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審決分類 審判 全部無効   G11B
管理番号 1162256
審判番号 無効2005-80334  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-11-21 
確定日 2007-07-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第2571891号実用新案「ビデオテープ記録再生装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2571891号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
1.手続の経緯
本件登録第2571891号実用新案の請求項1に係る考案についての出願は、平成4年1月10日に実用新案登録出願され、平成10年2月27日にその考案について実用新案の設定登録がなされたものである。
そして、平成17年4月22日に実用新案登録第2571891号の明細書の訂正を求める訂正審判(訂正2005-39068号)が請求され、平成17年7月21日付けで該訂正を認容する審決がなされたものである。
これに対し、平成17年11月21日付けで大宇電子ジャパン株式会社(以下、「請求人」という。)より実用新案登録無効審判の請求がなされ、平成18年2月20日付けで被請求人船井電機株式会社(以下、「被請求人」という。)より答弁書が提出された。

2.本件考案
本件登録第2571891号実用新案の請求項1に係る考案は、上記訂正審決時の明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
電源回路の電子部品を1枚のプリント配線基板の1所定領域である電源領域に実装し、前記電源回路以外のビデオ電子部品を前記プリント配線基板の電源領域以外の領域であるビデオ回路領域に実装した前記プリント配線基板と、
前記プリント配線基板に対して平行に配置され、かつその上に搭載されたビデオヘッドシリンダのコアギャップが、その面に対してほぼ垂直の方向になるように形成されたビデオ機構部品搭載用シャーシとを具備し、
前記電源領域の電源回路はスイッチング・レギュレータ回路で構成し、
前記回路の高周波トランスは、そのコアのギャップによる高周波漏れ磁束を生ずるコアギャップに面を前記プリント配線基板に平行に配置し、
前記電源領域にはAC商用電源端子を有し、前記ビデオ回路領域にはチューナ、IFアンプおよびRFコンバータの回路端子を有する
ことを特徴とするビデオテープ記録再生装置。」

3.審判請求人の主張

〔3-1〕無効とすべき理由の概要
請求人は、以下の証拠方法を提出するとともに、本件の請求項1に係る考案は、甲第3号証乃至甲第11号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるにもかかわらず看過され、実用新案法第3条2項の規定に違反してなされたものであるから、本件の請求項1に係る考案についての実用新案登録は無効である旨、主張する。
<証拠方法>
甲第1号証:審判2005‐39068号審決
甲第2号証:実用新案登録第2571891号公報
甲第3号証:特開平 2‐281494号公報
甲第4号証:特開昭59‐154486号公報
甲第5号証:実願昭55‐111406号(実開昭57‐35015号)のマイクロフイ ルム
甲第6号証:特開平 1‐245597号公報
甲第7号証:特開平 2‐163995号公報
甲第8号証:特開平 3‐135371号公報
甲第9号証:特開昭58‐ 30291号公報
甲第10号証:米国特許第4,686,570号明細書
甲第11号証:米国特許第4,727,591号明細書
甲第12号証:平成16年(ワ)第12975号 実用新案権侵害行為差し止め等 請求事件 原告(本審判の被請求人)訴状(訴えの変更)

〔3-2〕具体的無効理由
請求人は、審判請求書において、具体的に本件実用新案登録を無効にすべき理由を、概要以下のとおり主張する。

(1)本件登録実用新案
本件登録実用新案は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(上記「2.」を参照。)。

(2)先行技術文献の記載事項
(i)甲第3号証(特開平2‐281494号公報)

ア)「この発明は,筐体の下部に,サーボ回路系ブロック,オーディオ回路系ブロック等をそれぞれ配置させた基板を取り付けた磁気記録再生装置において,上記筐体の下部に底板を介して取り付けられる基板の一端側のテープ走行機構の下側に,ヘッドアンプブロックを配置すると共に,該基板の他端側にサーボ回路系ブロックとオーディオ回路系ブロック及びシステムコントロール回路系ブロックをそれぞれ配置したことにより,ヘッドアンプブロックを上記他の回路系ブロックより遠ざけ,ヘッドアンプ用のシールドケース(電磁遮蔽板)を廃止してシールドケースレス化を実現することができるようにしたものである。」(甲第3号証第1頁左下欄第19行目?同頁右下欄第12行目)
イ)「第1図中,1は磁気記録再生装置としてのビデオテープレコーダ(VTR)である。このビデオテープレコーダ1の筐体2の下部に設けられた開口部2aには,金属製の底板3を介して該底板1の形状とほぼ同型の1枚のプリント基板10を図示しないねじ等により該開口部2aを覆うように取り付けてある。」(甲第3号証2頁左下欄1行目?同頁左下欄7行目)
ウ)「プリント基板10の一端(図中左端)側の筐体2内の図中左側に配設されたテープ走行機構4の下側には,ヘッドアンプブロック11を配置してある。また,該プリント基板10の他端(図中右端)側の筐体2内の図中右側に配設された電源供給ボックス5の下側には,サーボ回路系ブロック12とオーディオ回路系ブロック13及びシステムコントロール回路系ブロック14をそれぞれ配置してある。さらに,上記プリント基板10 のサーボ回路系ブロック12 の隣には,チューナブロック15を配置してある。」(甲第3号証2頁左下欄8行目?同頁左下欄18行目)
エ)「テープ走行機構4の一部を成す回転ヘッドドラム6と上記プリント基板10のヘッドアンプブロック11にマウントされた図示しないヘッドアンプ(IC)はハーネス7により接続されている。」(甲第3号証2頁左下欄19行目?同頁右下欄3行目)
オ)「プリント基板10の各ブロック11?15には,所定の回路配線を所定手段によりそれぞれ施してある。」(甲第3号証2頁右下欄17行目?同頁右下欄19行目)
カ)「実施例のビデオテープレコーダ(VTR)によれば,1枚のプリント基板10にヘッドアンプブロック11を,影響を受け易いサーボ回路系ブロック12,オーディオ回路系ブロック13,システムコントロール回路系ブロック14及び電源供給ボックス5から遠ざけるようにそれぞれ配置したので,従来ヘッドアンプブロックを覆うように設けられていたヘッドアンプブロック用のシールドケースを廃止することができる。」(甲第3号証2頁右下欄20行目?3頁左上欄8行目)
キ)「テープ走行機構4 の下側にヘッドアンプブロック11を配置したので,テープ走行機構4の図示しないシャーシ(板金)に,従来のシールドケースと同様のシールド効果を持たせることができる。」(甲第3号証3頁左上欄12行目?同頁16行目)

(ii)甲第4号証(特開昭59-154486号公報)
ア)「メイン基板(3)は電源回路(3a)と,映像信号回路,偏向回路など他の回路部(3b)とに区分されてパターンが形成されており,各回路部(3a)(3b)間にはミシン目状の切断用溝(3c)が設けられている。また,電源回路部(3a)の出力端子(4a)と,回路部(3b)の入力端子(4b)とは近接して相対向するように形成れている」(甲第4号証・2頁左上欄7行目?同頁13行目)
イ)「電源回路とは商用電源を安定化直流電源に変換するものを言い」(甲第4号証・1頁右下欄5行目?6行目)

以上のように、甲第4号証には、商用電源を直流電源に変換する電源回路
部と他の回路部とが切断用溝で区分されて実装された1枚のプリント配線基板が記載されている。

(iii)甲第5号証(実願昭55-111406号(実開昭57-35015号)のマイクロフイルム)
ア)「第1図は本考案の対象になる DC‐DC コンバータの回路図を示し、6は電流電源、13は電源スイッチ、30は直流電源6の電圧を発振動作により高圧の交流に変換するための発振回路、8はその交流出力を整流して高圧の直流に変換するためのダイオード、10 はダイオード8の高圧値流出力を蓄電するコンデンサである。発振回路30はスイッチングトランジスタ7aと、1次側巻線2と2次側高圧巻線4を有するトランス 5aと、コンデンサ9,22と、抵抗23及びトランジスタ保護用のダンパーダイオード25よりなり、第2図示のようにこの発振回路30の構成に必要なパターン33を備えたプリント基板34に、必要部品、すなわちトランジスタ 7a、トランス5a、コンデンサ9,22,抵抗23及びダンパーダイオード25等を取付け配線して構成される。そして必要部品中のトランス5aは互いに組み合わされるコア31,32をプリント基板34に挟んで取り付けられる。」(甲第5号証・2頁5行目?3頁2行目)
イ)「第3図示のようにプリント基板34にE形コア31の中心コア部31aを貫通させる孔34aと両側コア 31b,31cを挟込む切欠部34b,34cを形成し,このコア34a及び切欠部34b,34c にそれぞれE形コア31のコア部31a及び31b,31cを挿通せしめ,基板34より突出した中心コア部31aに1次側巻線2及び2次側高圧巻線4を嵌装して上下2層に積層し,E形コア 31の開放側にI形コア32 を装着してトランス5aをプリント基板34に組立て取付けるものである」(甲第5号証・3頁3行目?同12行目)。

以上の記載から明らかなように,甲第5号証には、スイッチング・レギュレータ回路で構成した電源回路及び高周波漏れ磁束を生ずるコアギャップをプリント基板に平行に配置したトランスが開示されている。

