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審決分類 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない B44C
管理番号 1093261
審判番号 訂正2003-39080  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-04-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-04-24 
確定日 2003-11-27 
事件の表示 実用新案登録第2534772号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 手続の経緯
1.実用新案登録第2534772号の請求項1に係る考案の実用新案登録は、平成4年5月14日に実用新案登録出願(平成4年実用新案登録願38553号)、平成9年2月13日に実用新案権の設定の登録がなされたものである。
2.これに対し、平成10年4月7日に、極東産機株式会社より本件実用新案登録を無効とすることについて、審判請求がなされた(平成10年審判第35147号、以下「先の無効審判請求」という。)。
3.その後、平成10年5月21日に審判請求書の副本が実用新案権者であるヤヨイ化学工業株式会社(以下、「本件審判請求人」という。)に送達され、答弁書を提出する期間内である平成10年7月21日に訂正請求がなされた。
4.平成11年6月23日に、「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」旨の審決がなされ、平成11年8月12日に、極東産機株式会社により東京高等裁判所に訴えが提起された(平成11年行ケ第263号)。
5.平成15年3月27日に、「特許庁が平成10年審判第35147号事件について平成11年6月23日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決が言い渡され、平成15年4月10日に最高裁判所に上告された。
6.その後、本件審判請求人により平成15年4月24日に「実用新案登録第2534772号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正する」旨の本件訂正審判請求がなされた。
7.当審が、平成15年7月16日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、本件審判請求人は、平成15年8月6日に意見書及び手続補正書を提出した。

第2 請求の要旨、訂正の内容
平成15年4月24日付けで本件訂正審判請求で請求された訂正の内容は、訂正審判請求書及び全文訂正明細書の記載からみて、下記訂正事項(1)、(2)のとおりである。
なお、上記平成10年7月21日付けの訂正請求に係る訂正は、平成11年6月23日付けの審決において認容されたが、その後該審決は平成15年3月27日言渡の判決で取り消され、更にこの判決を不服として最高裁判所に上告されている。
したがって、該審決は確定していないので、本件の訂正の対象となる明細書は、実用新案権の設定の登録時の願書に添付した明細書(以下、「実用新案登録明細書」という。)である。
1.訂正事項(1)
実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1について、
「モ-タにより連動して回転駆動される複数のロ-ルによりシ-ト状壁装材を所定の経路に沿って移動させつつ、糊桶内の糊を糊付けロ-ルにより前記壁装材の裏面に連続的に転写塗布する自動壁紙糊付機において、
入側ピンチロ-ルの下側ロ-ルを、フレ-ム側板に設けられた長穴又はU字穴によって軸受したことを特徴とする自動壁紙糊付機。」とあるのを、
「モ-タにより連動して回転駆動される複数のロ-ルによりシ-ト状壁装材を所定の経路に沿って移動させつつ、本体部に内蔵された糊桶内の糊を糊付ロ-ルにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する自動壁紙糊付機において、
前記本体部は、内部に左右の軸受板としての一対のフレーム側板を有し、 前記フレーム側板は、前記本体部に内蔵された糊桶の両側に位置するものであり、
前記フレーム側板に軸受された下側ピンチロ-ルとドクタ-ロ-ルは互いに回転方向が逆になるものであり、前記下側ピンチロ-ルとドクタ-ロ-ルは互いの間隔が手指の太さより狭い位置に設置してあり、しかも両ロ-ル間は内側に向かう回転方向となっており、
前記糊付けロ-ルが、前記フレ-ム側板に軸受され、 前記下側ピンチロ-ルを、前記フレ-ム側板に設けられた長穴又はU字穴によって軸受したこと
を特徴とする自動壁紙糊付機。」
と訂正する(以下、「訂正事項(1)」という。)。
なお、下線は、訂正個所を明確にするために当審で付したものである。

2.訂正事項(2)
実用新案登録明細書の考案の詳細な説明の記載を、訂正明細書中の考案の詳細な説明のとおり訂正する。(記載省略)

