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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効とする。(申立て全部成立) A43B
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A43B
管理番号 1079806
審判番号 無効2002-35469  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-30 
確定日 2003-07-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第3087900号実用新案「履き物」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3087900号の請求項1乃至5に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯・本件考案
本件登録第3087900号実用新案の請求項1乃至5に係る考案(平成14年2月12日出願、平成14年6月5日設定登録。以下「本件考案1乃至5」といい、これらをまとめて「本件考案」という。)は、登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 靴底がつま先部と踵部及び、これらの間にある土踏まず部とから構成されており、前記土踏まず部の上面部を、つま先側から踵側に向かって上り傾斜となった後に、徐々に下り傾斜へ変化するような形状に形成することで、前記靴底が足に、足裏の形が長さ方向で弓状に湾曲した状態(縦アーチ)となるように接触するとともに、この上り斜面の中央付近に、足裏の母趾球と小趾球との中間付近を押し上げるような凸部を形成することで、足裏の形が幅方向でも弓状に湾曲した状態(横アーチ)となるように接触することを特徴する履き物。
【請求項2】 前記靴底の先端部を上方へ反るようにし、前記靴底の上面部の先端が後端よりも高く形成され、前記つま先部の上面部において、足の長さ方向の中間付近が、幅方向のほぼ全幅にわたり盛り上がるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の履き物。
【請求項3】 前記靴底の後端面の下側を、つま先側に向かって傾斜させるとともに、前記踵部の上面部を窪ませることで、球面状の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の履き物。
【請求項4】 前記土踏まず部の上面部の両端部が、端に向うに従って徐々に高さが高くなるように形成するとともに、前記靴底に、足の甲を上から押さえつけることができるアッパー部が設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の履き物。
【請求項5】 前記凸部が布材で覆われていることを特徴とする請求項1から4記載の履き物。」

2.請求人の主張
これに対して、請求人は、以下の理由を挙げ、本件考案の登録を無効とすべき旨主張している。
(1)無効理由1
本件考案は、本件出願前に頒布された甲第1号証及び甲第2号証の刊行物に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案についての登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)無効理由2
本件考案は、本件出願前に頒布された甲第3号証の刊行物に記載された考案であるか、又は、該考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案についての登録は、実用新案法第3条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)無効理由3
本件考案は、甲第4号証の1?甲第4号証の3により立証される、本件出願前に公然知られた、又は、公然実施をされた履物の考案であるか、もしくは、該履物の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案についての登録は、実用新案法第3条第1項第1号又は第2号もしくは同条第2項の規定に違反してされたものである。

3.被請求人の主張
被請求人に対しては、平成14年11月19日付けで請求書副本の送達通知をし、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からは、何等の応答もなされなかった。

4.無効理由2について
上記無効理由1乃至3のうち、まず、無効理由2について検討する。
(A)甲第3号証
甲第3号証(「ChouChou(シュシュ)2001 NO.16 7/31→8/13」株式会社角川書店、2001年8月13日発行、第79頁)には、「アーチフィッター」と称するサンダルの写真が掲載されていると共に、その説明として「足の3点アーチ、親指、足裏のカカト、小指の崩れを整える。」、「足のトラブルケアをしてくれるサンダル。足バランスを補正し、正しい歩き方ができます。ふくらはぎの筋肉も活性化しむくみもセーブ。」との記載がなされている。
上記写真に示されたサンダルの形状・構造を踏まえ、さらに、「足の3点アーチ」とは、一般に、足裏の内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチのことを意味するものであることを加味すれば、甲第3号証には、
「靴底(10)がつま先部(13)と踵部(14)及び、これらの間にある土踏まず部(15)とから構成されており、前記土踏まず部(15)の上面部を、つま先側から踵側に向かって上り傾斜となった後に、徐々に下り傾斜へ変化するような形状に形成することで、前記靴底(10)が足に、足裏の形が長さ方向で弓状に湾曲した状態(縦アーチ)となるように接触するとともに、この上り斜面の中央付近に、足裏の母趾球と小趾球との中間付近を押し上げるような凸部(21)を形成することで、足裏の形が幅方向でも弓状に湾曲した状態(横アーチ)となるように接触するサンダルであって、
前記靴底(10)の先端部(16)を上方へ反るようにし、前記つま先部(13)の上面部において、足の長さ方向の中間付近が、幅方向のほぼ全幅にわたり盛り上がるように形成されており、
前記踵部(14)の上面部を窪ませることで、球面状の凹部(27)が形成されており、
前記土踏まず部(15)の上面部の両端部が、端に向うに従って徐々に高さが高くなるように形成するとともに、前記靴底(10)に、足の甲を上から押さえつけることができる押さえつけ部(100)が設けられているサンダル。」
が記載されていると認められる(なお、符号は、請求人が甲第3号証の写真に付したものをそのまま用いた。)。

