、該凹部を避けた位置で該磁気コイルの巻回方向に対し交叉する方向に前記作動アームをボビン外部へ突出させる開口を形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の光量可変装置の駆動モータ。
【請求項3】
前記作動アームは前記永久磁石に嵌合して固定されることを特徴とする請求項1に記載の光量可変装置の駆動モータ。
【請求項4】
前記磁石には前記作動アームを固定する際の溝などの位置合わせ部が設けられると共に、前記作動アームには前記ボビンに支承される軸部が一体に取り付けられ、前記作動アームを前記磁石に固定して前記ロータを構成し、前記開口から前記作動アームの先端を突出させた状態で、前記ボビンに収容したことを特徴とする請求項1に記載の光量可変装置の駆動モータ。」
を以下のように訂正する。
「【請求項1】
磁気コイルを外周に巻回したボビン内部で回動するロータにより光量可変装置を駆動する駆動モータにおいて、前記ロータは、前記ボビンに回動自在に支持された永久磁石と、この永久磁石に固定され前記光量可変装置を端部の係合ピンで駆動する回動力伝達用作動アームとからなり、前記ボビンは、前記ロータの回動軸方向を上下として2体のボビン片に分割可能であり、この上下2体のボビン片の嵌合部に前記作動アームをボビン外周から径方向外側に突出させる開口と、外周に磁気コイルを巻回する凹部とを有して円筒形状に形成され、上記ボビンに前記ロータを内蔵して凹部に磁気コイルを巻回した組立体の外周に嵌装されるヨークを備え、上記組立体に取り付けられる可撓性のプリント配線板に垂下部を形成し、この垂下部に取り付けた磁気感応素子を前記ボビン内のロータ側方に配置したことを特徴とする光量可変装置の駆動モータ。
【請求項2】
前記磁石には前記作動アームを固定する際の溝などの位置合わせ部が設けられると共に、前記作動アームには前記ボビンに支承される軸部が一体に取り付けられ、前記作動アームを前記磁石に固定して前記ロータを構成し、前記開口はボビンに相対向するように配置され、この相対向する開口から前記作動アームの両側の先端を突出させた状態で、前記ボビンに収容したことを特徴とする請求項1に記載の光量可変装置の駆動モータ。」

訂正事項b
明細書の段落番号【0007】に「対向配置してタ」とあるを「対向配置して」に訂正する。

訂正事項c
明細書の段落番号【0010】に「巻回しなけれぱならず、」とあるを「巻回しなけらばならず、」に訂正する。

訂正事項d
明細書の段落番号【0012】に「堤供する」とあるを「提供する」に訂正する。

訂正事項e
明細書の段落番号【0018】に「他の材科」とあるを「他の材料」に訂正する。

訂正事項f
明細書の段落番号【0020】に「この切り欠き42」とあるを「この切り欠き43」に訂正する。

訂正事項g
明細書の段落番号【0026】に「意味すし、」とあるを「意味し、」に訂正する。

訂正事項h
明細書の段落番号【0032】に「ピンュ9」とあるを「ピン19」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aないしhは、実用新案登録明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、上記の訂正を求めるものであり、該訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当し、訂正事項bないしhは、誤記の訂正を目的とするものであって、いずれの訂正も新規事項の追加に該当せず、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3、実用新案登録異議の申立についての判断
(1)異議申立て理由の概要
異議申立人遠山鉄之と日本電産コパル株式会社は、本件請求項1ないし4に係る考案(訂正前の考案)について、それぞれ以下のような主張をなして、その登録の取消を求めている。即ち、
異議申立人遠山鉄之は、甲第1号証刊行物(実願平4-32537号(実開平5-90460号)のマイクロイフイルム)を提出し、本件請求項1に係る考案は、上記甲第1号証刊行物に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、その登録は取り消されるべきであると主張し、
また、異議申立人日本電産コパル株式会社は、甲第1号証(実願平2-404136号(実開平4-91340号)のマイクロフイルム)、甲第2号証(実公昭62-19097号公報)及び甲第3号証(特開昭62-81962号公報)を提出し、本件請求項1,2,4に係る考案は、上記甲第1号証刊行物に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、また、本件請求項1ないし4に係る考案は、上記甲第1号証刊行物に記載された考案に基づき、もしくは甲第1号証刊行物に記載された考案と甲第2号証、甲第3号証刊行物に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであると述べ、結局、本件請求項1ないし4に係る考案の登録は、いずれも取り消されるべきであると主張している。

