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審決分類 |
審判 判定 審理一般(別表) 属する(申立て成立) A61M |
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管理番号 | 1175741 |
判定請求番号 | 判定2007-600026 |
総通号数 | 101 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案判定公報 |
発行日 | 2008-05-30 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2007-03-17 |
確定日 | 2008-04-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2597672号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「医療用針」は、登録実用新案第2597672号の技術的範囲に属する。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す考案は、登録実用新案第2597672号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 イ号物件は、被請求人であるスミスメディカル・ジャパン株式会社が販売している「CSE cure」と「PORTEX」のブランドを有するインターロック付硬脊麻針の「セキュア・スパイナルエピデュアル・ニードルセット」製品及び「セキュア・スパイナルエピデュラル・ミニパック」製品の、スパイナル針とトーイ針の組み合わせからなる医療用針に相当するものである。 さらに、それを補足的に示すのが、イ号図面の図1ないし6である。 第2 本件登録実用新案 1 本件登録実用新案の構成 本件登録実用新案は、明細書または図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その登録実用新案を構成要件に分説すると、次のとおりである。 A 硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、 B 同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、 C 前記硬麻針に挿入された前記脊麻針を硬麻針の把持部に固定する固定手段を講じたことを特徴とする D 医療用針。 2 本件登録実用新案の目的及び効果 明細書の記載によれば、本件登録実用新案は、「従来の医療用針は、硬麻針本体に挿入された脊麻針本体が硬麻針内部で軽い力で動きやすく、そのため注射器を接続して麻酔等の薬物を注入する時などの操作中に動き手技が不成功となることもあり、それにより脊椎部を損傷させる危険も大きかった。又、硬麻針に挿入された脊麻針の針先が硬麻針から突出する長さが約7mmと一定しているため、その長さが足りずに手技が不成功に終ることが生じていた。」という従来技術の問題点を解決することを目的とし(段落【0003】)、「硬麻針の把持部に脊麻針が固定されることにより、硬麻針本体の針先から突出した脊麻針本体の針先が動くこともなく人体の馬尾神経に損傷を起こす危険がほとんどなくなった。又、麻酔等の薬物注入や脊椎液の採取など種々の操作中脊麻針が固定されて動かないため手技の成功率も上昇し、熟練をさほど必要とすることもなく操作が可能」(段落【0012】)という効果を奏するものである。 第3 イ号物件 これに対し、審判合議体は、平成19年11月16日に特許庁審判廷において口頭審理を行い、イ号物件が以下のとおりのものであることを確認するとともに、請求人、被請求人もこれに同意し、「第1回口頭審理調書」に記載した。 イ号物件の構成は、本件登録実用新案の分説と対応するように分説すると、次のとおりである。 a トーイ針本体(2a)の基端に把持部(4)を設けたトーイ針(2)と、 b トーイ針(2)に挿入されるスパイナル針本体(8a)の基端にクリア・ハブ(8b_(2))を固着したスパイナル針(8)とからなる医療用針(1)において、 c 前記把持部(4)の筒部分(4b)の表面に形成された歯面(4c)と、前記クリア・ハブ(8b_(2))に動かないように保持された円筒部(8b)の内側に設けられた回転ロック片(8b_(4))とで構成した、前記トーイ針(2)に挿入された前記スパイナル針(8)をトーイ針(2)の把持部(4)に固定する固定手段を講じた d 医療用針(1)。 第4 対比・判断 イ号物件が本件登録実用新案を充足するものであるか否か、本件登録実用新案の構成要件をA?Dに分けて検討する。 1 構成要件Aについて イ号物件の「トーイ針(2)」は、本件登録実用新案の「硬麻針」に相当し、イ号物件の「把持部(4)」は、本件登録実用新案の「把持部」に相当する。 したがって、イ号物件の構成aは、本件登録実用新案の構成要件Aを充足する。 