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審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て成立) H01H |
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管理番号 | 1111247 |
判定請求番号 | 判定2004-60014 |
総通号数 | 63 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案判定公報 |
発行日 | 2005-03-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2004-02-19 |
確定日 | 2005-01-31 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2558693号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | 判定請求書添付のイ号の分解写真(甲第5号証)及びイ号図面に示すところの被請求人の製造・販売するPS1,PS2用コンパクトジョイスティック「HPS-129」に使用されている「多接点レバースイッチ装置」は、登録第2558693号実用新案の技術的範囲に属する。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、判定請求書添付のイ号の分解写真(甲第5号証)及びイ号図面に示すところの被請求人の製造・販売するPS1,PS2用コンパクトジョイスティック「HPS-129」に使用されている「多接点レバースイッチ装置」(以下、「イ号物件」という。)が、実用新案登録第2558693号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 なお、請求項2及び3に係る考案の判定請求は、平成16年12月22日付け回答書により撤回された。 2.本件考案 本件考案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その構成要件を分説すると、次のとおりである。 (A)棒状の中間部に軸支部を有する操作レバー体と、 (B)該操作レバー体の前記軸支部を中心に揺動して操作する複数のスイッチ体と、 (C)前記軸支部を軸支し、該操作レバー体の中立状態と直交する面に前記複数のスイッチ体を前記操作レバー体の周囲近傍に固定するために前記操作レバー体の長さ方向と平行な前記各スイッチ体の略外壁面に沿った嵌合凹部を設け、該嵌合凹部の前記外壁面に対応する内壁面は各スイッチ体の前記各外壁面毎に少なくともその外壁面の一端部を当接する壁面を有する基台と、 (D)前記複数のスイッチ体が前記嵌合凹部から抜け外れないように前記基台に保持され、前記複数のスイッチ体の前記嵌合凹部に対向する面を押さえ、該スイッチ体を前記嵌合凹部に固定し、且つ前記操作レバー体の揺動を制限するガイド部を有する支持部材と、 (E)からなることを特徴とする多接点レバースイッチ装置。 3.イ号物件 判定請求書の「6.請求の理由」における「(4)イ号の説明」(同請求書第4頁第9?27行参照)及び平成16年3月17日付け物件提出書により提出されたイ号物件の見本、並びに、答弁書第2頁第27行?第3頁第25行のイ号の説明及び同答弁書に添付された「イ号図面」の図1?図5の各記載内容からみて、イ号物件は、次の(a)?(e)の構成からなるものとするのが相当と認める。 なお、イ号図面につき、請求人は、弁駁書において答弁書添付の図面を援用している。 (イ号物件) (a)棒状の中間部に軸支部(11a)を有する操作レバー体(1a)と、 (b)該操作レバー体(1a)の前記軸支部(11a)を中心に揺動して操作する複数のスイッチ体(5a)と、 (c)前記軸支部(11a)を軸支し、該操作レバー体(1a)の中立状態と直交する面に前記複数のスイッチ体(5a)を前記操作レバー体(1a)の周囲近傍に固定するために前記操作レバー体(1a)の長さ方向と平行な前記各スイッチ体の略外壁面(51a)に沿った嵌合凹部(9a)を設け、該嵌合凹部(9a)の前記外壁面(51a)に対応する内壁面(91a)は各スイッチ体(5a)の前記各外壁面(51a)毎に少なくともその外壁面の一端部を当接する壁面(91a)を有する基台(2a)と、 (d)前記複数のスイッチ体(5a)が前記嵌合凹部(9a)から抜け外れないように前記基台(2a)に保持され、前記複数のスイッチ体(5a)の前記嵌合凹部(9a)に対向する面を押さえ、該スイッチ体(5a)を前記嵌合凹部(9a)に固定し、且つ前記操作レバー体(1a)の揺動を制限するガイド部(4a)と、スイッチ体(5a)の嵌合孔(5ah)に嵌合して、当該スイッチ体(5a)を固定する支持柱(3ap)を有する支持部材(3a)と、 (e)からなることを特徴とする多接点レバースイッチ装置。 なお、上記記載中の構成(c)は、答弁書添付の乙第1号証に示された寸法値によれば、イ号物件における横差(By-Sy)の平均値が僅か0.20mmであることから、その嵌合凹部(9a)がスイッチ体(5a)を移動しないように固定することが明らかであるので、上記のとおり認定した。 4.対比・判断 (1)本件考案とイ号物件との対比 両者を対比すると、イ号物件が本件考案の構成要件(A)、(B)及び(E)と文言上一致する構成(a)、(b)及び(e)を備えていることは明らかであるから、イ号物件は、本件考案の構成要件(A)、(B)及び(E)を充足するといえる(両当事者間に争いがない)。 しかしながら、被請求人は、イ号物件が本件考案の構成要件(C)及び(D)を充足しないと主張するので、以下検討する。 (2)イ号物件が本件考案の構成要件(C)及び(D)を充足するか否かについて (2-1)イ号物件が本件考案の構成要件(C)を充足するか否かについて (イ)出願経過について 被請求人は、答弁書によれば、本件考案の構成要件(C)における「複数のスイッチ体を前記操作レバー体の周囲近傍に固定するために」「該嵌合凹部の前記外壁面に対応する内壁面は各スイッチ体の前記各外壁面毎に少なくともその外壁面の一端部を当接する」の技術的意義につき、本件考案の出願の経過を参酌して、本件出願人は、審査の過程で引用された引用文献1(乙第3号証)との構成上の差異について、その意見書で「引用文献1と本願の構成上の最も大きな違いは、引用文献1にはスイッチ体を固定するために支持柱28が必要であるのに対し、本願では嵌合凹部のみでよいのである」と主張し、登録されたのであるから、上記記載事項の技術的意義は、「ねじ止めや支持柱なしで、嵌合凹部のみにより当該嵌合凹部の内壁面にスイッチ体の外壁面の一端部が当接することにより当該スイッチ体を固定するものであると解釈すべきである」と主張する。 これに対して、請求人は、弁駁書において、意見書における上記主張は「ロ号が備えるような支持柱を設けることを除外する趣旨ではな」く、本件考案のように嵌合凹部を備えるものでは支持柱が必要でないことを主張したものであり、嵌合凹部の構成と併せて支持柱を備えるものまでをも除外する趣旨ではない旨を主張する。 そこで、本件考案の出願経過における平成8年12月24日付け意見書(乙第2号証)を見ると、確かに被請求人の指摘するとおりの記載があるものの、本件考案が、嵌合凹部に加えて、他の補助的な固定手段を併せて用いることを全く排除したものであるという主張が、上記意見書中に何ら見出すことができないことから、当該記載における「本願では嵌合凹部のみでよいのである」と主張した点は、スイッチ体を固定するために引用文献1のものでは支持柱28を必要とするのに対して、本願では嵌合凹部のみで足りること、いいかえれば、本件考案は、その嵌合凹部のみで引用文献1における支持柱と同じ程度のスイッチ体の固定が可能であるということを主張したのに止まるといえる。 このことは、本件考案の実用新案登録請求の範囲に、上述の本件考案が当該嵌合凹部の他に、他の補助的な固定手段を用いることを排除するということ、いいかえれば、嵌合凹部のみにより固定するものであることが規定されていないこととも整合するといえる。 したがって、被請求人が主張するように、本件考案の構成要件(C)における「複数のスイッチ体を前記操作レバー体の周囲近傍に固定するために」「該嵌合凹部の前記外壁面に対応する内壁面は各スイッチ体の前記各外壁面毎に少なくともその外壁面の一端部を当接する」の技術的意義を、「ねじ止めや支持柱なしで、嵌合凹部のみにより当該嵌合凹部の内壁面にスイッチ体の外壁面の一端部が当接することにより当該スイッチ体を固定するものである」と解釈することはできない。 (ロ)イ号物件のスイッチ体の嵌合固定について ところで、被請求人は、イ号物件は「嵌合凹部(9a)」ではなく、「支持柱(3ap)」によって「スイッチ体(5a)」を固定していると主張する。 そこで、イ号物件における「スイッチ体(5a)」が「嵌合凹部(9a)」によっては固定されていないといえるか否かについて以下検討する。 請求人が平成16年3月17日付け物件提出書により提出したイ号物件の見本を分解し、イ号物件における「スイッチ体(5a)」の「嵌合凹部(9a)」及び「支持柱(3ap)」 へのそれぞれの嵌合態様を見てみると、次の(a)及び(b)のとおりであった(ちなみに、当該イ号物件の見本の分解とその嵌合態様の確認は、平成16年12月15日に、請求人及び被請求人同席の下で合議体が行った)。 (a)イ号物件の「基台(2a)」に設けられた4つの「嵌合凹部(9a)」のそれぞれに「スイッチ体(5a)」を順に嵌合した状態で、その「基台(2a)」を傾斜ないし裏返して見ると、一部の「嵌合凹部(9a)」では固定状態が維持されるものの、その過半数で「スイッチ体(5a)」が「嵌合凹部(9a)」から開放され、抜け出すという現象が確認された。 (b)イ号物件における「支持部材(3a)」に設けられた4組の「支持柱(3ap)」 のそれぞれに、「スイッチ体(5a)」の「嵌合孔(5ah)」を順に嵌合した状態で、その「支持部材(3a)」を傾斜ないし裏返して見ると、一部の「支持柱(3ap)」では固定状態が維持されるものの、その過半数で「スイッチ体(5a)」が「支持柱(3ap)」から開放され、抜け出すという現象が確認された。 上記(a)及び(b)の確認事項によれば、イ号物件の「嵌合凹部(9a)」又は「支持柱(3ap)」による「スイッチ体(5a)」の嵌合固定の程度は、両者に答弁書添付の乙第1号証に示された寸法差があるとしても、いずれも同じ程度のものである、いいかえれば、両者は、いずれか一方のみによって「スイッチ体(5a)」を嵌合固定しているとはいえない関係にあるから、イ号物件における「嵌合凹部(9a)」及び「支持柱(3ap)」は、相互に補完し合って「スイッチ体(5a)」を嵌合固定していると認定するのが相当である。 そうすると、イ号物件は、その「嵌合凹部(9a)」によって、その「スイッチ体(5a)」を嵌合固定していないということができない。 (ハ)本件考案の構成要件(C)における「嵌合凹部」による「スイッチ体」の固定態様について ところで、本件考案の構成要件(C)における「嵌合凹部(9b)の前記外壁面(51b)に対応する内壁面(91b)は各スイッチ体(5b)の前記各外壁面(51b)毎に少なくともその外壁面の一端部を当接する壁面(91b)を有する」とした技術的意義は、本件考案の実用新案登録明細書の記載(実用新案登録公報の第3頁左欄第15?20行参照)を参酌すると、スイッチの各外壁面が嵌合凹部の内壁面に嵌合されていると、ヒンジレバーの押圧方向と反対方向の嵌合凹部の内壁面でその押圧力を受け止めて、スイッチが内壁面によって固定できることにあるといえる。 そして、本件考案は、構成要件(D)において「前記複数のスイッチ体が前記嵌合凹部から抜け外れないように前記基台に保持され、前記複数のスイッチ体の前記嵌合凹部に対向する面を押さえ、該スイッチ体を前記嵌合凹部に固定し、且つ前記操作レバー体の揺動を制限するガイド部を有する支持部材」と規定していることから、「スイッチ体が前記嵌合凹部から抜け外れないように」するために「スイッチ体の前記嵌合凹部に対向する面を押さえ、該スイッチ体を前記嵌合凹部に固定」するための支持部材を備えているものであることが明らかである。 そうすると、本件考案の構成要件(C)における「嵌合凹部」による「スイッチ体」の固定態様は、当該「嵌合凹部」のみによって「スイッチ体」が全く抜け外れることがない程度に緊密の嵌合固定する態様までをいうものではなく、イ号物件につき上記(ロ)の(a)に記載したような抜け外れる程度の固定態様をも許容した嵌合態様を含むものであることも明らかである。 (ニ)まとめ 以上検討したとおり、本件考案の構成要件(C)における「複数のスイッチ体を前記操作レバー体の周囲近傍に固定するために」「該嵌合凹部の前記外壁面に対応する内壁面は各スイッチ体の前記各外壁面毎に少なくともその外壁面の一端部を当接する」の技術的意義を、その出願経過を参酌してみても、「ねじ止めや支持柱なしで、嵌合凹部のみにより当該嵌合凹部の内壁面にスイッチ体の外壁面の一端部が当接することにより当該スイッチ体を固定するものである」と解釈することはできないし、また、イ号物件は、その「嵌合凹部(9b)」によって、その「スイッチ体(5b)」を嵌合固定していないということもできない。 そうすると、イ号物件は、本件考案の構成要件(C)に相当する構成を備えているといわざるを得ない。 したがって、イ号物件の構成(c)は、本件考案の構成要件(C)を充足するといえる。 (2-2)イ号物件が本件考案の構成要件(D)を充足するか否かについて 被請求人は、イ号物件が、本件考案の構成要件(D)である「前記複数のスイッチ体が前記嵌合凹部から抜け外れないように前記基台に保持され、前記複数のスイッチ体の前記嵌合凹部に対向する面を押さえ、該スイッチ体を前記嵌合凹部に固定し、且つ前記操作レバー体の揺動を制限するガイド部を有する支持部材」に相当する構成に加えて、「スイッチ体(5a)の嵌合孔(5ah)に嵌合して、当該スイッチ体(5a)を固定する支持柱(3ap)を有する」という構成を併せて備えると主張していると解される。 そうすると、被請求人は、イ号物件が本件考案の構成要件(D)に相当する構成を備えることにつき、実質的に争っていないといえる。 そして、イ号物件の構成(d)の内の「前記複数のスイッチ体(5a)が前記嵌合凹部(9a)から抜け外れないように前記基台(2a)に保持され、前記複数のスイッチ体(5a)の前記嵌合凹部(9a)に対向する面を押さえ、該スイッチ体(5a)を前記嵌合凹部(9a)に固定し、且つ前記操作レバー体(1a)の揺動を制限するガイド部(4a)を有する支持部材(3a)」の構成が、本件考案の構成要件(D)に相当することは明らかである。 また、本件考案が、嵌合凹部に加えて、他の補助的な固定手段を併せて用いることを排除したものといえないこと、いいかえれば、イ号物件が併せて備えるところの「スイッチ体(5a)の嵌合孔(5ah)に嵌合して、当該スイッチ体(5a)を固定する支持柱(3ap)を有する」という構成を併せて用いることを排除していないことは、上記「4.」(2)の(イ)において説示したとおりである。 すなわち、イ号物件はその支持部材(3a)にスイッチ体(5a)を固定する支持柱(3ap)を併せて備えるものであるところ、本件考案の明細書を参酌してみると、「従来技術とその欠点」の項に、支持部材側に突起を用いた嵌合態様につき、当該突起が折れたり欠けたりする欠点を指摘している記載があるものの、本件考案が、このような突起を併せて用いる態様を否定するものとはいえず、当該突起が折れても、嵌合凹部により確実に固定できることを開示しているといえる。 してみると、イ号物件の構成(d)は、本件考案の構成要件(D)を充足するものということができる。 (なお、イ号物件の支持柱(3ap)は、その柱の高さがスイッチ体(5a)の厚みと比較して極めて短く、スイッチ体の厚みの半分程度にも満たないものであり、上記引用文献1に示されたところのスイッチ体を貫通できる程度の高さを備えた「支持柱」と同一視できるような固定手段と解することもできない。) (3)まとめ 以上検討したように、イ号物件は、本件考案の構成要件(A)ないし(E)の全てを充足するということができる。 5.むすび 以上のとおりであるから、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2005-01-19 |
出願番号 | 実願平2-58946 |
審決分類 |
U
1
2・
1-
YA
(H01H)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田中 秀夫、田口 英雄 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
平上 悦司 増山 剛 |
登録日 | 1997-09-12 |
登録番号 | 実用新案登録第2558693号(U2558693) |
考案の名称 | 多接点レバースイッチ装置 |
代理人 | 佐々木 定雄 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 家入 健 |