(2)本件考案
訂正明細書の請求項1ないし2に記載されている事項により特定される考案は、上記2-(1)の訂正事項aに記載のとおりのものである。

(3)甲各号証刊行物記載の考案
異議申立人遠山鉄之が提出した甲第1号証刊行物には、以下のような事項が記載されている。
「本考案は、アイリスモータ等のモータを駆動源として、カメラ用のシャッタを開閉作動させるシャッタ駆動装置に関する。」(明細書第4頁第4行?5行)。
「アイリスモータ8の構造は図2に示されている。即ち、駆動ピン9を有する電磁石10は、その両端面から突出する一対の回転軸が夫々コイル枠上11とコイル枠下12の孔に挿入されて回転可能に保持され、両コイル枠11,12及び電磁石10の外周には、ヨーク13が設けられている。」(明細書第6頁第5行?8行)。
「又、電磁石10の周囲には、図3に示すように、両コイル枠11及び12を介して二組のコイルA,Bが卷回されている。各コイルA,Bは夫々巻き数が異なっており、しかも互いに別個の制御回路15,16に接続されており」(明細書第6頁第第10行?12行)。
なる記載事項と、図面、特に第2図、第3図の記載。

また、異議申立人日本電産コパル株式会社が提出した甲第1号証刊行物ないし甲第3号証刊行物にはそれぞれ、以下のような事項が記載されている。
甲第1号証刊行物
「本考案は、シャッター羽根に二種類の開口形成部を設けて、シャッター羽根を作動させるべき駆動モータの駆動方向を変えることによってシャッター羽根の作動方向を切り替え、それにより二種類の開口形成部の何れか一方で露出を行うようにしたカメラ用シャッターに関する。」(明細書第3頁第4行?7行)。
「駆動モータ8の構造を図2乃至図4に基づいて具体的に説明すると、図2において、下側コイル枠9にシャッター羽根4,5を連動させる駆動ピニオン10がアウトサート成型されたロータマグネット11に嵌合され、更に上側コイル枠12がその外側に取付けられる。この状態で、図3に示すように、互いに短絡しないように夫々絶縁被覆された第一及び第二コイルC_(A),C_(B)を、下側コイル枠9及び上側コイル枠12の外側に同時に二重巻線として巻き付ける。更にこの外周にヨーク13を嵌合させると、駆動モータ8が形成される。その断面図が図4に示されている。」(明細書第5頁第11行?18行)。
なる記載事項と、図面、特に第2図?第4図の記載。

甲第2号証刊行物
「本発明はシネカメラやビデオカメラ等に内蔵される絞り装置の絞りを開閉駆動するカメラ用電磁装置に関する。」(公報、第1頁左欄第24行?26行)。
「第1図及び第2図は電磁装置の側面断面図及び平面断面図であり、1は回転軸で可動磁石2を回転支承する。3,4は共にコイル枠で上記回転軸1を挟んで互いに対接し、該軸1を挟む位置に貫通孔を形成する。更に両コイル枠は該磁石2の回転軸に平行な2辺及び該軸に直角な2辺よりなる略矩形筒体をなし、該磁石2を内包する位置に設置される。該各コイル枠両端面にコイル線条の逸脱を阻止する鍔状凸縁部を形成する。5,6は夫々コイル枠3,4上に巻回された第1、第2コイルで、第1コイル5は駆動、第2コイル6は制動の作用をなす。」(公報、第2頁左欄第31行?42行)。
「第4図は光束制御装置に配設された本願考案実施の態様を示す図示であり、8は回転軸1の一端に固定されたレバ部材で、端部にピンを植立する。9は羽根作動部材で光軸0と共心のリング状部分、該リング状部分半径方向に突出する腕部を形成し、該腕部に上記レバ部材8上のピンと係合する長溝を形成する。」(公報、第2頁右欄第12行?19行)。
なる記載事項と、図面の記載。

