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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F |
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管理番号 | 1067658 |
審判番号 | 審判1998-13289 |
総通号数 | 36 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2002-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-08-24 |
確定日 | 2002-10-17 |
事件の表示 | 平成 3年実用新案登録願第 14770号「空気調和機の室内ユニット」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 9月14日出願公開、実開平 4-106425、平成 7年11月13日出願公告、実公平 7- 49292]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願考案 本願は、平成3年2月21日の出願であって、平成7年11月13日に出願公告されたが、株式会社コロナ社、株式会社東芝、佐藤 実、シャープ株式会社からそれぞれ実用新案登録異議申立があり、シャープ株式会社の異議申立に対して平成10年7月3日付けで登録異議の決定(以下「異議決定」という。)がなされ、同日付けで拒絶査定がなされたが、平成10年8月24日に審判が請求されたものである。本願の請求項1及び2に係る考案は、この審判の請求の日から30日以内になされた平成10年9月24日付けの手続補正書により補正された本願明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりの次のものであると認められる。(以下、請求項1、請求項2に係る考案を、それぞれ「本願考案1」、「本願考案2」という。) 【請求項1】本体と、この本体に着脱可能に被せられる前面カバーとで筺体を構成し、この筺体の上面に形成された吸込口と下部前面に形成された吹出口とを結ぶ空気通路内に、水平方向に三分割し、隣接する二つの熱交換器を逆V字形に折り曲げ、残されたもう一つの熱交換器をほぼ直立するように三つ折りにした熱交換器を配置し、前記ほぼ直立した熱交換器の下部に露受皿を形成する一方、同熱交換器の後方に送風機を配置し、前記本体の内面側に、本体側に配置される前記熱交換器の結露水を受けると共に、前記送風機の後側舌片を兼ねたリブを一体に形成してなることを特徴とする空気調和機の室内ユニット。 【請求項2】前記リブの先端部を前記熱交換器の傾斜にほぼ合わせてなる請求項1記載の空気調和機の室内ユニット。 第2 引用例に記載された事項 これに対して、原査定の拒絶の理由となった異議決定の理由中に引用された特開昭56-49823号公報(以下、「引用例1」という。)には次の記載がある。 「第2図は、本発明の一実施例に係る分離形ルームエアコンの室内ユニットの縦断面図である。 この第2図において、12は箱体、13は、箱体12の前面上部に設けられた吸込み口、13aは、箱体12の上面に設けられた吸込み口、13bは、箱体12の背面上部に設けられた吸込み口である。14a,14bは、その頂部に空気流入防止用のシール材22が取付けられ、ほぼ逆V字形に形成された2個1組の蒸発器であって、各蒸発器14a,14bの奥行寸法は従来の蒸発器5(第1図参照)の約1/2である。この蒸発器14a,14bは、箱体12の上方部に設置されている。 15a,15bは、それぞれ蒸発器14a,14bの下部に設けられた露受皿であって、一方の露受皿15bと箱体12の間には、わずかの間隙が設けられている。 16は送風機、17は風向板、18はノーズ、19,19a,19bは、それぞれ吸込み口13,13a,13bに設けられたフィルター、20は、送風機16の近傍および箱体12の下部に取付けられた断熱材、21は吐出口である。 なお、図中の矢印は空気の流線を示す。」(2頁右上欄5行ないし左下欄7行) 引用例1の上記の記載及び第2図が図示するところによれば、引用例1には、次の考案が記載されているものと認められる。 「前面にフィルター19とノーズ18を有し、これらと箱体12から筺体を構成し、この箱体12の上面に形成された吸込み口13aと下部前面に形成された吐出口21とを結ぶ空気通路内に、隣接する二つの蒸発器14a,14bを逆V字形に折り曲げた蒸発器を配置し、本体の外面側の蒸発器14aと本体の内面側の蒸発器14bの下部にそれぞれ露受皿15a,15bを設け、同蒸発器14a,14bの下方に送風機16を配置してなる分離形ルームエアコンの室内ユニット。」 