(iv)甲第6号証(特開平1‐245597号公報)
ア)「近年例えばカメラ一体型のように小型、軽量、低消費電力化された磁気記録再生装置の開発が急速に進められており、低消費電力化のために、スイッチング電源は必要不可欠であるが、一方小型化していく上でスイッチングノイズ妨害の対策が必要となってきている。」(甲第6号証・1頁左下欄末行?同頁右下欄5行目)
イ)「第1図においてスイッチング波形平滑用のコイル6から幅射するスイッチングノイズは、対面するシリンダ11の磁気ヘッド、回転トランス及びフレキシブル線材15,16へ影響し画面上にスイッチング電源ビートとしてあらわれる。」(甲第6号証・2頁左下欄18行目?同右下欄2行目)
ウ)第1図には、メカ基板12がプリント基板10に対して平行に配置され、かつメカ基板12 の上に搭載されたビデオヘッドシリンダ11が明記されている(甲第6号証・3頁第1図)。第1図において、ビデオヘッドシリンダ11のメカ基板12 の上での配置は、通常の配置であり、特別の配置である旨の記載はないから、ビデオヘッドシリンダ11のコアギャップがメカ基板12の面に対してほぼ垂直の方向になるように形成されていることは当業者には自明である。

以上のように、甲第6号証には、プリント基板に対して平行に配置され、かつその上に搭載されたビデオヘッドシリンダのコアギャップがその面に対してほぼ垂直の方向になるように形成されたメカ基板12が記載されており、小型、軽量、低消費電力化された磁気記録再生装置においてスイッチング電源が必要不可欠であること、小型化していくとスイッチングノイズ妨害対策が必要であること、スイッチング波形平滑用のコイルから輻射するスイッチングノイズが磁気ヘッドなどに影響することが開示されている。

(v)甲第7号証(特開平2‐163995号公報)
ア)「図において,符号101は長方形状のプリント基板であり,プリント基板101上には,コンデンサ102とチョークコイル103とからなるノイズフィルター回路104と,ダイオード105とコンデンサ106とからなる入力整流側平滑回路107と,トランス108と,ダイオード109とコンデンサ110とからなる出力側整流平滑回路111と,パワートランジスタ112とその駆動回路113とからなるスイッチ回路114と,フォトカブラ115や抵抗素子116等からなる検出回路117が設けられ,側部には入出力端子部120が設けられている。」(甲第7号証1頁右下欄9行目?20行目)
イ)「第8図はその回路構成を示すもので,入出力端子部120の入力側から入力された交流電圧は,ノイズフィルター回路104 を通り入力側整流平滑回路107で直流電圧とされてトランス108の1次側に与えられ,トランス108はスイッチ回路114からの信号によりON/OFFされることにより交流電圧を2次側へ送出し,この交流電圧は出力側整流平滑回路111で再び直流電圧とされて,入出力端子部120 の出力側に与えられるようになっている。また,検出回路117は,そのトランス108 の2次側の出力電圧を検出し,その出力電圧の変動に対応した検出出力をスイッチ回路114 の駆動回路113 に出力するように設けられており,駆動回路113 はその検出出力の入力に応答してパワートランジスタ112をON/OFF制御する構成となっている。」(甲第7号証2頁左上欄1行目?16行目)

以上のように,甲第7号証には,同一基板に設けられたトランスとAC商用電源端子を有するスイッチングレギュレータ回路が記載されている。

(vi)甲第8号証(特開平3‐135371号公報)
甲第8号証第1図Aには,スイッチングレギュレータ回路と,パルストランスとAC商用電源端子を有する基板が記載されている。
ア)「導電路(2)上には複数の電子部品が搭載され交流電源を整流する前段回路(6)と,その前段回路(6)によって整流された電源を所定の出力電源に変換する後段回路(7)が同一平面上に形成されている。」(甲第8号証3頁左下欄8行目?12行目)
イ)「前段回路(6)を構成する主な電子部品は,コンデンサ(8)と,このコンデンサ(8)とLC共振フィルタ回路を構成してスイッチング部分の10K~500Kの比較的低い周波数のノイズを除去するためのノイズフィルタ(9)と,交流電源を直流電源に整流する整流回路(10)とから構成されている。」(甲第8号証3頁左下欄12行目?19行目)
ウ)「後段回路(7)を構成する主な電子部品はノイズフィルタ(9)で除去されない外来ノイズを含む高周波および低周波のノイズを除去するデータフィルタ(11)と,整流回路(10)で整流された直流電源を平滑する第1の平滑コンデンサ(12)と,パルストランス(14)の1次巻線に流れる電流をスイッチングコントロールするスイッチングIC(13)と,1次巻線および2次巻線を備えたパルストランス(14)と,パルストランス(14)より変換された2次巻線側の出力を整流する整流ダイオード(15)と,パルストランス(14)から出力された励磁電流を蓄積し外部の負荷へエネルギーを放出するチョークコイル(16)と, チョークコイル(16)を介してリップル成分を含んだリップル電流を平滑する第2の平滑コンデンサ(20)とから構成されている。」(甲第8号証3頁右下欄16行目から3頁11行目)
エ)「前段回路(6)および後段回路(7)が形成された基板(1)上にはAC入力を行う外部コネクタ(17)が接続される。」(甲第8号証6頁左上欄1行目?3行目)
オ)「スイッチングレギュレータ回路の前段回路と後段回路を全て同一基板上に集積化することができ,小型薄型化を実現した・・・システム全体の小型化に一層寄与できる」(甲第8号証8頁左下欄2行目?同7行目)

以上のように,甲第8号証には,同一基板上に集積化されたパルストランスとAC 商用電源端子とスイッチングレギュレータ回路とを有する小型薄型スイッチング電源装置が記載されている。

(vii)甲第9号証(特開昭58‐30291号公報)
ア)「第2図は,その遅延素子1の取付基板5に対する従来の取付状態を示す図であり,遅延素子1は取付基板5の部品取付パターンの設計上から上記したように,取付基板5にコイル軸線Y-Yが直交するように取り付けられたフライバック・トランス6の近傍で,しかもコイル軸線X-Xがそのフライバック・トランス6に取り付けられるように,その取付基板5に直接取り付けられている。」(甲第9号証・1頁右下欄16行目?2頁左上欄3行目)
イ)「目的は,遅延素子のコイル軸線とフライバック・トランスからの磁束とが直交するようにして,シールドケースなどのシールド部材を使用せずとも遅延素子がフライバック・トランスに対して磁気的に結合しないようにした遅延素子の配置構造を提供することである。」(甲第9号証・2頁右上欄5行目?11行目)
ウ)「本実施例は,第3図に示すように,フライバック・トランス6から発生する磁束の接線が直交する前記した仮想水平面Z-Zに,遅延素子1をそのコイル軸線X-Xが一致するように配置したものである。」(甲第9号証・2頁右上欄13行目?17行目)
エ)「上記のように遅延素子1を位置づけることにより,その遅延素子1を通る磁束Fは,すべてそのコイル軸線X-Xに直交することになり,その磁束 F に含まれているリンギング成分による電圧誘導は効果的に抑制される。よって,シールドケースなどの磁気シールド材を用いなくとも,遅延素子1とフライバック・トランス6との磁気的結合は問題とならず,水平妨害縞成分が有効に除去される。」(甲第9号証・2頁左下欄5行目?13行目)
オ)第2図及び第3図には,フライバック・トランス6のコアギャップの面を取付基板5に対して水平となるように配置していることが明記されている。

以上のように、甲第9号証には、コアギャップの面を取付基板に平行に配置し、2種の磁束を相互に直交させることでノイズの発生を防止する原理が示されている。

(iix)甲第10号証(米国特許第4,686,570号明細書:1987年8月11日発行)
図2には,チューナーモジュール(TUNER MODULE)内にRF回路210が含まれ、RF回路210(チューナーモジュール)とIFアンプ240がミキサー214を介して接続されている状態が示されている。

(ix)甲第11号証(米国特許第4,727,591号明細書:1988年2月23 日発行)
図2には,チューナ22内にRFアンプ24が含まれ,チューナ22とIFアンプ30が接続されている状態が示されている。

(3)本件実用新案登録1と先行技術文献記載の考案または発明との対比
(一致点)
甲第3号証には,電源供給ボックス5がビデオ電子部品と区分されて配置、すなわち「電源回路の電子部品を1枚のプリント配線基板の所定領域である電源領域に実装」又は少なくとも実装可能であることが記載されている。甲第3号証の第1図の記載からは,電源供給ボックス5がどのような態様でプリント基板10の上に配置されているのか定かではないが,「1枚のプリント基板10にヘッドアンプブロック11を,影響を受け易いサーボ回路系ブロック12,オーディオ回路系ブロック13,システムコントロール回路系ブロック14及び電源供給ボックス5から遠ざけるようにそれぞれ配置した」(甲第3号証3頁左上欄1行目?6行目)との記載から,電源供給ボックス5がプリント基板10に実装されているか又は少なくとも容易に実装可能であることが当業者には容易に理解される。
また、ビデオ機構部品搭載用シャーシそのものは図示されていないが、テープ走行機構4のシャーシがあることが記載されており、テープ走行機構4は回転ヘッドドラム6を含むことが第1図に示されている。テープ走行機構4として示された矩形の底面がシャーシと同視できること、及び該底面(シャーシ)に対して回転ヘッドドラム6のコアギャップがほぼ垂直方向に設けられていることは当業者には自明である。