甲第3号証刊行物
「本発明は、写真撮影用カメラ、テレビカメラ及びビデオカメラ等の各種カメラにおける自動絞り機構の駆動源として使用されるアクチュエータの制動方法及び装置に関するものである。」(公報、第1頁右欄第14行?17行)。
「次に本発明を図示したいくつかの実施例に基き更に詳しく説明すると、まず第1図?5図に示した第1実施例のアクチュエータにおいて、21はロータ部であり、該ロータ部はシャフト22と永久磁石23とから構成されている。このロータ部が組込まれるステータ部24は上下方向に分割した巻枠25,26と、これら巻枠を合体させた後に巻いた駆動コイル27と、巻枠が組込まれるハウジング28とから構成されている。前記巻枠25,26は前記ロータ部21が内部に組込まれるので、永久磁石23が遊嵌するロータ室29が設けられると共に、夫々の中央部に軸受30,31が設けられ、上部の巻枠26の軸受31はロータ部21のシャフト22が貫通するように構成されている。更に、巻枠25,26は合体後に駆動コイル27が整然と巻付けられるように上面から両側面及び底面にかけてガイド用凹部32,33が形成されると共に、両巻枠が精度良く合体するために、下部の巻枠25の合体面には複数個のガイド穴34が形成され、これらガイド穴に対応して上部の巻枠26の合体面に複数個のピン35が夫々設けてある。」(公報、第2頁右下欄第10行?第3頁左上欄第10行)。
なる記載事項と、図面の記載。

(4)対比・判断
本件訂正明細書に記載された実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下、「本件考案1」という。)と、上記両異議申立人が提出した上記甲各号証刊行物に記載された考案とを対比すると、
上記甲各号証刊行物に記載された考案には、それぞれ上述したような事項が記載されているところであるが、該考案のいずれにも、本件考案1を特定する事項である、(イ)ボビンが、「上下2体のボビン片の嵌合部に作動アームをボビン外周から径方向外側に突出させる開口」を有し、また、(ロ)ボビンにロータを内蔵して凹部に磁気コイルを巻回した組立体に可撓性のプリント配線板が取り付けられ、該配線板は、「組立体に取り付けられる可撓性のプリント配線板に垂下部を形成し」なる構成を備え、さらに、該垂下部は、「この垂下部に取り付けた磁気感応素子を前記ボビン内のロータ側方に配置した」とした構成を具備する点については記載されていない。
そして、本件考案1の上記の特徴的な構成(イ)(ロ)は、甲各号証刊行物に記載された考案から自明のものではなく、また、該各考案を如何様に組合せてもきわめて容易に得られるものではない。
即ち、上記異議申立人遠山鉄之が甲第1号証刊行物として提出した実願平4-32537号(実開平5-90460号)のマイクロフイルム、及び異議申立人日本電産コパル株式会社が甲第1号証刊行物として提出した実願平2-404136号(実開平4-91340号)のマイクロフイルムに記載された考案には、それぞれ下側コイル枠と上側コイル枠との嵌合部(上下の両コイル枠は、それぞれ別体に形成された後、組み込まれたものと認められる。)に作動アームのための開口を設け、該開口から作動アームが突出する構成が示されているが、該作動アームがボビン(コイル枠)の径方向外側に突出されるとした構成は具備していない。また、異議申立人日本電産コパル株式会社が甲第2号証刊行物として提出した実公昭62ー19097号公報に記載された考案には、一応、本件考案1のボビンに相当する部材よりも径方向外側に突出すると解される作動アーム(レバー部材8)を具備する点が示されているが、該作動アームは、ボビンの開口から突出するものでなく、しかも、該作動アームは実質的にボビンの中央部から突出する軸部に取り付けられる構造のものであり、同異議申立人が甲第3号証刊行物として提出した特開昭62-81962号公報に記載された考案においては、該作動アームに相当する部材さえも明記されていない。結局、前記甲各号証に記載された考案の組合せによっては上記(イ)の特徴的な構成は導き出すことはできず、また、上記(ロ)の特徴的な構成については、上記甲各号証に記載された考案のいずれにも該構成に関連する記載はなく、何らの示唆すらなされておらず、これらの考案からは上記(ロ)の特徴的な構成は到底導き出せるものではない。

