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審決分類 |
審判 全部申し立て H01F 審判 全部申し立て H01F |
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管理番号 | 1061356 |
異議申立番号 | 異議2001-70315 |
総通号数 | 32 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2002-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-01-24 |
確定日 | 2002-05-01 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2605565号「積層ノイズ除去部品」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2605565号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 本件実用新案登録第2605565号の請求項1に係る考案についての出願は、平成5年4月13日に出願(優先権主張平成5年3月10日、日本国)され、平成12年5月19日にその考案の設定登録がなされ、その後、株式会社村田製作所より実用新案登録異議の申立てがなされ、平成13年6月5日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年8月3日に訂正請求がなされ、平成13年12月10日付けで再度取消理由通知がなされたものである。 (2)訂正の適否についての判断 ア.訂正の内容 *訂正事項a 登録請求の範囲の請求項1における「を備えている」において、「を備え」と「ている」との間に「、前記第1の透磁率を前記第2の透磁率よりも大にし、前記第1の導体ターン数を前記第2の導体ターン数よりも小にすると共に全導体ターン数を制御したことにより、当該セラミック積層体の周波数変化によるインピーダンス・ピークがブロ一ドであると共に周波数変化によるインピーダンスの立ち上がりが急峻なインピ一ダンス対周波数曲線の波形を有してノイズ除去帯域をカバーし」を挿入する。 *訂正事項b 本件登録明細書の段落0015における「共に満足するものはないと無い」を、「共に満足するものは無い」と訂正する。 *訂正事項c 本件登録明細書の段落0018における「したがって本考案は、セラミックの積層体内に導体をコイル状に形成して当該導体の各端を前記積層体の表面に導出した積層ノイズ除去部品であって当該セラミック積層体が少なくとも、第1の透磁率ならびに第1の導体ターン数を有して周波数変化による第1のインピーダンス・ピークを持つ第1のセラミック積層部と、第2の透磁率ならびに第2の導体ターン数を有して周波数変化による第2のインピーダンス・ピークを持つ第2のセラミック積層部と、を備えていることを特徴とした積層ノイズ除去部品を提供するものである。」を、「したがって本考案は、セラミックの積層体内に導体をコイル状に形成して当該導体の各端を前記積層体の表面に導出した積層ノイズ除去部品であって当該セラミック積層体が少なくとも、第1の透磁率ならびに第1の導体ターン数を有して周波数変化による第1のインピーダンス・ピークを持つ第1のセラミック積層部と、第2の透磁率ならびに第2の導体ターン数を有して周波数変化による第2のインピーダンス・ピークを持つ第2のセラミック積層部と、を備え、前記第1の透磁率を前記第2の透磁率よりも大にし、前記第1の導体ターン数を前記第2の導体ターン数よりも小にすると共に全導体ターン数を制御したことにより、当該セラミック積層体の周波数変化によるインピーダンス・ピークがブロ一ドであると共に周波数変化によるインピーダンスの立ち上がりが急峻なインピ一ダンス対周波数曲線の波形を有してノイズ除去帯域をカバーしていることを特徴とした積層ノイズ除去部品を提供するものである。」と訂正する。 *訂正事項d 本件登録明細書の段落0029における「磁性体をそぞれ用意し、」を、「磁性体をそれぞれ用意し、」と訂正する。 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、登録請求の範囲の請求項1における「セラミックの積層体内に導体をコイル状に形成して当該導体の各端を前記積層体の表面に導出した積層ノイズ除去部品であって当該セラミック積層体が少なくとも、第1の透磁率ならびに第1の導体ターン数を有して周波数変化による第1のインピーダンス・ピークを持つ第1のセラミック積層部と、第2の透磁率ならびに第2の導体ターン数を有して周波数変化による第2のインピーダンス・ピークを持つ第2のセラミック積層部と、を備えていることを特徴とした」積層ノイズ除去部品」について「前記第1の透磁率を前記第2の透磁率よりも大にし、前記第1の導体ターン数を前記第2の導体ターン数よりも小にすると共に全導体ターン数を制御したことにより、当該セラミック積層体の周波数変化によるインピーダンス・ピークがブロ一ドであると共に周波数変化によるインピーダンスの立ち上がりが急峻なインピ一ダンス対周波数曲線の波形を有してノイズ除去帯域をカバーしている」点を、更に限定するものであるから、登録請求の範囲の減縮を目的としたものであり、当該訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 