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審決分類 審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更 訂正を認める。無効としない A47G
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正を認める。無効としない A47G
審判 全部無効 4項(134条6項)独立特許用件 訂正を認める。無効としない A47G
管理番号 1099776
審判番号 審判1998-35663  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-08-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-21 
確定日 2001-11-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2500339号実用新案「三面鏡」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2500339号(以下、「本件実用新案」という。)に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成4年5月20日 実用新案登録出願
平成6年8月3日 拒絶理由の通知
平成6年10月17日 意見書及び手続補正書の提出
平成7年5月23日 拒絶理由の通知
平成7年7月7日 意見書及び手続補正書の提出
平成8年3月28日 実用新案権の設定登録
平成8年6月5日 実用新案登録公報発行

平成8年8月7日 実用新案登録異議申立書の提出
平成9年2月10日 取消理由の通知
平成9年4月23日 意見書及び訂正請求書の提出
平成9年7月30日 審尋書の通知
平成9年10月15日 回答書の提出
平成9年11月11日 訂正拒絶理由の通知
平成10年1月19日 意見書、手続補正書(訂正請求書)の提出
平成10年2月9日 訂正拒絶理由の通知
平成10年4月17日 意見書の提出
平成10年6月29日 実用新案登録異議の申立てについての決定

平成10年12月21日 審判請求書の提出
平成11年3月24日 答弁書の提出
平成11年8月30日 手続補正書(審判請求書)の提出
平成11年12月20日 答弁書(第2回)の提出
平成12年1月21日 手続補正書(審判請求書)
平成12年4月25日 無効理由の通知
平成12年7月10日 意見書の提出
平成12年9月11日 無効理由の通知
平成12年11月15日 意見書及び訂正請求書の提出
平成13年2月26日 弁駁書の提出

2.平成12年11月15日付けの訂正請求の適否についての判断
まず、平成10年1月19日付け手続補正書により補正された平成9年4月23日付け訂正請求書による願書に添付された明細書及び図面の訂正(以下、「異議申立て時の訂正」という。)により訂正された明細書及び図面を平成12年11月15日付け訂正請求書に添付された明細書及び図面に訂正することの適否について判断する。
1)訂正の内容
a.異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2を削除する。
b.異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の段落番号【0002】の「【従来の技術】従来、三面鏡は、図4に示すように、正面鏡30を取り付けた平板状の本枠31の外周縁へ、袖鏡32を取り付けた袖枠33の外縁を蝶番34により開閉自在に取り付けてある。」を、「【従来の技術】従来、三面鏡は、図3に示すように、正面鏡30を取り付けた平板状の本枠31の外周緑へ、袖鏡32を取り付けた袖枠33の外縁を蝶番34により開閉自在に取り付けてある。」と訂正する。
c.異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の段落番号【0005】の「そのため、図4において矢印pに示すように、袖枠33がその重量により湾曲しやすいので、この袖枠33を安定的に支承するためには、本枠31の厚さを十分に取って剛性を持たせ、この現象に対応しなければならない。」を、「そのため、図3において矢印pに示すように、袖枠33がその重量により湾曲しやすいので、この袖枠33を安定的に支承するためには、本枠31の厚さを十分に取って剛性を持たせ、この現象に対応しなければならない。」と訂正する。
d.異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の段落番号【0010】の「また、本考案の三面鏡は、正面鏡を取り付けた本枠へ、袖鏡を取り付けた左右一対の袖枠を蝶着して観音開き状に開閉自在とした三面鏡において、前記本枠は、前記正面鏡の背面略全体が当接する平板状の主体と、該主体の全周縁からこの主体前面部の前側へ一体的に突出させた環状に形成された額縁とからなり、前記環状に形成された額縁は、下側額縁と、前記下側額縁の両側からそれぞれ立設した左側額縁及び右側額縁と、前記左側額縁の上部と前記右側額縁の上部とを接続する上側額縁とからなるものであり、前記左右一対の袖枠は、左の袖枠と右の袖枠とからなり、前記左の袖枠は、外表面に把手を設けることなく、左側蝶番により該左側蝶番の一方翼を前記左側額縁の内周縁へ固着し、前記左側蝶番の他方翼を前記左の袖枠の外端縁へ固着して開閉自在として、前記右の袖枠は、外表面に把手を設けることなく、右側蝶番により前記右側蝶番の一方翼を前記額縁の内周縁へ固着し、前記右側蝶番の他方翼を前記右の袖枠の外端縁へ固着して開閉自在として、前記左右一対の袖枠の閉塞時に、前記左右一対の袖枠が前記本枠内に納まると共に、前記下側額縁の内周縁の中央部分と前記下側額縁の内周縁の中央部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の中央部分と前記下側額縁の内周縁の中央部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大として構成する空間スペースを設け、前記本枠の背面に支柱を設け、この支柱の下端を前記台本体の止孔に貫入させて、前記下側額縁の外周縁を前記台本体に接触させ、前記本枠を前記台本体に固定させたものである。」を、削除する。
e.異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の段落番号【0016】の「図1?図3においてAは三面鏡で、本枠1と、左右一対の袖枠2,3と、蝶番4とにより構成される。」を、「図1?図2においてAは三面鏡で、本枠1と、左右一対の袖枠2,3と、蝶番4とにより構成される。」と訂正する。
f.異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の段落番号【0021】の「なお、図2および図3において10は、本枠1の背面に取り付けた支柱で、実施例の三面鏡Aを鏡台11として使用する際に、該鏡台11における台本体12に穿設した止孔13へ、該支柱10の下端部を挿嵌することにより、下側額縁7a’の外周縁が台本体12に接触して、三面鏡Aが安定支持されるものである。」を、「なお、図2において10は、本枠1の背面に取り付けた支柱で、実施例の三面鏡Aを鏡台として使用する際に、該鏡台における台本体に穿設した止孔へ、該支柱10の下端部を挿嵌することにより、三面鏡Aが安定支持されるものである。」と訂正する。
g.異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の段落番号【0025】の「そして、十分に強度を有する大型の三面鏡は、本枠の背部に支柱を設け、この支柱を台本体へ固定することで鏡台として利用できる。等の特有の効果を奏するものである。」を、削除する。
h.異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の【図面の簡単な説明】の「【図1】本考案に関する三面鏡の正面図である。【図2】図1において袖枠を開いた状態を示す一部破断側面図である。【図3】図1における横断平面図である。【図4】従来の三面鏡を示す平面図である。」を、「【図1】本考案に関する三面鏡の正面図である。【図2】図1における横断平面である。【図3】従来の三面鏡を示す平面図である。」と訂正する。
i.異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の【符号の説明】の
「A 三面鏡
1 本枠
2,3 袖枠
4,4’ 蝶番
4a 一方翼
4b 他方翼
5 正面鏡
6 主体
7 額縁
7a 内周縁
8,9 袖鏡
2a,3a 外端縁
10 支柱
12 台本体
13 止孔」を、
「A 三面鏡
1 本枠
2,3 柚枠
4,4’ 蝶番
4a 一方翼
4b 他方翼
5 正面鏡
6 主体 .
7 額縁
7a 内周縁
8,9 袖鏡
2a,3a 外端縁
10 支柱」と訂正する。
j.異議申立て時の訂正請求により訂正された図面を、平成12年11月15日付けの訂正請求書に添付された図面のとおり訂正する。

