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審決分類 審判 一部申し立て   H04R
審判 一部申し立て   H04R
管理番号 1081502
異議申立番号 異議2002-73048  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2003-09-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-12-16 
確定日 2003-05-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2607796号「スピーカ用磁気回路」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2607796号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 第1 訂正の適否についての判断
1 訂正の概要
平成15年4月24日付け訂正請求によって実用新案権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。
a 実用新案登録請求の範囲の請求項1の「・・・ボイスコイルを配置してなるスピーカにおいて、・・・」を、「・・・ボイスコイルを配置し、当該マグネットを保持するホルダーを非磁性材で構成することにより開磁気回路を形成し、・・・」と訂正する。
b 明細書第3ページの段落番号【0010】の「・・・ボイスコイルを配置してなるスピーカにおいて、・・・」を、「・・・ボイスコイルを配置し、当該マグネットを保持するホルダーを非磁性材で構成することにより開磁気回路を形成し、・・・」と訂正する。

2 訂正の目的,新規事項の有無等の判断
上記aの訂正は,願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「スピーカ用磁気回路」を限定しようとするものであり,実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、願書に添付した明細書第3ページの段落番号【0011】中の「前記マグネット及びセンタープレートがリング状をなしていて、略有底筒状をなす非磁性材からなるホルダーで保持され」との記載、及び明細書第5ページの段落番号【0022】中の「磁気回路部材を保持するためのホルダーをアルミ等の非磁性材とした」との両記載に基づくものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

上記bの訂正は,実用新案登録請求の範囲の訂正と整合をとるために必要となる訂正であるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,明細書を実質的に拡張及び変更するものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから,上記訂正は,特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第9条第2項の規定により準用され,同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる,特許法120条の4第3項において準用する平成6年法律116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書,第2項及び第3項の規定に適合するので,当該訂正を認める。

第2 実用新案登録異議の申し立てについて
1 本件考案
上記第1に記載したとおり,平成15年4月24日付け訂正請求書による訂正請求は認められるところとなったので,本件考案は,同訂正請求書に添付した訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1(以下,「本件考案」という。)に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 厚み方向に着磁された外周円形のマグネット(1A,1B)を同極側が対向するように所定の間隔をもたせて配置すると共に両マグネットで発生した磁界内にボイスコイルを配置し、当該マグネットを保持するホルダーを非磁性材で構成することにより開磁気回路を形成し、両マグネットの対向面に磁性材からなる外周円形のセンタープレート(2)が挟持せしめられるように配置され、該センタープレートの直径寸法がマグネット(1A,1B)の直径寸法よりも大きくなるように設定されると共にその寸法差が4mm以下であることを特徴とするスピーカ用磁気回路。」