異議決定の理由中に同じく引用された特開昭64-75822号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の記載がある。 「第1図、第2図において、21は分離型空気調和機における室内機の前面グリルであり、通風回路を形成するケーシング21Aをもかねている。22は、前面パネルであり下端部22Aは、ひんじ形状により回動自在に前記前面グリル21に固定されるとともに、ネジ等により上端部が別途前記前面グリルに固定されている。23は、周知の冷凍サイクルを形成する室内熱交換器であり室内機の背面部分に設置されその前面にはクロスフローファン24が設置されている。25は、台枠であり通風回路を形成するリアガイダ25Aをもかねている。26は前記クロスフローファン24を駆動するファンモータである。前記クロスフローファン24が回転すると、風は前記台枠25の天面部25B、背面部25Cおよび両側面(図示せず)を通って室内機内に流入し、前記室内側熱交換器23を通過して前記クロスフローファン内を貫流して、空気調和機下端面より吹出される。」(2頁右上欄6行ないし左下欄3行) 引用例2には、更に「前記クロスフローファン24を取り外す場合においても、前記前面グリル21を取り外すだけで前記クロスフローファン24が取り外せる状態となり、作業性が非常によい。」(2頁左下欄15ないし19行)と記載され、この記載によれば、第1図、第2図に示された前面グリル21は取り外しできるものと認められる。また、引用例2第1図が図示するところによると、リアガイダ25Aは、熱交換器23の結露水を受けると共に、クロスフローファン24の後側舌片を兼ねるリブを台枠25と一体に形成しているものと認められる。 そうすると、引用例2の上記の記載及び第1図が図示するところによれば、引用例2には、次の考案が記載されているものと認められる。 「台枠25と、この台枠25に着脱可能に被せられる前面グリル21で筺体を構成し、台枠25の天面部に形成された吸込口と下部前面に形成された吹出口とを結ぶ空気通路内に、前方に傾けて設けた熱交換器23を配置し、この熱交換器23の下部前方にクロスフローファン24を配置し、前記熱交換器23の結露水を受けると共に、前記クロスフローファン24の後側舌片を兼ねたリブよりなるリアガイダ25Aを台枠25と一体に形成した分離形空気調和機の室内ユニット。」 第3 本願考案と引用例1記載の考案との一致点・相違点の認定 本願考案1と引用例1記載の上記考案とを対比すると、引用例1記載の考案の「箱体12及びノーズ18」、「吸込み口13a」、「吐出口21」、「蒸発器14a,14b」、「露受皿15a,15b」、「送風機16」、「分離形ルームエアコンの室内ユニット」は、それぞれ本願考案1の「本体」、「吸込口」、「吹出口」、「熱交換器」、「露受皿」、「送風機」、「空気調和機の室内ユニット」に相当するものであり、引用例1記載の考案の「フィルター19」は、「前面カバー」を構成する。そうすると、本願考案1と引用例1記載の考案は、 「本体と前面カバーとで筺体を構成し、この筺体の上面に形成された吸込口と下部前面に形成された吹出口とを結ぶ空気通路内に、複数の熱交換器を折り曲げ配置し、熱交換器の下部に露受皿又は結露水を受けるリブをそれぞれ設け、熱交換器の下流側に送風機を配置した空気調和機の室内ユニット。」 である点で一致し、下記の点で相違するものと認められる。 相違点1:前面カバーについて、本願考案1では「本体に着脱自在に被せられる」ものであるのに対し、引用例1には、このようなものであるかどうかについての明示の記載がないこと。 相違点2:熱交換器の構成について、本願考案1は「水平方向に三分割し、隣接する二つの熱交換器を逆V字形に折り曲げ、残されたもう一つの熱交換器をほぼ直立するように三つ折りにした」ものであるのに対し、引用例1記載の考案では、「隣接する二つの蒸発器を逆V字形に折り曲げて、本体の外面側の蒸発器14aと本体の内面側の蒸発器14b」からなるものであること。 相違点3:熱交換器の下流側に設けられた送風機の位置について、本願考案1では「ほぼ直立した熱交換器の後方に配置した」のに対し、引用例1記載の考案では、蒸発器14a,14bの下方に配置したこと。 相違点4:熱交換器の結露水を受ける構成について、本願考案1では「ほぼ直立した熱交換器の下部に露受皿を形成する一方、本体の内面側に、本体側に配置される前記熱交換器の結露水を受けると共に、前記送風機の後側舌片を兼ねたリブを一体に形成してなる」ものであるのに対し、引用例1記載の考案では、「本体の外面側の蒸発器14a及び本体の内面側の蒸発器14bの下部にそれぞれ露受皿15a,15bを設け」たものであること。 