2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否について
2-1)訂正事項a.は、異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2を削除するものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、訂正事項a.は、異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書及び図面に記載された事項の範囲内でするものであり、しかも、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張したり変更したりするものではない。
2-2)訂正事項d.及び訂正事項g.は、訂正事項a.による実用新案登録請求の範囲の請求項2の削除に整合させるために明細書の記載を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項d.及び訂正事項g.は、異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書及び図面に記載された事項の範囲内でするものであり、しかも、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張したり変更したりするものではない。
2-3)訂正事項jは、異議申立て時の訂正請求により訂正された図面の【図2】を削除し、【図3】及び【図4】の図番を【図2】及び【図3】に繰り上げるものである。そしてこの訂正は、訂正事項a.により削除された実用新案登録請求の範囲の請求項2に係る考案の構成要件である「前記本枠の背面に支柱を設け、この支柱の下端を前記台本体の止孔に貫入させて、前記下側額縁の外周縁を前記台本体に接触させ、前記本枠を前記台本体に固定させたこと」を図示する【図2】を削除すると共に、【図2】の削除に伴い、【図3】及び【図4】の図番を【図2】及び【図3】に繰り上げるものであるから、訂正事項a.による実用新案登録請求の範囲の請求項2の削除に伴い図面を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるといえる。そして、訂正事項j.は、異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書及び図面に記載された事項の範囲内でするものであり、しかも、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張したり変更したりするものではない。
2-4)訂正事項b.、訂正事項c.、訂正事項e.、訂正事項h.、及び訂正事項i.は、いずれも訂正事項j.による【図2】の削除、【図3】及び【図4】の図番の【図2】及び【図3】への繰り上げに整合させて明細書の記載を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そしてこれらの訂正事項は、異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書及び図面に記載された事項の範囲内でするものであり、しかも、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張したり変更したりするものではない。
2-5)訂正事項f.は、訂正事項a.による実用新案登録請求の範囲の請求項2の削除、並びに訂正事項j.による【図2】の削除、【図3】及び【図4】の図番の【図2】及び【図3】への繰り上げに整合させて、明細書の記載を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項f.は、異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書及び図面に記載された事項の範囲内でするものであり、しかも、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張したり変更したりするものではない。

3)独立登録要件について
3-1)平成12年11月15日付け訂正請求書に添付された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案(以下、「無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案」という。)は、該明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「正面鏡を取り付けた本枠へ、袖鏡を取り付けた左右一対の袖枠を蝶着して観音開き状に開閉自在とした三面鏡において、
前記本枠は、前記正面鏡の背面略全体が当接する平板状の主体と、該主体の全周縁からこの主体前面部の前側へ一体的に突出させた環状に形成された額縁とからなり、
前記環状に形成された額縁は、下側額縁と、前記下側額縁の両側からそれぞれ立設した左側額縁及び右側額縁と、前記左側額縁の上部と前記右側額縁の上部とを接続する上側額縁とからなるものであり、
前記左右一対の袖枠は、左の袖枠と右の袖枠とからなり、
前記左の袖枠は、外表面に把手を設けることなく、左側蝶番により該左側蝶番の一方翼を前記左側額縁の内周縁へ固着し、前記左側蝶番の他方翼を前記左の袖枠の外端縁へ固着して開閉自在として、
前記右の袖枠は、外表面に把手を設けることなく、右側蝶番により前記右側蝶番の一方翼を前記右側額縁の内周縁へ固着し、前記右側蝶番の他方翼を前記右の袖枠の外端縁へ固着して開閉自在として、
前記左右一対の袖枠の閉塞時に、前記左右一対の袖枠が前記本枠内に納まると共に、
前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、
前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大として構成する空間スペースを設けたことを特徴とする三面鏡。」

3-2)請求人が提出した甲第1号証乃至甲第7号証及び甲12号証に記載された事項(請求人が提出した甲第1号証乃至甲第7号証及び甲12号証の文献名については、後述の3.を参照されたい。)
甲第1号証には、第41頁に横に並んで3つの鏡の写真が記載されている。そのうち中央の写真は、三面鏡を左右の袖板が半ば開いた状態で正面から写したものであり、この写真から、中央の写真の三面鏡が、台本体に中央に鏡を備えた部材が立設され、該部材に、鏡の左右の端部の位置を回転中心として、鏡を備えた左右一対の袖板が取り付けられたものであることが窺える。
さらに、検討しても、甲第1号証には、中央の写真の三面鏡の他の構造を教示する何らの記載もない。

甲第2号証には、「鏡」について第1,2図と共に下記の事項が記載されている。
「この考案は、三面鏡・・・を支承する鏡縁枠・・・等の支持部材にオルゴールを取り付け、このオルゴールのストッパーを鏡の使用操作に連動させることによつて、鏡の使用時に自動的にオルゴールを鳴らすようにした鏡を提供するものである。」(明細書 第1頁11?16行)
「第1図と第2図とに示す実施例Iは、本考案を壁掛型の三角鏡に用いた場合のもので、同図中(1)は、正面鏡(1)aと、その左右に両開きに取り付けた一対の側面鏡(1)bとからなる鏡、(2)はこの鏡(1)を支承する支持部材、(3)は支持部材(2)の上部前面に取り付けられる従来周知のゼンマイ形のオルゴール、(4)は復元ばね(5)を具えてオルゴール(3)の回転を阻止するストッパーである。」(明細書 第2頁3?10行)
そして、第1図及び第2図からは、正面鏡(1)aの表面は支持部材(2)の表面より後退した位置にあり、左右一対の側面鏡(1)b、(1)bの閉塞時には、左右一対の側面鏡(1)b、(1)bは支持部材内に納まること、左右一対の側面鏡(1)b、(1)bの外表面には把手があること、支持部材(2)の側面鏡(1)b、(1)bが納まる部分の下辺と左右一対の側面鏡(1)b、(1)bの底部には側面鏡の開閉に伴うクリアランス以上の隙間は認められないことが窺える。

甲第3号証には、「三面鏡付き建て具」について図面と共に下記の事項が記載されている。
「建て具本体の一面に両開き扉を開閉自在に取付け、建具本体の開閉面および両開き扉の内側面に鏡を各々貼着してなる三面鏡付き建具。」(実用新案登録請求の範囲)
「第1図および第2図は建て具として家の扉に三面鏡を組み入れた実施例である。
すなわち、扉本体(1)の一面に凹部(2)を設け、この凹部(2)に両開き扉(3)、(3)を両側の蝶番(4)、(4)を介して開閉自在に取付け、扉本体(1)の開閉面たる凹部(2)の正面および両開き扉(3)、(3)の内側面に鏡(5)、(5)、(5)を各々貼着したものである。」(明細書 第1頁16行?第2頁4行)
「両開き扉(3)、(3)を閉じておけば鏡(5)、(5)、(5)は完全に隠れる一方、使用に際して両開き扉(3)、(3)を開ければ鏡(5)、(5)、(5)が露見し、そのため鏡を扉、襖等建て具の外側に取付けた場合の見苦しさがなく、しかも子供等のいたずらによる鏡の損傷も防止できる。
また、鏡が建て具に内蔵されているため、・・・」(明細書 第2頁11?17行)