2 申立の概要
(1) 実用新案法第3条第2項
実用新案登録異議申立人はその申立て時に,証拠として
ア 特開昭56-34298号公報(甲第1号証)
イ 特公昭58- 235号公報(甲第2号証)
ウ 特公昭60- 3270号公報(甲第3号証)
を提出し,本件考案は,甲第1ないし3号証に基づき当業者が極めて容易に考案をすることができたものであるから実用新案法第3条第2項の規定に該当し,取り消されるべきものである旨主張している。
(2) 実用新案法第5条第4項又は5項
実用新案登録異議申立人は,数値限定の臨界的異議は何ら認められない旨,主張している。

3 当審の判断
(1) 実用新案法第3条第2項について
前記訂正請求により、本件考案は、新たな構成要件として、マグネットを保持するホルダーを非磁性材で構成することにより開磁気回路を形成したという構成要件を備えている。
この新たな構成要件と、センタープレートの直径寸法をマグネットの直径寸法より4ミリ以下の寸法差で大きくしたという構成要件は、上記各甲号証のいずれにも開示も示唆もされていない構成要件である。本件考案の場合には、磁気回路がマグネットとセンタープレートのみで構成され、センタープレートから出る磁力線は、空気中に放射されてマグネットのS極に回帰する。すなわち、本件考案の磁気回路は、マグネットとセンタープレートのみで構成された磁気回路、いわゆる開磁気回路となっている。
開磁気回路を有する本件考案の場合、センタープレートの直径寸法をマグネットの直径寸法より大きくしているので、マグネットからの磁力線は、マグネットと接するセンタープレートから放射される。
また、センタープレートの直径寸法をマグネットの直径寸法よりも4ミリ以内で大きくしているので、センタープレートがマグネットからはみ出した上下両面部分から両マグネットのS極に回帰する磁力線を低減して、センタープレートの外周部から放射される磁力線を増加できる。
本件考案は、アルミのような非磁性材を用いたホルダーを採用することによってスピーカの軽量化を図り、かつ非磁性材のホルダーの採用に伴う開磁気回路の形成によって磁気効率が悪くなってしまうところを、センタープレートの直径寸法とマグネットの直径寸法との寸法差を限定することによって磁気効率を改善した点に特徴を有するものである。
一方、各甲号証に開示される考案のような、いわゆる壺型ヨークを用いたスピーカの場合、磁気ギャップ以外の部分は磁気的につながっていおり,磁気ギャップを除き磁気的に閉じた磁気回路、いわゆる閉磁気回路となっている。
閉磁気回路を有する各甲号証開示の考案の場合、ポールピースから出た磁力線は、磁気ギャップを挟んで対向位置にあるヨークに強制的に引っ張られ、ヨーク内を通ってマグネットのS極に回帰する。
このため、各甲号証に開示される考案の場合には、ポールピースの直径寸法とマグネットの直径寸法との差によって、磁気ギャップを通る磁力線の量が大きく変化することはない。したがって、各甲号証に開示されるような閉磁気回路では、ポールピースの直径寸法を限定する必要はない。
また、各甲号証に開示されるいずれの考案も、本件考案特有の作用・効果である、磁気回路の軽量化を図り、インピーダンスの増加を広い範囲で抑えて高域性能を向上できるという作用・効果、及びセンタープレート外周部より外側方向に磁束をより効果的に出すことができるという作用・効果を奏さない。
以上のことから、本件考案を甲第1ないし3号証から当業者が極めて容易に想到できたとすることはできない。

(2) 実用新案法第5条第4項又は5項について
センタープレートの直径寸法をマグネットの直径寸法より4ミリ以下の寸法差で大きくしたという構成は,それ自体明確に本件考案の構成を表現している。
数値限定の臨界的意義は,数値の限定自体のみが考案の主要部を構成する場合には,厳格に臨界的意義を明らかにする必要があるが,本件考案のように他の構成要件の一部として数値限定を加える場合にまで,必ずその臨界的意義を明確にする必要があるとすることは妥当ではない。

第3 むすび