上記訂正事項bは、「共に満足するものはないと無い」を、「共に満足するものは無い」と訂正するもので、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、また願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 上記訂正事項cは、請求項1が訂正事項aのように訂正されたことに伴い登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正で、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 上記訂正事項dは、「磁性体をそぞれ用意し、」を、「磁性体をそれぞれ用意し、」と訂正するもので、誤記の訂正を目的としたものであり、また願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 ウ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)登録異議申立てについての判断 ア.本件考案 訂正明細書の本件考案は、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「セラミックの積層体内に導体をコイル状に形成して当該導体の各端を前記積層体の表面に導出した積層ノイズ除去部品であって当該セラミック積層体が少なくとも、第1の透磁率ならびに第1の導体ターン数を有して周波数変化による第1のインピーダンス・ピークを持つ第1のセラミック積層部と、第2の透磁率ならびに第2の導体ターン数を有して周波数変化による第2のインピーダンス・ピークを持つ第2のセラミック積層部と、を備え、前記第1の透磁率を前記第2の透磁率よりも大にし、前記第1の導体ターン数を前記第2の導体ターン数よりも小にすると共に全導体ターン数を制御したことにより、当該セラミック積層体の周波数変化によるインピーダンス・ピークがブロ一ドであると共に周波数変化によるインピーダンスの立ち上がりが急峻なインピ一ダンス対周波数曲線の波形を有してノイズ除去帯域をカバーしていることを特徴とした積層ノイズ除去部品。」(以下本件考案という) イ.申立ての理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証(実願平2-84997号[実開平4-42711号]のマイクロフィルム)、甲第2号証(特開平4-293210号公報)、甲第3号証(特開昭58-188108号公報)及び甲第4号証(特開昭56-155516号公報)を提出し、本件考案は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたから、本件考案の登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである旨主張している。 ウ.取消理由通知の概要 平成13年12月10日付けの取消理由の概要は、次のとおりである。 「訂正明細書の本件考案は、平成13年8月3日付けで適法に訂正された、次のとおりのものである。 「セラミックの積層体内に導体をコイル状に形成して当該導体の各端を前記積層体の表面に導出した積層ノイズ除去部品であって当該セラミック積層体が少なくとも、第1の透磁率ならびに第1の導体ターン数を有して周波数変化による第1のインピーダンス・ピークを持つ第1のセラミック積層部と、第2の透磁率ならびに第2の導体ターン数を有して周波数変化による第2のインピーダンス・ピークを持つ第2のセラミック積層部と、を備え、前記第1の透磁率を前記第2の透磁率よりも大にし、前記第1の導体ターン数を前記第2の導体ターン数よりも小にすると共に全導体ターン数を制御したことにより、当該セラミック積層体の周波数変化によるインピーダンス・ピークがブロ一ドであると共に周波数変化によるインピーダンスの立ち上がりが急峻なインピ一ダンス対周波数曲線の波形を有してノイズ除去帯域をカバーしていることを特徴とした積層ノイズ除去部品。」 しかしながら、本件実用新案登録は、次の(1)及び(2)の理由により取り消されるべきものである。 (1)請求項1に係る考案は、下記刊行物3に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定に該当し実用新案登録を受けることができない。 (2)本件考案は、下記刊行物1乃至4に記載された考案に基いて(主引例を刊行物3とする)、その出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 記 刊行物1 実願平2-84997号(実開平4-42711号)のマイクロフィルム 刊行物2 特開平4-293210号公報 刊行物3 特開昭58-188108号公報 刊行物4 特開昭56-155516号公報 備考 [刊行物3については、特に第2頁右上欄17行?右下欄1行の記載及び第11図の記載に注意されたい。] 」 エ.本件考案について 本件考案について平成13年12月10日付けで上記取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、実用新案登録権者からは何らの応答もない。 そして、上記取消理由は妥当なものと認められるので、本件考案に係る実用新案登録は、この取消理由によって取り消すべきものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件考案についての実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認められるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のように決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 積層ノイズ除去部品 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 セラミックの積層体内に導体をコイル状に形成して当該導体の各端を前記積層体の表面に導出した積層ノイズ除去部品であって当該セラミック積層体が少なくとも、 第1の透磁率ならびに第1の導体ターン数を有して周波数変化による第1のインピーダンス・ピークを持つ第1のセラミック積層部と、 第2の透磁率ならびに第2の導体ターン数を有して周波数変化による第2のインピーダンス・ピークを持つ第2のセラミック積層部と、 を備え、 前記第1の透磁率を前記第2の透磁率よりも大にし、前記第1の導体ターン数を前記第2の導体ターン数よりも小にすると共に全導体ターン数を制御したことにより、当該セラミック積層体の周波数変化によるインピーダンス・ピークがブロードであると共に周波数変化によるインピーダンスの立ち上がりが急峻なインピーダンス対周波数曲線の波形を有してノイズ除去帯域をカバーしていることを特徴とした積層ノイズ除去部品。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、ロスの少ない積層ノイズ除去部品に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来の積層ノイズ除去部品は、磁性セラミック(フェライト)素体内に導体を埋設し、導体の端末を該素体の両端面に形成された外部端子電極に接続した部品である。導体は直線で両端に亘って形成されたものが基本的な構成であるが、磁路長を長く取得する目的で、コイル状に磁性体内を周回する構造のものも広く利用されている。 【0003】 積層ノイズ除去部品は、電気回路中に接続されて用いられ、回路中で発生したノイズを外部へ伝達することのないように出力時に除去したり、また外部からの受信信号に重畳したノイズを除去してきれいな信号として受信する作用を有する 【0004】 例えば信号波形が幾何学的な矩形波であるとして、この信号にノイズが重畳した時の信号波形の例を図2の(a)に示す。特に同図の(b)は矩形波のかどがとれて丸くひずんだいわゆるなまった波形を、同図の(c)は波形が減衰的に振動するひずみでいわゆるリンギングを生じた波形を示している。 【0005】 このノイズを除去するために用いた積層ノイズ除去部品のインピーダンス(Z)を実数部(R)と虚数部(X_(L))とで表わし、それらと周波数(f)との関係を図3および図4を用いて以下に説明する。なお、このZ-f曲線で除去できるノイズの周波数はR=X_(L)の周波数f_(R=XL)を目安とし、これより高い周波数のノイズが除去できるとされている。 【0006】 例えば、比較的高い透磁率(μ=800)の磁性体を用いて巻数が少ない場合、ノイズが除去できない領域があり好ましくないので巻数を増加させ曲線Zのピーク値を高くする。巻数が増せばZが増加し、X_(L)部分が増し、曲線Zがノイズ除去帯域を覆うようになる。 【0007】 以上のことを図3の(a)?(c)により説明する。 【0008】 ノイズ減衰に要求される周波数の必要帯域f_(n)とその時の必要なインピーダンスZ(R)が図3の(a)の場合、同図の(b)に示すようなZ-f曲線を有するインダクタを用いればf_(R=XL)が所望帯域よりも低い帯域にあってZ(R)も小さく、ノイズがとりきれない領域4(ハッチングで示す)が生じる。 【0009】 そこで、同図(c)に示すように、巻数を増して曲線Zのピーク値を高くすると、Z(R)が大きくなって必要なf-Z(R)領域を確保できるようになる。 