甲第4号証には、「鏡付き扉」について図面と共に下記の事項が記載されている。
「第1図及び第2図は本考案に係る鏡付き扉の一実施例を示すものであり、1は扉本体であり、2は主鏡である。主鏡2は扉本体1の少なくとも片面に両面接着テープなどを介して接着されており鏡aは外方に面している。3、3は上記主鏡2に回動自在に装着された一対の副鏡であり主鏡1の両側端部に蝶番4あるいはステー(図示省略)により取り付けられており、副鏡3,3を主鏡1と折り畳んで対向させたとき、鏡面bが内側になるように構成されている。この副鏡3,3の他面には任意の模様を形成してもよい。尚、扉本体1には把手等が取付けられているが図示は省略した。」(明細書 第2頁6?17行)
「又第5図の実施例では、扉本体1の片面に凹所6を穿設すると共に該凹所6の開口周縁を更に切欠して副鏡嵌合用段部を形成し、前記凹所6内に主鏡2と副鏡3とを嵌合装着してなるものである。このように扉本体1内に鏡を組み込むことにより厚みを薄くでき、軽量化することができる。」(明細書 第3頁9?15行)

甲第5号証には、「鏡台兼用収納家具」について図面と共に下記の事項が記載されている。
「本考案は鏡台を兼用した収納家具に関するものである。」(明細書 第2頁2,3行)
「以下本考案を図示の実施例に基づいて具体的に説明すると、符号1は収納部であって、収納家具と鏡台の鏡面とを兼用するものである。
即ち、該収納部1は、通常のこの種収容家具とほぼ同様であって前面には開閉扉4を設けると共にその内部には取りはずし自在の棚2を設け、又は天井附近にスライディングハンガ3をとりつける。 そして該開閉扉4の表面には鏡5を一体的にとりつけるのである。 符号6は基台であって通常の鏡台のそれと同様鏡5を支持すると共に化粧台として及び化粧品収納箱としての機能を有するものである。」(明細書 第2頁18行?第3頁9行)
「尚開閉扉4の下縁と化粧台7との間には手指を挿入し得る程度の空隙11を形成することが望ましく」(明細書 第3頁18?20行)
「また開閉扉4の下縁と化粧台7との間には空隙11が形成されているのでこれに手指を挿入することにより開閉扉4は自在に開閉することができる。」(明細書 第5頁1?4行)

甲第6号証には、「家具」について図面と共に下記の事項が記載されている。
「本考案は一般的な収納家具としての外観を持ち乍ら、必要に応じて三面鏡として使用することのできるユニークな家具に関する。」(明細書 第1頁13?15行)
「図において附号1は本考案に係る家具であって、上段に前面が開口した収納部2と、下段に前面が開口した収納部2と、下段に抽出し等を備えた収納部3とを有している、而して前記上段収納部2の前面にレール4,4を介して左右に摺動自在とした主鏡板5が設けられており、この主鏡板5の左右両縁にヒンヂ6を介して前記主鏡板前面に折り込むことのできる副鏡板7が設けられている。
そしてこの副鏡板7を主鏡板5の前面に折りたゝんだ時、主鏡板の前面を隠しこれにより主副鏡板が上段収納部の実質的な引戸として役立つ様に構成されている。」(明細書 第1頁18行?第2頁11行)
「副鏡板7,7を左右に開くことにより三面鏡として使用することができるものである。」(明細書 第2頁18行?第3頁3行)
また、図面からみて、副鏡板7の下辺の位置を主鏡板5の下辺より高い位置として、副鏡板7の下辺と収納部3の上面との間に空間が存在することが窺える。

甲第7号証には、「整理ダンス兼用鏡台」について図面と共に下記の事項が記載されている。
「タンス体の後部に支持孔を設け、鏡体の裏面にユニバーサルジョイントを介して固着された支持枠を該支持孔に嵌挿して鏡体を縦方向若しくは横方向に適宜取り付け得る様にして成る整理ダンス兼用鏡台。」(実用新案登録請求の範囲)
「1及び2は二段に積み重ねられたタンス体で、3は鏡体である。鏡体3はその枠体4の裏面中央部に固着されたユニバーサルジョイント6を介した支持枠5により、タンス体1若しくは2に取り付けられているもので、この際支持枠5の下端はタンス体1若しくは2の支持孔7に嵌挿されている。
本考案は叙上の如くにして成るものであるからタンス1,2が二段に積み重ねられた場合には鏡2を横方向にして使用し(第1図)、タンス1を取り外してタンス2一段のみとした場合には鏡体3を縦方向(第2図)にして姿見としての用途に供するものであるが、この際に横方向から縦方向への変換若しくはその逆操作は、ユニバーサルジョイント6を中心として支持枠5を90°回転する事によって簡単に為し得られる等の極めて有意義なもので多大な実益を有するものである。」(第1頁右欄3?19行)

甲第12号証は、「テクノワーク in sizuoka 4月号」 静岡県静岡特産工業協会 平成4年4月15日発行の刊行物であり、本件の出願と同時に、実用新案法第9条第1項において準用する特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとして特許庁長官に提出されたものである。確かに、甲第14号証の本件の実用新案登録願の願書の【特記事項】には、本件が、実用新案法第9条第1項において準用する特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとする実用新案登録出願であることが記載されている。
そこで先ず、甲第12号証に記載の事項について検討すると、甲第12号証には、図面と共に下記の事項が記載されている。
「登録番号 3246号
登録品名 三面鏡台(B)
保護範囲 考案保護実用新案
登録年月日 平4.4.15
権利者名 静岡県藤枝市八幡711番地の1
有限会社 堀江木工所
代表者 堀江順一郎
図面説明 第一図 正面図
第二図 右側面図
第三図 X-X線拡大断面図
保護範囲 枠縁(1)内の奥寄りへ鏡(2)を張着した、立設正面鏡体 (A)の枠縁(1)内へ密接する左右袖鏡(3)(3)の外 向き端縁と枠縁(1)の内向き端縁の上下部を蝶(4)(4 )(4)(4)着した、枠縁(1)付正面鏡体(A)の枠縁 内へ嵌脱折たたみ自在の左右袖鏡(3)(3)を備えた三面 鏡台。」
そして、甲第12号証に記載された考案において、「枠縁(1)」は、「鏡(2)」の背面略全体が当接する平板状の主体と、該主体の全周縁からこの主体前面部の前側へ一体的に突出させた環状に形成された額縁とからなることが、第一図及び第三図から窺える。また、環状に形成された額縁は、下側額縁と、前記下側額縁の両側からそれぞれ立設した左側額縁及び右側額縁と、前記左側額縁の上部と前記右側額縁の上部とを接続する上側額縁とからなるものであることは、第一図から明らかである。また、甲第12号証に記載された考案において、「左右袖鏡(3)(3)」は、内面に鏡が取り付けられたものであることが第三図から、その外面に把手を備えていないことが第一図乃至第三図から窺え、さらに「左右袖鏡(3)(3)」は、その閉塞時に「枠縁(1)」付き正面鏡体(A)の「枠縁(1)」内へ収納されるものであることは、保護範囲の記載並びに第一図及び第二図からみて明らかである。さらに、「左右袖鏡(3),(3)」の外向き端縁と枠縁(1)の額縁に相当する部分の内向き端縁の上下部が第一図に示される如く蝶(4)(4)(4)(4)着され、しかも第三図の如く「左右袖鏡(3),(3)」が開くものであることを考慮すると、甲第12号証に記載された考案において、「左右袖鏡(3),(3)」の一端を左側蝶番及び右側蝶番により「枠縁(1)の左側額縁に相当する部分及び右側額縁に相当する部分に蝶着するに際し、前記左側蝶番の一方翼を前記左側額縁に相当する部分の内周縁へ固着し、前記左側蝶番の他方翼を前記左の「袖鏡(3)」の外端縁へ固着し、前記右側蝶番の一方翼を前記右側額縁に相当する部分の内周縁へ固着し、前記右側蝶番の他方翼を前記右の「袖鏡(3)」の外端縁へ固着することは、当業者にとって自明な事項である。
さらに、甲第12号証の第一図には、「左右袖鏡(3)(3)」の底部を示すと認められる直線的な線と「枠縁(1)」の下側額縁に相当する部分の内周縁を示すと認められる下方に撓んだ曲線との間に間隔が認められる。そして、第一図において「左右袖鏡(3)(3)」の一端とそれに対向する「枠縁(1)」の左側額縁及び右側額縁に相当する部分の側縁との間にかかる間隔が認められないこと、及び、甲第12号証に記載された考案において、上記のとおり「左右袖鏡(3)(3)」は閉塞時に正面鏡体(A)の「枠縁(1)」内へ収納されるものであること、を勘案すると、甲第12号証の第一図に示されたこの間隔は、「左右袖鏡(3)(3)」の底部と「枠縁(1)」の下側額縁に相当する部分の内周縁との距離が、「左右袖鏡(3)(3)」の開閉に伴うクリアランス距離より大きいものであり、「左右袖鏡(3)(3)」の底部と「枠縁(1)」の下側額縁に相当する部分の内周縁との間に空間スペースがあることを示していると認められる。
してみると、甲第12号証には、
鏡(2)を取り付けた枠縁(1)へ、鏡を取り付けた左右一対の袖鏡(3)(3)を蝶着して観音開き状に開閉自在とした三面鏡において、前記枠縁(1)は、前記鏡(2)の背面略全体が当接する平板状の主体と、該主体の全周縁からこの主体前面部の前側へ一体的に突出させた環状に形成された額縁とからなり、前記環状に形成された額縁は、下側額縁と、前記下側額縁の両側からそれぞれ立設した左側額縁及び右側額縁と、前記左側額縁の上部と前記右側額縁の上部とを接続する上側額縁とからなるものであり、前記左右一対の袖鏡(3)(3)は、左の袖鏡(3)と右の袖鏡(3)とからなり、前記左の袖鏡(3)は、外表面に把手を設けることなく、左側蝶番により該左側蝶番の一方翼を前記左側額縁の内周縁へ固着し、前記左側蝶番の他方翼を前記左の袖鏡(3)の外端縁へ固着して開閉自在として、前記右の袖鏡(3)は、外表面に把手を設けることなく、右側蝶番により前記右側蝶番の一方翼を前記右側額縁の内周縁へ固着し、前記右側蝶番の他方翼を前記右の袖鏡(3)の外端縁へ固着して開閉自在として、前記左右一対の袖鏡(3)の閉塞時に、前記左右一対の袖鏡(3)が前記枠縁(1)内に納まると共に、前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖鏡(3)(3)の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖鏡(3)(3)の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大として構成する空間スペースを設けた三面鏡。
なる考案が記載されているといえる。
そして、甲第12号証に記載された考案における「枠縁(1)」、「鏡(2)」、「袖鏡(3)」は、各々、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案における「本枠」、「正面鏡」、「袖枠」に相当するものであるから、甲第12号証に記載された考案と無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案は同一である。