以上のとおりであるから,実用新案登録異議の申立ての理由及び証拠によっては,本件考案に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また,他に本件考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
スピーカ用磁気回路
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】厚み方向に着磁された外周円形のマグネット(1A,1B)を同極側が対向するように所定の間隔をもたせて配置すると共に両マグネットで発生した磁界内にボイスコイルを配置し、当該マグネットを保持するホルダーを非磁性材で構成することにより開磁気回路を形成し、両マグネットの対向面に磁性材からなる外周円形のセンタープレート(2)が挟持せしめられるように配置され、該センタープレートの直径寸法がマグネット(1A,1B)の直径寸法よりも大きくなるように設定されると共にその寸法差が4mm以下であることを特徴とするスピーカ用磁気回路。
【請求項2】厚み方向に着磁された外周円形のマグネット(1A,1B)を同極側が対向するように所定の間隔をもたせて配置すると共に両マグネットで発生した磁界内にボイスコイルを配置してなるスピーカにおいて、両マグネットの対向面に磁性材からなる外周円形のセンタープレート(2)が挟持せしめられるように配置され、前記マグネット(1A,1B)及びセンタープレート(2)がリング状をなしていて、略有底筒状をなす非磁性材からなるホルダーで保持され、該ホルダーの中心部には前記マグネット(1A,1B)及びセンタープレート(2)の中心穴を挿通するためのセンターガイド部(41)が形成されると共にに該センターガイド部(41)の下部にはマグネット及びセンタープレートを支持するための載置部(44)が形成されていることを特徴とするスピーカ用磁気回路。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、スピーカ用磁気回路に係り、特に、マグネットを同極側が対向するように所定の間隔をおいて配置し、この対向するマグネットで発生した磁界にボイスコイルを配置して駆動させるように構成したスピーカ用磁気回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より一般的に使用されているスピーカの磁気回路構造は、図13に示すような外磁型と図14に示すような内磁型とが多用されている。近時、スピーカ、特に車載用スピーカの軽量化が求められており、スピーカ重量の大部分を占める磁気回路構成部の軽量化を図るため、例えば、ネオジウムマグネット等の高性能マグネットを用いて前記軽量化に対応しようとしている。図において、1はマグネット、Yはヨーク、Pはトッププレートであって、これらにより磁気回路が構成されている。なお、5はフレーム、7は振動板、8はボイスコイル、9はダンパーである。このような磁気回路構成部の軽量化により、該磁気回路構成部や振動板7等を支持するための前記フレーム5の強度も低強度のもので機能を満たすことが可能となる。従って、磁気回路構成部の軽量化はフレーム5の軽量化につながり、総合的なスピーカ重量の軽量化を図ることができ、磁気回路構成部の重量は軽いほど有効であるので極限までの軽量化が求められている。
【0003】
しかし、図13に示すような外磁型磁気回路はその構造上、マグネット1がボイスコイル8の外径より大きくならざるを得ず、図に示すように、必然的にマグネット1の外径が大きくなる欠点を有し、その外径に応じたトッププレートPやヨークY等が必要となる。一般に、ネオジウムマグネットを使用した場合、通常のフェライト系マグネットを使用した外磁型磁気回路と比較して約60%?70%の軽量化が可能であるが、前記トッププレートPやヨークY等の外径が大きいために、それ以上の軽量化は困難な構造である。
【0004】
また、図14に示すような内磁型磁気回路は前記のようなマグネット1の外径が大きくなる欠点はないが、振動板7の振幅が大きい低音用のスピーカに使用する場合等においては、ボイスコイル8のボビン端部81が壷ヨークTYの底面TY1に当たって異音を発するのを防ぐため、ボイスコイル8のストローク余裕部分を十分に確保したもの、すなわち、壷ヨークTYの深さを深くしたものを使用せねばならず、該深さ分のヨーク材料(鉄材等)の量が増えるため必然的に重量が増大することとなる。一般に、ネオジウムマグネットを使用した場合、通常のフェライト系マグネットを使用した内磁型磁気回路と比較して約65%?70%の軽量化が可能であるが、ネオジウムマグネットを使用したとしても、ヨーク材料の量が多いため、それ以上の軽量化は困難である。