【0010】 しかしながら図3の(c)ではZ(R)が余っている部分、必要以上のロスが発生しており、このため信号の立ち上がり、立ち下がりの応答性が劣化するとともに巻数増によるR_(DC)やX_(L)の増大が信号系をも減衰させるという影響が大きい。特にf_(R=XL)が低いので低周波でのX_(L)が、透磁率の低い磁性体の場合よりも大きい。この種の積層ノイズ除去部品の波形はなまった波形となる。 【0011】 そこで、透磁率の低い磁性体を選択して巻数を少なくするとZのピークは高周波側に移動し、Zのピーク値が高くなる。この種の積層ノイズ除去部品の波形はR部分が少なくなり波形のなまりは避けられるがリンギングが増す。 【0012】 以上の場合を具体的に図4の(a)?(b)により説明する。 【0013】 ノイズ減衰に要求される周波数の必要帯域とその時の必要なインピーダンスZ(R)を前記図3の(a)と同じとして、図4の(a)に示すように、巻数が少ないインダクタのf-Z曲線では、Z(R)の最大値は十分であるが、Z曲線の山がするどすぎてとりきれない領域4ができている。そこで図4の(b)のように巻数を増し、Z(R)を大きくすると、必要なf-Z(R)領域が確保される。 【0014】 しかしながら図4の(b)ではR_(DC)やX_(L)が大きい上、特に透磁率の高い磁性体の場合に比してZ(R)が大きいためZ(R)が余っている部分、必要以上のロスが発生し、このため信号の立ち上がり(立ち下がり)の応答性が劣化するようになる。これらはf_(R=XL)が局周波サイドにくるので必要な低周波までZ(R)を伸ばすためZ(R)値を必要以上大きくとらざるを得ないためである。 【0015】 【考案が解決しようとする課題】 以上のように、従来の積層ノイズ除去部品においては、信号波形を無視しなまりを避けるか、多少波形のなまりは承知の上でリンギングを避けるかは使用する側の判断でいずれかを選択し、共に満足するものは無いという課題があった。 【0016】 本考案は電気信号をなまらせるノイズや電気信号をリンギングするノイズなどを取り除く目的から開発されたものである。すなわち本考案の目的は簡単にノイズを除去できる積層ノイズ除去部品を提供することにある。言い換えると本考案の目的は必要なノイズ除去帯域をほぼ正確にカバーするロスの少ない積層ノイズ除去部品を提供することにある。 【0017】 【課題を解決するための手段】 本考案者は従来の積層ノイズ除去部品が単一種の磁性体で構成されていて必要なノイズ除去帯域をカバーするためにはロスが大きいことを知った。鋭意研究の結果、本考案者は透磁率の異なる複数の磁性体でコイル導体を覆うようにした積層ノイズ除去部品を開発した。したがって開発された積層ノイズ除去部品の全体インピーダンスZのピーク周波数fは透磁率の異なる複数の磁性体それぞれの各Zのピーク周波数fの間に位置することになる。言い換えると開発された積層ノイズ除去部品のZ-f曲線のピークがブロードになると共にZ-f曲線の立ち上がりが急峻になることになる。この結果、必要なノイズ除去帯域をほぼ正確にカバーするロスの少ない積層ノイズ除去部品が得られることを見出し本考案に到達した。 【0018】 したがって本考案は、セラミックの積層体内に導体をコイル状に形成して当該導体の各端を前記積層体の表面に導出した積層ノイズ除去部品であって当該セラミック積層体が少なくとも、第1の透磁率ならびに第1の導体ターン数を有して周波数変化による第1のインピーダンス・ピークを持つ第1のセラミック積層部と、第2の透磁率ならびに第2の導体ターン数を有して周波数変化による第2のインピーダンス・ピークを持つ第2のセラミック積層部と、を備え、前記第1の透磁率を前記第2の透磁率よりも大にし、前記第1の導体ターン数を前記第2の導体ターン数よりも小にすると共に全導体ターン数を制御したことにより、当該セラミック積層体の周波数変化によるインピーダンス・ピークがブロードであると共に周波数変化によるインピーダンスの立ち上がりが急峻なインピーダンス対周波数曲線の波形を有してノイズ除去帯域をカバーしていることを特徴とした積層ノイズ除去部品を提供するものである。 【0019】 【作用】 上述のように本考案の積層ノイズ除去部品では異なる透磁率を有する複数の磁性体がコイル導体の周囲を覆うことになる。したがって積層ノイズ除去部品のZ-f曲線におけるインピーダンスZのピーク周波数fは異なる材質の各Zのピー周波数fの間に位置するようになる。このため本考案積層ノイズ除去部品のZ-f曲線のピークがブロードになると共にZ-f曲線の立ち上がりが急峻になる。すなわち本考案はZ-f曲線とノイズ除去帯域との重なりが密になってロスの少ない積層ノイズ除去部品となる。 【0020】 以上の作用効果を図1の(a)?(d)により詳しく説明する。