請求人は、甲第19号証乃至甲第24号証を提出し、静岡地方裁判所に提訴された裁判において被請求人自身が「甲第12号証には係る空間スペースは記載も示唆もされていない」旨主張している、というが、甲第12号証の第一図の、「左右袖枠(3)(3)」の底部を示すと認められる直線的な線と「枠縁(1)」の下側額縁に相当する部分の内周縁を示すと認められる下方に撓んだ曲線との間に何らかの部材が存在するとの根拠はなく、請求人が提出した参考資料1乃至4の複数の鏡台の写真のデザインを勘案しても、甲第12号証には上記の考案が記載されていると考えるのが自然である。
さらに、請求人は、甲第13号証を提出し、被請求人は、甲第13号証の「静岡特産工業協会 考案保護審査および登録規程」に基づいて甲第12号証に記載された考案について「考案保護登録」を申請したにすぎず、自ら主体的に考案を甲第12号証に発表したのではないから、内外国特許公報による発明、考案の発表と同様、特許法第30条第1項でいう「刊行物に発表し」にあたらず、本件の出願は、実用新案法第9条第1項において準用する特許法第30条第1項の規定の適用を受けることができない旨主張している。
しかし、甲第13号証の規定に基づく考案保護審査及び登録制度は、審査により登録認定された考案を刊行物に掲載公告する点、登録人以外の者は登録された考案と同一のものを売買の目的をもって製作することができない点等、国家による特許、実用新案登録制度と一見似たものであるが、静岡特産工業協会内部の制度にすぎず、国家により発明、考案が保護される特許、実用新案登録制度とは、全く異なるものである。
よって、甲第13号証の規定に基づく甲第12号証による考案の発表は、特許、実用新案登録出願に伴う特許公報等による発明、考案の発表と同等に考えるべきものではなく、特許、実用新案登録出願することなく為された甲第12号証による考案の発表は、特許法第30条第1項でいう「刊行物に発表し」にあたるものと考える。
したがって、甲第12号証による上記考案の発表について、本件の出願は、実用新案法第9条第1項において準用する特許法第30条第1項の規定の適用を受けることができる。

3-3)対比、判断
甲第12号証については上述のとおりであるから、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案と、甲第1号証乃至甲第7号証に記載された考案について対比、検討する。
甲第1号証には、左右の袖板が半ば開いた状態で三面鏡を正面から写した写真が記載されているだけであって、中央に鏡を備えた部材の構造についてさえ、何ら記載も示唆もない。よって、甲第1号証には、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案の構成要件である「本枠は、前記正面鏡の背面略全体が当接する平板状の主体と、該主体の全周縁からこの主体前面部の前側へ一体的に突出させた環状に形成された額縁とからな」ることさえ示されていない。
また、甲第1号証には左右の袖板を閉塞した状態で三面鏡を側面及び正面から写した写真がないため、甲第1号証に記載のものは、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案における「袖枠」に相当する「袖板」の閉塞時に、左右一対の袖板が中央に鏡を備えた部材内に納まるか否か明確でなく、また、納まったとしても、左右一対の袖板の底部と中央に鏡を備えた部材の左右一対の袖枠が納まる部分の下辺との間に、左右一対の袖板の開閉に伴うクリアランス距離より大として構成された空間スペースがあるか否か全く不明である。
甲第2号証に記載された三面鏡は、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案における「本枠」に相当する「支持部材」の構造について、何ら記載も示唆もない。よって、甲第2号証には、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案の構成要件である「本枠は、前記正面鏡の背面略全体が当接する平板状の主体と、該主体の全周縁からこの主体前面部の前側へ一体的に突出させた環状に形成された額縁とからな」ることは示されていない。
さらに、甲第2号証に記載されたものは、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案における「袖枠」に相当する「側面鏡」の外表面に把手があり、支持部材の側面鏡が納まる部分の下辺と左右一対の側面鏡の底部には側面鏡の開閉に伴うクリアランス以上の隙間がないことからみて、甲第2号証に記載された考案は、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案の構成要件である「左の袖枠は、外表面に把手を設けることな」いこと、「右の袖枠は、外表面に把手を設けることな」いこと及び「前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大とする空間スペースを設けた」ことなる構成を備えていないものである。
甲第3号証には、「鏡が建て具に内蔵されている」(明細書 第2頁17行)なる記載はあるものの、実施例を示す第1図及び第2図を検討すると、第2図には、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案における「袖枠」に相当する「両開き扉(3)、(3)」の鏡(5)を貼着した面の端部が回転中心であることが図示されており、このことからみて、甲第3号証に記載されたものは、両開き扉(3)、(3)の閉塞時に、両開き扉(3)(3)が扉本体(1)内に納まるとは考えられない。よって、甲第3号証には、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案の構成要件である「前記左右一対の袖枠の閉塞時に、前記左右一対の袖枠が前記本枠内に納まる」ことは記載されておらず、また、蝶番の翼の固着位置も無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案とは異なるものである。
さらに、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案における「袖枠」に相当する「両開き扉(3)(3)」の外表面に把手があり、扉本体の凹部の下辺と両開き扉の底部には側面鏡の開閉に伴うクリアランス以上の隙間がないことからみて、甲第3号証に記載された考案には、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案の構成要件である「左の袖枠は、外表面に把手を設けることな」いこと、「右の袖枠は、外表面に把手を設けることな」いこと及び「前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大とする空間スペースを設けた」ことなる構成を備えていないものである。
甲第4号証に具体的に示されたもののうち、第5図に示された実施例のみ、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案における「袖枠」に相当する「副鏡3」の閉塞時に、左右一対の副鏡3が、扉本体1内に納まるものである。しかし、この第5図に示された実施例は、扉本体1に設けられた主鏡2を嵌合装着する凹所6の開口周縁を更に切欠して副鏡嵌合用段部7を設けるものであって、この段部7の扉本体1の表面と平行な面に蝶番4の一方翼が固着されるものと解される。してみると無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案とは、蝶番の固着位置が異なるものである。
さらに、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案における「袖枠」に相当する「副鏡3」の外表面に把手があり、扉本体1の段部7が副鏡嵌合用であり、凹所6の底部には副鏡嵌合用段部を形成する必要がないことからみて、甲第4号証に記載された考案は、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案の構成要件である「左の袖枠は、外表面に把手を設けることな」いこと、「右の袖枠は、外表面に把手を設けることな」いこと及び「前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大とする空間スペースを設けた」ことなる構成を備えていないものである。
そして、甲第5号証には、手指を挿入することにより開閉扉を開閉する空隙が記載されており、甲第6号証には、副鏡板7の下辺と収納部3の上面との間に空間が存在することが記載されている。しかし、甲第5号証に記載された考案及び甲第6号証に記載された考案は、いずれも左右一対の袖枠の閉塞時に前記左右一対の袖枠が本枠内に納まる三面鏡に関するものではない。
さらに、甲第7号証には、三面鏡について何らの記載もない。