【0005】
周知の如く、同極側が対向するようにマグネットを所定の間隔をおいて対向させると、マグネットの対向面から発生した相反発する磁気の流れがその対向面からマグネットの外周部に向かい、該外周部近傍から更に外側に向かって磁界(以下、「反発磁界」という。)が発生するから、この反発磁界内にボイスコイルを配置してボイスコイルを駆動させる形式の磁気回路構造があり、この形式の磁気回路構造やこの磁気回路を用いたスピーカとして各種のものが提案されている(例えば、特開昭56-34298号、実公昭59-31110号、実開昭59-48197号、特公昭60-3270号、実開昭61-128896号、実開昭62-103395号、特開平1-98400号等の各公報)。これを大別すると、(1)単純にマグネットの同極側を所定間隔を置いて対向させたもの、(2)通常の内磁型の磁気回路を改良発展させて、トッププレートの上にマグネットの同極側を対向させて配置したもの、(3)特開平1-98400号公報に示されるように、反発磁界内に配置されるべきボイスコイルを工夫し、ボイスコイルの外側に非晶質金属のテープ等を巻き付けたもの、等がある。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、前記(1)の場合は磁束分布が極めて狭いため、一般に使用されているスピーカの振動板、特に車載用スピーカなどの振動板を駆動するための充分な磁束が得られず、極めて特殊なスピーカ、例えば、ヘッドホン等振動板の振幅が少なくてもよいものにしか使用できないから、使用範囲が大幅に限定される欠点がある。
【0007】
また、前記(2)の場合においては、(a)ボイスコイルの駆動方向に対しての磁束分布が対称にならず、振動板の振幅方向で駆動力が異なる磁気回路となること、(b)基本的には図14のような壷ヨークTYの構造であるため、前記した内磁型磁気回路と同様に、スピーカ重量の軽量化には限界がある、等の欠点を有している。この磁束分布が対称にならない欠点と漏れた磁気をより効率的に使用するために、壷ヨークTYを上下に重ね、該壷ヨークTYの内側にボイスコイルを配置したもの(前記特公昭60-3270号公報)等もあるが、この方法ではボイスコイルと振動板とを連結するためにボイスコイルの外周部に板を設けて、該板と振動板を繋いだ構造になっているため、板が上下に移動することが可能なように壷ヨークTYの側面等にスリットを設けねばならず、構造が極めて複雑となるばかりでなく、基本的には壷ヨークTYを上下に2個配置してあるためコイルのストローク余裕部分を下側の壷ヨークTY側のみならず上側の壷ヨークTYにも設けねばならない。従って、スピーカ重量の軽量化は通常の壷ヨークTYを用いたものよりも更に困難である。
【0008】
更に、前記(3)の構成例の場合、ボイスコイルの外側に非晶質金属のテープ等を巻き付けるため、ボイスコイルの重量が重くなり、通常のムービングコイル型スピーカよりも効率が悪化するのは当然である。
【0009】
そこで、本考案の目的は、前記した従来の磁気回路の欠点を解消し、磁気回路部及びスピーカ全体の軽量化に適すると共に性能的に優れたスピーカ用磁気回路を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本考案のスピーカ用磁気回路は、請求項1記載のものにおいては、厚み方向に着磁された外周円形のマグネットを同極側が対向するように所定の間隔をもたせて配置すると共に両マグネットで発生した磁界内にボイスコイルを配置し、当該マグネットを保持するホルダーを非磁性材で構成することにより開磁気回路を形成し、両マグネットの対向面に磁性材からなる外周円形のセンタープレートが挟持せしめられるように配置され、該センタープレートの直径寸法がマグネットの直径寸法よりも大きくなるように設定されると共にその寸法差が4mm以下になるように設定したものである。
【0011】