そして、本件考案1は、該考案を特定する上記特徴的な構成(イ)(ロ)を備えることにより、本件訂正明細書に記載の本件考案1に特有の作用効果を奏するものであるから、本件考案1は、異議申立人遠山鉄之の提出した甲第1号証刊行物に記載された考案ではなく、また、異議申立人日本電産コパル株式会社の提出した甲第1号証刊行物に記載された考案でもなく、さらに、上記両異議申立人の提出した上記甲各号証刊行物に記載された考案に基づいて容易に考案をすることができたものでもない。

次に、本件請求項2に係る考案(以下、「本件考案2」という。)について検討すると、本件考案2も、本件考案1を特定する上記特徴的構成(イ)(ロ)を備えるものであるから、本件考案1について述べた上述の理由により上記甲各号証刊行物に記載された考案ではなく、また該考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものでもない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議の申立ての理由によっては本件考案1ないし2についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案1ないし2についての登録を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件考案1ないし2についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
光量可変装置の駆動モータ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】磁気コイルを外周に巻回したボビン内部で回動ずるロータにより光量可変装置を駆動する駆動モータにおいて、
前記ロータは、前記ボビンに回動自在に支持された永久磁石と、この永久磁石に固定され前記光量可変装置を端部の係合ピンで駆動する回動力伝達用の作動アームとから成り、
前記ボビンは、前記ロータの回動軸方向を上下として2体のボビン片に分割可能であり、この上下2体のボビン片の嵌合部に前記作動アームをボビン外周から径方向外側に突出させる開口と、外周に磁気コイルを巻回する凹部とを有して円筒形状に形成され、
上記ボビンに前記ロータを内蔵して凹部に磁気コイルを巻回した組立体の外周に嵌装されるヨークを備え、
上記組立体に取り付けられる可撓性のプリント配線板に垂下部を形成し、
この垂下部に取り付けた磁気感応素子を前記ボビン内のロータ側方に配置したことを特徴とする光量可変装置の駆動モータ。
【請求項2】 前記磁石には前記作動アームを固定する際の溝などの位置合わせ部が設けられると共に、前記作動アームには前記ボビンに支承される軸部が一体に取り付けられ、前記作動アームを前記磁石に固定して前記ロータを構成し、前記開口はボビンに相対向するように配置され、この相対向する開口から前記作動アームの両側の先端を突出させた状態で、前記ボビンに収容したことを特徴とする請求項1記載の光量可変装置の駆動モータ。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、ビデオカメラ等の撮影機器に装備される絞り羽根のような光量可変装置をロータの1回転以下の回動力により駆動する駆動モータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ビデオカメラの絞り装置は、図7及び図8に示すように、地板71上に一対の絞り羽根E1,E2を摺動自在に上下に重ねて配置して光量可変装置を構成する一方、各絞り羽板E1,E2の一端を、駆動モータMのロータの回転軸72に取り付けられた作動アーム73にそれぞれピン74.75を介して連結し、駆動モータMにより、絞り羽根E1,E2を図8の左右方向に相対移動させて地板71の露光開口Eを開閉するように構成されている。
【0003】この駆動モータMは、図9、図10のように、直径方向に2極に磁化された永久磁石(ロータマグネット)4と、その両側に当該ロータ永久磁石4の側部を覆うように対向配置した矩形コイル3,6と、磁気感応素子(ホール素子)5とを有し、この2つのコイル3,6は、一方を駆動コイルとし他方を制動用コイルとして用いるか、又は、両方とも駆動コイルとして用いられる。