上記のとおり、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された考案は、いずれも無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案の構成要件である「前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大とする空間スペースを設けた」ことを備えていないものであるが、それ以前に、各々、上述したように無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案とはその構成を異にするものである。
そして、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された考案が上記のものである以上、甲第1号証乃至甲第7号証に記載された考案を如何に組み合わせても無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案の構成を想到することは、当業者にとってきわめて容易であるとはいえない。
そして、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案は、三面鏡において、「本枠は、前記正面鏡の背面略全体が当接する平板状の主体と、該主体の全周縁からこの主体前面部の前側へ一体的に突出させた環状に形成された額縁とからなり」なる構成、「左右の袖枠は、外表面に把手を設けることなく」なる構成、及び「左右一対の袖枠の閉塞時に、前記左右一対の袖枠が前記本枠内に納まる」なる構成を共に備えることにより、平成12年11月15日付け訂正請求書に添付された明細書の【0023】段落及び【0024】段落に記載された「閉塞時に、袖枠が本枠の凹み内に嵌合されるので、正面鏡に対して蓋作用を行ない、該鏡面の汚染や破損等を防止することができると共に、本枠と袖枠とが一体的になって、しかも、左右一対の袖枠の外表面に外表面より突出する把手がない分、持ち運びや取り扱い等が良好である。袖枠が本体の凹み内に嵌合されてその内部に納まるため、袖枠を折り畳んだときの三面鏡全体の厚さを薄く形成することができ、一方、額縁部は、従来の本枠の厚さより厚く形成することができるので、三面鏡が大型となっても本枠の強度が向上して希望する大きさの袖枠を本枠へ取り付けることができる。」なる格別な効果を奏するものである。
よって、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案は、請求人が提出した甲第1号証乃至甲第7号証に記載された考案であるとも、甲第1号証乃至甲第7号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとも認められない。
したがって、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。

4)むすび
以上のとおりであるから、平成12年11月15日付けの訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同条第2項の規定により読み替えて適用される平成5年改正前の実用新案法第40条第2項ただし書き及び同法同条第5項において準用する同法第39条第2及び3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.請求人の主張
請求人は、本件の請求項1及び請求項2に係る考案についての実用新案登録を無効とする、との審決を求め、その理由として以下の主張をし、証拠方法として下記の甲第1号証乃至甲24号証を提出している。
ア.甲第8号証の1及び2に示される異議申立て時の訂正は、甲第11号証にその内容が示される願書に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内においてしたものではなく、実質上実用新案登録請求の範囲を変更するものである。
しかも、異議申立て時の訂正により訂正された明細書の請求項1に係る考案は、
・甲第1号証又は甲第12号証に記載された考案であるか、甲第1号証または甲第12号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、
・甲第1号証又は甲第12号証に記載された考案と甲第5号証又は(及び)甲第6号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、
・甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された考案と、甲第5号証又は(及び)甲第6号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、
・甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された考案と、甲第5号証又は(及び)甲第6号証に記載された考案と、甲第1号証又は甲第12号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、
また、同じく訂正された明細書の請求項2に係る考案は、
・甲第12号証に記載された考案であるか、又は甲第12号証に記載された考案に基いて、或いは甲第12号証又は甲第1号証に記載された考案と甲第7号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、
・甲第1号証又は甲第12号証に記載された考案と甲第5号証又は(及び)甲第6号証に記載された考案と、甲第7号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、
・甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された考案と、甲第5号証又は(及び)甲第6号証に記載された考案と、甲第7号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、
・甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された考案と、甲第5号証又は(及び)甲第6号証に記載された考案と、甲第7号証に記載された考案と、甲第1号証又は甲第12号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、
いずれも実用新案法第3条第1項第3号又は同法同条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
よって、異議申立て時の訂正は適法なものでないため、本件請求項1及び請求項2に係る実用新案登録は無効とすべきものである。

イ.平成12年11月15日付けの訂正請求は、【図2】の削除及びそれに関連する訂正が、明りょうでない記載の釈明に該当せず、拒絶されるべきものである。よって、実用新案登録を受けている考案は、異議申立て時の訂正により訂正された明細書の請求項1及び2に係る考案であるが、平成6年10月17日付手続補正書が明細書等の要旨を変更するものであるため、本件請求項1及び2に係る実用新案登録は、1回目及び2回目の無効理由通知に記載の理由により、無効とすべきものである。

ウ.平成12年11月15日付けの訂正請求により訂正された明細書の請求項1に係る考案は、その訂正の基となる異議申立て時の訂正が認められないものであるため、その実用新案登録は無効とすべきものである。
仮に、平成12年11月15日付けの訂正請求が認められたとしても、その訂正請求により訂正された明細書の請求項1に係る考案は、新規性及び(又は)進歩性を欠如した考案であるため、本件の請求項1に係る考案の実用新案登録は無効とすべきものである。

エ.仮に、平成12年11月15日付けの訂正請求が認められたとしても、平成12年11月15日付けの訂正請求により訂正された明細書及び図面にも平成6年10月17日付け手続補正書による補正で付加された要旨変更にあたる事項が記載されているため、平成6年10月17日付け手続補正書による補正は明細書等の要旨を変更する旨の認定は覆らず、平成12年11月15日付けの訂正により訂正された明細書の請求項1に係る考案は、無効理由通知に記載した刊行物1に記載されたものであり、その実用新案登録は無効とすべきものである。