また、請求項2記載のものにおいては、厚み方向に着磁された外周円形のマグネットを同極側が対向するように所定の間隔をもたせて配置すると共に両マグネットで発生した磁界内にボイスコイルを配置してなるスピーカにおいて、両マグネットの対向面に磁性材からなる外周円形のセンタープレートが挟持せしめられるように配置され、前記マグネット及びセンタープレートがリング状をなしていて、略有底筒状をなす非磁性材からなるホルダーで保持され、該ホルダーの中心部には前記マグネット及びセンタープレートの中心穴を挿通するためのセンターガイド部を形成すると共にに該センターガイド部の下部にはマグネット及びセンタープレートを支持するための載置部を形成したものである。
【0012】
【作用】
外周円形のマグネットの同極側を間隔をおいて単に対向させた従来のものでは対向面間に良好な非磁性材である空気が存在することから、良好な磁束密度を得ることができないが、マグネットの同極側の対向面間に外周円形の磁性材からなるセンタープレートが配置されているから、磁束を効率的にマグネット外周部方向に導くことができ、また、センタープレートの直径寸法をマグネットの直径寸法よりも大きくし、しかもその寸法差を4mm以下に設定することにより、センタープレート外周部より外側方向に磁束をより効果的に出すことが可能となる。また、ホルダーはその中心部にセンターガイド部が設けられると共にその下部に載置段部が設けられ、外周壁上面には段部が設けられているから、マグネットやセンタープレートの内周部を前記センターガイド部に挿入或いは圧入嵌合し、アウタープレート外周部を前記段部に挿入或いは圧入嵌合することにより、各部品を簡単に所定の位置に設置することができ、従来より磁気回路の組立て時に使用されれるギャップ治具等が不要となり、しかも所定間隔の磁気ギャップを正確に形成することができる。
【0013】
【実施例】
本考案に係るスピーカ用磁気回路の実施例を図1?図12に基づいて説明するが、前記図13及び図14で説明した従来のものと同一の構成部分については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。本考案のスピーカ用磁気回路は、図1及び図2に示すように、厚み方向に着磁されたマグネット1A,1Bを同極側が対向するように所定の間隔をもたせて配置すると共に両マグネットで発生した磁界内にボイスコイルを配置してなるスピーカにおいて、両マグネットの対向面に磁性材からなる外周円形のセンタープレート2を挟持せしめるように配置し、該センタープレートの外側に磁性材からなるリング状のアウタープレート3をホルダー4で支持せしめて、前記センタープレートの外周部22とアウタープレートの内周部31との間に所定間隔の磁気ギャップが構成されるように配置したものである。実施例で使用するマグネット1A及び1Bはネオジウム系のマグネットであり、形状は外径φ29mm、内径φ12mm、厚さ6mmのリング状のものを2個使用し、該マグネット1A、1Bをそれぞれ厚さ方向に着磁してある。センタープレート2は鉄製であり、外径φ29.95mm、内径φ11.95mm、厚さ4mmのリング状をなし、外径及び内径の稜線部にC0.4の面取り加工を施してある。前記マグネット1A、1B、センタープレート2及びアウタープレート3を支持するためのホルダー4はアルミ製であり、略有底筒状をなしている。このホルダー4の底部43の中央部に上方に突出する円筒状のセンターガイド部41を設け、このセンターガイド部41の下端部にマグネット1A、1B及びセンタープレート2の高さ方向の位置出しをさせるための載置段部44を設けてある。
【0014】
載置段部44にアクリル系の接着材を塗布した後、前記マグネット1BをN極を上方に向けてそのマグネット内径部1B1をセンターガイド部41に挿入する。センターガイド部41の外径はφ11.95mmに加工してあり、簡単に挿入することができる。挿入したマグネット1Bの上面に接着剤を塗布した後、センタープレート2の内径部21をセンターガイド部41に圧入し、センタープレート2の下面が前記マグネット1BのN極側に密着する位置まで押し込み、更に該センタープレート2上面に接着剤を塗布して、マグネット1AをN極を下方に向けて該マグネット内径部1A1をセンターガイド部41に挿入してセンタープレート2の上面に密着する位置まで押し込む。これによってマグネット1A,1BはN極どうしが対向し、センタープレート2を挟持した状態でセンタープレート外周部22がマグネット1A,1Bの外周部1A2,1B2よりも約0.5mm外側に飛び出た状態で設置される。
【0015】