以上のことから,本件登録実用新案1と甲第3号証に記載の磁気記録再生装置とは,
(A) 電源回路の電子部品(電源供給ボックス)を1枚のプリント配線基板(10)の1所定領域である電源領域に実装し,電源回路以外のビデオ電子部品を前記プリント配線基板(10)の電源領域以外の領域であるビデオ回路領域17(ヘッドアンプブロック11,オーディオ回路系ブロック13,システムコントロール回路系ブロック14,チューナブロック15)に実装した前記プリント配線基板(10)と,
(B) 前記プリント配線基板(10)に対して平行に配置され,かつその上に搭載されたビデオヘッドシリンダ(6)のコアギャップが,その面に対してほぼ垂直の方向になるように形成されたテープ走行機構(4)ないしはシャーシとを具備し、
(E) 前記ビデオ回路領域にはチューナブロック15を有する
(F) ビデオテープ記録再生装置(1)
である点で一致する。

(相異点)
甲第3号証には,(A)電源供給ボックス5が基板10のどこに実装されるのか明確ではないこと、(C)電源領域の電源回路がスイッチングレギュレータ回路で構成されていること、(D)電源回路の高周波トランスが、そのコアのギャップによる高周波漏れ磁束を生ずるコアギャップに面をプリント配線基板に平行に配置されていること、(E)電源領域にはAC商用電源端子を有し、ビデオ回路領域にIFアンプおよびRFコンバータの回路端子を有すること、が明記されていない点で相違するように見える。

(A) 電源供給ボックス5が基板10のどこに実装されるのか明確ではないことについて
甲第4号証には、商用電源を直流電源に変換する電源回路部と他の回路部とが切断用溝で区分されて実装された1枚のプリント配線基板が記載されている。
(C) 電源領域の電源回路がスイッチングレギュレータ回路で構成されていることについて
甲第6号証に、小型、軽量、低消費電力化された磁気記録再生装置においてスイッチング電源が必要不可欠であることが記載されているように、磁気記録再生装置において電源回路をスイッチング・レギュレータ回路で構成することは当業者には周知であり、技術常識といえる。 例えば、甲第5号証には、スイッチング・レギュレータ回路で構成した電源回路が記載されている。
甲第7号証には,同一基板に設けられたトランスとAC商用電源端子を有するスイッチングレギュレータ回路が記載されている。
甲第8号証には,同一基板上に集積化されたパルストランスとAC商用電源端子とスイッチングレギュレータ回路とを有する小型薄型スイッチング電源装置が記載されている。
(D) 電源回路の高周波トランスが、そのコアのギャップによる高周波漏れ磁束を生ずるコアギャップに面をプリント配線基板に平行に配置していることについて
甲第5号証には、高周波漏れ磁束を生ずるコアギャップをプリント基板に平行に配置したトランスが記載されている。
甲第9号証には、トランスのコアギャップの面を取付基板に平行に配置することが記載されている。
そもそも,高周波トランスをプリント配線基板に実装する場合に考えられる配置は,トランスのコアギャップをプリント配線基板に対して平行に位置づけるか,または,垂直に位置づけるかの2通りのみである。いずれの配置を採用するかは当業者の選択事項であるが,通常は甲第5号証や甲第9号証に記載のようにプリント配線基板に対してトランスのコアギャップが平行になるように位置づけられる。このように,高周波トランスのコアギャップがプリント配線基板に対して平行になるように実装することは格別のことではなく,当業者には周知慣用の技術にすぎない。
(E) 電源領域にAC商用電源端子を有することについて、
甲第7号証には,同一基板に設けられたトランスとAC商用電源端子を有するスイッチングレギュレータ回路が記載されている。
甲第8号証には,同一基板上に集積化されたパルストランスとAC商用電源端子とスイッチングレギュレータ回路とを有する小型薄型スイッチング電源装置が記載されている。
甲第4号証には、商用電源を直流電源に変換する電源回路部と他の回路部とが切断用溝で区分されて実装された1枚のプリント配線基板が記載されている。
(E') ビデオ回路領域にIFアンプおよびRFコンバータの回路端子を有することについて
IFアンプ及びRFコンバータはビデオテープレコーダに一般的に必要な回路端子であり,通常はチューナと一緒に又はチューナに近接して配置されていることは当業者の技術常識である。
例えば,甲第10号証の図2 には,チューナーモジュール内にRF回路210が含まれ,RF回路210(チューナーモジュール)とIFアンプ240がミキサー214を介して接続されている状態が示されている。
甲第11号証の図2には,チューナ22内にRFアンプ24が含まれ,チューナ22とIFアンプ30が接続されている状態が示されている。
このように,チューナがRFコンバータを含み,チューナにIFアンプが接続されていることは当業者には周知であるから,甲第3号証のビデオ回路領域がチューナブロック15内もしくはチューナブロック15に近接した位置にIFアンプ及びRFコンバータを有することは当業者には自明である。

以上のように構成(C)?(E)は当業者の技術常識ともいえる事項であるから、甲第3号証に記載の磁気記録再生装置に適用することに対する動機付けは十分であり、何ら阻害要因は存在しない。

したがって、甲第3号証に記載の磁気記録再生装置において、甲第4号証?甲第11号証に記載の構成を採用することにより、以下の構成を有する磁気記録再生装置が当業者にはきわめて容易に得られる。
(A) 電源回路の電子部品(電源供給ボックス)を1枚のプリント配線基板(10)の1所定領域である電源領域に実装し,電源回路以外のビデオ電子部品を前記プリント配線基板(10)の電源領域以外の領域であるビデオ回路領域(ヘッドアンプブロック11,オーディオ回路系ブロック13,システムコントロール回路系ブロック14,チューナブロック15)に実装した前記プリント配線基板(10)ないしは甲第4号証に記載の電源回路部と他の回路部とに区分された1枚の基板と、
(B) 前記プリント配線基板(10)に対して平行に配置され,かつその上に搭載されたビデオヘッドシリンダ(6)のコアギャップが,その面に対してほぼ垂直の方向になるように形成されたテープ走行機構(4)ないしはシャーシとを具備し、
(C) 及び(E) 電源供給ボックス(5)として甲第7号証及び甲第8号証に記載のように同一基板上に集積化されたスイッチング・レギュレータ回路と高周波トランスとAC商用電源端子を有するスイッチング電源回路を備え,
(D) 高周波トランスを甲第5号証及び甲第9号証に記載のように高周波トランスのコアギャップをプリント配線基板に平行に配置させ,
(E) ビデオ回路領域に甲第10号証及び甲第11号証に記載のようにチューナ15と一緒にIFアンプ及びRFコンバータの回路端子を有する
(F)ビデオテープ記録再生装置(1)。