【0004】図13は、前者により構築される光量制御装置の例であり、速度設定電圧と速度制御信号を差動アンプ1で比較し、該差動アンプ1より出力された速度誤差信号を電力アンプ2で増幅して駆動コイル3に与えて駆動し、一方、絞り羽根を駆動させる永久磁石4の回転速度を制動コイル6で検知し、該制動コイル6からの出力信号を信号アンプ7を介して速度制御信号として差動アンプ1にフィードバックさせている。なお、磁気感応素子5から出た信号は信号アンプ8を介して絞り値検出信号として出力される。
【0005】図14は、後者により構築される光量制御装置の例であり、信号アンプ8に現われる磁気感応素子5の出力信号を、信号アンプ9を介して差動アンプ1に入力することにより、制御用の制動コイル6を廃止するようにした光量制御装置である(特開平2-239782号)。この制御装置では、従来の制動コイルを巻いていたスペースにも駆動コイルが巻けるので、駆動のパワーアップあるいは永久磁石の小型化が図られる等の利点が得られる。
【0006】ところで、ビデオカメラの小型化に伴って駆動モータの小型化も要求されている。しかし、駆動モータを小型化すると、コイルを巻くスペースが少なくなり、モータの出力トルクが低下してしまう。
【0007】この点に関し、駆動モータMの構造は、従来、次のようになっている。即ち、図9、図10のように、直径方向に2極に磁化された永久磁石4を、分割可能なボビン76内に回動自在に枢支し、このボビン76に巻回する形で矩形コイル3,6を対向配置して永久磁石4の両側に位置させると共に、これら全体を中空円筒形のヨーク77内に納める。更に、口径絞り値検出用又はロータの回転速度検出用としてロータの側方に磁気感応素子(ホール素子)5も配置する。そして、ヨーク77の開口端面を端板及び地板71にて蓋をする。
【0008】一方、ボビン76にはその中央のコイル3,6が巻回されていない部分76aに回転軸72を延設し、この回転軸72を前記地板71に貫通突出させて、その突出端部に、作動アーム73の中央部を取り付けるか(図11)、作動アーム73の端部を取り付ける(図12)。
【0009】
【考案が解決しようとする課題】しかしながら、図11、図12から分るように、ボビン76の中央部分76aには、回転軸72を設けるためのシャフトスペースを確保しなければならず、このためボビン76の全周にわたって巻線できない部分として残る。従って、出力トルクが比較的小さく、結果として駆動モータの小型化を妨げていた。
【0010】また、ボビン76はロータに沿わせて全体として円筒状に構成する必要があるため、コイル3,6の巻線を巻回すべきボビン76の両側部も円筒形状の一部となり、その斜めの部分に巻回しなければならず、巻線を施す効率が悪かった。
【0011】更に、永久磁石4に作動アーム73を取り付けるためには、永久磁石4に回転軸72を取り付けた後、ボビン76内に永久磁石4を収容してからボビン76にコイル3、6を巻き、その上で永久磁石4の磁化方向と作動アーム73の位置を調整して作動アーム73を回転軸72に取り付けなければならず、永久磁石4に回転軸72を取り付けた上で作動アーム73を取り付ける必要があり、作業性が悪かった。
【0012】そこで、本考案の目的は、前記ボビンの中央部にシャフトスペースを確保する必要がなく、それだけ小型化又は出力トルクアップを図ることができると共に、作動アームの永久磁石への取り付け作業がし易い駆動モータを提供することにある。
【0013】
【実施例】以下、本考案の一実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0014】図1?図3において、10はカメラの光量可変装置50たる絞り羽根E1,E2をロータの1回転以下の回動力により駆動する駆動モータであり、この駆動モータ10は、光量可変装置たる開閉羽根装置50に図3の如く組み付けられ、該開閉羽根装置50と共にビデオカメラの絞り装置を構成する。
