ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B42D |
---|---|
管理番号 | 1056863 |
判定請求番号 | 判定2001-60070 |
総通号数 | 29 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案判定公報 |
発行日 | 2002-05-31 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2001-06-25 |
確定日 | 2002-03-14 |
事件の表示 | 登録第2150603号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「乗物用カード」は、登録第2150603号実用新案の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
(1)請求の趣旨 イ号図面及び写真並びにその説明書に示す乗物用カードは、実用新案登録第2150603号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めたものである。 (2)本件考案 本件考案は、その実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件ごとに分説すると次のとおりである。 (請求項1) A:電話機に差し込むことにより電話がかけられるテレホンカードにおいて、 B:このカード本体の一部に、電話に差し込む方向を指示するための押形部からなる指示部を設けてなり、 C:該指示部は、カード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんでいると共に D:カード本体の直交する2つの中心軸線の夫々から一側にずれてカード本体に配置されており、且つ、 E:該指示部は目の不自由な者がカード本体を電話機に差し込む際、目の不自由な者の指がふれる位置に配置されていること F:を特徴とするテレホンカード。 そして、本件考案は、次の作用・効果を奏するものである。 1)カード本体の一部に、電話機に差し込む方向を指示するためにカード本体に形成されたくぼみの押形部からなる差込方向の指示部を設けたから、押形部からなる指示部は手で触れることにより容易に確認することができ、従ってカードをさすって指示部を確認することによって、カードの差し込み方向をしることができるので、目の不自由な者も使用することが、テレホンカードとして一層便利になり、延いてはテレホンカードの普及にも寄与するものとなる。 2)構成が簡単なので製造が容易であり安価である。 (3)イ号物件 請求人の主張するイ号物件は、本件請求書のイ号図面並びにその説明に示すとおりのものであって、構成要件ごとに分説すると、以下のとおりのものと認められる。 a:切符販売機や自動改札機に差し込むことにより切符が販売されたり自動改札機を通過できる乗物用カードであって、 b:このカード本体の一部に、切符販売機や自動改札機に差し込む方向を指示するための押形部からなる指示部を設けてなり、 c:該指示部は、カード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんでいると共に d:カード本体の直交する二つの中心軸の夫々から一側にずれてカード本体に配置されており、且つ、 e:該指示部は目の不自由な者がカード本体を切符販売機や自動改札機に差し込む際、目の不自由な者の指にふれる位置に配置されている f:乗物用カード (4)イ号物件が本件考案の技術的範囲に属するか否かについて ・構成要件Aについて 本件考案のカードは電話をかけるためのものであるのに対し、イ号物件のカードは乗物用のものであり、その用途が相違している。したがって、この点で構成要件Aを充足しないということができる。 ・構成要件B、Cについて イ号物件のものもカード本体の一部に差し込む方向を指示するための指示部を設けている点で本件考案と共通している。本件考案における押形部からなる指示部について、「カード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんでいる」とすることの技術的意味を検討するために、本件実用新案登録明細書(実公平8-5827号公報)の考案の詳細な説明を参照すると、その段落0008では、押形部からなる指示部は「図1に示す如くカード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんで形成されている」と実用新案登録請求の範囲の記載と同じ文言で記載されている。 