さらに,本件考案の作用効果も,記構成(A)?(F)を採用することにより当然に得られる作用効果に過ぎない。

したがって、本件登録実用新案1は、甲第3号証?甲第11号証に記載の考案または発明に基づいて当業者がきわめて容易になし得るものである。

4.被請求人の主張
被請求人は、答弁書において、概要以下のとおり答弁している。

〔4-1〕答弁の概要
被請求人は、請求人が主張する無効理由は、合理的な根拠を欠く失当なものであり、本件審判請求は成り立たないものである旨、主張する。

〔4-2〕答弁の具体的理由-無効理由に対する反論-

(1)甲第3号証
甲第3号証の発明は,磁気記録再生装置において,ヘッドアンプブロックを他の回路系ブロック(サーボ回路系ブロック,オーディオ回路系ブロック,及びシステムコントロール回路系ブロック)から遠ざけるようにしてヘッドアンプブロック及び他の回路系ブロックを基板に配置することにより,ヘッドアンプ用のシールドケースを廃止するものである。
これに対して,本件請求項1に係る考案は, 1)従来それぞれ別のプリント配線基板に実装されていたビデオ回路とその電源回路を1枚のプリント配線基板に実装することにより,コンパクト実装にすること及びビデオ回路と電源回路間の接続配線のための端子を不要とすることができ, 2)ビデオヘッドシリンダのコアギャップが(前記電源回路の)高周波トランスのコアギャップに対してほぼ垂直になるようにすることにより,(前記電源回路の)高周波トランスからの漏れ磁力線をビデオヘッドがピックアップする量を最小とし,ノイズを少なくすることができる,というものである。
イ) 技術課題の相違点
本件請求項1に係る考案は,ビデオ回路とその電源回路を1枚のプリント配線基板にコンパクトに実装し,しかも電源回路のノイズや熱および磁界などの影響を受けないビデオテープ記録再生装置を提供することを技術課題とするものである。
一方,甲第3号証の発明は,「シールドケース(ヘッドアンプブロックを他から電磁遮蔽するシールドケース)を廃止して,部品コスト,取付工数を削減することができる磁気記録再生装置を提供する」(甲第3号証2頁左上欄19行?右上欄1行)ことを技術的課題とするものである。
このように,両者の解決しようとする課題は,全く異なるものである。
口) 構成の相違点
上記技術課題の相違から,甲第3号証の構成には,本件請求項1に係る考案の構成と,以下のような相違点がある。
i) 甲第3号証には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aの「1枚のプリント配線基板の所定領域である電源領域」に相当するものが存しない。また,「電源領域」に相当するものがない以上,当然,甲第3号証には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aの「電源領域以外の領域」に相当するものも存しない。
したがって,甲第3号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aが存しないことは明らかである。
ところで,請求人は,「「1枚のプリント基板10 にヘッドアンプブロック11を,影響を受け易いサーボ回路系ブロック12,オーディオ回路系ブロック13,システムコントロール回路系ブロック14及び電源供給ボックス5から遠ざけるようにそれぞれ配置した」(甲第3号証3頁左上欄1行目?6行目)との記載から,電源供給ボックス5がプリント基板10に実装されているか又は少なくとも容易に実装可能であることが当業者には容易に理解される。」(請求書17頁13?18行)と主張している。
しかしながら,請求人の上記主張は以下に述べるとおり誤りである。
甲第3号証の「電源供給ボックス5」が「プリント基板10」に実装されていないことは,以下の(I)及び(II)から明らかである。また,電源供給ボックス5がプリント基板10に容易に実装可能でないことは,以下の(II)及び(III)から明らかである。
(I) 甲第3号証には,「上記プリント基板10の一端(図中左端)側の筐体2内の図中左側に配設されたテープ走行機構4の下側には,ヘッドアンプブロック11を配置してある。また,該プリント基板10の他端(図中右端)側の筐体2内の図中右側に配設された電源供給ボックス5の下側には,サーボ回路系ブロック12とオーディオ回路系ブロック13及びシステムコントロール回路系ブロック14をそれぞれ配置してある。」(甲第3号証2頁左下欄8行?16行)という記載があり,当該記載からテープ走行機構4のみならず電源供給ボックス5もプリント基板10に実装されていないことは明らかである。
(II) 電源供給ボックス5の下側に対応するプリント基板10の領域には,サーボ回路系ブロック12とオーディオ回路系ブロック13及びシステムコントロール回路系ブロック14が既に実装されているため,当該領域に電源供給ボックス5が実装されることはあり得ない(甲第3号証の第1図参照)。
(III) 電源供給ボックス5をプリント基板10 に実装することを試みた場合,ヘッドアンプブロック11の実装領域と,サーボ回路系ブロック12,オーディオ回路系ブロック13,システムコントロール回路系ブロック14及びチューナブロック15の実装領域との間の領域に電源供給ボックス5を実装することになる(甲第3号証の第1図参照)。
しかしながら,上記のように電源供給ボックス5をプリント基板10に実装すると,ヘッドアンプブロック11から電源供給ボックス5を遠ざけることができず,甲第3号証の発明の技術課題であるヘッドアンプ用のシールドケースの廃止が達成できなくなる。なお,ヘッドアンプブロック11から電源供給ボックス5を遠ざけなければ,ヘッドアンプ用のシールドケースを廃止できないことは,「1枚のプリント基板10にヘッドアンプブロック11を,影響を受け易いサーボ回路系ブロツク12,オーディオ回路系ブロック13,システムコントロール回路系ブロック14及び電源供給ボックス5から遠ざけるようにそれぞれ配置したので,従来ヘッドアンプブロックを覆うように設けられていたヘッドアンプ用のシールドケースを廃止することができる。」(甲第3号証3頁左上欄1行目?8行目)との記載から,明らかである。
したがって,甲第3号証の記載から,電源供給ボックス5をプリント基板10に実装する構成に想到することは,当業者にとって容易ではない。

ii) 甲第3号証には,本件請求項1に係る考案の構成要件Bの「前記プリント配線基板」が存しない。
甲第3号証の「プリント基板10」は,「電源領域」も「電源領域以外の領域」も有していないので,本件請求項1に係る考案の構成要件Bの「前記プリント配線基板」とは全く異なるものである。
したがって,甲第3号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Bが存しないことは明らかである。

iii) 上述のとおり,甲第3号証には,本件請求項1に係る考案の構成要件Cの「前記電源領域」に相当するものについて,開示も示唆もない。
したがって,甲第3号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Cが存しないことは明らかである。

iv) 甲第3号証には,本件請求項1に係る考案の構成要件Dの「高周波トランス」及びその「コアギャップ」あるいはこれらに相当するもののいずれについても,開示も示唆もない。
したがって,甲第3号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Dが存しないことは明らかである。

v) 上述のとおり,甲第3号証には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eの「前記電源領域」に相当するものについて,開示も示唆もない。
また,「前記電源領域」に相当するものがない以上,当然,本件請求項1に係る考案の構成要件Dの「電源領域以外の領域(前記ビデオ回路領域)」に相当するものも存しない。
したがって,甲第3号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eが存しないことは明らかである。

ハ)作用効果の相違点
上記構成上の相違から,甲第3号証の発明には,本件請求項1に係る考案の特有の効果を期待し得ないことは,極めて明らかである。

(2)甲第4号証
甲第4号証の発明は,ディスプレイ装置において,メイン基板上に電源回路部と,映像信号回路部,偏向回路部等他回路部とを区分して配置することにより,メイン基板において電源回路部が不要となる場合に「電源回路」(ディスプレイ装置においては,必須の構成要件ではない。)を「他回路」から分割可能とするものである。
これに対して,本件請求項1に係る考案は, 1)従来それぞれ別のプリント配線基板に実装されていたビデオ回路とその電源回路を1枚のプリント配線基板に実装することにより,コンパクト実装にすること及びビデオ回路と電源回路間の接続配線のための端子を不要とすることができ, 2)ビデオヘッドシリンダのコアギャップが(前記電源回路の)高周波トランスのコアギャップに対してほぼ垂直になるようにすることにより,(前記電源回路の)高周波トランスからの漏れ磁力線をビデオヘッドがピックアップする量を最小とし,ノイズを少なくすることができる,というものである。
イ) 技術課題の相違点
甲第4号証の発明は,パーソナルコンピュータ部とディスプレイ部とを一体化したオールインワンタイプの装置において,電源を両者共通とすることで,メイン基板において電源回路部が不要となる場合に,「大きな基板を使用することによるキャビネット内部への配置等に制約を与える」(甲第4号証1頁右欄19行?20行)という欠点を解消することを技術的課題とするものである。すなわち,これは,甲第4号証の発明に係る「ディスプレイ装置」において基板の小型化を図るために,「電源回路」(ディスプレイ装置においては,必須の構成要件ではない。)を「他回路」から分割しようとするものである。
このように,甲第4号証の発明の技術課題は本件請求項1に係る考案の技術課題とは全く異なるものである。
口) 上記技術課題の相違から,甲第4号証の発明の構成には,本件請求項1に係る考案に対し,以下のような相違点がある。
i) 甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aの「電源領域」が存しない。
甲第4号証1頁右欄3行?5行に明記されているとおり,甲第4号証の発明は,「メイン基板3」上に電源トランス4 を実装しないことを前提としている。
一方,本件請求項1に係る考案は,構成要件Dの記載等から明らかなとおり,プリント配線基板上の電源領域の電源回路は,高周波トランスを有することを前提としている。
したがって,甲第4号証に記載の「(メイン基板3の一部である)電源回路部3 a」と構成要件Aの「電源領域」とは異なるものである。
また,甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aの「ビデオ電子部品」及び「ビデオ回路領域」が存しない。
甲第4号証の発明は,「ディスプレイ装置」に係るものであって,ビデオテープ記録再生装置に係る「ビデオ電子部品」及び「ビデオ回路領域」に関して,開示も示唆も一切していない。
したがって,甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aが存しないことは明らかである。

ii) 甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Bの「ビデオヘッドシリンダ」及びその「コアギャップ」が存しない。
甲第4号証の発明には,「ビデオヘッドシリンダ」及びその「コアギャップ」あるいはこれらに相当するもののいずれについても,開示も示唆も一切されていない。
したがって,甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Bが存しないことは明らかである。
iii) 甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Cの「スイッチング・レギュレータ回路」が存しない。
甲第4号証には,第1図において,電源端子と電源トランスとの間に一切回路がなく,これらが直接接続されていることから,電源回路が,電源トランスの上流で50 -60H z の電流を高周波に変換する「スイッチング・レギュレータ回路」で構成されていないことは明らかである。
したがって,甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Cが存しないことは明らかである。

iv) 甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Dの「高周波トランス」及び「コアギャップ」が存しない。
甲第4号証の「トランス4」は,上記のとおり電源端子から直接接続されているものであって,50-60H z(低周波)のトランスと解される。
また,甲第4号証には,「トランス4」の配置に関して,「メイン基板3上には実装しない」(甲第4号証1頁右欄3行?5行参照)旨の記載があるだけで,そのコアギャップの面との関連では何ら特定されていない。
したがって,甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Dが存しないことは明らかである。

v) 甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eの「チューナ, I FアンプおよびRFコンバータの回路端子」が存しない。
甲第4号証には,「チューナIFアンプおよびRFコンバータの回路端子」に関する記述が一切ない。
したがって,甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eが存しないことは明らかである。

vi) 甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Fの「ビデオテープ記録再生装置」が開示されていない。
甲第4号証の発明は,「ディスプレイ装置」に係るものであって,「ビデオテープ記録再生装置」に関する記述は一切ない。
したがって,甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Fが存しないことは明らかである。
ハ) 作用効果の相違点
上記構成上の相違から,甲第4号証の発明には,本件請求項1に係る考案の特有の効果を期待し得ないことは,極めて明らかである。
(3) 甲第5号証
甲第5号証の考案は,トランスのコアをプリント基板に挟んで取り付けることにより,トランスをプリント基板に取り付けるための固定部品を不要にできると共に,トランスの組立後の取付け作業を省略することができるものである。
これに対して,本件請求項1に係る考案は, 1)従来それぞれ別のプリント配線基板に実装されていたビデオ回路とその電源回路を1枚のプリント配線基板に実装することにより,コンパクト実装にすること及びビデオ回路と電源回路間の接続配線のための端子を不要とすることができ, 2)ビデオヘッドシリンダのコアギャップが(前記電源回路の)高周波トランスのコアギャップに対してほぼ垂直になるようにすることにより,(前記電源回路の)高周波トランスからの漏れ磁力線をビデオヘッドがピックアップする量を最小とし,ノイズを少なくすることができる,というものである。