第4 相違点についての検討 上記の相違点1ないし4について、以下に検討する。 1.相違点1について 引用例2記載の「前面グリル21」は、前示のとおり、台枠25に着脱自在であり、引用例2記載の考案において、「台枠25」、「前面グリル21」が、それぞれ本願考案1の「本体」、「前面カバー」に相当するものと認められる。そうすると、本願考案1の相違点1に係る構成は、引用例2記載の考案の構成であるというべきである。 2.相違点2について 異議決定が周知例として引用した特開平2-106632号公報(以下「周知例」という。)には、空気調和機において、傾斜した上部熱交換器1aと、この上部熱交換器1aより折り曲げられてほぼ直立した下部熱交換器1bとからなる熱交換器1と、ほぼ直立した下部熱交換器1bの下部に水受皿3を形成した構成が開示されている。 そして、引用例1には、前示のとおり、逆V字形に折り曲げられた本体の外面側の蒸発器14aと本体の内面側の蒸発器14bが記載されているから、上記周知例が例示する熱交換器の上記構成を引用例1記載の本体の外面側の蒸発器14aに適用することにより、本願考案1の「水平方向に三分割し、隣接する二つの熱交換器を逆V字形に折り曲げ、残されたもう一つの熱交換器をほぼ直立するように三つ折りにした」熱交換器を構成することができると認められる。 3.相違点3について 周知例には、ほぼ直立した下部熱交換器1bの後方にファン2(送風機)を配置した構成が開示されていると認められる。そうすると、本願考案1の相違点3に係る構成は、空気調和機における周知の構成というべきである。 4.相違点4について 引用例2に記載された「リアガイダ25A」は、前示のとおり、熱交換器23の結露水を受けると共に、クロスフローファン24の後側舌片を兼ねたリブよりなるリアガイダ25Aを台枠25と一体に形成したものであるから、本願考案1の「本体の内面側に、本体側に配置される熱交換器の結露水を受けると共に、前記送風機の後側舌片を兼ねた、一体形成されたリブ」に相当するものと認められる。そして、本願考案1の「ほぼ直立した熱交換器の下部に露受皿を形成する」構成は、周知例が例示するように空気調和機における周知の構成というべきである。 そうすると、本願考案1の相違点3に係る構成は、引用例2に記載された構成であるか、または周知技術の構成であるというべきである。 そして、引用例1に記載された「分離形ルームエアコンの室内ユニット」、引用例2に記載された「分離形空気調和機の室内ユニット」、周知例に記載された「空気調和機」は、いずれも空気調和機において共通するものであって、同一の技術分野に属するものと認められるから、当業者であれば、これらを組み合わせることに格別の困難性はなかったと認められる。 作用効果を検討しても、これらを組み合わせることにより、当業者の予測を超えるような顕著な効果を奏するものと認めることはできない。 第5 本願考案2について 本願考案2は、本願考案1の構成に「前記リブの先端部を前記熱交換器の傾斜にほぼ合わせてなる」との構成を付加したものであるが、引用例2の第1図は、リブに相当するリアガイダ25Aの先端部が、熱交換器23の傾斜にほぼ合わされている構成を開示しているから、本願考案2において限定した構成は、引用例2に開示されていると認められる。 作用効果を検討しても、当業者の予測を超えるような顕著な効果を奏するものと認めることはできない。 第6 結論 以上のとおりであるから、本願考案1及び本願考案2は、いずれも引用例1及び引用例2に記載された各考案並びに周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けことができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-08-07 |
結審通知日 | 2002-08-16 |
審決日 | 2002-08-27 |
出願番号 | 実願平3-14770 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
Z
(F24F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池田 佳弘、大橋 康史 |
特許庁審判長 |
橋本 康重 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 岡本 昌直 |
考案の名称 | 空気調和機の室内ユニット |