この状態でセンタープレート外周部22より更に0.5mm程外側を磁気測定プローブを上下に移動させて測定したところ、図3のような磁気分布を示し、平均約6500ガウスの数値を得た。因みにセンタープレート2の直径がマグネット1A及び1Bの直径よりも2mm小さいもの、即ち、センタープレート2の外周部22がマグネット1A及び1Bの外周部1A2及び1B2よりも1mm内側に引っ込んでいるものを作製して前記と同様に計測したところ、4000?4500ガウスの数値であった。このことから、センタープレート2の直径寸法はマグネット1A,1Bの直径寸法よりも大きくなるように、しかもその寸法差が4mm以下に設定されることが最も好ましいようである。
【0016】
図1及び図2に示すように、ホルダー4は底部43から立上がった外周壁の上端部近傍がセンタープレートの配置位置と略同等の高さになっており、該上端部近傍に、内径φ40mm、深さ2mmのガイド部42を設け、該ガイド部42に、外形φ39.9mm、内径φ32.25mm、厚さ3mmの鉄製のアウタープレート3の外周部32を圧入する。アウタープレート3の圧入完了後はセンタープレート2の内周部22とアウタープレート内周部32の間に間隔が1.15mm、対向幅3mmの磁気ギャップが完成する。
【0017】
該磁気ギャップの中央部近傍を磁気測定プローブを上下に移動させて測定したところ、図4のような磁気分布を示し、平均約8500ガウスの数値を得、更に該磁気ギャップを上方から見て8等分に分割したA点?H点を測定点とし、該測定点に磁気測定プローブを挿入して測定したところ、A点8100(ガウス、以下同じ)、B点8450、C点8750、D点8500、E点8500、F点8150、G点7850、H点7900の数値が得られ、該磁気回路における磁束は平均して約8300ガウスの磁束を得ることができた。また、磁気回路部の重量増加を考慮にいれない場合は、アウタープレート3の厚さ寸法をセンタープレート2の厚さ寸法より多くすることにより、磁気回路の性能を向上させることができ、例えば、アウタープレート3の厚みを6mmに設定すると図5のような磁気分布と平均約9000ガウスの磁束を得ることができた。
【0018】
ホルダー4には前記ガイド部42の外周部に外側に向かう幅約2mm、厚さ2.5mmのフランジ部45を設け、更に該フランジ部45から外側に突出した舌片状の取付部46を4箇所設けてあり、該取付部46の中央部近傍に4mmのタップ加工を施してある。該フランジ部45にゴム系の接着剤を塗布した後フレーム5の底部を取り付けるが、図6に示すように、フレーム5には前記タップに対応した位置にφ4.5の取付穴を設けてあり、4mmのビス6で磁気回路部とフレーム5を固定する。フレーム5は、外径約165mm、深さ約20mmの通称6.5インチと称されているもので、材質は0.7mmtのアルミ板製でプレスフレームであり、重量は約40gである。振動系部材たる振動板7は、外径約φ134mm(エッジを含む)、ネック径φ31mm、深さ約15mmtのパルプ製のコーン状振動板を使用し、ボイスコイル8はボビン材が0.5mmtの(PPTA)フィルム製で、コイル巻き幅8mm、直流抵抗3.43Ωとした。ダンパー9は綿布にフェノールを含浸させてコルゲーション等を熱成型した一般的なものである。これらの振動系部材を前記磁気回路部とフレーム5を組立てたものに組み込み、スピーカとして完成させて測定したところ、図7で実線で示すような特性を得た。
【0019】
なお、前記実施例で作製したスピーカと比較するために、前記スピーカと同一の振動系を使用し、フレームは形状が同じで材質のみ従来一般的に使用されている0.7mmtの鉄板製プレスフレーム(約120g)を使用し、磁気回路も従来一般的に使用しているもの(トッププレートは、外径φ75mm、内径φ32.25mm、厚さ4.5mm、マグネットは外径φ85mm、内径φ45mm、厚さ13mmのフェライト系マグネット、ヨークはポール径φ29.95mm、ボトム外径φ75mm、高さ約20mm)を用いたスピーカを作製して測定したところ、図7の点線で示すような特性が得られた。この特性比較からも明らかなように、本考案のスピーカにおいては、低域の特性が若干異なるが実用上差支えのない特性を得ることができ、インピーダンスカーブの上昇が従来の磁気回路よりも広い範囲で抑えられ、高域の音圧レベルが上昇する特性が確認される。本考案の前記実施例における磁気回路部の重量は約95gであって、スピーカとしての全体重量は約146gであった。従って、磁気回路部だけの重量比較では、従来の磁気回路部(603g)よりも約84%の軽量化が可能となり、従来のスピーカの全体重量(780g)よりも約81%の軽量化が可能となった。