イ) 技術課題の相違点
甲第5号証の考案は,「従来,プリント配線基板に必要部品を取付け配線して所望の電気回路を構成する場合,必要部品中のトランスはバンドとビス・ナット類等の固定部品を必要としてプリント基板に取り付けられているため,固定部品を必要とするばかりでなく,トランスの組立作業とは別にトランスの取付け作業を必要とする欠点」(甲第5号証1頁15行?2頁1行)を解消することを技術課題とするものである。
このように,甲第5号証の考案の技術課題は本件請求項1に係る考案の技術課題とは全く異なるものである。

口) 構成の相違点
上記技術課題の相違から,甲第5号証の構成は本件請求項1に係る考案の構成と以下のような相違点がある。
i) 甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aの「電源領域」及び「ビデオ回路領域」が存しない。
甲第5号証に記載の「プリント基板34」は,発振回路30専用の小基板であって,その1所定領域(電源領域)に電源回路の電子部品が実装され,それ以外の領域(ビデオ回路領域)にビデオ電子部品が実装されている旨の記述は一切ない。
したがって,甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aが存しないことは明らかである。
ii) 甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Bの「ビデオヘッドシリンダ」及びその「コアギャップ」が存しない。
甲第5号証の考案には,「ビデオヘッドシリンダ」及びその「コアギャップ」あるいはこれらに相当するもののいずれについても,開示も示唆も一切されていない。
したがって,甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Bが存しないことは明らかである。
iii) 甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Cの「スイッチングレギュレータ」は存するが,本件請求項1に係る考案の構成要件Cの「前記電源領域」が存しない。
甲第5号証に記載の「プリント基板34」は,発振回路30専用の小基板であって,その1所定領域(電源領域)に電源回路の電子部品が実装され,それ以外の領域(ビデオ回路領域)にビデオ電子部品が実装されている旨の記述は一切ない。
したがって,甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Cが存しないことは明らかである。
iv) 甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Dの「前記プリント配線基板」が存しない。
甲第5号証に記載の「プリント基板34」は,発振回路30専用の小基板であって,構成要件Dの「前記プリント配線基板」とは異なるものである。
したがって,甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Dが存しないことは明らかである。
v) 甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eの「AC商用電源端子」が存しない。
甲第5号証の考案は,DC電源(第1図の直流電源6)を前提とするものであるから,構成要件Eの「AC商用電源端子」を有しない。
また,甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eの「チューナ, I FアンプおよびRFコンバータの回路端子」が存しない。
甲第5号証には,「チューナIFアンプおよびRFコンバータの回路端子」に関する記述が一切ない。
したがって,甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eが存しないことは明らかである。
vi) 甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Fの「ビデオテープ記録再生装置」が存しない。
甲第5号証の考案は,「トランスを有する電気回路」に係るものであって,「ビデオテープ記録再生装置」に関するものではない。
したがって,甲第5号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Fが存しないことは明らかである。

ハ) 作用効果の相違点
上記構成上の相違から,甲第5号証には,本件請求項1に係る考案の特有の効果が存しないことは,極めて明らかである。

(4)甲第6号証
甲第6号証の発明は,スイッチング電源を備えた磁気記録再生装置において,スイッチング電源の平滑用コイルをシールドするシールドケースを2重構造にすることにより,スイッチングノイズを防止するものである。
これに対して,本件請求項1に係る考案は, 1)従来それぞれ別のプリント配線基板に実装されていたビデオ回路とその電源回路を1枚のプリント配線基板に実装することにより,コンパクト実装にすること及びビデオ回路と電源回路間の接続配線のための端子を不要とすることができ,2)ビデオヘッドシリンダのコアギャップが(前記電源回路の)高周波トランスのコアギャップに対してほぼ垂直になるようにすることにより,(前記電源回路の)高周波トランスからの漏れ磁力線をビデオヘッドがピックアップする量を最小とし,ノイズを少なくすることができる,というものである。

イ) 技術課題の相違点
本件請求項1に係る考案は,ビデオ回路とその電源回路を1枚のプリント配線基板にコンパクトに実装し,しかも電源回路のノイズや熱および磁界などの影響を受けないビデオテープ記録再生装置を提供することを技術課題とするものである。
一方,甲第6号証の発明は,「シールドケースを2重構造にすることにより,スイッチングノイズを防止するようにした磁気記録再生装置を提供する」(甲第6号証2頁右上欄3?5行)ことを技術的課題とするものである。
このように,両者の技術課題は「ノイズ対策」において一方はシールドを外す方向で,他方はシールドを強化する方向で行なう,いわば,正反対のものである。
したがって,その解決手段を具現化する構成においても,異なったものになる。

口) 構成の相違点
上記技術課題の相違から,甲第6号証の構成は本件請求項1に係る考案の構成と以下のような相違点がある。
i)甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aの「電源領域」及び「ビデオ回路領域」が存しない。
甲第6号証に記載の「プリント基板10」に関して,その1所定領域(電源領域)に電源回路の電子部品が実装され,それ以外の領域(ビデオ回路領域)にビデオ電子部品が実装されている旨の記述は一切ない。
したがって,甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aが存しないことは明らかである。
なお,甲第6号証の第1図においては,コイル6とヘッドアンプ13及びフレキシブル線材15,16とが,プリント基板10上の別々の位置に実装されているが,これは,単に,異なる部品を異なる場所に実装したものにすぎず,甲第6号証の発明には,電源の電子部品を実装する領域とビデオ電子部品を実装する領域とを区別するという技術思想は全く存しない。

ii) 甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Bの「前記プリント配線基板」,及び「ビデオ機構部品搭載用シャーシ」が存しない。
上述したように,甲第6号証に記載の「プリント基板10」に関して,その1所定領域(電源領域)に電源回路の電子部品が実装され,それ以外の領域(ビデオ回路領域)にビデオ電子部品が実装されている旨の記述は一切ないので,甲第6号証に記載の「プリント基板10」は,構成要件Bの「前記プリント配線基板」と異なる。
さらに,甲第6号証の発明には,「ビデオ機構部品搭載用シャーシ」あるいはこれに相当するものについても,開示も示唆も一切されていない。
したがって,甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Bが存しないことは明らかである。
iii) 甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Cの「前記電源領域の電源回路」が存しない。
甲第6号証の「スイッチング電源装置」は「高周波トランス」を有しない。
一方,本件請求項1に係る考案は,構成要件Dの記載等から明らかなとおり,プリント配線基板上の電源領域の電源回路は,高周波トランスを有することを前提としている。
したがって,甲第6号証に記載の「スイッチング電源装置」と構成要件Cの「前記電源領域の電源回路」とは異なるものであり,甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Cが存しないことは明らかである。
iv) 甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Dの「コアギャップ」が存しない。
甲第6号証に記載の「コイル6」は,1本の巻線から成るものであって,複数の巻線から成る構成要件Dの「高周波トランス」とは,全く別のものである。また,「コア・ギャップに(の)面」をどのように配置するかに関する記述も一切ない。
したがって,甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Dが存しないことは明らかである。

v) 甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eの「AC商用電源端子」が存しない。
甲第6号証1頁右欄10行?2頁左上欄10行に明示されているように,甲第6号証の発明は,DC電源を前提とするものであるから,構成要件Eの「AC商用電源端子」を有しない。
また,甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eの「チューナIFアンプおよびRFコンバータの回路端子」が存しない。
甲第6号証に開示されているのは,カメラ一体型等ポータブルの磁気記録再生装置であって,家庭用据置型の磁気記録再生装置ではないので,「チューナ,I FアンプおよびRF コンバータの回路端子」に関する記述がない。
したがって,甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eが存しないことは明らかである。

ハ) 作用効果の相違点
上記構成上の相違から,甲第6号証の発明には,本件請求項1に係る考案の効果は期待し得ない。すなわち,甲第6号証の発明によれば,シールドの強化(シールドケースを2重構造にする)によって,コストアップ及び工程時間の増加を伴うことは自明だからである。