2 構成要件Bについて イ号物件の「スパイナル針本体(8a)」は、本件登録実用新案の「脊麻針本体」に相当し、以下同様に、「クリア・ハブ(8b_(2))」は、「注射器の接続部」に、「医療用針(1)」は、「医療用針」にそれぞれ相当する。 ここで、イ号物件の「クリア・ハブ(8b_(2))」は、スパイナル針本体(8a)の基端に固着されたものであるが、スパイナル針本体(8a)に設けたともいえるので、「スパイナル針本体(8a)の基端にクリア・ハブ(8b_(2))を固着した」と「脊麻針本体に注射器の接続部を設けた」とは同義である。 したがって、イ号物件の構成bは、本件登録実用新案の構成要件Bを充足する。 3 構成要件Cについて イ号物件の「把持部(4)の筒部分(4b)の表面に形成された歯面(4c)」及び「クリア・ハブ(8b_(2))に動かないように保持された円筒部(8b)の内側に設けられた回転ロック片(8b_(4))」で構成された「固定手段」は、「脊麻針」(スパイナル針(8))を「硬麻針」(トーイ針(2))の「把持部」(把持部(4))に固定するためのものであるから、イ号物件の「固定手段」は、本件登録実用新案の「固定手段」に相当する。 したがって、イ号物件の構成cは、本件登録実用新案の構成要件Cを充足する。 4 構成要件Dについて イ号物件の「医療用針(1)」は、本件登録実用新案の「医療用針」に相当する。 したがって、イ号物件の構成dは、本件登録実用新案の構成要件Dを充足する。 第5 むすび 以上のとおり、イ号物件の構成は、構成要件A乃至Dを充足するから、イ号に示す医療用針は、本件登録実用新案の技術的範囲に属する。 第6 訂正後の本件実用新案 本件実用新案は、平成19年8月31日付けで訂正請求書が提出されているので、訂正後の本件登録実用新案についても、以下に検討する(下線部は訂正箇所)。 A 硬麻針本体の基端に把持部を設けた硬麻針と、 B 同硬麻針に挿入される脊麻針本体に注射器の接続部を設けた脊麻針とからなる医療用針において、 C 前記硬麻針に挿入された前記脊麻針をその針先が馬尾神経に到達する充分な長さとするとともにどの挿入位置でも硬麻針の把持部に固定する固定手段を講じたことを特徴とする D 医療用針。 第7 対比・判断 イ号物件が本件登録実用新案を充足するものであるか否か、上記記載第4の対比・判断に加えて、訂正請求により訂正された構成要件Cについて検討する。 構成要件Cについて イ号物件の「把持部(4)の筒部分(4b)の表面に形成された歯面(4c)」及び「クリア・ハブ(8b_(2))に動かないように保持された円筒部(8b)の内側に設けられた回転ロック片(8b_(4))」で構成された「固定手段」は、「脊麻針」(スパイナル針(8))を「硬麻針」(トーイ針(2))の「把持部」(把持部(4))に固定するためのものである。 また、「回転ロック片(8b_(4))」は、円筒部(8b)を所定深さ筒部品4bに嵌入させた後、円筒部(8b)を少し回転させ、トーイ針2の筒部品4bの表面の歯面4cと圧接させることによって固着状態とするものであるから(判定請求書 (3)A・イ号考案の使用(作用)(e)参照)、「どの挿入位置でも硬麻針(トーイ針(2))の把持部に固定する」構成を備えているといえる。 そして、イ号物件においても「脊麻針」(スパイナル針(8))の貫通路を介して脊椎液の採取又は麻酔等の薬物を注入するものであるから、「脊麻針」(スパイナル針(8))の針先が馬尾神経に到達する充分な長さのものであることは明らかである。 よって、イ号物件の「固定手段」は、本件登録実用新案の「固定手段」に相当する。 したがって、イ号物件の構成cは、訂正後の本件登録実用新案の構成要件Cを充足する。 第8 むすび 以上のとおり、イ号物件の構成は、「第4 対比・判断」で検討した構成要件A、B、Dに加え、構成要件Cを充足するから、イ号に示す医療用針は、本件登録実用新案の技術的範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 なお、本件登録実用新案については、平成20年3月18日付け無効2007-800107号の無効審決(平成20年3月27日発送)において、「訂正を認める。実用新案登録第2597672号の請求項1ないし2に係る考案についての実用新案登録を無効とする。」とするとの審決が出されている。 |
別掲 |
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判定日 | 2008-04-03 |
出願番号 | 実願平5-61428 |
審決分類 |
U
1
2・
0-
YA
(A61M)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小川 慶子 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
豊永 茂弘 北村 英隆 |
登録日 | 1999-05-14 |
登録番号 | 実用新案登録第2597672号(U2597672) |
考案の名称 | 医療用針 |
代理人 | 福田 武通 |
代理人 | 福田 賢三 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 戸島 省四郎 |