まず、「押形部」について検討すると、一般的にいって「押し型」とは材料に圧力を加えて成形するのに用いる器具(広辞苑第2版、昭和45年11月18日発行)であり、それによって形成された「押形部」は材料が押し型によって成形された形状部を意味する。実用新案登録時の明細書の上記押形部に関する記載もこのような「押形部」の一般的な解釈と合致し、それ以外のものを含むものとして解釈すべき記載もないから、本件考案における「押形部」は材料に押し型によって圧力を加えて成形した形状部を意味するものということができる。 そして、本件考案における唯一の実施例である実用新案登録明細書の図1をみると、押し型によって圧力を加えて成形した形状部はカード本体の厚み方向にくぼんでいるものと解することができるから、結局のところ「外周縁からカード本体の内方向にくぼんで」とする記載は、紙面に対して平行方向でありカード本体の外周縁からカード本体の内側方向にあって厚み方向にくぼんでいるものと認められる。 もし、「外周縁からカード本体の内方向に・・・」との記載を、「外周縁からカード本体の内方向に向かって」と方向を示すものとした場合は、外周縁から紙面に平行でカード本体内側方向に直接くぼませるもの、即ち「切り欠き」様なものを指すことになり、実施例と一致しない。 このように上記一般的な解釈と合致しないばかりでなく、その実施例の裏付けもない技術的事項を、実用新案登録請求の範囲の文言のみにより解することはできないから、「くぼんで」とする点を厚み方向にくぼませるもの(実施例に記載のもの)と紙面に平行でカード本体内側方向に外周縁からくぼませるものとの双方のものを含むとすることはできない。 本件判定請求書におけるイ号物件の説明では、イ号物件の構成要件cについて文言上本件考案の構成要件Cと同じ記載となっている。すなわち、「該指示部は、カード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんでいる」としており、この部分に対応する構成としてイ号図面と共に記載されている説明では、「カード本体を押圧して形成されたへこみ部を形成している」(イ号図面及びその説明書)としている。 この点についてイ号図面を参照すると、外周縁に三角形状の切り込き様なものがあり、外周縁のこの切り欠き様なものはへこみ部ということができ、イ号物件の構成要件cはカード本体の最外周縁にイ号図面の紙面と平行でありカード本体の内側方向に向かってへこみ(切り欠き)を設けているものと認められる。しかも、イ号物件のような「切り欠き」様なものは、部材を打ち抜いて成形することも考えられるように、どのような成型方法を用いているのかも不明である。 そうすると、イ号物件の指示部は押形部であるか不明であるし、また、押形部であったとしても紙面と平行であるカード本体の内側方向に向かってへこみ(切り欠き)を設けているものであるから、本件考案のように本体カードの外周縁から内側にあって厚み方向にくぼんでいるということができず、イ号物件の構成要件b、cは本件考案の構成要件B、Cを充足しないというべきである。 構成要件Cの押形部に関して、請求人は下記のとおり主張している。 1)本件考案における指示部は通常の押型成形のように金型を用いてカードを挟み込んで押すことによりくぼみを形成するのに対して、イ号物件における指示部はプレス機によって凹凸型を用いて打ち抜きによって形成される切欠である点で構成が異なると認定されることが考えられるとして、本件考案は特に明細書の詳細な説明の記載を参酌しなくても実用新案登録請求の範囲の記載だけから充分に考案の内容を理解することができるものであり、敢えて実施例に限定して解釈する理由は皆無である。 2)本件の原出願である実願昭59-134611号出願時に記載のある指示部としての切欠部(図1)、穴部(図2)を平成2年8月8日付の拒絶理由通知に対応して、削除したが、該拒絶理由通知の引用文献である実願昭56-48368号(実開昭57-161131号)のマイクロフィルムに記載されているようなカードの各部に欠落部と云われそうな比較的大きな切欠部を形成したカードに類似していると考えられる図1の実施例を削除したものであって、補正した実用新案登録請求の範囲に記載の「押形部」には上記引用文献に示されたような切除部によって形成される欠落部とは異なり、押圧によって形成されるくぼみのような形態の「切欠部」の意味が包含されていると確信した上で補正したのである。原出願の公告後の手続補正書における請求の範囲の記載に「・・該押形部は、カード枠体を押圧して形成されたへこみ部から成る・・」とあるように、「押形部」という語の概念の一つに「へこみ部」が存在すること、即ち、手続補正書において全ての「切欠部(へこみ部)」を削除していなかったということが御庁の審理において認定されていることからも立証される。 