【0020】
本実施例の場合、各パーツの寸法が前記の条件で図7の実線で示す特性を得たが、スピーカの目的に合わせて、各パーツの寸法を自由に設計し得ることは勿論であり、特にセンタープレート2とアウタープレート3等の断面形状を検討することにより性能を向上指せることができる。また、本実施例の場合、ホルダー4でアウタープレート3を所定の位置に保持させたが、図11のようにマグネット1A,1Bとセンタープレート2をホルダー4で保持させ、アウタープレート3だけをフレーム5側に設置しても何ら支障はない。
【0021】
更に、本実施例の場合、ホルダー4は磁気回路の上下における磁束分布の均一化や放熱効果等を考慮してアルミ材を切削加工して作製したが、設計条件を満足すれば、例えば、PPS等の耐熱樹脂で成形してもよいのは勿論、磁束分布の均一性を考慮する必要がない場合は、ホルダー4を磁性材、例えば、0.5mmt?0.7mm tの鉄板等で作製しても略同様の性能を得ることができ、また、アウタープレート3の厚みと同等以上の磁性材を使用した場合でも、磁気回路を構成する強度を確保する部分のみを残して図8のように切除しても同様の効果が得られるし、本実施例の場合は切削加工でホルダー4を作製したからホルダー4の平均肉厚が1.5mm tであるが、プレス加工等にて本実施例以上の薄肉加工も可能であり、更に、図9のように該ホルダー4に抜き穴47やフィン48を設け、抜き穴を開けた箇所を織布或いは不織布等の覆い材49で覆って軽量化、放熱効果等を図ることができる。また、本実施例の場合はホルダー4をビス6で固定しているが、従来一般的に使用されているカシメ或いは溶接などの手法にてフレーム5に固定してもよく、フレーム5とホルダー4を図12のように一体成型してもよい。
【0022】
【考案の効果】
本考案のスピーカ用磁気回路によれば、少なくとも実施例のような磁気回路を使用すれば、従来のスピーカの磁気ギャップにおける磁束と変わらない磁束を得ることができ、しかも、マグネット等、磁気回路部材を保持するためのホルダーをアルミ等の非磁性材としたから、磁気回路部における鉄分の量を従来のものより大幅に減少させることができ、従来の磁気回路部よりも84%の重量を減らすことが可能となった。このような磁気回路部における鉄分量の減少は、従来のスピーカよりインピーダンスの増加を広い範囲で抑えることが可能となり、高域における性能を向上させることができる。特にドアマウント用に好ましい1500?7000Hzの高域特性と音質が確保することができ、通常のチャンバーの代わりにフェザーコーン等をボイスコイルボビンの上端部に取り付けることにより、高域を更に延ばして従来の高音用のツゥイータの音域をカバーすることが可能となるから、従来のように高音用のツゥイータを使用する必要がなく、ドアマウントスピーカ等においては大幅な軽量化が可能となる。しかも、実施例の磁気回路は容積においても結果的に小型化されることとなり、磁気回路を含むスピーカの全高が高くなることにより薄型化が達成され、特に車載用スピーカ等に求められている形状に極めて適した形態を得ることができる。
【0023】
ホルダーはその中心部にセンターガイド部が設けられると共にその下部に載置段部が設けられ、外周壁上面には段部が設けられているから、マグネットやセンタープレートの内周部を前記センターガイド部に挿入或いは圧入嵌合し、アウタープレート外周部を前記段部に挿入或いは圧入嵌合することにより、各部品を簡単に所定の位置に設置することができ、従来より磁気回路の組立て時に使用されれるギャップ治具等が不要となり、しかも所定間隔の磁気ギャップを正確に形成することができる。
【0024】
磁気回路部が従来より大幅に軽量になったため、従来の0.7mmtの鉄板性のフレームから0.7mmtアルミ製のフレームに変更しても磁気回路部重量を支持する強度は充分確保できると共に軽量化にも効果があり、スピーカの全体重量として81%以上の軽量化が可能となり、アルミ製のホルダーにアルミ製のフレームを取り付けていることから、放熱効果も従来の鉄板製フレームよりもよくなり、磁気回路部の冷却効果も上昇してパワー対策に効果的である。更に、本考案のような磁気回路の場合、反発磁界を利用した磁気回路であるから、図3?図5からも明らかなようにS極側にも漏洩磁界がある。従って、ボイスコイルが均等に振幅するにはセンタープレートを中心とした上下方向、即ち振動板振幅方向の磁気分布が対称で均一化することが好ましく、本考案の実施例のようにフレームをアルミ製又は樹脂製等の非磁性材とすることは極めて効果的である。