第3 訂正拒絶の理由の概要
平成15年7月16日付けで通知した訂正事項(1)に係る訂正拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「訂正審判請求書に添付された全文訂正明細書の請求項1の考案は、その出願前に公然実施をされたβ-MAX2に係る考案及び実願昭57-78272号(実開昭58-178367号)のマイクロフィルムにみられるような周知考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、平成5年法改正前の実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件訂正は、平成5年法改正前の実用新案法第39条第3項に規定された要件に適合していない。」

第4 独立実用新案登録要件についての当審の判断
以下、訂正事項(1)に係る独立実用新案登録要件について検討する。
1.本件訂正考案
平成15年8月6日付けで補正された全文訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)の請求項1の考案は、本件訂正明細書及び願書に添付された図面(以下、「本件図面」という。)の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1(以下、「訂正後の実用新案登録請求の範囲」という。)に記載された次のとおりのものであると認める。
「モ-タにより連動して回転駆動される複数のロ-ルによりシ-ト状壁装材を所定の経路に沿って移動させつつ、本体部に内蔵された糊桶内の糊を糊付ロ-ルにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する自動壁紙糊付機において、
前記本体部は、内部に左右の軸受板としての一対のフレーム側板を有し、 前記フレーム側板は、前記本体部に内蔵された糊桶の両側に位置するものであり、
前記フレーム側板に軸受された下側ピンチロ-ルとドクタ-ロ-ルは互いに回転方向が逆になるものであり、前記下側ピンチロ-ルとドクタ-ロ-ルは互いの間隔が手指の太さより狭い位置に設置してあり、しかも両ロ-ル間は内側に向かう回転方向となっており、
前記糊付けロ-ルが、前記フレ-ム側板に軸受され、
前記下側ピンチロ-ルを、前記フレ-ム側板に設けられた長穴又はU字穴によって軸受したこと
を特徴とする自動壁紙糊付機。」(以下、「本件訂正考案」という。)

2.対比する公然実施をされた考案
極東産機株式会社昭和63年9月1日発行「総合カタログ、インテリア業務用、NO.3」(先の無効審判請求における甲第3号証、以下「資料1」という。)、極東産機株式会社作成「フルチョイス糊付機 β-MAX2の取扱説明書(昭和58年版)」(先の無効審判請求における甲第4号証、以下「資料2」という。)、室内装飾新聞社昭和63年8月1日発行「室内装飾新聞」(先の無効審判請求における甲第5号証、以下「資料3」という。)、及び先の無効審判請求事件において、平成11年2月9日に実施された証人調べの証人調書(以下、「調書」という。)によると、資料1、資料2に示されたβ-MAX2という糊付機は、本件の実用新案登録出願前において日本国内において公然実施をされた考案であると認められる(特に調書第4頁?第5頁における004?010の質疑応答参照)。
そして、資料1、資料2及び調書には、β-MAX2という糊付機に関して、次のとおりの事項が記載されているものと認められる。
(1)「・・・・・ベーターマックスII型があれば、通常は自動(家庭用AC100V)で。現場で電気が使えない、停電した-自動車用バッテリー(DC12V)から、もしくは手動で。・・・・・」(資料1第23頁)
(2)「自動でも手動でも出来るということで、送り出しローラーというものがありまして、そのローラーが自動糊付け機として使用する時は、モーターで駆動されてクロスを上の検尺ローラーとの間でピンチローラーにしてクロスを送り出します。・・・」(調書第5頁における014の質疑応答)
(3)資料2の第8頁第6図及び第9頁第7図から、送リ出シローラー、糊付ローラーによりクロス原反を、所定の経路に沿って移動させつつ、本体内部の糊が供給される糊箱内の糊を糊付ローラーにより前記クロス原反の裏面に連続的に塗布すること、及び送リ出シローラーとドクタ-ロ-ラーは互いに回転方向が逆になるものであり、内側に向かう回転方向となっていることが看取できる。
(4)資料2の第8頁第6図及び第14頁第14図から、送リ出シローラーが糊箱の側壁上部に設けた部材に設けられた上部開放穴によって軸受され、軸受け糊付ローラー、ドクターローラーが糊箱の側壁に軸受されていることが看取できる。
(5)送リ出シローラーとドクタ-ロ-ラーは互いの間隔が概略15mm?20mmであること、すなわち互いの間隔が手指の太さより狭い位置に設置してあること(調書第20頁における113の質疑応答)。
以上を総合すると、「β-MAX2に係る糊付機の考案」(以下、「β-MAX2」という。)は、次のとおりのものであると認められる。
「モ-タにより連動して回転駆動される複数のローラーによりクロス原反を、所定の経路に沿って移動させつつ、本体内部の糊が供給される糊箱内の糊を糊付ローラーにより前記クロス原反の裏面に連続的に塗布する手動型と自動型の切替型のクロス原反糊付機において、
前記糊箱の側壁上部に設けた部材に軸受された送リ出シローラーと糊箱の側壁に軸受されたドクタ-ロ-ラーは互いに回転方向が逆になるものであり、前記送リ出シローラーとドクタ-ロ-ラーは互いの間隔が手指の太さより狭い位置に設置してあり、しかも両ローラー間は内側に向かう回転方向となっており、
前記糊付けロ-ラーが、前記糊箱の側壁に軸受され、
前記送リ出シローラーを、前記糊箱の側壁上部に設けた部材に設けられた上部開放穴によって軸受けした手動型と自動型の切替型のクロス原反糊付機。」