甲第1号証 「domus603MONTHLY MAGAZINE OF ARCHITECUTURE ,DESIGN,ART」1980年2月発行、第41頁上段の図及びOn this page:three different kinds of mirror.The material used is plywood lacquered with a special paint to simulate marble:pink,light grey and dark grey.の項
甲第2号証 実願昭52-60632号(実開昭53-155498号)のマイクロフィルム
甲第3号証 実願昭54-56221号(実開昭55-156186号)のマイクロフィルム
甲第4号証 実願昭57-81863号(実開昭58-181891号)のマイクロフィルム
甲第5号証 実願昭52-59584号(実開昭53-154731号)のマイクロフィルム
甲第6号証 実願昭56-94778号(実開昭58-1350号)のマイクロフィルム
甲第7号証 実公昭42-9570号公報
甲第8号証の1 平成10年1月19日付け手続補正書(訂正請求書)(「補正した訂正請求書の請求の理由」を含む)
甲第8号証の2 平成10年1月19日付け手続補正書(訂正請求書)に添付の全文訂正明細書及び図面
甲第9号証 平成10年4月17日付実用新案登録異議意見書
甲第10号証 実用新案登録異議の申立についての決定の謄本
甲第11号証 実用新案登録第2500339号公報
甲第12号証 「テクノワーク in shizuoka 4月号」静岡県静岡特産工業協会 平成4年4月15日発行
甲第13号証 静岡特産工業協会 考案保護審査および登録規程
甲第14号証 出願当初の願書、明細書、図面及び要約書
甲第15号証 平成6年8月3日付拒絶理由通知書
甲第16号証 平成6年10月17日付手続補正書
甲第17号証 平成7年5月23日付拒絶理由通知書
甲第18号証 平成7年7月7日付手続補正書
甲第19号証 静岡地方裁判所 平成11年(ワ)第254号訴状
甲第20号証 平成11年6月3日付被告答弁書
甲第21号証 平成11年7月7日付被告第1準備書面
甲第22号証 平成11年7月19日付原告第1準備書面
甲第23号証 平成11年9月2日付原告第2準備書面
甲第24号証 平成11年11月8日付原告第4準備書面

4.被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張及び無効理由の通知に対し、乙第1号証乃至乙第6号証を提出し、本件の異議申立て時の訂正は適法なものであり、また、平成12年11月15日付けの訂正請求も適法なものであり、請求人の主張は理由のないものであり、無効理由も解消している旨主張している。

乙第1号証の1,2 平成8年異議第70004号の実用新案登録異議申 立てについての決定の謄本の抜粋の写し
乙第2号証 特許庁編 社団法人発明協会発行「特許・実用新案 審査基準」の抜粋の写し
乙第3号証 甲第6号証の第2図及び第3図 本願考案の図4の 写し
乙第4号証 審尋書に対する平成9年10月15日付け回答書
乙第5号証 平成8年異議第70004号の実用新案登録異議申 立てについての決定の謄本の写し
乙第6号証 平成12年4月25日付無効理由通知の写し

5.請求人の主張する無効理由についての判断
5-1.請求人が主張する理由ア.について
1)新規事項の有無、実質上実用新案登録請求の範囲の変更の存否について
請求人は、異議申立て時の訂正のうち、明細書及び図面についての下記A.?E.の訂正をもって、異議申立て時の訂正は、願書に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内においてしたものではなく、実質上実用新案登録請求の範囲を変更するものであると主張する。
A.明細書の請求項1に「前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大として構成する空間スペースを設けた」を加える。
B.明細書の請求項2に「前記下側額縁の内周縁の中央部分と前記下側額縁の内周縁の中央部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の中央部分と前記下側額縁の内周縁の中央部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大として構成する空間スペースを設け」を加える。
C.明細書の段落番号【0009】に「前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大として構成する空間スペースを設けた」を加える。
D.明細書の段落番号【0010】に「前記下側額縁の内周縁の中央部分と前記下側額縁の内周縁の中央部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の中央部分と前記下側額縁の内周縁の中央部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大として構成する空間スペースを設け」を加える。
E.図面の【図1】及び【図2】に、空間スペースを示すS、間隙距離を示すH_(1),H_(0)を加える。

まず、異議申立て時の訂正について、新規事項の有無、実質上実用新案登録請求の範囲の変更の存否について判断するにあたり、基準となる明細書及び図面は実用新案登録権の設定登録時の明細書及び図面(以下、「設定登録時の明細書等」という。)である。
そこで、設定登録時の明細書等の記載を検討すると、【図1】には、左右の袖枠2,3の底部を示すと認められる直線的な線と額縁の下側部分の内周縁を示すと認められる下方に撓んだ曲線との間に間隔が認められる。そして、【図1】において左右の袖枠2,3の一端とそれに対向する額縁7の左右の部分の内周縁との間にかかる間隔が認められないこと、設定登録時の明細書の請求項1及び2に係る考案において、「袖枠は・・・袖枠の閉塞時に、本枠内に納まる」ものであること、及び設定登録時の明細書等を検討しても上記の間隔に何らかの部材が存在する旨の記載が見あたらないことを勘案すると、【図1】に示されたこの間隔は、左右の袖枠2,3の底部と額縁7の下側部分の内周縁との間に、左右の袖枠2,3の底部と額縁7の下側部分の内周縁との距離が、額縁7の左右の部分の内周縁に形成される左右の袖枠2,3の開閉に伴うクリアランス距離より大きい空間スペースがあることを示していると認められる。このことは、図1において袖枠を開いた状態を示す一部破断側面図である【図2】からも、袖枠2の底部と額縁7の下側部分の内周縁との間に空間スペースの存在が窺えることからも明らかである。
そして、上記A.?E.の訂正は、いずれも明細書及び図面に上記の「空間スペース」の存在を加えるものであり、上記の「空間スペース」については上述のとおり【図1】、又は、【図1】及び【図2】に記載された事項であるから、上記A.?E.の訂正は、実用新案登録異議の申立についての決定の謄本である甲第10号証に記載されたとおり、願書に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内においてしたものである。
また、請求人は、平成10年4月17日付け実用新案登録異議意見書である甲第9号証に記載の被請求人の主張等に基づき、「空間スペース」は左右の袖枠の底部に触れて袖枠を開閉する把手の機能を有するものであるとした上で、かかる機能を有する「空間スペース」は本件の設定登録時の明細書等には記載されていないから、この訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を変更するものである旨主張している。
しかし、異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の請求項1及び2に係る考案の効果は、異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書の【0023】段落?【0025】段落に記載されたとおり、
「前述のように本考案に係る三面鏡は、閉塞時に、袖枠が本枠の凹み内に嵌合されるので、正面鏡に対して蓋作用を行ない、該鏡面の汚染や破損等を防止することができると共に、本枠と袖枠とが一体的になって、しかも、左右一対の袖枠の外表面に外表面より突出する把手がない分、持ち運びや取り扱い等が良好である。
袖枠が本体の凹み内に嵌合されてその内部に納まるため、袖枠を折り畳んだときの三面鏡全体の厚さを薄く形成することができ、一方、額縁部は、従来の本枠の厚さより厚く形成することができるので、三面鏡が大型となっても本枠の強度が向上して希望する大きさの袖枠を本枠へ取り付けることができる。
そして、十分に強度を有する大型の三面鏡は、本枠の背部に支柱を設け、この支柱を第本体へ固定することで鏡台として利用できる。等の効果を奏するものである。」
なるものであって、「空間スペース」の存在による効果は記載されていない。
してみると、甲第9号証等で被請求人が主張する「空間スペースは、左右の袖枠の底部に触れて袖枠を開閉する把手の機能を有するものである」という主張こそ、異議申立て時の訂正請求により訂正された明細書及び図面の記載に基づかない主張である。
さらに、異議申立て時の訂正を検討しても、設定登録時の明細書等の【考案が解決しようとする課題】及び【作用】についての訂正はなく、【考案の効果】についての訂正も上記のとおりに訂正するものであり、格別新規な効果を加えるというものではない。
よって、異議申立て時の訂正は、甲第10号証に記載されたとおり、願書に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内においてしたものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を変更するものではない。