(5)甲第7号証及び甲第8号証
甲第7号証の発明は,スイッチング電源装置において,トランスや各種回路が配置される基板が,第1,第2,第3のそれぞれの基板単体からなり,それらの基板が立体的に構成するようにケーシング内にそれらの基板を配置することにより,ディンレール等への取り付けを安定して行えるというものである。
甲第8号証の発明は,スイッチング電源回路の前段回路及び後段回路を同一絶縁基板に搭載し後段回路に配置されるデータフィルタを薄型にすることにより,スイッチング電源装置の小型薄型化を実現できるものである。
これらに対して,本件請求項1に係る考案は,1)従来それぞれ別のプリント配線基板に実装されていたビデオ回路とその電源回路を1枚のプリント配線基板に実装することにより,コンパクト実装にすること及びビデオ回路と電源回路間の接続配線のための端子を不要とすることができ,2)ビデオヘッドシリンダのコアギャップが(前記電源回路の)高周波トランスのコアギャップに対してほぼ垂直になるようにすることにより,(前記電源回路の)高周波トランスからの漏れ磁力線をビデオヘッドがピックアップする量を最小とし,ノイズを少なくすることができる,というものである。
甲第7号証及び甲第8号証は,いずれも電源装置そのものに係る発明であり,その全てが電源回路に係るものであるから,そもそも,「電源領域」という技術思想は有しないのである。
したがって,甲第7号証及び甲第8号証は,本件請求項1に係る考案の構成要件C及びEのいずれも開示されていない。
また,上述したとおり,甲第7号証及び甲第8号証は,いずれも「電源装置」に係るものであって,本件請求項1に係る考案の構成要件A,B,D,及びFについても開示も示唆も一切されていない。
以上より,甲第7号証及び甲第8号証の各発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件A乃至Fが存しないことは明らかである。

(6)甲第9号証
甲第9号証の発明は,遅延素子のコイル軸線とフライバック・トランスからの磁束とが直交するようにしたことにより,シールド部材を使用せずとも遅延素子がフライバック・トランスに対して磁気的に結合しないようにするものである。
これに対して,本件請求項1に係る考案は, 1)従来それぞれ別のプリント配線基板に実装されていたビデオ回路とその電源回路を1枚のプリント配線基板に実装することにより,コンパクト実装にすること及びビデオ回路と電源回路間の接続配線のための端子を不要とすることができ,2)ビデオヘッドシリンダのコアギャップが(前記電源回路の)高周波トランスのコアギャップに対してほぼ垂直になるようにすることにより,(前記電源回路の)高周波トランスからの漏れ磁力線をビデオヘッドがピックアップする量を最小とし,ノイズを少なくすることができる,というものである。

イ) 技術課題の相違点
甲第9号証の発明は,「遅延素子のコイル軸線とフライバック・トランスからの磁束とが直交するようにして,シールド部材を使用せずとも遅延素子がフライバック・トランスに対して磁気的に結合しないようにした遅延素子の配置構造を提供する」(甲第9号証2頁右上欄6?11行)ことを技術的課題とするものである。
甲第9号証の発明において,遅延素子がフライバツク・トランスに対して磁気的に結合すると「水平妨害縞成分(テレビ画面上に現れるノイズの一種)」が発生するから,両者の課題は,「ノイズ対策」という意味においては一部共通しているともいえる。しかしながら,本件請求項1に係る考案は,「ビデオ装置」におけるノイズ対策であるのに対して,甲第9号証の発明は,「テレビ受像機」におけるノイズ対策であるから,その解決しようとする課題は,以下に述べるように全く異なるものである。
i)ビデオ装置においては,高周波トランスの発振周波数(通常70~170kHz)の数倍のノイズ成分が,ビデオ・ヘッド・シリンダのヘッド・ギャップによってピックアップされ,低域変換された色信号(NTSCでは629kHz)に対して影響を及ぼしやすい。これに対して,テレビの遅延素子が受けるノイズ成分は,甲第9号証2頁左上欄13行から16行にも記載されているとおり,主として「リンギング成分」(通常,水平同期信号(NTSCでは15. 75kHz)の数十倍から数百倍である約500kHz~5MH z)であり,これは,輝度信号(数Hz~5MHz)に対して影響を及ぼしやすい(画面上に明暗の縦縞模様が現れる。)。
このように,本件請求項1に係る考案と甲第9号証の発明とでは,対策の対象となるノイズ成分が全く異なっている。

ii)ビデオ・ヘッド・シリンダのヘッド・ギャップは,磁気テープに記録された極めて微少な磁気を読み取るものであって,ノイズの影響を極めて受けやすいものである。一方,甲第9号証の「遅延素子1」はコイルの周囲が金属で覆われたものである(甲第9号証の第1図に「アース端子4」が示されていることから,当業者には自明である)から,比較的ノイズの影響を受けにくいものである。
また,実際に遅延素子がノイズの影響を受けた場合,画面上に明暗の縦縞模様(固定)が現れる程度であるが,ビデオ・ヘッド・シリンダがノイズの影響を受けた場合,色信号に影響し,画面上には不規則に動くノイズが現れるので,見るに耐えない状態となる。
したがって,本件請求項1に係る考案では,甲第9号証の発明と比べて,極めて厳密なノイズ対策が求められることになる。

口) 構成の相違点
上記技術課題の相違から,両者には,その構成面においても次のような相違点がある。
i)甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aの「電源領域」及び「ビデオ回路領域」が存しない。
甲第9号証に記載の「取付基板5」に関して,その1所定領域(電源領域)に電源回路の電子部品が実装され,それ以外の領域(ビデオ回路領域)にビデオ電子部品が実装されている旨の記述は一切ない。
したがって,甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Aが存しないことは明らかである。

ii)甲第9号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Bの「ビデオヘッドシリンダ」及びその「コアギャップ」が存しない。
甲第9号証の考案には,「ビデオヘッドシリンダ」及びその「コアギャップ」あるいはこれらに相当するもののいずれについても,開示も示唆も一切されていない。
したがって,甲第9号証の考案には,本件請求項1に係る考案の構成要件Bが存しないことは明らかである。

iii)甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Cの「スイッチング・レギュレータ回路」が存しない。
甲第9号証には,電源回路がスイッチング・レギュレータ回路であるか否かに関する記述は一切ない。
したがって,甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Cが存しないことは明らかである。

iv)甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Dの「高周波トランス」が存しない。
甲第9号証に記載の「フライバック・トランス」はブラウン管駆動のための昇圧用トランスであるから,これと構成要件Dの「前記回路(スイッチング・レギュレータ回路)の高周波トランス」とは異なるものである。
したがって,甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Dが存しないことは明らかである。
v)甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eの「AC商用電源端子」が存しない。
甲第9号証には,DC回路が開示されているのみで,電源領域及びAC商用電源端子に関する記述は全く無い。
また,甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eの「RFコンバータの回路端子」が存しない。
甲第9号証には,テレビの回路が開示されているだけで,ビデオテープ記録再生装置固有の回路である「RFコンバータの回路端子」に関する記述は一切ない。
したがって,甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Eが存しないことは明らかである。

vi)甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Fの「ビデオテープ記録再生装置」が開示されていない。
甲第9号証の発明は,「テレビ受像機における遅延素子の配置構造」に係るものであり,「ビデオテープ記録再生装置」に関する記述は一切ない。
したがって,甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件Fが存しないことは明らかである。

ハ) 作用効果の相違点
上記構成上の相違から,甲第9号証の発明には,本件請求項1に係る考案の効果は期待し得ない。すなわち,甲第9号証の発明によれば,ホルダ8を取付けることによって,コストアップ及び工程時間の増加を伴うことが自明であり,また,「コンパクト化」を図ることができるものでもない。

(7)甲第10号証及び甲第11号証
甲第10号証の発明は,2相の3fc(NTSC方式の色副搬送波信号の3倍の周波数)のクロック信号に応じて,アナログの変調複合ビデオ信号を,前記変調複合ビデオ信号の各同相及び直角位相ベースバンド成分を表す2つのデジタル信号に変換するAD変換器であって,ゴーストを除去するものである。
甲第11号証の発明は,マイクロプロセッサ制御のチューニングシステムにおいて,RF信号の特性変動を補い継続的にチューナを調整するために,実際のI F信号周波数をダイレクトに測定することにより,自動周波数制御機能を有するマイクロプロセッサ制御のチューニングシステムをなるべく経済的に,且つ融通が利く構成で実現するものである。
これらに対して,本件請求項1に係る考案は,1)従来それぞれ別のプリント配線基板に実装されていたビデオ回路とその電源回路を1枚のプリント配線基板に実装することにより,コンパクト実装にすること及びビデオ回路と電源回路間の接続配線のための端子を不要とすることができ,2)ビデオヘッドシリンダのコアギャップが(前記電源回路の)高周波トランスのコアギャップに対してほぼ垂直になるようにすることにより,(前記電源回路の)高周波トランスからの漏れ磁力線をビデオヘッドがピックアップする量を最小とし,ノイズを少なくすることができる,というものである。
甲第10号証及び甲第11号証は,プリント配線基板上の配置に関しての記載は何ら存在しないから,そもそも,「ビデオ回路領域」という技術思想は存しない。
したがって,申第10号証及び甲第11号証は,本件請求項1に係る考案の構成要件Eは開示されていない。
また,上述したとおり,甲第10号証及び甲第11号証には,「プリント配線基板」に関して開示も示唆もないので,本件請求項1に係る考案の構成要件A,B,C,Dが存しない。
さらに,甲第10 号及び甲第11号証は,それぞれ「Te1evision Deghosting System」(テレビジョン・ディゴーステイング・システム),「Tuning System」(チューニング・システム)に係るものであるから,本件請求項1に係る考案の構成要件Fも存しない。
以上より,甲第10号証及び甲第11号証の各発明には,本件請求項1に係る考案の構成要件A乃至Fが存しないことは明らかである。