(B)対比・判断
(B-1)本件考案1について
本件考案1と甲第3号証に記載のものとを比較すると、後者における「サンダル」がその作用・機能からみて前者における「履き物」に相当している。
したがって、両者は、「靴底がつま先部と踵部及び、これらの間にある土踏まず部とから構成されており、前記土踏まず部の上面部を、つま先側から踵側に向かって上り傾斜となった後に、徐々に下り傾斜へ変化するような形状に形成することで、前記靴底が足に、足裏の形が長さ方向で弓状に湾曲した状態(縦アーチ)となるように接触するとともに、この上り斜面の中央付近に、足裏の母趾球と小趾球との中間付近を押し上げるような凸部を形成することで、足裏の形が幅方向でも弓状に湾曲した状態(横アーチ)となるように接触する履き物」である点で一致し、両者の間に構成上の差異はない。
よって、本件考案1は、甲第3号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものというべきである。
(B-2)本件考案2について
本件考案2は、本件考案1に、「靴底の先端部を上方へ反るようにし、前記靴底の上面部の先端が後端よりも高く形成され、つま先部の上面部において、足の長さ方向の中間付近が、幅方向のほぼ全幅にわたり盛り上がるように形成されている」構成を更に限定したものであるが、「靴底の先端部を上方へ反るようにし、つま先部の上面部において、足の長さ方向の中間付近が、幅方向のほぼ全幅にわたり盛り上がるように形成されている」構成は、甲第3号証に記載された考案が備えている構成である。
また、甲第3号証に記載された考案において、靴底の上面部の先端と後端とで、何れが高く形成されているかは明確にされていないが、「靴底の上面部の先端が後端よりも高く形成され」る構成は、足バランスを補正し、正しい歩き方ができる範囲内で、当業者が必要に応じて適宜採用し得る設計的事項にすぎないものと認められる。
そして、本件考案2により奏される効果も、甲第3号証に記載された考案から当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、上記(B-1)での検討内容を踏まえれば、本件考案2は、甲第3号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものというべきである。
(B-3)本件考案3について
本件考案3は、本件考案1又は2の何れかに、「靴底の後端面の下側を、つま先側に向かって傾斜させるとともに、踵部の上面部を窪ませることで、球面状の凹部が形成されている」構成を更に限定したものであるが、「踵部の上面部を窪ませることで、球面状の凹部が形成されている」構成は、甲第3号証に記載された考案が備えている構成である。
また、甲第3号証に記載された考案において、「靴底の後端面の下側を、つま先側に向かって傾斜させる」構成については明確にされていないが、かかる構成は、履き物における周知技術であるから、甲第3号証に記載された考案において、かかる周知技術を適用することは、当業者にとってきわめて容易である。
そして、本件考案3により奏される効果も、甲第3号証に記載された考案から当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、上記(B-1)及び(B-2)での検討内容を踏まえれば、本件考案3は、甲第3号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものというべきである。
(B-4)本件考案4について
本件考案4は、本件考案1,2又は3の何れかに、「土踏まず部の上面部の両端部が、端に向うに従って徐々に高さが高くなるように形成するとともに、靴底に、足の甲を上から押さえつけることができるアッパー部が設けられている」構成を更に限定したものである。
甲第3号証に記載された考案における「押さえつけ部(100)」は、本件考案4の「アッパー部」に相当するものと解されるから、結局、上記の限定された構成は、甲第3号証に記載された考案が具備している構成である。
したがって、上記(B-1)での検討内容を踏まえれば、本件考案4は、甲第3号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものというべきである。
(B-5)本件考案5について
本件考案5は、本件考案1乃至4に、「凸部が布材で覆われている」構成を更に限定したものであるが、一般に、履き物において、足との接触面を布材で覆うことは周知技術であるから、甲第3号証に記載された考案に該周知技術を適用し、本件考案5の構成とすることは、当業者にとってきわめて容易である。
そして、本件考案5により奏される効果も、甲第3号証に記載された考案から当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、上記(B-1)乃至(B-4)での検討内容を踏まえれば、本件考案5は、甲第3号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものというべきである。

5.むすび
したがって、他の無効理由について検討するまでもなく、本件考案1乃至5についての登録は、何れも、実用新案法第3条の規定に違反してされたものであるから、同法第37条第1項の規定により、これを無効にすべきものとする。
また、審判費用については、実用新案法第41条の規定により準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定を適用する。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-05-07 
結審通知日 2003-05-12 
審決日 2003-05-26 
出願番号 実願2002-593(U2002-593) 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (A43B)
U 1 112・ 113- Z (A43B)
最終処分 成立    
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 千壽 哲郎
藤原 直欣
登録日 2002-06-05 
登録番号 実用新案登録第3087900号(U3087900) 
考案の名称 履き物  
代理人 入江 一郎  
代理人 野末 寿一  
代理人 加藤 静富  

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