図1の(a)は前記図3の(a)の場合と同じくノイズ減衰に要求される周波数の必要帯域f_(n)とその時の必要なインピーダンスを示すものであり図1の(b)に示すように、材質2として比較的高い透磁率(μ=800)の磁性体を選び3ターンの導体を内設した時のZ-f曲線では、材質2部分のZ(R)への寄与は主に低周波域ノイズを減衰し、一方低い透磁率(μ=120)の磁性体からなり2ターンの導体を内設した時のZ-f曲線では、図1の(c)に見られるように、材質1の部分のZ(R)への寄与は主に高周波域ノイズを減衰していることがわかる。 【0021】 上記材質1の積層体上に材質2の積層体を重ねて一体化して5ターンの積層体にすると、図1の(d)のにみられるように、巻数5ターンを保ったまま必要な周波数帯域残体で必要なZ(R)値をクリアしていて、Z-f曲線からわかるように余分なZが少なく、前述のように信号の立ち上がり立ち下がり応答性がよく、従来例のような巻数の増加がないので、R_(DC)やX_(L)が増大せず、信号ロスが少ない。 【0022】 【実施例1】 前記図1の(a)?(d)は本実施例に用いられた積層ノイズ除去部品の特性を示すZ-f曲線図であって、これらを参照して以下説明する。 【0023】 透磁率120のフェライト原料を有機バインダと混練して厚み50μmの第1のフェライトグリーンシートを、また透磁率800のフェライト原料を有機バインダと混練して厚み50μmの第2のフェライトグリーンシートを形成した。 【0024】 第1のグリーンシートと第2のグリーンシートとに積層してコイルを形成するコイル導体パターンをスクリーン印刷し、第1グリーンシートを複数枚重ね、その上に複数枚の第2グリーンシートを重ね、上下にそれぞれカバーシートを重ねて圧着し、第1グリーンシートで2ターン、第2グリーンシートで3ターンのコイルをスルーホール接続して5ターンのコイルを内設し、コイル導体端末を素体端面に導出した積層体を得た。 【0025】 これを焼成し、該積層体の端面に外部端子電極を形成して前記コイル導体端末を該外部端子電極に接続した。得られた積層ノイズ除去部品の透過斜面図を図6に示す。 【0026】 低透磁率を有する材質1の積層体の上に高透磁率を有する材質2の積層体が重ねられており、端面に平行な断面図を図8に示す。同図の(a)は材質1と2に内設されて周回する内部導体が近接している例であり、同図の(b)は同じく材質1と2の周回部分が離れている例である。 【0027】 この積層ノイズ除去部品でノイズを除去すると、図1の(d)に示されているように、信号波形のなまりもなく、リンギングの少ない波形が得られた。 【0028】 【実施例2】 図5の(a)?(e)は本実施例において用いられた3種の異なる材質からなる積層ノイズ除去部品の特性を示すZ-f曲線図であって、これらを参照して以下説明する。 【0029】 前記実施例1においては2つの異なる透磁率を有する磁性体を積層して積層ノイズ除去部品を形成したが、本実施例では低い透磁率を持つ材質1の磁性体と高い透磁率をもつ材質2の磁性体、およびその中間の透磁率を持つ材質3の磁性体からなる3つの異なる透磁率を有する磁性体をそれぞれ用意し、材質1の積層体中を1ターン、材質3の積層体中を1ターン、および材質2の積層体中を3ターンのコイル導体が周回するように各積層体を下から1、3、2の順序に重ねて圧着した後、実施例1の要領に従い積層ノイズ除去部品を得た。 【0030】 図7は得られた該部品の透過斜視図、図9の(b)はその端面に平行な断面図である。なお図9の(a)は材質1と2の間に磁性/非磁性材からなる材質3が配置されている例、同図の(c)は材質が同じ磁性体の間に違った材質のものをはさみ込んだ例、また同図の(d)は3材質にわたって周回するコイル導体部分うち一部が近接しており、一部が離れている例である。 【0031】 実施例1において図1の(a)に示したノイズ減衰に要求される必要帯域よりもさらに広くした場合に対する本実施例の適用について説明する。 【0032】 すなわち、図5の(a)において白抜き矢印の方向にふえた帯域7が加算される場合、積層ノイズ除去部品を構成する各材質の部分のそれぞれのZ(R)への寄与は材質2については図5の(b)に、材質3については図5の(c)に、および材質1については図5の(d)に示す通りであって、各々Z曲線ではノイズを取り切れない領域4が存在したが、これら材質1、2および3を積層して形成された5ターンの積層体ではそのZ曲線は図5の(e)に見られるように、ふえた帯域をも含めた必要な周波数帯域で必要なZ(R)値をカバーし、かつZ曲線の形状も良好であるので、材質数を増やすことによってさらに広い帯域のノイズを吸収できることを示している。 【0033】 【考案の効果】 以上、説明したように本考案は一磁性体の材質で形成された積層ノイズ除去部品における問題点を解決した。すなわち本考案は異なる透磁率を有する複数の磁性体の組み合わせで一体化した積層体によってコイル導体を覆うことを特徴とする。この結果、本考案による積層ノイズ除去部品のZ-f曲線のピークがブロードになると共にZ-f曲線の立ち上がりが急峻になることになる。したがって本考案によると必要なノイズ除去帯域をほぼ正確にカバーするロスの少ない積層ノイズ除去部品が得られる。