【0015】駆動モータ10は、ロータ13(図2)を内蔵するボビン12にコイル14を巻回して成る内部組立体11を有する。この内部組立体11には、その外周に、磁気を導く中空円筒形のヨーク15が嵌装される。このヨーク15の一方の開放端部は端板16で押えられると共に、可撓性を有すプリント配線板17が取付けられる。また、このヨーク15の他方の開放端面は、駆動モータ10を開閉羽根装置50に取り付けた際、その地板51で押さえられるようになっている。
【0016】図2に示すように、駆動モータ10のロータ13は、直径方向に2極に磁化された永久磁石20と、作動アーム32付の軸部材30とを一体に嵌合させたものから成る。永久磁石20は、同軸的に中央に貫通孔21を有すると共に、頂面には、該貫通孔21に対して断面T字状をなすように溝22(位置合わせ部)を有する。また作動アーム付軸部材30は、この永久磁石20の貫通孔21に差し込まれる軸部31と、この軸部31の突出端部にT字状に固定された作動アーム32とを有する。この作動アーム32の両端部には、地板51側に突出する係合ピン33,34が設けられている。
【0017】このように作動アーム32付の軸部材30を溝22に位置合わせして貫通孔21に差し込むことにより作動アーム32が永久磁石20に固定されるため、永久磁石20に作動アーム32を固定するに当たり、図11や図12の駆動モータに比べ、回転軸に作動アームを固定する工程が無い分、作業性が良い。
【0018】なお、この実施例の場合、作動アーム付軸部材30は、合成樹脂によるモールド品であるが、開閉羽根に対して磁路を遮断するように留意すれば他の材料で構成することもできる。
【0019】かく構成されたロータ13は、軸方向両側(図1及び図2の上下方向)にボビン片12a(第1のボビン部)とボビン片12b(第2のボビン部)とに分割可能なボビン12の内部に形成された収納部に、回動自在に枢支される。このボビン12は、そのボビン片12a,12bを相捕形状の嵌合部41にて相互に嵌合し合うことで形作られる。42はその際の位置決めピンである。
【0020】このボビン片12a,12bが嵌合し合った状態で見て、ボビン12の直径方向に相対向する周囲4面のうち、その一対の2面には、作動アーム32を突出させるための開口18が形成されている。本実施例では、ボビン片12a側に切欠43を設けて、開口18を形成するようにしている。作動アーム32は、この切欠43から延在するため、その揺動範囲はこの切欠43の周方向幅により規制される。
【0021】しかし、作動アーム32が絞り羽根を駆動するために移動する範囲は、ほぼ90度以内の直線的な範囲のみであるから、実用上の不都合は全く生じない。また、ボビン12は、他の一対の2面側の周面44,44と両端部45,45がそれぞれ凹部46(コイル巻回凹部)となるように周囲に起立部47が形成されている。作動アーム付軸部材30の軸頭部35,36はボビン片12a,12bの端部45,45の小孔48,49に支承される。なお、47aは凹所(素子収容部)である。
【0022】前記のように内部にロータ13が納められたボビン12には、ボビン凹部46に対して、コイル14の巻線が巻回される。
【0023】この場合、従来と異なり、作動アーム32は、ボビン12内に位置しているため、従来のように、シャフトスペースを確保しておく必要はない。即ち、凹部46内の全領域に対して、コイルの導線を巻くことができ、従来のデッドスペースであった領域幅分だけ余分にコイルを巻くことができる。巻回後の導線の端は、作動アーム付軸部材30のシャフト方向に突出させて設けたピン19(端子ピン)に結合される。また、ロータ13の作動アーム32をボビン片12a側に配置してロータ13をボビン12内に収容したので、作動アーム32の係合ピン33,34を短くできる。
【0024】かくして得られた内部組立体11には、その外周に中空円筒形のヨーク15が嵌装され、その一方の開放端部には、内部組立体11のピン19に対して小孔16aを通しながら端板16が取付けられ、次いでピン19に対して小孔17aを通してプリント配線板17がハンダ付けされ、以て駆動モータ10の組み立てが完了する。