(8)甲第3号証乃至甲第11号証の組み合わせ
イ) 請求人は,甲第3号証に記載の磁気記録再生装置において,甲第4号証に記載のプリント配線基板に実装される回路の配置態様と,甲第5号証に記載の高周波トランスと,甲第5号証,甲第6号証,甲第7号証及び甲第8号証に記載のスイッチング電源装置と,甲第5号証及び甲第9号証に記載の高周波トランスの設置態様と,甲第10号証及び甲第11号証に記載のIF回路及びRF回路とを,いかにして用いるかについて何ら言及しておらず,請求人の主張する上記組み合わせ自体,当業者にとってきわめて容易であるとは言い難い。
以下,甲第3号証と甲第4号証乃至甲第11号証それぞれとの組み合わせが当業者にとってきわめて容易であるとは言い難い理由について,より詳細に述べる。

i) 甲第3号証と甲第4号証との組み合わせ
甲第3号証に記載の磁気記録再生装置において,甲第4号証に記載のメイン基板上に電源回路部と,映像信号回路部,偏向回路部等他回路部とを区分して配置する構成を採用することを試みる場合,
(I)甲第3号証のプリント基板10に配置されているヘッドアンプブロック11,サーボ回路系ブロック12,オーディオ回路系ブロック13,システムコントロール回路系ブロック14,及びチューナブロック15と,甲第4号証のメイン基板3に配置されている映像信号回路部,偏向回路部等他回路部8 bとは全く異なる回路であること,
(II)甲第4号証の電源回路部8a を,ヘッドアンプブロック11の実装領域と,サーボ回路系ブロック12,オーディオ回路系ブロック13,システムコントロール回路系ブロック14及びチューナブロック15の実装領域との間の領域に実装することになるが(甲第3号証の第1図参照),このような実装態様では,ヘッドアンプブロック11から電源回路部8a を遠ざけることができず,甲第3号証の発明の技術課題であるヘッドアンプ用のシールドケースの廃止が達成できなくなること, という事情があるため,当該試行すなわち甲第3号証と甲第4号証との組み合わせは当業者にとってきわめて容易ではない。
また,仮に甲第3号証と甲第4号証とを組み合わせることができたとしても,甲第4号証では電源トランス4がメイン基板3に実装されておらず,しかも電源トランス4は上記(2)で述べたとおり高周波トランスではないため,本件請求項1に係る考案の「プリント配線基板に電源回路の高周波トランスを実装している構成」(構成要件A,D)に想到することはない。

ii) 甲第3号証と甲5号証との組み合わせ
甲第5号証に記載の「プリント基板34」は「所望の電気回路」専用の基板であって(甲第5号証3頁3行から12行及び第3図参照。),例えば発振回路30のような一部品を構成するものである。
一方,甲第3号証の「プリント基板10」は,甲第3号証2頁左下欄8行から18行の記載等から明らかなとおり,その上面に各種部品を実装するものである。
このように,甲第5号証に記載の「プリント基板34」は甲第3号証に記載の「プリント基板10」とは全く異質のものであるから,甲第5号証に開示されたトランスの組立て・取付けに係る技術思想を,甲第3号証に流用することは,当業者が容易に想到し得るものではない。

iii) 甲第3号証と甲6号証との組み合わせ
甲第6号証に記載の「スイッチング電源装置」は,上記(4)で述べたとおり,「高周波トランス」を有さない構成であるため,甲第3号証と甲6号証とを組み合わせても,本件請求項1に係る考案の「高周波トランスを有するスイッチング・レギュレータをプリント配線基板に実装している構成」(構成要件A,C,D)に想到することはない。

iv) 甲第4号証と甲7号証及び甲第8号証との組み合わせ
甲7号証に記載のスイッチング・レギュレータは,上記(5)で述べたとおり,3つの基板単体(第1,第2,第3のそれぞれの基板単体)を備えているので,甲第3号証と甲7号証とを組み合わせても,本件請求項1に係る考案の「スイッチング・レギュレータを1枚のプリント配線基板に実装している構成」(構成要件A,C)に想到することはない。
また,甲8号証に記載のスイッチング・レギュレータは,小型薄型化を実現するものであるが,その実施例において, 20cm× 30cmサイズの基板が用いられており(甲8号証3頁左上欄18行から19行),その基板サイズは甲第3号証に記載のVTR(磁気記録再生装置)にとっては大きすぎるため,甲第3号証に記載のVTR(磁気記録再生装置)において甲第8号証に記載のスイッチング・レギュレータを採用することは極めて困難である。

v) 甲第3号証と甲9号証との組み合わせ
甲第9号証に記載の「フライバック・トランス6」は,テレビ受像機にのみ用いられる部材であるから,甲第3号証に記載の磁気記録再生装置において,いかにして用いることができるのか,当業者をもってしても全く理解できない。
また,甲第3号証には開示も示唆もないが,「電源供給ボックス5」内に「高周波トランス」が存在するものと仮定し,その「高周波トランス」と甲第3号証の「プリント基板10」との位置関係を,甲第9号証の「フライバック・トランス6」と「取付基板5」との位置関係を参酌して定めようとしても,甲第3号証の「電源供給ボックス5」の取付け態様は甲第3号証からは不明であるため,当該「電源供給ボックス 5」内に存在すると仮定した「高周波トランス」と「プリント基板10」との位置関係を一に定めることはできない。

vi) 甲第3号証と甲10号証及び甲第11号証との組み合わせ
甲第10号証は「テレビ受像機のゴースト除去用アナログ-ディジタル・コンバータ」に係るものであり,甲第11号証は「衛星信号受信機に使用されるマイクロプロセッサ制御同調装置」に係るものである。
これらをいかにして甲第3号証に記載の磁気記録再生装置において用いることができるのか,審判請求書全文を通じても一切説明がなされておらず,全く不明である。かかる組み合わせが当業者にとって容易であるとはいえない。

口) また,上記いずれの引用例にも,本件請求項1に係る考案の構成要件A,B,C,D,Eは存しないから,仮に,上記引用例を組み合わせることができたとしても,かかる組み合わせに基づいて,当業者が本件請求項1に係る考案にきわめて容易に想到できたとはいえない。

5.当審の判断

(1)本件考案
本件登録第2571891号実用新案の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、訂正審決時の明細書の請求項1に記載されたとおりのものである(上記「2.」を参照。)。

(2)引用考案
[甲第3号証(特開平2-281494号公報)]
請求人が提出した、本願出願前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開平2-281494公報)は、磁気記録再生装置に関するもので、図面とともに次の技術事項が記載されている。
ア)「この発明は,筐体の下部に,サーボ回路系ブロック,オーディオ回路系ブロック等をそれぞれ配置させた基板を取り付けた磁気記録再生装置において,上記筐体の下部に底板を介して取り付けられる基板の一端側のテープ走行機構の下側に,ヘッドアンプブロックを配置すると共に,該基板の他端側にサーボ回路系ブロックとオーディオ回路系ブロック及びシステムコントロール回路系ブロックをそれぞれ配置したことにより,ヘッドアンプブロックを上記他の回路系ブロックより遠ざけ,ヘッドアンプ用のシールドケース(電磁遮蔽板)を廃止してシールドケースレス化を実現することができるようにしたものである。」(甲第3号証第1頁左下欄第19行目?同頁右下欄第12行目)
イ)「第1図中,1は磁気記録再生装置としてのビデオテープレコーダ(VTR)である。このビデオテープレコーダ1の筐体2の下部に設けられた開口部2aには,金属製の底板3を介して該底板1の形状とほぼ同型の1枚のプリント基板10を図示しないねじ等により該開口部2aを覆うように取り付けてある。」(甲第3号証2頁左下欄1行目?同頁左下欄7行目)
ウ)「プリント基板10の一端(図中左端)側の筐体2内の図中左側に配設されたテープ走行機構4の下側には,ヘッドアンプブロック11を配置してある。また,該プリント基板10の他端(図中右端)側の筐体2内の図中右側に配設された電源供給ボックス5の下側には,サーボ回路系ブロック12とオーディオ回路系ブロック13及びシステムコントロール回路系ブロック14をそれぞれ配置してある。さらに,上記プリント基板10 のサーボ回路系ブロック12 の隣には,チューナブロック15を配置してある。」(甲第3号証2頁左下欄8行目?同頁左下欄18行目)
エ)「テープ走行機構4の一部を成す回転ヘッドドラム6と上記プリント基板10のヘッドアンプブロック11にマウントされた図示しないヘッドアンプ(IC)はハーネス7により接続されている。」(甲第3号証2頁左下欄19行目?同頁右下欄3行目)
オ)「プリント基板10の各ブロック11?15には,所定の回路配線を所定手段によりそれぞれ施してある。」(甲第3号証2頁右下欄17行目?同頁右下欄19行目)
カ)「実施例のビデオテープレコーダ(VTR)によれば,1枚のプリント基板10 にヘッドアンプブロック11を,影響を受け易いサーボ回路系ブロック12,オーディオ回路系ブロック13,システムコントロール回路系ブロック14及び電源供給ボックス5から遠ざけるようにそれぞれ配置したので,従来ヘッドアンプブロックを覆うように設けられていたヘッドアンプブロック用のシールドケースを廃止することができる。」(甲第3号証2頁右下欄20行目?3頁左上欄8行目)
キ)「テープ走行機構4の下側にヘッドアンプブロック11を配置したので,テープ走行機構4の図示しないシャーシ(板金)に,従来のシールドケースと同様のシールド効果を持たせることができる」(甲第3号証3頁左上欄12行目?同頁16行目)