かくして本考案によるロスの少ないノイズ除去部品は発熱が少ないため高密度実装が可能になるなど小形化に貢献する効果は大きい。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案の一実施例に用いられた2種の異なる材質からなる積層ノイズ除去部品の特性を示すZ-f線図である。 【図2】 同図の(a)?(c)はノイズが重畳したときの信号波形の例である。 【図3】 従来の比較的透磁率の高い単一磁性体で構成された積層ノイズ除去部品の特性を示すZ-f線図である。 【図4】 従来の比較的透磁率の低い単一磁性体で構成された積層ノイズ除去部品の特性を示すZ-f線図である。 【図5】 本考案の別の実施態様において用いられた3種の異なる材質からなる積層ノイズ除去部品の特性を示すZ-f線図である。 【図6】 2種の異なる材質からなる本考案積層ノイズ除去部品の透過斜視図である。 【図7】 3種の異なる材質からなる本考案積層ノイズ除去部品の透過斜視図である。 【図8】 同図の(a)および(b)は図6に示した積層ノイズ除去部品の端面に平行な断面図である。 【図9】 同図の(a)?(d)は図7に示した積層ノイズ除去部品の端面に平行な断面図である。 【符号の説明】 1 材質1からなる積層体 2 材質2からなる積層体 3 材質3からなる積層体 4 とりきれない領域 5 内部導体パターン 6 外部端子電極 7 ふえた領域 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 *訂正事項a 登録請求の範囲の減縮を目的として、登録請求の範囲の請求項1における「を備えている」において、「を備え」と「ている」との間に「、前記第1の透磁率を前記第2の透磁率よりも大にし、前記第1の導体ターン数を前記第2の導体ターン数よりも小にすると共に全導体ターン数を制御したことにより、当該セラミック積層体の周波数変化によるインピーダンス・ピークがブロ一ドであると共に周波数変化によるインピーダンスの立ち上がりが急峻なインピ一ダンス対周波数曲線の波形を有してノイズ除去帯域をカバーし」を挿入する。 *訂正事項b 誤記の訂正を目的として、本件登録明細書の段落0015における「共に満足するものはないと無い」を、「共に満足するものは無い」と訂正する。 *訂正事項c 明りょうでない記載の釈明を目的として、本件登録明細書の段落0018における「したがって本考案は、セラミックの積層体内に導体をコイル状に形成して当該導体の各端を前記積層体の表面に導出した積層ノイズ除去部品であって当該セラミック積層体が少なくとも、第1の透磁率ならびに第1の導体ターン数を有して周波数変化による第1のインピーダンス・ピークを持つ第1のセラミック積層部と、第2の透磁率ならびに第2の導体ターン数を有して周波数変化による第2のインピーダンス・ピークを持つ第2のセラミック積層部と、を備えていることを特徴とした積層ノイズ除去部品を提供するものである。」を、「したがって本考案は、セラミックの積層体内に導体をコイル状に形成して当該導体の各端を前記積層体の表面に導出した積層ノイズ除去部品であって当該セラミック積層体が少なくとも、第1の透磁率ならびに第1の導体ターン数を有して周波数変化による第1のインピーダンス・ピークを持つ第1のセラミック積層部と、第2の透磁率ならびに第2の導体ターン数を有して周波数変化による第2のインピーダンス・ピークを持つ第2のセラミック積層部と、を備え、前記第1の透磁率を前記第2の透磁率よりも大にし、前記第1の導体ターン数を前記第2の導体ターン数よりも小にすると共に全導体ターン数を制御したことにより、当該セラミック積層体の周波数変化によるインピーダンス・ピークがブロ一ドであると共に周波数変化によるインピーダンスの立ち上がりが急峻なインピ一ダンス対周波数曲線の波形を有してノイズ除去帯域をカバーしていることを特徴とした積層ノイズ除去部品を提供するものである。」と訂正する。 *訂正事項d 誤記の訂正を目的として、本件登録明細書の段落0029における「磁性体をそぞれ用意し、」を、「磁性体をそれぞれ用意し、」と訂正する。 |
異議決定日 | 2002-03-12 |
出願番号 | 実願平5-24392 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
ZA
(H01F)
U 1 651・ 113- ZA (H01F) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 田中 友章 |
特許庁審判長 |
内野 春喜 |
特許庁審判官 |
岡 和久 浅野 清 |
登録日 | 2000-05-19 |
登録番号 | 実用新案登録第2605565号(U2605565) |
権利者 |
太陽誘電株式会社 東京都台東区上野6丁目16番20号 |
考案の名称 | 積層ノイズ除去部品 |
代理人 | 丸岡 政彦 |
代理人 | 丸岡 政彦 |