【0025】組み立てられた駆動モータ10は、ヨーク15の他方の開放端面側において、開閉羽根装置50に取り付けられる。その際、ヨーク15の開放端面は地板51で押さえられ、係合ピン33,34は、地板51の側方52を通って、図3の如く、絞り羽根E1,E2の係合孔53,54と係合せしめられる。なお、55は作動アーム32を常に一方向に偏符付勢するための付勢バネである。
【0026】上記実施例では、コイルボビンの両側からアームが出るように構成されているため、作動アーム32の作動バランスが良好であり、軸受部にかかる負荷の片寄りがないという長所が得られる。また、ボビンのほぼ全域にわたってコイルを巻回することができ、巻線スペース効率が向上すると共に、高出力トルクが得られることになる。これは、同一トルクを得るのに低消費電力とすることができることを意味し、駆動モータの低消費電力、高トルク化が可能となる。
【0027】しかし、本考案はこの図1?図3の形態に限定されるものではない。要するに、永久磁石のシャフトがコイルボビンから突出しないようにすると共に、コイルボビンの両側から作動アームが出るようにすればよい。従って、例えば巻回するコイルは駆動コイルのみとして図14の制御形態を採用してもよいし、又、制動コイルをも巻回して図13の制御形態を採用することもできる。また、当然、作動アームの数や突出形態、或るいは、被駆動対象のとなる光量可変装置たる構成要素が羽根であるかどうか、といったことには影響されない。そして、本考案の精神の範囲内で、変形又は修正が可能である。
【0028】図4は、コイルボビンの片側からのみ作動アームが出る形態にすると共に、コイル14を駆動用コイル14aと制動用コイル14bとの2種類とし、その巻線端をピン19a,19aと、19b,19bにそれぞれ接続したものである。この形態は、例えばシャッター用として利用することができる。
【0029】図5は、コイルボビンの片側からのみ作動アームが出る形態にした点で、上記図4と同じであるが、コイルボビン12には駆動コイルのみを巻き、その終端をピン19に接続した形態である点で相連する。
【0030】また、図5は、口径絞り値検出用又はロータの回転速度検出用として、ロータの側方に、磁気感応素子としてのホール素子23を配置する具体的形態も示している。図5(a)は、ヨーク15を嵌め込んでから、ホール素子23をボビン12の凹所47a内に納め、その後、端板16に設けた小孔16bにホール素子3のリード線24を通しながら端板16を被せてホール素子23を押さえる。或いは、予め小孔16bにリード線24を通し且つ接着剤にてホール素子23を接着しておいた端板16を被せる。
【0031】このようにしてホ一ル素子23のリード線24を、作動アーム付軸部材30のシャフト方向、つまりコイル端を留めるピン19と同一方向に突出させて固定する。しかる後に、プリント配線板17に形成された4個の小孔17bにリード線24を通しながら載せる。最後にリード線24とプリント配線板17とをハンダ付けして結合する。
【0032】図5(b)は、プリント配線板17に形成された垂下部に予めホール素子23を取り付けておき、プリント配線板17の小孔17aにピン19を通す際に、このホール素子23の部分をボビン12の凹所47a内に納めるようにした例である。この形態においては、端板16を省くことができる。
【0033】図6は、上述した絞り羽根を平行移動させる駆動形式の代りに、地板61と押さえ板69との間に重ねて配置した絞り羽根E3,E4をいわゆる“カニ挟み”式に移動させる駆動形式の絞り装置へ適用した形態を示したものである。絞り羽根E3,E4はその長孔64,65によって地板61のピン62,63に枢支され、小孔66,67を、地板の開口68から突出させた駆動モータ10のピン33に共通に係合させることによって、上記の“カニ挟み”式の開閉運動を行わせるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例に係る駆動モータを含む絞り装置の分解斜視図である。
【図2】図1の駆動モータの内部組立体の分解斜視図である。
【図3】図1の駆動モータを取り付けた絞り装置の斜視図である。
【図4】本考案の他の実施例に係る駆動モータの内部組立体を示す斜視図である。
【図5】本考案の更に他の実施例に係る駆動モータの適用例を示す斜視図である。
【図6】本考案の更に別の実施例に係る駆動モータの適用例を示す斜視図である。