3.実願昭57-78272号(実開昭58-178367号)のマイクロフィルムに記載された考案
実願昭57-78272号(実開昭58-178367号)のマイクロフィルムには、次のような記載がなされている。
(1)「上記の糊付機は、フレームに糊付ローラを回動自在に支持し、このローラを駆動機によって回転させると共に、ローラの直下に糊箱を抜差自在に配置し、糊箱内の糊を糊上げローラで糊付ローラの表面に付着させるようにし、フレームに設けた送りローラでクロスを移動させ、押えローラでこのクロスを糊付ローラに接触させて糊の転写を行い、この後回転する均しローラで糊の塗着面を均一にするようにしたものである。」(第1頁19行?第2頁7行)
(2)「両側本体フレーム1間に抜差自在となるように配置される糊箱4は両端部に設けられたフランジ5がガイド上に載って支持され、この糊箱4の内部に糊上げローラ6が回動自在に架設され、糊上げローラ6の糊箱外部に突出する軸に歯車7が固定されている。
両本体フレーム1間の上部でクロスAが進入する位置に、送りローラ8とその上部にカウンターローラ9とが架設され、一方の本体フレーム1には、第1図のように、モータ(図示省略)と連動した駆動ギヤ10と、・・・・・・
前記両本体フレーム1の段部3に納まるように形成された両側で一対となるローラフレーム16は、ステー17と固定軸18によって対向状に結(合)され、両ローラフレーム16間に糊付ローラ20と、ドクターローラ21及び均しローラ22が各々平行する状態で架設されている。」(第3頁13行?第4頁14行)
これらの記載及び図面を総合すると実願昭57-78272号(実開昭58-178367号)のマイクロフィルムには、次の考案が記載されているものと認められる。
「 モータにより連動して回転駆動される複数のロ-ラによりクロスを所定の経路に沿って移動させつつ、両側本体フレーム1間に抜差自在となるように配置される糊箱4の糊を糊付ローラ20により前記クロスの裏面に連続的に塗布する糊付機において、内部に前記両側本体フレーム1と、該両側本体フレーム1の段部3に納まるように形成された両側で一対となるローラフレーム16とを有し、前記両側本体フレーム1、ローラフレーム16は、前記糊箱4の両側に位置するものであり、ドクターローラ21及び糊付ローラ20が両ローラフレーム16間に架設され、送りローラ8が前記両側本体フレーム1間に架設されている糊付機。」