上記記載事項及び図面の記載を参酌すると、甲第3号証には、次の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されているものと認められる。

「ビデオテープレコーダ(VTR)1の筐体2と、
前記筐体2内(のプリント基板10の図中左側)に配設されたテープ走行機構4と、
前記筐体2内(のプリント基板10の図中右側)に配設された電源供給ボックス5と、
前記筐体2の下部に設けられた開口部2aに金属製の底板3を介して該開口部2aを塞ぐように取り付けられ、ヘッドアンプブロック11、サーボ回路系ブロック12、オーディオ回路系ブロック13、システムコントロール回路系ブロック14、及び、チューナブロック15を実装したプリント基板10と、を有し、
前記走行機構4の一部をなす回転ヘッド6と上記プリント基板10のヘッドアンプブロック11にマウントされたヘッドアンプ(IC)はハーネス7により接続されている
磁気記録再生装置。」

(3)対 比
本件考案と引用考案とを対比する。
引用考案が対象とする「ビデオテープレコーダ(VTR)」、「磁気記録再生装置」とは、本件考案が対象とする「ビデオテープ記録再生装置」のことである。
引用考案における「電源供給ボックス」は、「電源回路の電子部品」を備えるものであることは明らかである。
引用考案における「プリント基板」とは、本件考案における「プリント配線基板」のことである。
引用考案における、「ヘッドアンプブロック11、サーボ回路系ブロック12、オーディオ回路系ブロック13、システムコントロール回路系ブロック14、及び、チューナブロック15」は、上記電源回路以外の「ビデオ電子部品」と言い得るものであり、それらが実装される領域は「ビデオ回路領域」と言えることは明らかである。
引用考案における「テープ走行機構4」は、「ビデオ機構部品」と言えるものであり、シャーシ(「ビデオ機構部品搭載用シャーシ」)の上に搭載されていることは明らかである(なお、このことについては、被請求人も答弁書中で特に争っていないところである。)。
また、引用考案における「テープ走行機構4」内の「回転ヘッド6」は、本件考案における「ビデオヘッドシリンダ」のことであり、シャーシに対して回転ヘッド(ビデオシリンダ)のコアギャップがほぼ垂直の方向に設けられることはごく普通の態様であるかもしくは自明である。

そうすると、本件考案と引用考案とは次の点で一致する。
<一致点>
「電源回路の電子部品と、
前記電源回路以外のビデオ電子部品をビデオ回路領域に実装したプリント配線基板と、
前記プリント配線基板に対して平行に配置され、かつその上に搭載されたビデオヘッドシリンダのコアギャップが、その面に対してほぼ垂直の方向になるように形成されたビデオ機構部品搭載用シャーシとを具備し、
前記ビデオ回路領域にはチューナを有する
ビデオテープ記録再生装置。」

そして、次の各点で相違する。
<相違点>
(a) 「プリント配線基板」に関し、本件考案は、電源回路の電子部品を1枚のプリント基板の1所定領域である電源領域に、電源回路以外のビデオ電子部品を電源領域以外のビデオ回路領域に実装するものであるのに対し、引用考案は、電源回路以外のビデオ電子部品は(1枚の)プリント配線基板上に実装するものであるが、電源回路の電子部品の実装箇所については特に具体的に示されていない点(以下、「相違点a」という。)。
(b) 電源回路に関し、本件考案は、スイッチング・レギュレータ回路で構成し、その回路の高周波トランスは、そのコアのギャップによる高周波漏れ磁束を生ずるコアギャップに面をプリント配線基板に平行に配置するものであるのに対し、引用考案においては、特にこのことについて示されていない点(以下、「相違点b」という。)。
(c) 本件考案においては、(1枚のプリント配線基板上の)電源領域には、AC商用電源端子を有し、ビデオ回路領域にはIFアンプおよびRFコンバータの回路端子を有するものであるのに対し、引用考案においては、特にこのことについて示されていない点(以下、「相違点c」という。)。

(4)判 断
そこで、上記各相違点について検討する。

(相違点aについて)
甲第4号証には、電源回路部と電源回路以外の他の回路部とを1枚の基板上に実装することが記載されている。
引用考案と甲第4号証とは、電源回路部と他回路部を備える装置という限りでは共通すると言えるので、引用考案においても、甲第4号証に記載のもののように、1枚のプリント配線基板上にビデオ電子部品に加え、別途電源領域を形成し、単に、電源回路の電子部品をも実装するようにすることは当業者がきわめて容易に想到できたものである(なお、スイッチング電源装置そのものであるが、複数の電子部品を搭載した前段回路とパルストランス(高周波トランス)を含む後段回路を同一の基板上に実装すること、言い換えると、一方の回路は高周波トランスを含むものである2種類の回路を1枚の基板上に実装すること自体は甲第8号証に記載されているところである。)。

(相違点bについて)
VTR等の磁気記録再生装置の電源回路として、スイッチング・レギュレータ回路を使用することは、甲第6号証の外にも、特開昭61-79393号公報、及び、特開昭63-253866号公報にもみられるように本願出願前にごく周知の技術である。
また、甲第5号証には、DC-DCコンバータ(スイッチング・レギュレータ)に用いる高周波トランスのE-I形コアのギャップ面をプリント基板に平行に配置して取り付けることが記載されており、基板に対するこのようなコアの取付け方はごく通常の態様である。
してみると、磁気記録再生装置をその対象とする引用考案において、電源回路として、単に、周知のスイッチング・レギュレータ回路を使用し、回路に用いる高周波トランスのコアのギャップ面をプリント配線基板に対し平行に配置する程度のことは当業者がきわめて容易に想到できたものである。
そして、磁気記録再生装置において、スイッチング・レギュレータ回路を電源回路として使用するとノイズが発生しビデオ回路に悪影響を与えることはよく知られており(前掲の特開昭61-79393号公報、及び、特開昭61-248676号公報を参照。)、甲第9号証にもみられるように、トランスのコアギャップの面を基板に対して平行となるように配置して素子の作用磁束と直交させれば、トランスからの磁束による素子に対する磁気的影響を防止できることは明らかであるから、引用考案においても、上記のように、電源回路として周知のスイッチング・レギュレータ回路を用いた場合、回転ヘッド(ビデオヘッドシリンダ)のコアギャップの面が、プリント配線基板と平行に設けられるシャーシに対してほぼ垂直の方向に設けられることになることを考えれば、高周波トランスからの磁束による回転ヘッドに対する磁気的影響を防止できることは技術的に当然予測しうる作用効果と言うべきである。

(相違点cについて)
甲第7号証、甲第8号証には、同一基板に設けられたパルストランス(高周波トランス)とAC商用電源端子を有するスイッチング・レギュレータ回路が記載されているから、引用考案において、1枚のプリント配線基板上に電源回路(スイッチング・レギュレータ回路)の電子部品をも(電源領域に)実装しようとする場合、そのAC商用電源端子を設けることは当業者が適宜なし得た事項である。
また、IFアンプ及びRFコンバータはビデオテープレコーダに一般的に必要な回路端子であり、甲第10号証の図2には、チューナーモジュール210内にRF回路212が含まれ、RF回路212とIFアンプ240がミキサー214を介して接続されている状態が示されている。甲第11号証の図2には,チューナ22内にRFアンプ24が含まれ,チューナ22とIFアンプ30が接続されている状態が示されている。
このように、チューナがRFコンバータを含み、チューナにIFアンプが接続されていることは当業者には周知であるから、引用考案のビデオ回路領域におけるチューナブロック15内もしくはチューナブロック15 に近接した位置にIFアンプ及びRFコンバータを有することは当業者には自明のことである。

そして、上記各相違点の判断を総合しても、本件考案が奏する効果は引用考案から当業者が十分に予測可能なものであって、格別のものとはいえない。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件考案は、甲第3号証乃至甲第11号証に記載された考案及び周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであるから、平成5年改正前の実用新案法第37条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、平成5年改正前の実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-06-14 
結審通知日 2006-06-19 
審決日 2006-07-18 
出願番号 実願平4-4159 
審決分類 U 1 113・ 121- Z (G11B)
最終処分 成立    
前審関与審査官 相馬 多美子  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 江畠 博
山田 洋一
登録日 1998-02-27 
登録番号 実用新案登録第2571891号(U2571891) 
考案の名称 ビデオテープ記録再生装置  
代理人 松山 美奈子  
代理人 大塚 就彦  
代理人 佐久間 幸司  
代理人 牧野 利秋  
代理人 矢部 耕三  
代理人 渋谷 和俊  
代理人 本多 泰介  
代理人 安江 邦治  
代理人 西山 文俊  

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