【図7】従来の絞り装置の側面図である。
【図8】従来の絞り装置の平面図である。
【図9】従来のモータの構造を示す端面図である。
【図10】従来の駆動モータの構造を示す概略図である。
【図11】従来の駆動モータの構造を示す斜視図である。
【図12】従来の駆動モータの他の構造を示す斜視図である。
【図13】従来のカメラの光量制御装置の回路図である。
【図14】従来のカメラの光量制御装置の別の回路図である。
【符号の説明】
12 ボビン
12a ボビン片
12b ボビン片
13 ロータ
14 コイル
15 ヨーク
17 プリント配線板
18 開口
20 永久磁石
32 作動アーム
33 ピン
34 ピン
46 凹所
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a
実用新案登録請求の範囲を以下のように、その減縮を目的として訂正する。
「【請求項1】
磁気コイルを外周に巻回したボビン内部で回動するロータにより光量可変装置を駆動する駆動モータにおいて、前記ロータは、前記ボビンに回動自在に支持された永久磁石と、この永久磁石に固定され前記光量可変装置を端部の係合ピンで駆動する回動力伝達用作動アームとからなり、前記ボビンは、前記ロータの回動軸方向を上下として2体のボビン片に分割可能であり、この上下2体のボビン片の嵌合部に前記作動アームをボビン外周から径方向外側に突出させる開口と、外周に磁気コイルを巻回する凹部とを有して円筒形状に形成され、上記ボビンに前記ロータを内蔵して凹部に磁気コイルを巻回した組立体の外周に嵌装されるヨークを備え、上記組立体に取り付けられる可撓性のプリント配線板に垂下部を形成し、この垂下部に取り付けた磁気感応素子を前記ボビン内のロータ側方に配置したことを特徴とする光量可変装置の駆動モータ。
【請求項2】
前記磁石には前記作動アームを固定する際の溝などの位置合わせ部が設けられると共に、前記作動アームには前記ボビンに支承される軸部が一体に取り付けられ、前記作動アームを前記磁石に固定して前記ロータを構成し、前記開口はボビンに相対向するように配置され、この相対向する開口から前記作動アームの両側の先端を突出させた状態で、前記ボビンに収容したことを特徴とする請求項1に記載の光量可変装置の駆動モータ。」
訂正事項b
明細書の段落番号【0007】に「対向配置してタ」とあるを「対向配置して」に、その誤記の訂正を目的として訂正する。
訂正事項c
明細書の段落番号【0010】に「巻回しなけれぱならず、」とあるを「巻回しなけらばならず、」に、その誤記の訂正を目的として訂正する。
訂正事項d
明細書の段落番号【0012】に「堤供する」とあるを「提供する」に、その誤記の訂正を目的として訂正する。
訂正事項e
明細書の段落番号【0018】に「他の材科」とあるを「他の材料」に、その誤記の訂正を目的として訂正する。
訂正事項f
明細書の段落番号【0020】に「この切り欠き42」とあるを「この切り欠き43」に、その誤記の訂正を目的として訂正する。
訂正事項g
明細書の段落番号【0026】に「意味すし、」とあるを「意味し、」に、その誤記の訂正を目的として訂正する。
訂正事項h
明細書の段落番号【0032】に「ピンュ9」とあるを「ピン19」に、その誤記の訂正を目的として訂正する。
異議決定日 2001-10-18 
出願番号 実願平9-11824 
審決分類 U 1 651・ 113- YA (G03B)
U 1 651・ 121- YA (G03B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 柏崎 康司  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 伊藤 昌哉
綿貫 章
登録日 2000-07-21 
登録番号 実用新案登録第2606159号(U2606159) 
権利者 ニスカ株式会社
山梨県南巨摩郡増穂町小林430番地1
考案の名称 光量可変装置の駆動モータ  
代理人 藤中 雅之  
代理人 篠原 泰司  

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