【0025】
また、例えば、ホルダーは本考案の実施例以上に薄肉加工することが可能であり、更に、該ホルダーに抜き穴やフィンを設け、抜き穴を覆い材で覆うことにより、磁気回路部への異物、特に磁気ギャップに入り込んで異常音を発生させる微鉄粉等の侵入を防止でき、しかも軽量化と磁気回路冷却等の効果がある。そして抜き穴加工による磁気回路部の軽量化がフレームの薄肉化等による軽量化を促進でき、更にフレームとホルダーを一体成型することにより軽量化を図ることができる。更に、例えば、センタープレートやアウタープレート等の厚さを変えることにより磁束分布を変えることができ、該部品等の形状を検討することにより、スピーカの目的に合わせた磁気回路を自由に検討し、設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案のスピーカ用磁気回路の一部断面斜視図である。
【図2】本考案のスピーカ用磁気回路の分解斜視図である。
【図3】アウタープレートを配置しない状態の断面図と磁束分布図である。
【図4】センタープレートの厚さ寸法よりもアウタープレートの厚さ寸法を小さくした場合の断面図と磁束分布図である。
【図5】センタープレートの厚さ寸法よりもアウタープレートの厚さ寸法を大きくした場合の断面図と磁束分布図である。
【図6】本考案の磁気回路を装着したスピーカの断面図である。
【図7】本考案の磁気回路を装着したスピーカと従来の磁気回路を装着したスピーカの比較特性図である。
【図8】ホルダーの他の実施例を示す断面図である。
【図9】ホルダーの更に他の例を示す断面図である。
【図10】ホルダーの抜き穴を覆い材で覆った状態の断面図である。
【図11】本考案の磁気回路を他の実施例で装着したスピーカの断面図である。
【図12】ホルダーとフレームを一体成形した場合のスピーカの断面図である。
【図13】従来の外磁型磁気回路を装着したスピーカの断面図である。
【図14】従来の内磁型磁気回路を装着したスピーカの断面図である。
【符号の説明】
1Aは上側のマグネット
1Bは下側のマグネット
2はセンタープレート
21はセンタープレート内周部
22はセンタープレート外周部
3はアウタープレート
31はアウタープレート内周部
32はアウタープレート外周部
4はホルダー
41はセンターガイド
42は段部
43はホルダー底部
44は載置段部
48はフィン
49は覆い材
5はフレーム
7は振動板
8はボイスコイル
9はダンパー
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1の「・・・ボイスコイルを配置してなるスピーカにおいて、・・・」を、「・・・ボイスコイルを配置し、当該マグネットを保持するホルダーを非磁性材で構成することにより開磁気回路を形成し、・・・」と訂正する。
▲2▼訂正事項b
実用新案明細書第3ページの段落番号【0010】の「・・・ボイスコイルを配置してなるスピーカにおいて、・・・」を、「・・・ボイスコイルを配置し、当該マグネットを保持するホルダーを非磁性材で構成することにより開磁気回路を形成し、・・・」と訂正する。
異議決定日 2003-05-08 
出願番号 実願平10-878 
審決分類 U 1 652・ 534- YA (H04R)
U 1 652・ 121- YA (H04R)
最終処分 維持    
前審関与審査官 松澤 福三郎大野 弘  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 橋本恵一
小林秀美
登録日 2002-05-10 
登録番号 実用新案登録第2607796号(U2607796) 
権利者 株式会社ケンウッド
東京都八王子市石川町2967番地3
考案の名称 スピーカ用磁気回路  
代理人 青木 修  
代理人 青木 修  
代理人 渡辺 秀治  
代理人 長谷川 洋  
代理人 長谷川 洋  
代理人 アイアット国際特許業務法人  
代理人 渡辺 秀治  
代理人 アイアット国際特許業務法人  

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