上記主張1)について 先に検討したとおり請求の範囲の文言解釈に疑義がある場合は、発明の詳細な説明の記載を参酌して解せざるを得ない場合があるのであって、このような場合発明の詳細な説明の記載、特に発明の実施例に相当するものを全く離れて請求の範囲の文言のみから構成要件の技術的意味を解することはできず、また、文言の解釈を場合によって使い分けることは許されないというべきである。したがって、上記主張1)は採用できない。 上記主張2)について 先に検討したとおり本件考案の「へこみ部」がカード本体の外周縁からカード本体の内側方向にあってカードの厚み方向を指すことが明らかであり、しかも、分割出願である本件の原出願の出願経過を参照すれば、該原出願の当初明細書に記載のあった図面第1、2図に関する実施例(第1図は切欠部をもうけるもの)は削除されて出願公告されており、これとおなじように本件においても第1図の実施例(原出願における第3図)のみとされている。 このような経過を見れば、原出願における第1図のような切欠部を備える実施例が削除されている本件考案がそれを含むようなものと解することはできないというべきであるので、上記主張2)も採用できない。 ・構成要件Dについて イ号物件の指示部も、イ号物件の図面を参照すればカード本体の直交する2つの中心軸線の夫々から一側にずれて前記カード本体に配置されていることは明らかであるので、本件発明の構成要件Dを充足する。 ・構成要件Eについて イ号物件の指示部も、イ号物件の図面を参照すれば目の不自由な者がカード本体を切符販売機や自動改札機に差し込む際、目の不自由な者の指にふれる位置に配置されていることは明らかであるので、本件発明の構成要件Eを充足する。 ・構成要件Fについて 上記構成要件Aについてにおいての判断と同様であり、充足しない。 (5)請求人の主張(均等論について) 請求人は、本件考案とイ号物件との相違点は「単に磁気カードの用途の違い、・・本件では・・テレホンカードであり、イ号では・・乗物用カードである点」であり、本件考案の本質的部分は「磁気カードのカード本体の一部に、差し込む方向を指示するための押形部からなる指示部を設けて成り、該指示部は、カード本体の外周からカード本体の内方向にくぼんでいると共にカード本体の直交する二つの中心軸の夫々から一側にずれてカード本体に配置されており、且つ、該指示部は目の不自由な者がカード本体を差し込む際、目の不自由な者の指がふれる位置に配置されており、押形部からなる指示部は手で触れることによって、カードの差し込み方向を知ることができるので目の不自由な者も使用することができる。」であるとし、「カードの用途は・・本質的部分ではない。」と主張(請求書第4頁3?17行)している。 本件考案の「考案が解決すべき課題」及び「作用・効果」の記載からすれば、本件考案は、目の不自由な者に対する配慮のためのものであり、カード(テレホンカード)本体の一部に指示部を設け、該指示部はカード本体を電話機に差し込む際、目の不自由な者の指がふれる位置に配置されていること、該指示部は差し込む方向を指示するための押形部からなり、カード本体の外周縁から前記カード本体の内方向にくぼんでいると共に、カード本体の直交する2つの中心軸線の夫々から一側にずれてカード本体に配置されている点は、本件考案の本質的部分であると認められる。(即ち請求人の主張するように本件考案の本質的部分は構成要件B?Eであると認められる。)このように本件考案の本質的部分を構成する構成要件B、Cに対して、上記で検討した如くイ号物件の構成要件b、cが充足しないことは前述したとおりである。 してみると、本件考案の本質的部分である構成要件が相違するのであるからイ号物件の構成要件a,fが本件考案の構成要件A,Fと均等であるかの判断をしたとしても実質的な意味を失っていることは明白である。 したがって、その判断をする必要性を認めない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
|
判定日 | 2002-03-04 |
出願番号 | 実願平6-5675 |
審決分類 |
U
1
2・
1-
ZB
(B42D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 外山 邦昭、砂川 克、國田 正久 |
特許庁審判長 |
村山 隆 |
特許庁審判官 |
白樫 泰子 二宮 千久 |
登録日 | 2000-03-17 |
登録番号 | 実用新案登録第2150603号(U2150603) |
考案の名称 | テレホンカード |
代理人 | 橋本 克彦 |