4.本件訂正考案とβ-MAX2との対比
本件訂正考案と上記β-MAX2とを対比する。
(1)β-MAX2の「ローラー」は、その機能に照らして、本件訂正考案の「ロ-ル」に相当し、以下同様に、β-MAX2の「送リ出シローラー」は本件訂正考案の「下側ピンチロ-ル」に、β-MAX2の「糊箱」は本件訂正考案の「糊桶」にそれぞれ相当するものと認められる。
(2)資料1及び資料2を総合すれば、β-MAX2がインテリア業務用のクロス原反の糊付機であり、本件訂正考案の「シ-ト状壁装材」の実施例として、本件訂正明細書にも「壁装材(クロス)」、「クロスロール27」等と記載されていることから、β-MAX2における「クロス原反」も、「シ-ト状壁装材」に含まれ、β-MAX2のクロス原反糊付機も壁紙糊付機といえる。
(3)β-MAX2は、手動型と自動型を切り替えることができる糊付機であるが、この糊付機は、自動壁紙糊付機としての構成を含むことは明らかであるから、β-MAX2の「糊付機」は、本件訂正考案の「自動壁紙糊付機」に相当するものといえる。
(4)β-MAX2において、「糊箱」は本体内部にあるから、本体部に内蔵されたものといえる。
(5)β-MAX2においては、送リ出シローラー(下側ピンチロ-ル)は、糊箱の側壁上部に設けた部材に設けられた上部開放穴に軸受けされているが、資料2の第8頁及び第14頁には、この上部開放穴の下端は、送リ出シローラーを軸受けするため、少なくとも半円形状となっており、送リ出シローラーを取り外すことが記載されているから、この上部開放穴は、上方に該半円形状の直径に相当する幅の開口を有しているものと解することができる。
そしてこのような形状の穴は、一般的にU字穴と称することができるから、β-MAX2の送リ出シローラーを軸受けする上部開放穴も、U字穴ということができる。

以上(1)?(5)の検討結果、及びβ-MAX2における「糊箱の側壁上部に設けた部材」及び「糊箱の側壁」も、左右の軸受板である限りにおいて、本件訂正考案の「内部に左右の軸受板としての一対のフレーム側板」と一致するから、これらを総合すると、本件訂正考案とβ-MAX2とは、
「モ-タにより連動して回転駆動される複数のロ-ルによりシ-ト状壁装材を所定の経路に沿って移動させつつ、本体部に内蔵された糊桶内の糊を糊付ロ-ルにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する自動壁紙糊付機において、
前記本体部は、内部に左右の軸受板を有し、
前記軸受板に軸受された下側ピンチロ-ルとドクタ-ロ-ルは互いに回転方向が逆になるものであり、前記下側ピンチロ-ルとドクタ-ロ-ルは互いの間隔が手指の太さより狭い位置に設置してあり、しかも両ロ-ル間は内側に向かう回転方向となっており、
前記糊付けロ-ルが、軸受板に軸受され、
前記下側ピンチロ-ルを、前記軸受板に設けられたU字穴によって軸受した自動壁紙糊付機。」
で一致し、次の点で相違する。

〈相違点〉本体部の内部において、下側ピンチロ-ル、ドクタ-ロ-ル、糊付けロ-ルを軸受けする左右の軸受板に関して、本件訂正考案においては、「左右の軸受板としての一対のフレーム側板」であり、その「フレーム側板は、前記本体部に内蔵された糊桶の両側に位置するもの」であるのに対し、β-MAX2においては、送リ出シローラー(下側ピンチロ-ル)の軸受板は、「糊箱の側壁上部に設けた部材」であり、ドクターローラー(ドクタ-ロ-ル)、糊付けローラー(糊付けロ-ル)の軸受板は、「糊箱の側壁」である点。