なお、請求人は、本件の出願当初の明細書及び図面である甲第14号証を提出すると共に、本件の審査段階の拒絶理由通知及び手続補正書である甲第15号証乃至甲第18号証を提出して、上記「空間スペース」は、本件の出願当初の明細書及び図面に記載されておらず、審査時においても明細書及び図面に全く記載されていないものであり、異議申立て時の訂正により明細書及び図面中に加えられたものであり、かかる訂正は認められない旨主張する。
しかし、上記の如く、異議申立て時の訂正請求は、設定登録時の願書に添付された明細書及び図面を基準としてその適否を判断するものであり、かかる主張は採用できない。

2)独立登録要件について
異議申立て時の訂正により訂正された明細書の請求項2に係る考案は、平成12年11月15日付の訂正請求により削除された。
よって、異議申立て時の訂正により訂正された明細書の請求項1に係る考案についてのみ、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものか判断する。
異議申立て時の訂正により訂正された明細書の請求項1に係る考案は、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案と同一である。
そして、異議申立て時の訂正により訂正された明細書の請求項1に係る考案は、無効審判時の訂正明細書の請求項1に係る考案について、上記2.の3)で述べた理由により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
また、特に、甲第12号証についても上記2.の3)で述べたとおりである。

3)むすび
以上のとおりであるから、異議申立て時の訂正は適法なものであって、請求人が主張する理由ア.は採用できないものである。

5-2.請求人が主張する理由イ.について
平成12年11月15日付の訂正請求は、上記2.で述べたとおり、認められるものである。
そして、平成12年11月15日付の訂正請求が認められたことにより、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、同条第2項の規定により読み替えて適用される平成5年改正前の実用新案法第40条第5項の規定により準用される特許法第128条の規定により、平成12年11月15日付の訂正請求書に添付された明細書及び図面により、実用新案登録出願等が為されたとみなされ、第1回及び第2回の無効理由通知で指摘した明細書等の要旨の変更はないものとなった。
したがって、請求人の主張する理由イ.は採用できないものである。
なお、第1回及び第2回の無効理由通知において、刊行物1を「実願平4-40117号(実開平6-15562号公報)のマイクロフィルム」と記したが、「実願平4-40117号(実開平6-15562号)のCD-ROM」の誤りであった。

5-3.請求人が主張する理由ウ.について
異議申立て時の訂正は、上記5-1.で述べたとおり適法なものであり、認められるものである。よって、異議申立て時の訂正が認められないことを前提とする理由ウ.の前段の請求人の主張は採用できない。
さらに、上記2.で記載したように、平成12年11月15日付けの訂正請求は認められるものである。そして、その訂正請求により訂正された明細書の請求項1に係る考案は、上記2.の3)に記載した理由により新規性及び(又は)進歩性を備えたものである。よって、理由ウ.の後段の請求人の主張も採用できない。

5-4.請求人が主張する理由エ.について
5-2.で述べたとおり、平成12年11月15日付の訂正請求は、認められるものである。そして、平成12年11月15日付の訂正請求が認められたことにより、平成12年11月15日付の訂正請求書に添付された明細書及び図面により、実用新案登録出願等が為されたとみなされ、第1回及び第2回の無効理由通知で指摘した明細書等の要旨の変更はないものとなった。
よって、請求人が主張する理由エ.も採用できない。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件の請求項1に係る考案の実用新案登録を無効とすることができない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
三面鏡
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
正面鏡を取り付けた本枠へ、袖鏡を取り付けた左右一対の袖枠を蝶着して観音開き状に開閉自在とした三面鏡において、
前記本枠は、前記正面鏡の背面略全体が当接する平板状の主体と、該主体の全周縁からこの主体前面部の前側へ一体的に突出させた環状に形成された額縁とからなり、
前記環状に形成された額縁は、下側額縁と、前記下側額縁の両側からそれぞれ立設した左側額縁及び右側額縁と、前記左側額縁の上部と前記右側額縁の上部とを接続する上側額縁とからなるものであり、
前記左右一対の袖枠は、左の袖枠と右の袖枠とからなり、
前記左の袖枠は、外表面に把手を設けることなく、左側蝶番により該左側蝶番の一方翼を前記左側額縁の内周縁へ固着し、前記左側蝶番の他方翼を前記左の袖枠の外端縁へ固着して開閉自在として、
前記右の袖枠は、外表面に把手を設けることなく、右側蝶番により前記右側蝶番の一方翼を前記右側額縁の内周縁へ固着し、前記右側蝶番の他方翼を前記右の袖枠の外端縁へ固着して開閉自在として、
前記左右一対の袖枠の閉塞時に、前記左右一対の袖枠が前記本枠内に納まると共に、
前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、
前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大として構成する空間スペースを設けたことを特徴とする三面鏡。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、左右一対の袖枠を正面鏡の本枠内へ収納可能として、しかも、その厚さを可及的に薄く形成しても十分な強度を有する三面鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、三面鏡は、図3に示すように、正面鏡30を取り付けた平板状の本枠31の外周縁へ、袖鏡32を取り付けた袖枠33の外縁を蝶番34により開閉自在に取り付けてある。
【0003】一般的に、鏡台等に用いる三面鏡は、その使用者の半身以上を写すものであるから、簡易的な卓上式のものと比べ、正面鏡30はこれに相応して大型となり、当然のことながら袖鏡32もその丈高さは、この正面鏡30とほぼ同寸法に形成される。
【0004】したがって、袖鏡32が取り付けられた袖枠33は比較的大きな重量となるもので、ちなみに、全体重量が10kgであれば、一面の袖枠33は2.5Kgにも達する。
【0005】そのため、図3において矢印pに示すように、袖枠33がその重量により湾曲しやすいので、この袖枠33を安定的に支承するためには、本枠31の厚さを十分に取って剛性を持たせ、この現象に対応しなければならない。
【0006】しかし、前記した強度を高めるために本枠の厚さを厚くすると、全体重量が増して運搬等の取り扱いが困難となるばかりか、コストアップとなる上、調度品として扱われる家具は厚みが増すことによむ室内装飾上好ましくない。
【0007】等の様々な問題点を有するものであった。
【0008】
【考案が解決しようとする課題】本考案は前記した問題点を解決するためになされたもので、本枠と袖枠とよりなり、本枠は、主体と、この主体全周縁より突出させた額縁とを有し、袖枠は、蝶番の一方翼を額縁の内周縁へ固着し、他方翼を袖枠の外端縁へ固着して開閉自在とすると共に、袖枠の閉塞時に本枠内に納まるように形成することで、収納時は本枠と一体的となり、しかも、本枠の厚さを薄く形成しても袖枠を十分に支承する強度を有することができて体裁が良好となる三面鏡を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記した目的を達成するための本考案の三面鏡は、正面鏡を取り付けた本枠へ、袖鏡を取り付けた左右一対の袖枠を蝶着して観音開き状に開閉自在とした三面鏡において、前記本枠は、前記正面鏡の背面略全体が当接する平板状の主体と、該主体の全周縁からこの主体前面部の前側へ一体的に突出させた環状に形成された額縁とからなり、前記環状に形成された額縁は、下側額縁と、前記下側額縁の両側からそれぞれ立設した左側額縁及び右側額縁と、前記左側額縁の上部と前記右側額縁の上部とを接続する上側額縁とからなるものであり、前記左右一対の袖枠は、左の袖枠と右の袖枠とからなり、前記左の袖枠は、外表面に把手を設けることなく、左側蝶番により該左側蝶番の一方翼を前記左側額縁の内周縁へ固着し、前記左側蝶番の他方翼を前記左の袖枠の外端縁へ固着して開閉自在として、前記右の袖枠は、外表面に把手を設けることなく、右側蝶番により前記右側蝶番の一方翼を前記右側額縁の内周縁へ固着し、前記右側蝶番の他方翼を前記右の袖枠の外端縁へ固着して開閉自在として、前記左右一対の袖枠の閉塞時に、前記左右一対の袖枠が前記本枠内に納まると共に、前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間に、前記下側額縁の内周縁の部分と前記下側額縁の内周縁の部分に対向する前記左右一対の袖枠の底部との間の距離を前記左側額縁の内周縁の部分と前記左側額縁の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離より大として構成する空間スペースを設けたものである。
【0010】
【0011】
【作用】前記のように構成される本考案の三面鏡は以下に述べる作用を奏する。
【0012】正面鏡を取り付けた本枠の額縁内周縁へ、袖鏡を取り付けた袖枠の外端縁を蝶番により取り付けると開閉自在となり、袖枠の閉塞時には本枠内に納まる。
【0013】また、袖枠の本枠への取り付けに際しては、蝶番が額縁の内周において取り付けられているので、閉塞時にその取付部が露出しない。
【0014】また、本枠の背面に支柱を設け、この支柱の下端を台本体の止孔に貫入させて本枠を台本体に固定させれば、大型の三面鏡である鏡台として使用できる。
【0015】
【実施例】次に本考案に関する三画鏡の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】図1?図2においてAは三面鏡で、本枠1と、左右一対の袖枠2,3と、蝶番4とにより構成される。
【0017】そして、前記した本枠1は、正面鏡5の形状に見合う大きさに形成した主体6と、該主体6の全周縁より前側へ突出させた額縁7とからなるもので、正面鏡5の収容部が凹んだ凹状となっており、その外形状は、矩形や三角形,六角形,正方形等の多角形あるいは円形やひょうたん形等任意のものが選定し得る。額縁7は、図1に示すように、環状に形成され、環状に形成された額縁7は、下側額縁7a’と、下側額縁7a’の両側からそれぞれ立設した左側額縁7b’及び右側額縁7c’と、左側額縁7b’の上部と右側額縁7c’の上部とを接続する上側額縁7d’とからなるものである。
【0018】前記袖枠2,3は、本枠1における主体6の略縦半分等に形成し、かつ、主体6の外形状に合わせて倣うように形成したり一部を変形してあって、本枠1の凹みに嵌って納まり得る形状であり、しかも、その外面が額縁7面と略一致する厚さを有するものであり、その内面には袖鏡8,9を張設してある。
【0019】これら本枠1と袖枠2,3とは蝶番4、4’により観音開き状に開閉自在に取り付けられているもので、該蝶番4、4’の一方翼4aを額縁7の内周縁7aへ固着し、他方翼4bを袖枠2,3の外端縁2a,3aへ固着して開閉自在としてある。
即ち、図1に示すように、左の袖枠2は、外表面に把手を設けることなく、左側蝶番4によう該左側蝶番4の一方翼を左側額縁7b’の内周縁へ固着し、左側蝶番4の他方翼を左の袖枠2の外端縁へ固着して開閉自在として、右の袖枠3は、外表面に把手を設けることなく、右側蝶番4’により右側蝶番4’の一方翼を右側額縁7c’の内周縁へ固着し、右側蝶番4’の内の他方翼を右の袖枠3の外端縁へ固着して開閉自在としている。そして、左右一対の袖枠2、3の閉塞時に、左右一対の袖枠2、3が本枠1内に納まると共に、下側額縁7a’の内周縁の中央部分と下側額縁7a’の内周縁の中央部分に対向する左右一対の袖枠2、3の底部との間に、図1及び図2に示すように、下側額縁7a’の内周縁の中央部分と下側額縁7a’の内周縁の中央部分に対向する左右一対の袖枠2、3の底部との間の距離H_(0)を左側額縁7b’の内周縁の部分と左側額縁7b’の内周縁の部分に対向する部分との間に形成される開閉に伴うクリアランス距離H_(1)より大として構成する空間スペースSが形成されている。
【0020】したがって、この袖枠2,3が取り付けられる本枠1の額縁7は、その断面形状がL字状となって薄厚であっても十分な剛性力を発揮する。
【0021】なお、図2において10は、本枠1の背面に取り付けた支柱で、実施例の三面鏡Aを鏡台として使用する際に、該鏡台における台本体に穿設した止孔へ、該支柱10の下端部を挿嵌することにより、三面鏡Aが安定支持されるものである。
【0022】更に、この三面鏡Aは、他の家具の上部に載置する置き鏡や、ビス止めやくさり,紐等によって懸吊しだ壁鏡,釣鏡としても使用できる。
【0023】
【考案の効果】前述のように本考案に関する三面鏡は、閉塞時に、袖枠が本枠の凹み内に嵌合されるので、正面鏡に対して蓋作用を行ない、該鏡面の汚染や破損等を防止することができると共に、本枠と袖枠とが一体的になって、しかも、左右一対の袖枠の外表面に外表画より突出する把手がない分、持ち運びや取り扱い等が良好である。
【0024】袖枠が本枠の凹み内に嵌合されてその内部に納まるため、袖枠を折む畳んだときの三面鏡全体の厚さを薄く形成することができ、一方、額縁部は、従来の本枠の厚さより厚く形成することができるので、三面鏡が大型となっても本枠の強度が向上して希望する大きさの袖枠を本枠へ取り付けることができる。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案に関する三面鏡の正面図である。
【図2】
図1における横断平面図である。
【図3】
従来の三面鏡を示す平面図である。
【符号の説明】
A 三面鏡
1 本枠
2,3 袖枠
4,4’ 蝶番
4a 一方翼
4b 他方翼
5 正面鏡
6 主体
7 額縁
7a 内周縁
8,9 袖鏡
2a,3a 外端縁
10 支柱
【図面】



訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2001-09-14 
結審通知日 2001-09-19 
審決日 2001-10-02 
出願番号 実願平4-40117 
審決分類 U 1 112・ 841- YA (A47G)
U 1 112・ 856- YA (A47G)
U 1 112・ 855- YA (A47G)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 和泉 等  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 滝本 静雄
岡田 和加子
登録日 1996-03-28 
登録番号 実用新案登録第2500339号(U2500339) 
考案の名称 三面鏡  
代理人 谷川 昌夫  
代理人 野末 寿一  
代理人 加藤 静富  
代理人 野末 寿一  
代理人 入江 一郎  
代理人 加藤 静富  
代理人 入江 一郎  

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