5.〈相違点〉についての判断
上記相違点に係る本件訂正考案の構成の技術的意義について検討する。
本件訂正考案において、糊桶の両側に軸受板としてのフレーム側板が配置されているとしても、糊桶とフレーム側板が別のものであるとか、更には、糊桶が着脱できることは、訂正後の実用新案登録請求の範囲、本件訂正明細書及び本件図面になんら記載されていない(本件図面の第1図の記載の限りでは、糊桶23の前面部分以外の両側壁、後面部分、底面部分が本体部との関係でどのような構造になっているか判別できず、また同じく第3図には、フレーム側板37は図示されているものの、糊桶23はなんら図示されていない。)。
請求人は、平成15年8月6日付けの意見書に添付した参考資料1(訂正審判請求書に添付した甲第9号証)の図面に記載されたすべての自動壁紙糊付機が、いわゆる自動専用型の壁紙糊付機であって、本件図面1に示される壁紙糊付機がこれらと同様に表されているから、本件訂正考案も同様の自動専用型の壁紙糊付機であり、糊桶が本体に内蔵されていて少なくとも一体型でないことを直接的かつ一義的に導き出せると主張しているが、この主張は訂正後の実用新案登録請求の範囲の記載に基づかないものであって、本件訂正考案の「自動壁紙糊付機」を請求人が主張するような自動専用型の壁紙糊付機であると限定して解釈する根拠にはならない。
したがって、本件訂正考案は、糊桶とフレーム側板とが、例えば、図示されていない下方部分で一体になっているものを排除するものではない。
更に、訂正後の実用新案登録請求の範囲、本件訂正明細書の全記載及び本件図面の記載をみても、例えば、糊付けロールが、糊桶の両側に位置する一対のフレーム側板に、固定式あるいは固定状態で軸受されているというような、軸受の特定の構造と関連付けられる記載は、なんらなされておらず、糊桶の両側に軸受板としてのフレーム側板が配置されていることが、糊付の精度を向上するため、フレーム側板に各ロールを固定型に軸受するための構成であるとすることはできない。
なお、β-MAX2が、手指が巻き込まれ得る状態で回転し得ないものであることを認めるに足りる根拠は見あたらないので、手指が巻き込まれる危険性の問題の存在が、各ロールを固定型に軸受するものに特有のものであるとも解されない。
以上のとおり、訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1、更には本件訂正明細書の全記載及び本件図面の記載をみても、上記相違点に係る本件訂正考案の構成を採用することにより、β-MAX2と比較して、例えば、糊桶の両側に位置する一対のフレーム側板が糊桶とは別のものであるとか、糊付けロールが、糊桶の両側に位置する一対のフレーム側板に、固定式あるいは固定状態で軸受されているというような、糊桶、及び軸受の特定の構造と関連付けられる記載は、なんらなされていないばかりか、上記相違点に係る本件訂正考案の構成により、本件訂正考案には、糊付機の機能、あるいは課題として、特段のものが存在するものと解することもできない。
そして、軸受は、支持すべき軸の側方にあれば足りるもので、軸受をどこに配置するかは、設計上種々の部位が選択されており、しかも糊付機において、ドクターローラ、糊付ローラ、送りローラ等のロールを糊箱(糊桶)の両側に位置する一対の本体フレーム、ローラフレーム等のフレームに架設(軸受)することは、実願昭57-78272号(実開昭58-178367号)のマイクロフィルムにみられるように、従来周知の技術(以下、「周知考案」という。)であるから、本件訂正考案の上記相違点に係る構成は、当業者が適宜採用し得る程度の設計的事項に過ぎないものというべきである。 更に、上記相違点に係る本件訂正考案の構成に、糊付機としてなんらかの技術的意義があるとしても、β-MAX2に単に周知考案を採用し、上記相違点に係る構成とすることを妨げる特段の事情も見あたらず、しかも本件訂正考案の作用効果は、β-MAX2及び周知考案から当業者が容易に予測できる範囲のものである。
してみれば、本件訂正考案は、β-MAX2及び周知考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、平成5年法改正前の実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、平成5年法改正前の実用新案法第39条第3項に規定された要件に適合していない。
それゆえ、本件訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-09-29 
結審通知日 2003-10-02 
審決日 2003-10-20 
出願番号 実願平4-38553 
審決分類 U 1 41・ 841- Z (B44C)
最終処分 不成立    
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 清田 栄章
舟木 進
城戸 博兒
鈴木 充
登録日 1997-02-13 
登録番号 実用新案登録第2534772号(U2534772) 
考案の名称 自動壁紙糊付機  
代理人 佐藤 正年  
代理人 佐藤 年哉  

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